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ReTech企業の「GA technologies」がAI戦略室を作ったと聞いてインタビューしてきました。
ロボアドバイザーに自動化やアナリティクス。ReTechの最先端を行く。
公益財団法人不動産流通近代化センターの『2014不動産業統計集』によれば不動産業の売上高は、32.6兆円。そんな巨大市場にAIを駆使して変革をもたらそうとしている企業が株式会社GA technologies (ジーエーテクノロジーズ)です。
AI戦略室のミッションは「AIを用いて不動産ビジネスへの貢献をすることと、プレゼンスの向上」です。AI技術とデータ活用を用いて物件や顧客の理解を行い、さらにお客様と物件のマッチング、リスク予測、RenosyアプリのAI化などを促進していく予定です。また、大学との共同研究など産学連携も含め社内外への情報発信とAI、データサイエンスの人材育成も担っていきたいと考えています。(AI戦略室:小林氏)
GA technologiesが提供しているのは、新しいマンション購入&リノベーションの新しい体験を提供するRenosyです。
利用ステップは3ステップ。以下のトレイラーがとても美しくわかりやすいので是非ご覧ください。
Renosy®のコンセプトがWebサイトで語られています。
マンション購入は人生において、もっとも高い買い物のひとつです。「満足するものを買いたい。」「私らしいものが欲しい。」そう考え、購入後にリノベーションを行う方が近年増えています。その反面、気に入るものを探すのも、作るのも、施工業者に好みを伝えるのも難しいのが現状。その課題を解決し「私らしい暮らし」を求める方のために、スマートフォンアプリRenosy®は開発されました。Renosy®に組み込まれた人工知能はヒアリングや好みの判定により“あなたらしさ”を学習します。「気に入った・いまいち」を判定するだけで、自分でも気付くことのなかった「こだわり」を知ることもでき、その「こだわり」に見合った物件とリノベーションの組み合わせプランを人工知能がご提案します。Renosy®では実際の中古物件へリノベーションを組み合わせるリアルなシミュレーションが可能です。実際の販売物件でのシミュレーションのため、そのままご購入のお問い合わせもいただけます。(GA technologies Webサイトより)
なぜAIだったのか。小林氏は語ります。
不動産業界は一般的に、営業担当者がお客様と接している時のやりとりが分かりません。現実で起きている世界は、紙資料を利用して説明したり、交渉もKKD(勘、経験、度胸)がモノを言う世界だと言われています。コミュニケーションや意思決定のデータが残っていません。こういった状況ではそもそもデータ自体が不足しており、それゆえにAIを使って課題解決をすることがとても困難です。だから顧客接点のデータをいかに取得する仕組みを作るかに苦戦しています。データ量は少ない。高い買い物だからたくさんデータはない。さらにお客さん、一期一会、均衡していない。
課題だらけですが、お客様は人生を賭けたお買い物をされている。
少量のデータをもとに学習していくのは、AIにとって課題が多いが役割を果たせれば大きなビジネスにつながります。(AI戦略室:小林氏)
AI戦略室はGA technologiesの創業者である樋口氏の強い思いがあって実現したものだそうです。
樋口氏はどんな思いを語り、小林氏はAI戦略室を率いることになったのでしょうか。
代表の樋口は、もともと不動産セールス出身でトップセールスでした。その当時から、アナログな不動産業界に危機感を持っていました。だから、営業とITの両方に熱意を持っている人です。元々、樋口はサッカーでプロを目指していたほど1つのことを極めようとする人、ほかのことへのパッションのかけ方も違います。
その樋口の情熱と熱意を込めた「AIで不動産業界を変えていきたい」とう思いに共感し、一緒にビジネスを成功に導きたいと思いました。彼の人間的な魅力。熱意に動かされて、困難だと思いましたが面白そうだとAI戦略室を立ち上げました。(AI戦略室:小林氏)
小林氏本人が語ってくれたように、不動産のようなリアルビジネスが強い業界はデータを集めることから困難です。「面白味はあるんですか?」と意地悪な質問をしてみました。
データを加工する技術、環境というのは、今後どんどんオープンになっていきます。データが持っていないところが解析しても、大きな結果につながらない。そこはBtoBtoCの事業会社だからこそサービスに密着して、BtoB、BtoC、両方のサービスの中にデータを計測するプロセスを入れ込むのが私たちの面白味です。その過程には不動産屋さん、IT屋さんが混在している会社なのでネットとリアル両側のスペシャリストがいます。
だから成功に近づきやすいのも魅力ですね。(AI戦略室:小林氏)
同席する橋本氏はデータサイエンティスト協会の立ち上げにも携わった人物。データの専門家としてどのように考えているのでしょうか。
小林の言うとおり、不動産業界はデータ量は決して多くありません。
むしろ少量のデータから意思決定したり、データを取得できていない部分をどう取得していくかから考える必要がある業界です。
デジタルで完結し大量データに溢れるアドテクやソーシャルゲーム業界などとは対極です。
これは大量データが望ましいAIとはそぐわないとお感じになるかもしれません。ですが、最近の学会でも
・人工知能学会2017 東大 松尾先生「今後はデータを作る・集める仕組みこそ競争力の源泉になる。」
・第8回ソーシャルコンピューティングシンポジウム 阪大 松村先生「仕掛学:データなき世界へのアプローチ」
など、現在大量データがない世界で、これからどのようにデータ生成・AI活用していくべきかに注目が集まる兆しが見られました。
衣食はネットで完結し始めていますが、住はまだまだです。考えようによっては大きなチャンスがありますね。不動産はGDPで10%以上、家計では25%を占めており、言い換えると人の幸せの25%に関わっているともいえます。その意思決定を科学できた先には、不動産と同じような購入頻度が少ない高額商品を対象にした「高額商品のAmazon」といった私たちが目指している世界があると思うんです。(AI戦略室:橋本氏)
今後は、AI技術とデータの活用で社内の営業効率とサービスの質の向上を実現しながら、長期的には社内で培った技術を社外にも提供していきたいと考えており、Renosyを中古不動産流通のスタンダードとして育てていきたいとのこと。
その先には不動産業界の枠を超えて「高額商品のAmazon」なることを見据えています。
編集後記
おしん記者