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おざけんです。アプリの分析・マーケティングツールを手がけるReproがRepro AI Labsを設立したことを発表しました。
「Repro」は国内を代表するアプリのマーケティングツール。SDKを提供し、アプリに組み込むことで分析機能とマーケティング機能を一貫して利用できます。特にReproが力を入れているのは「マーケティング機能」。CRMや広告が強みです。
アプリ内の行動データとユーザの属性データに基づいて、プッシュ通知やアプリ内メッセージを事前に設定したマーケティングシナリオに沿って送り分けることができます。
ユーザがそもそも持っている属性(性別や年齢)とアプリ内の行動に基づくデータの2軸を活用することで、例えば「東京に住んでいる20代の人でアルバイト情報を3回以上見たことがある人」など具体的にセグメンテーションしてアプローチすることができます。
従来のようなマス的なアプローチでは、誰にでも刺さるような最大公約数的なメッセージになってしまっていたものをユーザごとに分類してアプローチできる強みを活かしてReproは成長してきました。
今回はそんなReproが取り組みを始めているAIの研究についてのご紹介です。
目次
ReproはInputからOutputまでフル活用できる
平田さん
「Reproはアプリから取得したデータをインプットするところから、マーケティング施策の実施といったデータをアウトプットするところまでを一気通貫で行えることを強みとしています。
DMPはデータを貯めるために活用されていますが、マーケティング活動をワンサービスでアウトプットすることができません。あくまでもマーケティングで活用できるようにデータを保存しておく箱なんです。
これにFacebookやTwitter、メールサービスやReproなどを接続することでマーケティングで活用することができるようになります。
ReproはSDKを入れれば、アプリのデータを迅速にマーケティングに活用することができます。これが大前提としてReproの強みです。」
データを活用するノウハウがユーザにない場合がある
平田さん
「Reproがデータを取得し、ユーザをターゲティングして、マーケティングできるのは前述のとおりです。しかし、課題となるのはデータをマーケティングに活かすときのノウハウがユーザにない場合が多いことです。
アプリを使っているあるユーザに対して、「Who(誰に)」「What(何を)」「When(いつ)」「How(どのように)」配信するのかを決めなければなりません。この部分に対して知識がないクライアントはその部分もReproの専門チームがサポートを行っています。
マーケティングのリテラシーが高い会社であれば、どんどんReproを活用して数字を伸ばしていけるのですが、やはりユーザの中にはマーケティングが不得手な会社もあります。そのとき、Reproのアプリマーケティング支援チームが、独自のノウハウで支援するサービスも行っています。」
人とAIがそれぞれの強みを発揮する必要性
平田さん
「このようにReproでデータをマーケティングに活用していくと、やはり人間が考えられる限界値があると思っています。今回、会社としてAIに投資をしようというときに、「ツール+人的運用+AI」が必要だなと感じました。
人間がいちいち分析して対応することが難しい場面においてAI領域で工夫をしていきたいと思っています。特にAIを導入していきたいと考えているのは「Who(誰に)」「When(いつ)」の部分です。どのセグメントにいつアプローチするのかは、AIでどんどん最適化できると思っています。
しかし、やはりAIにも不得手があります。特に「What=コンテンツの生成」の部分に関しては、まだ人間がやったほうがいいなと思っています。これに関しては事例も出てきていて、時間の問題だとは思いますが、クライアントに対して正確に価値を提供できるという視点ではまだだと思っています。
また「How(どのように)」の部分に関してはプッシュ通知と広告とアプリ内メッセージ、メールのどれが一番いいのかについて検討していかなければならないと考えています。」
具体的にAIの導入を進める3つの機能
具体的にはRepro AI Labs(Repro AI ラボ)では以下の3つの機能を研究開発するそうです。
- アプリから離脱しそうなユーザーを予測できるようになるチャーン予想機能
- アプリを立ち上げる時間帯、購買行動を取りがちな時間帯などをユーザーごとに最適化して個別にプッシュ通知を配信する機能
- ユーザーが気に入りそうな記事や商品をレコメンデーションするプッシュ通知配信機能
アプリから離脱しそうなユーザーを予測できるようになるチャーン予想機能
今井さん
「今までに蓄積したアクティビティデータを元に、実際にどれくらいのユーザがアプリに再訪するかを予測し、再訪する可能性が低いユーザに対してアクションを起こしていく機能です。
アプリの特性によってチャーンをどう定義するかは変わってきますが、例えばメディアであれば1週間ユーザが訪れてこなければチャーンとして定義するなど、細かい詰めを考えています。」
ーーチャーン予測についてはそれぞれのアプリごとにAIを開発しなければならないんですか?
今井さん
「現在は基本的にアプリごとにAIのモデルを作成しています。しかし、データ数がまだ少ないクライアントに導入してもらうことを考えたときに、ある程度アプリをカテゴライズして汎用的に使えるAIのモデルを作ろうと思っています。
特にマンガアプリ、マッチングアプリ、ECアプリなどジャンルによって打つべき施策やユーザの行動データに類似性があります。汎用的にそれを分析して活用すれば可能になっていくのではないかと思っています。」
アプリを立ち上げる時間帯、購買行動を取りがちな時間帯などをユーザーごとに最適化して個別にプッシュ通知を配信する機能
今井さん
「従来の分析方法でもある程度の最適化が進んでいるプッシュ通知。機械学習の用途は、さらにセグメントを区切った個人単位での最適化を行っていくためです。
Reproの強みは3000万以上の端末で情報を収集していることです。大手キャリアよりもReproのほうがアプリでの行動データを多く所有しています。
それぞれの個人がいつスマートフォンを開いたかのデータを学習させていけば、「人」の単位で最適なタイミングをアウトプットできるのではないかと思っています。」
ーー従来はABテストで時間帯を分けたりしてどんどん細分化していましたよね。個別であればABテストは不要になりそうですね。
平田さん
「今までは鬼のA/Bテストを繰り返した結果、最適化を進めてきました。正直なところ、従来のやり方では仮説ありきなんですよね。
寝る前はどうもアクセスが多いから試しに21時に送ってみようというトライアルが始まって、思ったよりも反応がよかったから21時と21時半と22時でどれがいいか試してみようというA/Bテストを繰り返しています。
これはユーザのほとんどがこういう行動をするだろうというマス的なアプローチなので、人間の限界がありますよね。この部分をAIを用いて最適化していきたいと考えています。」
ユーザーが気に入りそうな記事や商品をレコメンデーションするプッシュ通知配信機能
今井さん
「これに関しては従来と同じような協調フィルタリングの機能がベースになっています。
しかし、さまざまなアプリのデータを保有していて汎用的に使えるので、このスマートフォンを使っている人にはこういう好みがあるという把握ができると思います。
まだ研究開発中で完璧な方向性が定まっていませんが、横軸で多様なデータを持っているReproだからこそデータドリブンに違った切り口でレコメンデーションをすることができるのではないかと思っています。」
ReproのAIにおける今後の展望
ーー今後の展望を教えてください。
平田さん
「広告やメール、プッシュ通知を”鬱陶しいもの”と感じる人がいなくなるようにしていきたいと思っています。僕たち事業社が頑張っていくことで、求めている人に求められたコンテンツを提供することができるようになると思っています。
ユーザにとって最適なタイミングで見たいもの、買いたいもの、情報が届く時代ってそう遠くないうちに訪れると思っています。
その実現に向けて国際競争力が保てるレベルでAIに対する投資を続けていきたいと考えています。」
さいごに
実はAINOW編集部があるディップではバイトルアプリ、バイトルNEXTアプリでの施策にReproを活用しています。
Repro AI Labsが研究する機能について担当者に感想を聞いてみたら「もし個別に時間帯を最適化させてプッシュ通知を配信することができたら便利だし活用したい!」と言っていました。
AIによって個別化の流れが進んでいますが、まだマス的なアプローチを取っている部分ってかなり多いですよね。Repro AI Labsによって広告やプッシュ通知が鬱陶しいものでなくなり、欲しい人に欲しいコンテンツが供給される時代がくればいいなぁと期待で胸が膨らみました。
今後もマーケティング×AIについてAINOWで発信していきたいと思います。
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