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本稿は、サンフランシスコ・東京を拠点のAIスタートアップ特化型シードファンド、Hike Venturesが7/16に配信したメールレターのバックナンバーです。Hike Venturesはアメリカ・カナダを中心に投資をしています。「人とアルゴリズムの協業によって豊かさを生み出すエコシステムの創出」をモットーにアメリカ、カナダ、日本のシード段階のスタートアップの支援を行っています。バックナンバーはこちら。メール配信を希望の方は、Hike Venturesウェブサイト内フォームより登録お願いします。
CBInsightによると、2017年のAIスタートアップのイグジット120社のうち115社は、M&A。2016年の80件と比較すると44%増加しました。
累計買収件数が最も多いのは、Google (14件)、Apple (13件)、Facebook(6件)、Amamzon(5件)と続きます。テックジャイアン以外にも、RocheのFlatironの買収、FordのArgo AIの買収や、GMのCruiseの買収等、伝統的な企業のAIスタートアップの大型買収も始まっています。
また、Business Insiderが、OracleがトップAIタレントに対して$6Mの株と給料のパッケージをオファーをしたとの記事がありました。$6Mはトップタレントの例としても、AI関連のPhD取得直後のリサーチャーや数年のAI経験を持つ専門家の給料は、30万ドルから50万ドルと言われています。テックジャイアンととスタートアップは、希少なAIタレントを求めてシリコンバレー以外の都市、カナダ、中国、フランス、イギリスにまで人材獲得に奔走しています。
さらに、FacebookやGoogleは社内でAIのレクチャーを行い、AIを使った新しいプロダクト開発の考え方を社員に教育しています。Facebookでは、基礎から社内のデータを使ったレクチャーに加え、AI LabでのインターンでAIリサーチャーと一緒に働ける環境を用意し、そこで学習した社員がさらに他の社員の学習をサポートするという循環を作っています。
今後、シリコンバレーや中国の巨大テクノロジー企業による日本国内のAIタレントの獲得も激しくなることが予想されますが、人材の獲得方法、社員のAIタレントへの移行サポート等いろいろと手を打っていく必要がありそうです。
目次
トピックス
ボイスファースト
- Googleがスマートスピーカーの出荷台数でAmazonを抜く
リサーチ会社Canalysによると、2018年第一四半期のスマートスピーカー出荷台数ベースで、Amazonのシェアが前年同時期の79.6%から27.7%へ低下。第一四半期のグローバルな出荷数は900万台。Googleが3.2M出荷し483%成長。対するAmazonは、2.5M。中国では1.8M出荷され、次に韓国の73万台が続く。Googleは、インドでチャネル戦略が功を奏し急成長。中国では、alibaba, Xiomiが低価格戦略で出荷数を伸ばしている。
表は、canalys ‘Google beats Amazon to first place in smart speaker market’より
カメラファースト
- NianticがARクラウドプラットホームを発表
同プラットホームはARとマルチプレイヤー機能を提供。ARではコンピュータビジョンを使い、スマートフォンのカメラに映った物体の認識をサポート。例えば、物体の前後関係も認識できるため、以下の動画のようポケモンを人の後ろを通らせるようなことが実現できる。
画像は、Next Reality ‘Niantic Reveals Augmented Reality Platform for Multiplayer Gaming & Interaction with Real World Objects’より
- AIを使ってよりリアルなアニメーションを実現
Edinburgh大学のリサーチャーがmode-adaptive nural netowrkという技術を用い、実際の動物などの動きを学習し、リアリティが高いアニメを再現する技術を開発。
写真は、Gizmode ‘Playable Tech Demo Shows Why Future Games Should Be Animated Using Neural Networks’
ヘルスケア
- 脳腫瘍を発見するアルゴリズム
中国のBioMid AIが人間の医者の半分の時間でより正確に(87%vs66%)脳腫瘍を発見できるシステムを開発。また同システムは、血腫拡大も人間の医者よりも正確に予測できる(83% vs 63%)。 - AIのヘルスケアへの提供は病院の収益を圧迫する?
例えば、CTスキャンから心臓の3Dモデルを構築し心臓疾患の検査をサポートするHeartFlowを利用れば年間25万の必要ではなかった手術を削減できる。ただ同時に病院はその分の医療費を失うこととなる。この失われる可能性のある収益が病院におけるAI浸透の障壁になる可能性も。
モビリティサービス
- サンフランシスコで自動運転車によるライドシェア開始予定の発表が相次ぐ
GMは、市内に電気自動車のチャージャー(18ポート)を構築。引き続き、テスト走行を行いつつ、自動運転車によるライドシェアサービスの課金の許可やビジネスモデルを準備する。また、DaimlerとBoschも2019年の下半期からサンフランシスコエリアにて自動運転によるライドシェアのテストを行うことを発表。 - Baiduとソフトバンク子会社のSB Driveが2019年にLevel4の自動運転バスサービスを開始予定
BaiduとSB Driveは、Create BaiduというAIイベントでパートナーシップを発表。2019年に10台を日本へ出荷しサービスを開始する予定。利用するのは、Baiduの自動運転OS Apolloを搭載したApolong。製造はKing Longが行いすでに100台を生産した。中国では、北京や深センなどの複数の都市で今年中にサービス開始予定。
写真は、TechCrunch ‘Baidu just made its 100th autonomous bus ahead of commercial launch in China’より
- DidiがContinentalとライドシェア専用車の開発で協力
Didiは他のライドシェア企業と同様、ありものの車を使ってきたが、将来的にはライドシェアへより適した車(コネクテッド、快適性、EV)をContinentalと開発すると発表。2020年から利用開始予定。また、Didiは去年の9月に、2020年までに100万台のEV等次世代エネルギー車を利用するとも発表している。自動運転サービスへと繋がっていくライドシェアが利用する車のデザインの決定権を車メーカーではなくライドシェア企業がリードしていくのか!?今後の動向に注目です。
ドローン
- ドローン配達サービスがAlphabetから独立
ドローンによる配達サービスWingがXから独立。同社のドローンは羽で飛行し、目的地上空でプロペラに切り替えて下降する。去年オーストラリアで実験を行い満足のいく結果が出たため今回別会社化する。
業界動向
- FoxconnがAIカンパニーをシリコンバレーで設立
その名もIndustrial AI System。100名のAIプロフェッショナルを採用予定。スマートフォンの出荷台数が伸び悩む中、AIを活用した製造へ投資する。
【調達ニュース】
モビリティ
- Perceptive Automata (Cambridge, MA) Seed $3M
人が道を渡るときに車のドライバーに送るアイコンタクトなどユーザが路上で起こそうとしている行動に関するシグナルをマシンに検知させるテクノロジーを開発。
First Round Capital, Slow Venturesから調達。 - Pony.ai(Freemont, CA, Guangzhou, Beijing) Series A $102M
自動運転テクノロジーを開発。
ClearVue Partners, Eight Roads, Green Pine, China Merchants, Redpoint Ventures China, Sequoia Capital China, Morningside, DCM等から調達。 - Aurora Labs (Tel Aviv, Israel) Series A $8.4M
車載されているソフトウェアの不具合の自動検知・修復、ソフトウェアアップデートを行う。
Mizmaa Ventures, Fraser McCombs Capitalから調達。
DeepMap (Palo Alto, CA) Venture Round $60M - DeepMap (Palo Alto, CA) Venture Round $60M
自動運転車向けのマップ、ローカライゼーション、シュミレーションデータを提供。
Alibaba, Nvidia, Didi, BAICから調達。
リテール
- Trigo Vision (Tel Aviv, Israel) Seed $7M
Amazon Goのような自動チェックアウトを可能にするテクノロジーを開発。独自のカメラをリテールへ提供(200平方米あたり50台)。現在ヨーロッパの大規模店舗で実験中。
Vertex Ventures Israel, Hetz Venturesから調達。
- Trax (Singapore) Series E $125M
スマートフォンのカメラや備え付けのカメラを使って店舗の棚を撮影し分析するシステムを提供。陳列状態、在庫不足に加えて、ラベル表示、値段などをチェック。コンシューマプロダクトメーカーや顧客。
Boyu Capital, Warburg Pincus, DC Thomsonから調達。
カメラファースト
- Meero (Paris, France) Series B $45M
カメラマンを探すマーケットプレイス。カメラマンが顧客向けに写真を撮影した後に、ベストショットを探したり、編集するのに多大な時間を要するところを、自動で行う。顧客は撮影後24時間以内に出来上がった写真を受け取ることができる。当初の市場は不動産で、顧客数4万。
Alven Capital, Idinvestから調達。 - Blink Identify (Austin, TX) Seed $1.5M
カメラの前を通り過ぎていくユーザの顔を瞬時に認識できる技術。
Sinai Ventures, Live Nation, TechStars等から調達。
コンシューマー
- Fever (London, UK) Series C $20M
イベントディスカバリアプリ。年ごとのイベントのメディアやソーシャルチャネルも運営し、各都市のユーザの好みを理解し、ユーザが好みそうな自社ブランドのイベントの開催も行う。ニューヨーク、ロンドン、マドリード、パリがメインのマーケット。
Atresmedia, Labtech, Accel Partners, 14W Venturesから調達。
ロボティクス
- Savioke (San Jose, CA) Series B $13.4M
インドアサービスロボット。これまでのホテルなどのホスピタリティ業界に加えて、ロジスティクスや病院などユースケースを増やしている。
Brain Corp, Swisslog Healthcare, NESIC, Recruitから調達。
保険
- Rein (Chapel Hill, NC) Venture Round $7.3M
保険会社が、オンラインサービス、モビリティサービス、ドローン、ロボティク向けの利用量ベースの新しい保険商品を開発するのを支援するテクノロジーを提供。
Liberty Mutual, Kiplin, Jason Griswold, Christopher Ellis, Bert Roberts, Steve Rabbitt, Anderson Bellから調達。 - Planck Re (Tel Aviv, Israel) Series A $12M
インターネットや政府のDBなどの公開情報を使ってリスクを抽出し、SMB向けの損害保険の引き受け審査業務を支援する。
Arbor Ventures, Viola Fintech, Eight Roadsから調達。 - Tractable (London, UK) Series B $25M
写真を使って自動車保険や家屋の保険のアセスメントを行う。
Insight Venture Partners, Ignition Partnersから調達。
ヘルスケア
- MedRhythms (Portland, ME) Series A $5M
MedRhythmsプラットフォームは、音楽は脳全体を活性化し、神経学的リハビリテーションに役立つという神経科学と臨床研究に基づくプロダクトを提供。最初は、脳卒中患者のリハビリから開始し、パーキンソン病、多発性硬化症、外傷性脳損傷のリハビリにも適用していく予定。
Werth Family Investment Associates, Werth Family Investment Associates等から調達。
- Steth IO (Bothell, WA) Venture Round $12.4
スマートフォンに取り付けるタイプのスマート聴診器。
投資家は未公表。
- Lumiata (San Mateo, CA) Series B $11M
電子カルテ、ラボテストなどの情報を元に、個人レベルの今後の健康に関するリスクを分析。将来かかる医療費の予想も行う。
Khosla Ventures, BlueCross BlueShield Venture Partners, Sandbox Industries, Intel Capital等から調達。
エンタープライズ
- Automation Anywhere (San Jose, CA) Series A $250M
RPAプラットホーム。
NEA, Goldman Sachs Growth Equity, General Atlantic, World Innovation Labから調達。 - Tamr (Cambridge, MA) Series B $18M
社内に分散しているデータを統合するテクノロジーを提供。
SBI Investment, INTAGE Open Innovation Fund, Samsung Ventures, Fenox Venture Capital, Alumni Ventures Group, GV, NEAから調達。 - Topbox (Potomac, MD) Venture Round $5M
電話、チャット、ソーシャルメディア、プロダクトレビューなど様々な形式のユーザからのフィードバックを解析し、自社の製品を使う上でユーザが不満に思っていることは何か等のインサイトを得る。
Telescope Partners, Cascade Angels, Flyover Capital, Maryland Venture Fundから調達。 - Exiger (New York, NY) Series A $80M
金融機関向けにコンプライアンスソリューションを提供。
Carrick Capitalから調達。
リーガルテック
HR
- MeetFrank (Estonia) Seed $1.1M
匿名で幾つかの質問にチャットで答えることで、求人情報のマッチングを行ってくれるアプリ。
Hummingbird VC, Karma VC, Change Venturesから調達。
セキュリティ
【買収ニュース】
- Facebookが自然言語テクノロジーのBloomsbury AIを買収。
- BoxがインテリジェントサーチエンジンのButter.aiを買収。