SB C&S株式会社は、2022年10月20日にデジタルの日特別オンラインセミナーを開催しました。
今回のオンラインセミナーは、SB C&S株式会社が提供するAIプラットフォーム「AIMINA」の担当者である村松貴耶氏のほか、ソフトバンク株式会社のAI関連事業の担当者である藤原竜也氏、佐藤哲太氏が登壇し、「誰でも気軽にAI開発を行える環境づくり」をテーマに講演を行いました。
今回の記事では、村松氏、藤原氏、佐藤氏が語った「誰でも気軽にAI開発を行える環境づくり」についてレポートをします。
目次
デジタルの日とは
デジタルの日とは、2021年に創設された、社会全体でデジタルについて定期的に振り返り、体験し、見直す機会として創設された記念日です。
国と民間企業が連携し、デジタル関連の技術・サービスを利用した様々な取り組みを実施し、社会のデジタル化を促進させることを目的としています。
2022年は、10月2日(日)、10月3日(月)をデジタルの日、また10月1日〜31日までの1ヶ月間をデジタル月間と定め、さまざまなイベントやキャンペーンを行うことで、日本のデジタル化を加速させる期間となっています。
ノーコードでAI開発!-AI PoC実践で構想の具現化-
日本のAI導入率は遅れている
現在「AI」という単語は、日常生活においてさまざまな場所で耳にすると思います。画像認識や文字起こし、最近ではAI家電としてエアコンや掃除機などにもAIが搭載されています。
しかし、国内企業のAI導入率は低く、総務省が講評している「令和元年版情報通信白書」によると、国内企業のAI導入率は39%です。それに対して海外のAI導入率は、中国が85%、アメリカが51%、ドイツが49%と高い水準を保っていて、日本のAI導入は他国に比べて後れを取っています。
日本のAI導入が後れているAI原因として、導入をしたいと考えていても構想やPoCの段階でどうすればいいのかわからなかったり、AIを扱える人材が不足していたりなど、さまざまな課題が存在します。
そのため、SB C&S株式会社は誰でも気軽にAI開発を試せるサービス「AIMINA」を開発しました。
AIプラットフォーム「AIMINA」
AIMINAは、AIを手軽に学べる・作れる・試せる、クラウド型AIプラットフォームです。「AIをみんなの手段に」をコンセプトに2022年1月にリリースしました。
AIMINAにはさまざまな機能が備わっており、学習機能では、AIの基礎的な知識から具体的なAI活用シーンまでAIプロジェクトを始める際に役立つ情報を学ぶことができます。
開発機能では、試したいと思っているAIの利用シーンを選択し、お持ちのデータやテストデータを使ってAIモデルを自動作成できます。
また、作成した予測モデルをAIMINA上で走らせ、シミュレーションすることもできます。
2022年11月現在では、AIMINA上で試すことができるAIの種類は20を超えています。
▼AIMINA上でシミュレーション可能なAI
カテゴリ | AI手法 |
画像処理 | 画像分類(Image Classification) |
異常検知(Image Generation) | |
画像異常検出(Image Anomaly Detection 2022) | |
物体検知(Object Detection) | |
画像セグメンテーション(Semantic Segmentation) | |
姿勢推定(Pose Estimation)※推論のみ | |
自然言語処理 | 文書要約(Summarize)※推論のみ |
文書分類(Text Classification) | |
質疑応答 1問多答(Question Answering) | |
質疑応答 1問1答(Question Answering Single) | |
異音検知 | 異音検知(Audio Anomaly Detection) |
時系列分析 | 時系列予測 説明変数あり(Timeseries Prediction Multivariate) |
時系列予測 説明変数なし(Timeseries Prediction Univariate) | |
時系列予測 説明変数なし(Timeseries Prediction Prophet) | |
テーブルデータ回帰予測(Timeseries Prediction Tabular) | |
時系列異常検知(Anomaly Detection)※推論のみ | |
時系列クラスタリング(Timeseries Clustering)※推論のみ | |
離職者予測(Turnover Prediction) | |
モデルリダクション(Model Reduction) ※推論のみ | |
時系列状態推定(State Estimation) ※推論のみ | |
時系列分類(Timeseries Classification) |
AIMINAは、非エンジニアがデータを用意するだけでAIモデルを試すことができ、需要予測や不良物の検知、劣化検出などさまざまな用途で活用されています。
2022年11月現在、AIMINAはフリートライアルプランを受け付けており、20種類以上のAIを1ヶ月間無料で試すことができます。需要予測AIから画像処理AIまで有償版で提供されているAI全てを使うことができるので、この機会に試してみてはいかがでしょうか。
AI導入における“人材”の壁|DXを加速させる仕組み作り
AIを扱える人材が圧倒的に足りない|日本のDX人材の現状
企業のAI導入において、AIを活用できる人材がいることは非常に重要です。しかし、日本のAI人材はまだまだ不足している現状であるため、AI人材の育成がAI導入のカギになっています。
また、AI開発は内製化することも重要であり、すでにAI導入をしている企業の約6割が内製開発を進めています。内製化をすることにより企業の価値をあげたり現場における費用対効果を高めることができますが、そのためにはAI人材を育成する環境が整っている必要があります。
AI人材育成の課題として、3つの課題が存在します。
- 学ぶ時間がない
- 環境が整っていない
- 実践の場がない
「学ぶ時間がない」については、ソフトバンク株式会社では、全社員向けのAI基礎eラーニングについて、業務時間内の受講を推奨し、AI知識の底上げに取り入れているとのことでした。また、有志で勉強会を開いたり発表会の場などを設けたりすることでモチベーションの低下を防止するなど対策をしています。
「開発環境が整っていない」は、セキュリティ面などでさまざまな課題があると思います。しかし、AI人材を育成するうえでは教育サービスの利用など企業側が学習できる環境を提供することが大事です。
「実践の場がない」については、とにかく実践あるのみです。ソフトバンク株式会社が提供している「Axross Recipe for Biz」では、実戦経験があるエンジニアが業務に生かせる実践的な学びを得ることができます。
使える知識を手軽に学べる「Axross Recipe」
Axross Recipeとは、「プログラミングを学んだが実践で活用できない人を減らしたい」という想いのもと、エンジニアのノウハウを”レシピ”という独自コンテンツで提供するプラットフォームです。
学習コンテンツは、プログラミングのノウハウなどに関する技術ブログと、ユーザーに合った体系的なコースを学習できるeラーニングを組み合わせ、動画やテキストの形式で提供されています。具体的なテーマに沿って、実際にコードを書きながらAIの開発やデータ分析のプロセスを疑似体験することができます。
Axross Recipeは、データ分析からAI実装まで業務に直結するレシピを学ぶことができるため、プログラミングを学んだけど次に何をすればいいか分からない人やトレンド技術の実践的な内容を学びたい人など多様なニーズにこたえています。
Axross Recipeは、今年から本格的に法人向けにAI/DX人材育成サービス「Axross Recipe for Biz」も展開されており、法人限定コンテンツや機能を拡充させ、企業や自治体などのAI・DX人材の内製化を支援しています。法人提供プランは主に2種類あり、オンライン学習プラットフォームを提供する「E-learningプラン」と体験型研修カリキュラムを提供する「研修プラン」です。
Axross Recipeは従来型教育サービスと違い、現場の学びあいからノウハウを創り、実務に近いテーマで自ら動くものを作る追体験ができます。そのため、自身が目指したい姿により早く近づくことができます。
PoCから商用へ、AI開発を前進させる高品質なAIの教師データ作り
量より質、アノテーションの極意
AI開発を行うためには、膨大なデータが必要です。しかし、どんなデータでもいいわけではなく前処理を行い整理されたデータが必要です。また、そのようなデータを作ることをデータクレンジングといいます。
アノテーションとは、AIの開発において機械学習モデルの構築に必要となる教師データを作成するために、画像やテキストなどあらゆる形態のデータにタグを付ける作業のことを指します。単純作業ですが、AIの精度に直結する非常に重要な工程です。
総務省の調査(※)によると、AI開発においてアノテーションに最も時間を割いていると回答した人が過半数を超えています。その原因として、3つの課題があげられます。
- 依頼時の作業ルール決めが困難である
- データ品質が開発結果に直結する
- 労働集約な作業
※出典:総務省「ICTを学ぶ総務省ICTスキル総合習得プログラム」資料(「3-1:ビッグデータの活用と分析に至るプロセス」)
依頼時の作業ルール決めが困難である
アノテーションは、誰か他の人に頼むことが難しい作業です。たとえば、「人を対象にアノテーション」を行う場合、画像の枠内から見切れている人は人として認識をするのか、それとも人として認識をさせないのか、人それぞれ解釈が違います。
他にも、寝転んでいる人や頭しか映っていない人、また凄く小さく映っている人は人として判定するのかしないのか、事前にルールを細かく共有していないとデータにばらつきが発生し質の高いAIを作ることができません。
そのため、外注をすることで品質を担保することが難しいため、自社でアノテーション作業をする必要性があります。
データ品質が開発結果に直結するため
AIは学習データをもとに作っているため、データの質次第で良くも悪くもなります。下の画像を見比べると、左の画像はカメラ全体をカメラとして認識させていますが、右の画像はレンズのみしかカメラとして認識させていません。
左のデータで作ったAIのほうが、右のデータで作ったAIよりも精度が高くしっかりと画像認識をしてくれます。このように、アノテーションの質がそのままAIの質につながってきます。
労働集約的な作業
アノテーション作業は、ほとんどの作業を人の手で行わなければなりません。AIによる自動化をしたとしても、確認作業をしたり質が低ければ修正を加える必要があります。そのため、膨大な時間がかかってしまいます。
またアノテーション作業は、膨大な時間がかかることに加えて、外注することも困難な作業です。そこで、ソフトバンク株式会社はアノテーション業務に特化したアノテーション代行サービス「TASUKI Annotation」を設立しました。
アノテーション代行サービス「TASUKI Annotation」
TASUKI Annotationは、AIモデル開発に必要なアノテーションデータ(教師データ)の収集・加工を代行するサービスです。アノテーション対応種類は、画像・自然言語・動画・音声の計4つに対応をしています。
TASUKI Annotationが高品質を保ってアノテーションを行える理由は以下の通りです。
- 誰でもしっかりと要件定義できる機能
- 作業者技能を採点された精鋭チーム
- AI自動作業による効率的な作業
誰でもしっかりと要件定義できる機能
TASUKI Annotationでは、必要な要件登録をシステムで支援することで、簡単に誰でも一流の要件定義ができるようになります。また、いつでもアノテーションされたデータの確認ができたり作業者とチャットをすることができるため、納品後のデータの品質を担保することができます。
作業者技能を採点された精鋭チーム
アノテーション作業をする作業者は、作業品質を抜き打ちで評価されています。また、アノテーション作業のアジャイル化をしており全ての作業者が高品質なデータ作成をすることができます。
AI自動作業による効率的な作業
TASUKI Annotationでは、AIによる自動アノテーションを使うことで作業工期とコストを大幅にカットしています。AIによるアノテーションをもとに高技能者が修正を加えることで高品質なデータを素早く作ることができます。
ソフトバンク株式会社のアノテーション代行サービス「TASUKI Annotation」の具体的な事例は、こちらのサイトをご覧ください。
おわりに
今回は、デジタルの日特別オンラインセミナー「誰でも気軽にAI開発を行える環境づくり」というテーマの基調講演についてレポートしました。
SB C&S株式会社が提供している「AIMINA」、ソフトバンク株式会社が提供している「Axross Recipe」「TASUKI Annotation」を使うことでAIの学習データ作りからAI開発まで試すことができます。
AI開発は、これからもますます重要になっていき、それに伴ってAI人材育成もカギになっていくでしょう。AI開発にかかわるサービスを多数提供しているSB C&S株式会社の動きには目が離せません。
これからもAINOWではAI/DXに関する最新トレンドを発信していくので、ぜひチェックをお願いします。
画像提供:SB C&S株式会社、ソフトバンク株式会社