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最近話題のスマート農業とはどのようなものでしょうか?
スマート農業とはロボットやICT技術を利用した農業のことです。
深刻な人手不足を解消するために農業でAIを活用しようという取り組みが広がっています。
農業にAIを活用すれば、大変な農作業はロボットにお任せ!という未来も実現できるかもしれません。
そこで今回は、AI×農業の新しい取り組みに関してご紹介していこうと思います。
農業にAIを取り入れる理由
農業従事者の平均年齢は67歳
農業は肉体労働や体力を使う作業が多いため、若い人でないとなかなか続けていくのが大変な仕事だと言えます。しかし、農業は従事者の平均年齢が67歳と他の業界に比べて高齢化が深刻なのが特徴です
そのため、このままだと農業に携わる人材が減少してしまい、国内の農業の衰退が進んでいます。
後継者不足も深刻化
高齢化と並んで農業を脅かしている課題が後継者不足です。
若い人材が都市部へ流出し、農家を継ぐ人が少なくなっています。
農家の後継者がいなくなってしまうと既存の農家は廃業せざるを得なくなり、結果として将来の農業生産高の減少に繋がります。
優れた技術も継承困難に
農業は日本に古くから伝わる産業であるだけに、勘と経験から形成される優れた技術が存在することも事実です。そして、そのようなノウハウが日本の農産物の高い品質を支えている面もあります。
しかし、後継者不足により農家が廃業してしまうとそのようなノウハウの継承が困難になります。その結果として、国産農産物の質の低下に繋がります。
農業は「食」という私たちの生活の根幹を支える産業であり、農業が衰退すれば海外から輸入する食料への依存度を更に高めることになります。
そのため、農業が抱える諸問題にいかに取り組むかが今後の日本の生活を左右する大きな鍵となります。
スマート農業とは
農業にAIを活用する
スマート農業とは「ロボットやICT技術を利用した農業」のことです。スマート農業の中でAIはどのように活用されているのでしょうか。
農業では、雨や風、気温の変化などさまざまな環境の変化や作物の生育状況に対応する必要があります。これまでは、その対応を熟練者の経験に頼っていました。
しかし、現在では人手不足や高齢化により経験に頼ることが難しくなってきています。
そこで、AIがセンサからの情報やビッグデータを活用して対応を最適化する、という取り組みが進んでいます。
IoTの台頭もスマート農業を後押し
近年話題になっているIoTもスマート農業の発展を後押ししています。
例えば、AIで生育スピードや味をコントロールした野菜を栽培するPlentyはハウス内のあらゆるデータをセンサーで集めて分析し、95%の節水と無農薬、最大約350倍の収穫性を実現しています。
農業で大切なのは気温や葉色といった現場からの情報です。
IoTにより農業現場のあらゆる場所にセンサーやカメラが取り付けられるようになれば、そういった現場からのデータが集まりやすくなるのではないでしょうか。
そして、IoTで収集したデータをAIが分析し農作物にとって最適な選択を行えるようになればスマート農業にとっても大きな後押しとなります。
農業にAIを導入するメリット
農業にAIを導入するメリットは以下のようなものがあります。
- 人手不足の解消
- 農作業の効率化
- データを活用した生産の最適化
これから詳しく解説していきます。
人手不足の解消
先ほど述べた通り、農業では人手不足が深刻です。
しかし、AIを搭載したロボットを利用すればあらゆる農作業が自動化できます。
農作業が自動化されれば、これまでと比べてより少ない人数でも十分に農業ができることになります。
また、大変な農作業が自動化されることで農業に新規参入する人が増える効果も期待できます。
熟練の技術を必要としていた作業もAIが担ってくれる事で新規参入のハードルが低くなるというメリットもあります。
農作業の効率化
今までは、一般的なオフィスワーカーに比べて農業従事者は長時間労働する必要がありました。一般的なオフィスワーカーの労働時間は約1700時間、農業従事者の労働時間は2500時間を超えています。
農業にAIを活用することにより、農作業を自動化するとともに効率化できます。
農家の人が自ら農地を回って得ていた作物の生育状況などをセンサで収集し、AIが最も適切な水やりの量や収穫時期を判断します。
このようにして農業にAIを活用して農家の人の負担を減らすことができます。
データを活用した生産の最適化
AIはセンサからの情報やビッグデータを活用して適切な作物の管理方法を判断します。
後継者不足で継承が困難になっていた優れた知識や技術もAIが受け継ぐことができるようになりました。
AIを活用して水やりから収穫に至るまで最適な方法で作物を管理すれば、収量や品質の向上が見込めます。
さらに、これまで熟練した技術者だけが持っていた勘やノウハウを誰でも共有できるようになったことも大きなメリットと言えるでしょう。
農業にAIを導入するデメリット
農業にAIを導入するデメリットは以下のようなものがあります。
- 導入コストが高い
- AIを活用できる技術者がいない
これから詳しく解説していきます。
導入コストが高い
農家がAIを導入する上で一番大きな課題となるのが導入コストの高さです。
AIを搭載した農作業ロボットには高価な物が多く、初期費用を用意するのが難しいです。
しかし、国や自治体がスマート農業を推進するために用意した助成金を活用して初期費用を抑えられます。
例えば、ドローンや自動走行のロボット農機を導入するための助成金やデータを活用して土壌を整備するための助成金などがあります。
また、近隣の農家とシェアリングして初期費用やランニングコストを抑えようという取り組みも進んでいます。
AIを活用できる技術者がいない
AIを導入して農業を進めるには高度なITリテラシーが必要です。
AIを導入する農業従事者は最先端の機器を使いこなせる必要があります。
最先端の機器を扱うことになる農業従事者へのサポートを提供する人材も必要になってきます。
このようにAI導入を進める上で、人材育成が大きな課題となっています。
農業で活躍するAIまとめ
実際に農業で活躍しているAIには以下のようなものがあります。
- 農薬散布ドローン「オプティム」
- 植物の育成状況を把握する「いろは」
- 自動運転のトラクター「アグリロボトラクタ」
- AIが育成環境を自動管理「クレバアグリ」
- 温室を見守る「みどりクラウド」
- 作物の病気をAIで予測「Plantect」
- 人の手要らずで収穫「inaho」
- トマトの収穫時期を見極める「Happy quality」
- 農作業のデータを提供「Farmlogs flow」
これから詳しく解説していきます。
農薬散布ドローン「オプティム」
農薬の散布を自動で行うドローンです。
自動航行で畑の上を飛び回り、画像認識で害虫を特定すると舞い降りて農薬を吹きかけます。
必要な所に必要な分だけ農薬を使うため、環境にも人の体にも優しいのが特徴です。
植物の育成状況を把握する「いろは」
ドローンで畑の上から作物を撮影し、葉の色を画像認識で分析することで作物の育成状況を分析します。
分析した結果から、作物の収穫量を予測したり、除草剤を散布したりします。
広い畑を人が巡回して状況を細かく把握するには多大な時間を要します。
ドローンで作業を自動化できれば農家にとって、大幅な業務負担の削減になります。
自動運転のトラクター「アグリロボトラクタ」
クボタによって開発された自動運転のトラクターです。
高齢化に伴う離農や委託によって農地が広大化していることをうけて開発されました。
短時間で農作業を効率よく、かつ正確にこなすことができます。
人の力だけでは重労働である耕耘を自動化できるという点で農家には嬉しい製品です。
AIが育成環境を自動管理「クレバアグリ」
気温や湿度、CO2といったデータを収集してクラウド基盤上で分析し、日照量や水分量などを自動制御します。
システム管理には「Alibaba Cloud」が使われ、大量の観測データがクラウド上にどんどん蓄積され機械学習の制度が向上します、
温室を見守る「みどりクラウド」
気温や湿度、CO2濃度から土壌水分までハウス内のありとあらゆる状態が一目で確認できる温室内環境遠隔モニタリングシステムです。
また、AIによるデータ分析で収穫時期予測や病害虫発生原因の推定、収量予測精度の向上といった新サービスが導入される予定です。
作物の病気をAIで予測「Plantect」
Boschによって開発された病害予測に特化した温室内環境遠隔モニタリングシステムです。
ハウス内に設置されたセンサーなどのIoTを駆使して環境データを計測し、病気の感染リスクを92%の確率で予測します。
作物の病気は農家にとって日々の生活に関わる大きな脅威です。病気の発生を予測し前もって対策を打てるようになれば、大変助かるのではないでしょうか。
人の手要らずで収穫「inaho」
作物を自動で収穫するロボットです。
画像認識技術で収穫に最適な時期の作物を選択肢、収穫対象をcm単位で設定できるロボットアームで収穫します。
.初期費用とメンテナンス費用が完全無料で収穫高に応じて利用料を支払うので初期投資のリスクがありません。
1回2時間の充電で最大6時間連続稼働し、ハウス間の移動や夜間の稼働も可能なため、収穫作業の負担が大きく減少します。
トマトの収穫時期を見極める「Happy quality」
農業AI技術を用いた製品開発を行っているhappy qualityと静岡大学の共同研究ではAIを利用して高糖度トマトの栽培に成功しました。
トマトは適度な水ストレスがあると糖度が高くなる傾向があります。
この研究では、水ストレスの度合いが茎径から予測できると仮定し、トマトの画像や温度・湿度から茎径の変化を予測するAIを開発しました。
このAIを用いて与える水分量を調節し、高糖度トマトを大量かつ安定的に生産できるようになりました。
農作業のデータを提供「Farmlogs flow」
farmslogではビッグデータやリアルタイムの環境データを利用して、AIが農作業の管理や生産量の調整をしてくれるサービスを提供しています。
実際の農作業を記録して生産にかかるコストを計算してくれる機能や農業のマーケティングまで担当してくれる機能も備わっており、アメリカの農家の約1/3ほどが利用しています。
まとめ
高齢化や人手不足、後継者不足などあらゆる問題を抱える日本の農業を助けるために1つの鍵となるのがAIです。
今まで人が担っていた作業の大部分を精度の高いAIで代替できるようになれば、業務負担を大幅に削減できるようになります。
また、農業にAIが活用できるようになれば、人件費といったコストの削減に繋がります。そのため、今までよりも低い価格で農産物を販売できるようになるので消費者としても嬉しいことだらけです。
スマート農業は日々進歩しています。
将来的には農作業はほとんどすべてをAIが担うようになっているのではないでしょうか。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。