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スマートフォンの売上実績を大きく伸ばし、今となっては世界的な注目を浴びるようになったファーウェイ。しかし、AI戦略を策定し、法人向けにインテリジェントコンピューティングやデータセンターに力を入れていることを知っていましたか?
東京 大手町に位置するファーウェイ・ジャパン。ファーウェイは日本では特にtoB事業に特化して、AIのプラットフォーム全体を提供すべく、膨大な費用をかけて日々研究開発にあたっています。
ファーウェイ・ジャパンが4月3日から開催予定の第3回 AI・人工知能EXPOに初めて出展するということで、今後の日本でのAIソリューションの展開について詳しくお話を伺ってきました。
インタビューさせていただいたのは。インテリジェントコンピューティング事業本部 本部長の鞏建農(ゴン ジェンノン)さんと、インテリジェントコンピューティング製品ポートフォリオ&ライフサイクル管理部でマーケティング専門家の羅瑋韜(ロ ウェートゥ)さんです。
ファーウェイ・ジャパンの描く未来
ファーウェイ・ジャパンがAI戦略に力を入れる背景や、描いているビジョンを伺いました。
ファーウェイ・ジャパンの社内方針
ーーインテリジェントコンピューティングに力を入れている背景はどこにありますか?
ーー鞏建農さん
社内の方針としてAIがより注目されるようになりました。2018年10月HUAWEI CONNECTという上海で行われる最大級の展示会でファーウェイはAI戦略を発表しました。具体的には、チップセット・プロダクト・ソリューション・AIのエコシステム全体の方針についてです。
現在の会長である徐直軍は基調講演で、「ファーウェイのフルスタックのAIポートフォリオがあらゆる産業でのAI活用を加速し、広範囲にわたってインテリジェンスを提供することで、すべてがつながったインテリジェントな世界を実現する」というビジョンを共有しました。
参照:https://www.huawei.com/jp/press-events/news/jp/2018/HWJP20181012CこれはAI業界で発展がみられること、顧客のニーズに変化に応じる形でのAI戦略の発表とも言えます。
実はインテリジェントコンピューティング事業自体は10年ほど前からありました。しかし、それまではサーバー部門という扱いでした。名称を変え、AIとしてのブランディングを強めています。
ーー製品に具体的な変化はありますか
ーー鞏建農さん
通信業界やISP業界、法人向けにサーバーを提供してきました。それはインテルのCPU x86によるサーバーだけでした。
これまではオンプレミスなデータセンターや、大規模なクラウドが求められていました。しかし、これからのインテリジェントな世界では、今までのサーバーだけを提供していては対応できません。
今日では自動運転・IoT・VR、AIなどがホットな話題です。全てが繋がっていてインテリジェントな世界になります。
AIのコンピューティングに関わるところはニーズに比べて能力的な不足や高価な値段が問題です。これまでのx86では高い性能と低消費電力の両立が難しいです。
一つの解決策として、コンピューティングはエッジに近づいてくべきだと考えており、ヘテロジニアスな構成が必要でしょう。
そこで弊社としては、サーバーの提供からコンピューティングそのものの提供へとシフトしていきます。
インテリジェントなエッジと端末の実現
ーーインテリジェントな世界とはどのようなものですか?
ーー鞏建農さん
弊社の大きなビジョンとして「全ての生活者・家庭・組織にデジタル化した価値を提供し、完全に繋がったインテリジェントな世界を創造していく」と掲げています。
社会にはたくさんの端末があります。自動運転の車・情報を分析するステーション・駅のカメラ・ロボットアーム等も端末です。これらの、さまざまな端末にAIのコンピューティング能力を持たせていきたいです。
インテリジェンス化していないものに、弊社のハードウェア製品を加えます。駅の混雑度を見ることや、線路に人が落ちていないかなどの判断ができるようになります。
日本でも自動化のニーズは高まっています。それをよりインテリジェンスにしていく。よって人の手がかかる部分を減らしていくことができます。
それがインテリジェントな世界のビジョンです。
ーーそこで、ファーウェイが果たす役割はどこにありますか?
ーー鞏建農さん
日本ではハードウェアに専念していきます。エンドtoエンドのソリューションや自動運転そのものは、パートナーと一緒に協力してお客様に提供していく予定です。
チップとそれに対応したハードウェア、OS、SDKをまとめて提供していきます。オープンなハードウェアのプラットフォーム、あるいはエコシステムを弊社が受け持ちます。
顧客にシンプルなものを残して、サービスに専念していただく。複雑なものをファーウェイが引き受ける。このようにイメージしていただくと分かりやすいです。
ファーウェイ・ジャパンの強み
ーー具体的にはどのような製品を開発されていますか?
ーー羅瑋韜さん
x86でないものとしては、ARMサーバーを中心に自社開発しています。例えばスマートフォンのプロセッサーなどは、ARMネイティブなものが多くなっています。そこで端末とクラウドを繋ぐコンピューティングの部分を提供していきたいです。
例えばAIにおけるチップセットでは、Ascend310推論チップは、消費電力わずか8Wながら16TOPSの8ビット整数演算能力と8TFLOPSの16ビット浮動小数点演算能力を有しており、1ワット当たりの性能は2TOPSに達します。これは業界をリードするものであり、データセンターおよびエッジ側それぞれにおいてAI推論による演算能力へのニーズを満たすものです。
ARMベースのものは、特定の条件に特化しています。しかし、エコシステムとしては、x86ベースのものには及ばない点もございます。そのため、x86ベースのものも引き続き提供していきます。
また、アトラスシリーズも提供しています。こちらは、データセンターから内側にいたるまでどこでも使用可能なAIのコンピューティングにおけるプラットフォームだと思ってください。
ーーファーウェイの強みはどこにありますか?
ーー羅瑋韜さん
データセンターから、エッジ。もっと言えば端末にいたるまでエンドtoエンドのソリューションを提供できることが強みです。
AIのコンピューティングの性能は、これから数百倍から数千倍が要求されます。そこで、アルゴリズム側でのイノベーションが求められています。この点に関してもファーウェイは自信があります。
これからの事業のポイントは2つです。
1つ目は、新しいアキテクチャをベースとしたハード・チップセット・コンピューティングのプラットフォームを提供すること。
2つ目は、より軽量級でパフォーマンスの高いアルゴリズム・モデリングの仕方等、数学的な問題に取り組むこと。
この2点で業界全体に貢献したいと思っています。
ファーウェイと日本企業との関り方
ーー日本の企業とはどのような関り方をしていきたいですか?
ーー羅瑋韜さん
ファーウェイとしては、日本の品質や信頼性が高い部品をファーウェイのパーツとして組み込んでいきたいと考えています。それは、ファーウェイにとっての高品質や競争力に繋がります。一方で日本の企業は、製品をファーウェイを通してプロダクトやソリューションとして世界中に広げていくことができます。
最終的なエンドユーザーへの提供も、パートナー様と一緒に発展を目指して、win-winな形で協力していきたいです。
実際の購買額としては、4,750億円。2018年は6,000億前後になっています。2019年はより早いペースで進んでいくでしょう。
AI EXPOに向けて
ーーこの度初めてAI EXPOに出展されるとのことですが、どんな内容になりますか?
ーー鞏建農さん
Atlasインテリジェントコンピューティングプラットフォームを中心に、さまざまなコンピューティング要件に対応するためのチップセットからシステムまでの研究開発成果や、データセンターからエッジ製品に至るまで、ファーウェイのAI向けハードウェアプラットフォーム、製品ポートフォリオをご紹介いたします。
来ていただきたい層は3つです。
まず、顧客となるお客様。特にAIの製品や技術に関わるユーザーですね。次に、AIのエコシステムに関わるパートナー様。そして、AIに関わる団体や、研究機関の方です。
みなさんのご来場をお待ちしています。
最後に
初出店のファーウェイ・ジャパンだけでなく、今年のAI・人工知能EXPOは250もの会社が出展する大規模なイベントです。
国内だけでなく、世界からAI企業が集まる展示会なので、ぜひ足を運んでみてください。