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2022.10.25

デジタル社会実現に向けて|Interop2022開催レポート

最終更新日:

2022年6月15〜17日に幕張メッセにて、インターネットテクノロジーの展示会、「Interop2022」が開催されました。また、同イベントは6月20日〜7月1日にかけてオンラインでも配信されており、たくさんの参加者が訪れました。

Interop2022では、各企業や研究所、研究室などの展示のほか基調講演も行われ、デジタル庁の牧島かれん氏や、慶応義塾大学教授の村井純氏、(株)ナノオプト・メディア代表取締役 会長 / (株)インターネット株式総合研究所 代表取締役所長の藤原洋氏が登壇し、テーマである「デジタル社会実現に向けて」について語りました。

今回の記事では牧島氏、村井氏、藤原氏が登壇した基調講演をレポートします。

※本記事では、講演内容の一部割愛や表現の変更をしております。

Interop Tokyoとは

Interop Tokyoは1994年に日本で初開催されたインターネットテクノロジーのイベントです。国内外から様々な企業・団体が参加し、技術動向やビジネスのトレンドに関する展示やデモンストレーションを行い、イベントを通じて最新のインターネット分野のトレンドを体感することができます。

今年のテーマについて

今年のテーマは「インターネットによる、人々のための革新と信頼」でした。新型コロナウイルス(COVID-19)によって、インターネット技術はより人々の身近なものとなり、ビデオ通話を用いた会議、在宅勤務、遠隔教育、オンライン診療など、この2年で人々の生活は大きく変化しました。さらに今後もメタバース、暗号資産、NFTなどが発展し、人々の暮らしを便利にすることが期待されています。一方で、こうした技術の発展による分断や対立も指摘されています。SNSの利用とディープフェイクなどのフェイクニュースが新しい武器として国同士の争いで使用されているのです。

このように、人々の生活に大きく影響を与えているインターネット技術の未来を見据えて、これからのビジネスシーンにおける人々のため

のインターネットのあり方について考えることが今年のテーマでした。

 

今年の傾向について

今年のInterop Tokyoの注力テーマは以下のものです。

今年のInterop Tokyoでは特にセキュリティに関する展示が多くありました。

 

セミナーについて

 

今回登壇した牧島氏はデジタル大臣兼サイバーセキュリティ担当大臣です。

牧島氏は講演で主に以下の3点について話しました。

  1. デジタル庁のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)
  2. デジタル社会実現のための羅針盤である重点計画を改定したこと
  3. 法改正の準備に入ったこと

 

1.デジタル庁のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)について

牧島氏は講演冒頭でデジタル庁のミッション・ビジョン・バリューについて語りました。

デジタル庁のミッション・ビジョン・バリューは以下の通りです。

  • ミッション : 誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。
  • ビジョン : Government as a Service,Government as a Startup
  • バリュー : この国に暮らす一人ひとりのために常に目的を問いあらゆる立場を超えて成果への挑戦を続けます

2.デジタル社会実現のための羅針盤である重点計画を改定したこと

牧島氏:デジタル庁が立ち上がって、初めての重点、新重点と言われているものを、12月の24日にリリースしました。 

この重点計画には工程表がついており、例えば、マイナンバーカードをスマホ搭載する目標年次は来年。そして、運転免許証とマイナンバーカードの一体化はいつまでに行う、というように関係する省庁としっかりと話し合った上で、 政府として国全体として、いつまでに何をやるのかという目標を掲げた工程表とともに、この重点計画というものは、閣議決定されています。そして、6月に私たちは第2弾の重点計画を発表しています。 

第2弾の重点計画では、デジタルの活用で1人1人の幸せを実現するために、デジタル庁で掲げているミッション、ビジョン、バリューの元で推進をする体制と工程表を組んでおり、 皆さんを迷わせることがないように、この先の未来を年次で区切って示しており、地域を支える、世界を支える、国を支える、産業を支える、個人のみならず、それぞれを支えていきます。しかし、デジタル庁はデジタルに関するエキスパートですが、できることがたくさんある一方で、 デジタル庁だけがDXの担い手ではないということを、皆さんは専門家の方々が多くいらっしゃると思うので、お伝えしたいです。霞が関の各省長にも、自分たちのdxを進めるプレイヤーだと思ってほしいですし、経済活動を担っている方たちにも思っていただかないと、遅れを取り戻すことはできないと思います。 

司令塔としての機能を果たし、方向性は示しますが、みんなで力を合わせなければ、国民とともに作らなければならないという思いです。そのためには、デジタル社会を形成するための十の原則、オープンであること、 公平であること、倫理、安全安心、法設性、多様性など。 

そして、デジタルファーストワースリーコネクトとワンストップと言われる強制サービスのオールライン化の3原則

原則がしっかりと定められているからこそ、 ここに立ち返って、全ての施策を動かすことができるという安心感をお持ち帰りください。

 

3.法改正の準備に入ったこと

 

牧島氏:これから私たちが行おうとしている一括見直しプランは、デジタル臨時行政調査会で方向性を示したものになります。デジタル臨時行政調査会ではアナログ規制をデジタルへと転換させるということを定め、リモートワークが増えている現状で押印のためだけに出社しなければならない状況を改善するために、前任である河野太郎大臣が一括の法改正を行い、押印の制度を見直しました。また、その他にも対面でなければならない、常駐が求められる、目視点検が必要などと、条文や条例に書いてある場合もあります。慣習でそのようになっていたり、上司にそう言われたなど、いろいろなパターンがあると思いますが、 そうした1つ1つの点をテクノロジーベースで改革いたします。そして、現状の改善を行うだけでなく、将来まで見通す”時空を超える宣言”をしたのがこの一括見直しプランです。

一括見直しプランでは、全部で4万以上ある法令の点検を行ったのですが、その過程でアナログなことが書いてある条項が約5000あることがわかりました。その5000条項を、1つ1つどのようにデジタルに変えていくのかを取りまとめる作業を行っており、すでに8割方4000条項について、方向性の取りまとめを総理にご報告させていただき、メディアにも発表することができました。 残り1000条項についても、9月までに取りまとめを行い年内で整理を行うことで、来年の通常国会で第1陣となる法改正が入る予定です。

このように、今まで積み残してしまったアナログ的な規制を全てデジタルに変えることを3年で行います。 点検などを実際に目視で行わないといけない、という規制や、実地検査と書いてあるものを、どのようにドローンやカメラ、AIに変えていくのか、遠隔での管理を可能にするのかがカギとなります。

パネルディスカッション

牧島氏の講演のあと、村井氏、藤原氏を加えた3人でパネルディスカッションが行われました。

 

藤原氏の用意したテーマに沿ってパネルディスカッションが行われました。

いくつかのテーマをピックアップしてレポートします。

誰一人取れ残されないの「れ」

-デジタル庁のミッションとして「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というものがあります。誰一人取り残さないではなく取り残されないと表現したのにはどんなおもいがあるのか?

 

牧島氏:これは村井先生はじめ、多くの有識者の方たちとの議論の中で決定したのですが「誰一人取り残さない」から、「誰一人取り残されない」という、もう1文字の「れ」が入ったということです。私たちが誰一人取り残しませんという行政の立場から宣伝するのではなくて、 私たちが目指している世界、日本の社会というのは、皆さん1人1人が「私、おいてきぼりにされてないな」という気持ちになることを目的としています。

 

村井氏:「誰一人取り残されない」の実現のためには、「もうデジタルいいよ俺、勝手にやってくれ」という方たちを置いていくのかどうかが分かれ道だと思います。有識者としては、100パーセント、全ての人、全ての国土というような言い方をしてしまいますが、この大きな目標を達成するために必要な判断は、行政だけでは決定が難しいのが現状です。なので、皆さんが隣の人が困っていたら、私たちは助けに行くという意識になるような世界を実現しないと、全体でのデジタル化は難しいです。

そのため、そのようなことまで含めたデジタル化に対するコンセプトを掲げていくということは、とても大事なことだと思います。

 

デジタル田園都市と地方創生の違い

藤原氏:近年、デジタルの役割がクローズアップされてるように見えます。これまで地方創生という言葉は色々使われてきたと思いますが、デジタル田園都市構想とこれまでの地方創生はどのように異なるのでしょうか?

 

牧島氏:一言で言えば、もう地方創生がデジタル抜きでは語れないということを明言した ということだと思います。今までデジタルが組み込まれていなかったわけではないのですが、デジタルの基盤はそれぞれの地域によって異なってしまっていました。地域によってデジタルの導入に差があることで、新型コロナウイルスによって生活様式変わっていって、二地域居住、多地域居住が当たり前になっていても、デジタル基盤が整っていない故にその場所が選ばれにくいということが起きてしまいました。

そのようなことがないようにするために、国が責任を持って、ほぼ100パーセントまでデジタル基盤の整備をしますので、 その上でそれぞれの地方創生、課題解決に取り組んでください、ということを決めました。

dfft、国際的な取り組みについて

-DFFTとはなにか?日本の国際的な取り組みついてどう考えているのか?

村井氏:デジタルデータがますます重要なアセットになり、それが国際流通をするときの基盤はこれからの経済活動でとても大事になります。データが妨げなく流通していくにはルールが必要なので、これを設定することが外交的な政府の仕事であると思います。また、その他の技術的なフォーマットの問題もあると思います。どのような仕組みで、データにアクセスするのが誰で、どのようにして守られて、万が一何かあった時にはどのようにリカバーできるのかというクラウドで課題になっていることの全部が込められた4文字がDFFTです。

 

牧島氏:グローバルに日本が発信してほかの国を巻き込むということに私たちは大きく力を入れています。そして来年のG7で日本が議長国であるというところも肝になります。今年ドイツで開催されたG7デジタル大臣会合に

初めてデジタル大臣が会合に出席することができました。そのため、今年のG7でもDFFTの話をして、来年の議長国日本が、このテーマを引き続き議題としていくということが一定の方向性として示されています。

デジタル庁ができた理由

藤原氏:そもそもデジタル庁はなぜ存在するのかというところに、戻ります。準公共分野というものは安全保障から食関連産業、相互連携でもスマートシティや請求取引など様々なものがあります。このような分野でデジタル庁が創設される以前は、バラバラにやってきたように思えます。 今後のデジタル庁の役割というのは具体的にどのようなものが期待されるのでしょうか?

 

牧島氏:準公共という意味で言えば、子供教育、 または健康医療会合、そして防災災害対応等というのを私たちは掲げています。毎日の皆さんの暮らしに関わる部分である、”有事のときには安心を、平時のときには便利に”を感じていただけるように土台を作るのが、私たちデジタル庁の役割であると思います。ただ、デジタル庁の役割は縁の下の力持ちのようなプラットフォームの役割も担います。デジタル庁は目に見えるところにいないかもしれませんが、デジタル庁のシステムがあってよかったと思っていただき、さらにアップデートできるきっかけを持てたと思っていただけるように、常に実証や成長を続ける組織です。

 

さいごに

村井氏:政府が行っているデジタル庁の活動は官だけではできません。個人がどのように関わっていくのかが大事になります。そしてデジタル庁ができてから2年目、まったく新しいアプローチで作った役所があらゆる期待を背負って動こうとしています。なので皆さん積極的にこのプロセスに参加して進めて行くことが大事だと思います。一方で大臣の方には今後この期待にどのように応えていくのか、そのための体制を我が国としてますます取り組んできただければと思います。

 

おわりに

今回の記事ではInterop2022で行われた、「デジタル社会実現に向けて」というテーマの基調講演についてレポートしました。

 

今年のInterop2022のテーマにあるように、デジタル社会実現に向けてデジタル田園都市やDFFTなどインターネットと人々の関わり方、テクノロジーの革新や信頼がとても大切だと思います。

 

講演のなかで村井氏が話していたように、デジタル社会を実現するためには政府だけではなく個人がどのように関わっていくのかもとても重要です。

そのために、これからもAINOWではAI/DXに関する最新トレンドを発信していくので、ぜひチェックをお願いします。

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