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おざけんです。「ブロックチェーン」と「AI」。まさに技術のトレンドであるこの2つの技術が組み合わさったサービスが誕生しようとしています。
渋谷にオフィスを構える「bitgrit」は「AIの価値をブロックチェーンによって民主化する」というビジョンのもとに設立され「ブロックチェーンを用いたデータサイエンティストネットワークやAIのマーケットプレイス」を提供するべく開発を続けています。
今回取材したのは代表の向縄さんです。
目次
AIの価値をブロックチェーンによって民主化する
ーー「AIの民主化」を掲げられていますが、bitgritの目指す社会はどんな社会のことなのでしょうか!?
向縄さん「AIは第三次ブームとなり、一部の大手企業では汎用性の高いAIをクラウドで提供する競争が行われており、導入企業は時間や開発コストを節約することができるようになってきました。これによって企業へのAI導入はさらに広がると予想されます。
ただし、ビジネスの重要な部分をAIが担うということになりますと、それが一部の大手企業に委ねられたまま成立してしまい、結果として、世界的な産業支配が進むのではないかと懸念されています。
bitgritは、オンライン上のデータサイエンティストコミュニケーションを形成し、企業が利用できるAIマーケットプレイスを構築することで、人工知能(AI)の価値や利用の民主化を図ります。
AIにおける信憑性や信頼性を浸透させるには、それらを学習させる目的で開発されたデータにまつわる透明性と監査可能性が必要とされるため、学習用のデータの供給者や、データサイエンティスト、そしてエンドユーザーの間に開放的に協力しあえる仕組みを支えるが必要となります。
これらのことから、bitgritはIoTの時代に生まれるさまざまなデータに対し、AI Networkによる多様な解決方法を提供することで、社会におけるAIの活用機会を増やします。
また、就労機会をオンライン上でグローバルに提供し、データの提供者やデータサイエンティストなどの価値/実力を定量化するとともに、オープンな環境で新しい技術を開発する技術革新のためのコミュニティを形成し、AIがみんなに活用される社会を目指しています。」
ーーブロックチェーンに目をつけたのはなぜですか?
向縄さん「まず、国境などに関係なく本質的に価値をする交換ことができるという点です。
そして非中央集権的ということや、DApps(ダップス:ブロックチェーンを用いた非中央集権的なアプリケーション)などのように自動で契約の執行ができる点も大きいです。」
ーーブロックチェーンというと、かなりホットな話題かなと思うのですが、構想は最近ですか?
向縄さん「実は大もとは2年前からのプロジェクトなんです。
ビットコインやEthereumなど、仮想通貨の本質的な価値とはなんだろう?という興味からはじまり、また技術的なことではDAppsが未来の社会に浸透するという確信がありました。
そこで、いろいろと技術的な研究を行なっていき、AIとの相性の良さも感じて、今の構想に至ったということです。」
bitgritが描くコンペやマーケットプレイスが一体化したプラットフォーム
ーーbitgritは具体的にどんなプラットフォームを描いているのでしょうか!?」
向縄さん「『A Decentralized AI Network Ecosystem』と書いてありますが、先程申し上げた通りbitgritはAIの価値をブロックチェーンによって民主化していくことを目指しています。
具体的には2つの大きな機能を考えています。
1つ目は、強力なコミュニティを形成することです。
我々はオンライン上のプラットフォームでコミュニティを形成しているだけでなく、エリアを選定しながら、その地域でリアルでもコミュニティを形成しています。日本とインドの最先端で活躍するリーダー達を集めたデータサイエンスのフォーラムWorld Data Science Forumなどはその一環です。」
「これにより実際に各国の人々と交流し、コミュニティのメンバーだけでなく、データセットを含め、多方面での協力関係を作っています。
2つ目は、分散型のAI Networkを構築することです。
これはまず、企業へ向けたAIマーケットプレイスを実現させようとするものです。ブロックチェーン技術を組み合わせることによって、企業やデータサイエンティスト、データ提供者などが、仲介なしで動作するトークンエコノミーを実現します。
また、AIのカスタマイズにも対応します。さらに、分散化されたネットワークで弱いAIが連携するAI Networkへの長期的目標をもとに、段階的にエコシステムを構築します」
bitgritが構想するプラットフォームを図にしてみました。
大きなポイントは3つです。
- データサイエンティストのネットワーク(コミュニティやコンペなど)で生成されたAIをP2Pネットワーク上の「AIマーケット」で管理する
- クライアントはエージェント(API)を介して「AIマーケット」上のAIを組み合わせるなどカスタマイズして使用することができる
- クライアントからの報酬は貢献度に合わせてブロックチェーン上の仮想通貨「GRITコイン」がデータサイエンティストやP2Pネットワークのシステムに分配される
さまざまなAIを選んでカスタマイズできるAIマーケットプレイス
まずは、bitgritが開発するプラットフォームの「AIマーケットプレイス」に焦点を当ててみましょう。
ーーAIマーケットプレイスとはどんなプラットフォームなのでしょうか?
向縄さん「我々がやろうと思っているのは、いわゆる大きな汎用AIではなくて、1つ1つの機能に特化したシンプルなAIのアルゴリズムを分散してP2Pネットワーク上に保持するという仕組みです。それを使用用途に合わせ、一人ひとりが利用できるようにしたいと考えています。」
ーーさまざまな状況にどのように対応させるのでしょうか?
向縄さん「汎用的なAIに対して、エージェントを介すことで個別のカスタマイズが可能になることがAIマーケットプレイスの強みです。
これによって、利用者によりそった結果を提供することができます。」
ーーマーケットプレイスについてはいつごろ完成する予定なのでしょうか?
向縄さん「Webサイトにroad mapを載せておりますが、マーケットプレイスは2019年にα、2020年にβを公開する予定です。」
ーーHPを拝見したらAIの価値を定量化すると書かれていましたよね。どのようにAIの価値を定量化するのでしょうか?
向縄さん「GRITコインという仮想通貨を作ろうとしていて、仮想通貨でデータサイエンティストなどに報酬を適切に分配しようとしています。
仮想通貨を用いればマイクロペイメントにも対応でき、少額であっても国境を気にすることなく取引をすることができます。また、自動決済も可能なので迅速にAIの価値を取引できると考えています。」
データサイエンティストが集まるネットワークを構築する
bitgritが取り組むもうプラットフォームのもう一つの側面は、リアルとオンラインの両輪のデータサイエンティストネットワークです。
インドや日本などアジアを起点としたリアルな場でのフォーラム(World Data Science Forum)、企業との接点を構築するためのオンラインのコンペなどを提供し独自のネットワークの構築をおこなっています。
オンラインだけでなくリアルにもフォーカスし、インドや日本で定期的にイベント活動などを行ってネットワークを作り上げているそうです。
ーーデータサイエンティストネットワークは、bitgritの描くプラットフォームの中ではどのような機能を持っているんですか?
向縄さん「Kaggleのようなコンペを作ることで、クライアント企業との接点を設け、できあがったAIモデルをマーケットプレイスで流通できるようにしようと考えています。
それだけではなく、コミュニティの形成や転職につながるジョブボードの設置、クラウドファウンディングによるデータセットの作成などデータサイエンティストのつながりを活かしていこうと思っています。データセットの作成は企業からデータを買い付けたり、欲しいデータをみんなでお金を出し合って買うという仕組みです。」
ーーbitgritが大切にしているリアルなコミュニティですが、インドに注目している理由はなんですか!?
向縄さん「インドは人口が多く、若い国なので、これからの世界をリードしていくと思ってコンタクトをとったことが始まりです。現地に行ってみて、その圧倒的な勢いを感じたことで最初のコミュニティはここにすべきだ、と思いました。また、宗教的問題もあり、カースト制度などが残っているので誰でもチャレンジできるITへの志気が高いです。これは私がやりたいと思っていたエンジニアの支援に直結すると感じたため、インドを拠点としてスタートしています。
さいごに
イベントで向縄さんにお会いしたことをきっかけにbitgritさんのことを知り、取材させていただきました。
ブロックチェーンやAIに関しては優秀な人材が必要です。向縄さんを初め、bitgritのメンバーのみなさんは、リアルコミュニティを重視して各国のイベントなどに参加しています。そのつながりを活かして高度なスタッフを採用してきたことがbitgritさんの強みだと向縄さんがおっしゃっていたことが印象的です。
仮想通貨を報酬にしてAI Networkを構築し、さまざまな事象に対応できるAIをより気軽に使えるようになる。bitgritさんの描く「AIの民主化」はブロックチェーン技術の元でこそ、実現可能なのかもしれません。
これからAI×ブロックチェーンでどのような新しい価値が創出されていくのかワクワクしますね!
bitgritさんでは世界を舞台にチャレンジしたい人を募集しています。グローバルな社風のbitgritさんに興味がある人は、ぜひ話を聞きに行ってみてはいかがでしょうか。
■AI専門メディア AINOW編集長 ■カメラマン ■Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ■AINOWのTwitterもぜひ! @ainow_AI ┃
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