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ディップ株式会社にてクリエイティブ統括部に所属し、RPA専門組織「制作RPA推進課」を作るなど組織をあげてRPAに取り組んでいる小久保 江里さんにお話を伺いました。具体的にどのような取り組みをしているのかインタビューしてきました。
13の業務を3つのRPAツールで自動化
ー普段どのようなお仕事をされていますか?
統括部のKPI設計やデータ集計・分析、システム開発絡みのプロジェクトなど色々とやっています。 同時に組織内のRPA推進部隊でもあるので、組織内の生産性に影響しそうな業務や日常的な繰り返し業務をツールに置き換えるような取り組みをしています。
ーRPAに関わったきっかけは何だったのでしょうか?
組織内にはBPR(Business Process Re-engineering = 業務改革)を推進する部署があり、もともと原稿制作における業務効率の改善には取り組んでいました。ここですでにVBAやExcelを活用したツールはたくさんあったのですが、2017年から世間的にもRPAが注目されはじめ、この頃からツールの導入を検討することになりました。
ーディップではいくつかのRPAツールが使われていますが、クリエイティブ統括部ではどのようなツールを利用しているのでしょうか。
RPAツールでは、①RocketMouse、②RoboticCrowd、③BizteX cobitの3種です。
使い分けの考え方としては、
①RocketMouse:社内システムを経由する作業でクラウド型ロボットが入り込めない業務。いまは主に自社サービスのレポート出力関連業務です。
②RoboticCrowd:web上完結の業務で、作業頻度が高い業務(毎日、週次などの業務)主に原稿制作に用いるweb上の情報取得業務です。
③BizteXcobit:web上完結の業務で、突発的に発生する業務/メンバー個人がパッとロボットにできる業務。こちらも主にweb上の情報取得業務です。
また、この他にWindowsのコマンドプロンプトやGoogleAppScriptを活用した改善ツールも試作し、運用を試したりしています。
ークリエイティブ統括部では現在多くのロボットが稼働していると聞きましたが、主にどのような業務をRPA化していますか?
①RocketMouse:8~10
②RoboticCrowd:5~6
③BizteXcobit:3~4
で、合計したら常時使っているロボットの数はだいたい15ちょっとです。
主に利用しているのは、原稿制作に必要なWeb上の情報を取得するロボットで、これにはRoboticCrowdを利用しています。が、単発やイレギュラーで動かすものはBizteXcobitでちゃちゃっと作って実行してしまうこともあります。
これはある程度、目的や利用する人に合わせて使い分けている側面があります。
新たな価値をRPAが生み出してくれた
ーRPA化したことによってどのような事が変わりましたか?
これまでweb上から業務に必要な情報を取得しようと思うと数百~数千単位の情報を手動で取得してくる必要があり、とても実現できませんでした。
それがRPAツールの導入によってかんたんに行うことができるようになり、ロボットだからできる新たな価値の創出になっていると思います。
もし人の手で実施した場合、時間にすると1回あたり4~10時間ほどかかる計算になるので、これをロボットが代行してくれるのはとても助かっています。
ーRPAというと、業務時間の削減や業務効率化がよく取り上げられますが、”人の手ではできなかった業務ができるようになる”というのも大きなメリットですよね。
はい、もちろん業務時間の削減を実現しているロボットもありますが、手動では時間的制約で取り組めない作業がロボットによって実施できたことは非常に有用だと考えています。
日々、原稿制作の効果・効率向上を図る組織の中でRPAで新たに得たデータを業務に活用してもらえているということが私自身の励みにもなっています。
ーRPAを導入してよかったことを教えてください。
1つは、時間の制約なくロボットに作業を代行してもらえることです。業務時間に関わらず動かせる、というのがいいところですね。朝出社したらデータの出力が完了するよう、夜中に動かすこともできますし、自分の業務と並行して作業を実行できるのも効率が高くて魅力的です。
もう1つのメリットは、業務整理をすることで既存の業務を可視化したり、周囲の人の業務を詳しく知ることができることです。RPAツールを利用するには、他人の業務をある程度理解・整理してロボットに任せることが必要です。
当たり前になってしまっている業務を見直したり、普段誰がどんな業務をしているのか、知るきっかけにもなると思います。
自動化の前に業務フローの整理や見直しが必要だった
ーでは逆に、RPAの導入で大変だったことはありますか?
「誰でも簡単に自分の作業ロボットをじゃんじゃんつくろう」というのが実はとても大変です。人によって自動化のイメージが全然つかなかったり、ツールが複雑で使いにくいと感じていたり。ルールを決めないとツールも環境もゴチャゴチャしたり。
ツールだけを渡して「はい、自動化どうぞ」というわけには当然いかないですね。
ー実際にRPAを導入してイメージと違ったところはありましたか?
導入前はロボットでガンガン自動化!と夢見ていたものの、現状では要望でもらう業務の50%くらいの実現度になっている点です。
理由のひとつは前提に業務フローの整理や見直しが必要で時間がかかること。 また、社内システム経由でのツール活用が制限されたり、ツールの操作性・網羅性がもっと高ければ現場も受け入れやすく、もっともっと普及しやすいだろうなとは思います。
ツール利用にはコストもかかるので、ツールごとの特色に合わせて使い分けをしている分、コストに見合った効果が得られているかどうかのジャッジも難しいとことがあります。ここはさらにロボットの利用者を増やしたり、対象の業務を増やすことで効果を上げていきたい部分です。
周囲でも、効率化の手段にRPAという発想がうまれた
ー小久保さんは統括部のRPA推進とともに、ご自身でもロボットを作成されているそうですが、実際ロボットを作ってみた感想を教えてください。
RPAツールによって難易度はそれぞれで、自分でできるもの・できないものもありますが、正攻法でうまくいかないときも「こうしたらどうだろう?」と回避方法を考えてロボットをうまく利用できたときは爽快です。そういうアイデアもRPA要素のひとつなんだろうと思います。
ー部署の推進役として、やりがいを感じるのはどのようなところですか?
最近「この業務ロボットならできますか?」という相談を少しずつもらえるようになってきました。自分で作るまではいかなくても、「効率化したい。ロボットならどうだろう?」という発想にRPAが登場してきていることがうれしいです。
ー今後の展望を教えてください。
現状では、単純に自分が作ったロボットが人の業務の役に立っている、というのが純粋に喜びに直結しています。まだ使いこなせない部分もありますが、その分、手つかずのRPA領域もあると感じるのでこれからどんどんチャレンジしたいです。
また世にあるしくみや誰でも使えるPCの機能を使って新たな改善案を考えるメンバーもたくさんいますし、そうやってチャレンジする人を増やしていき、業務フローが適切に見直される、いいサイクルが生まれる状態を作りたいです。
その結果、組織のメンバーが人間にしかできない業務の時間をどんどん増やすことによって、統括部の事業貢献度向上に寄与していくことが目標です。
AINOWを運営しているディップでもRPAサービスを提供しています。
数時間かかるオフィス業務を数分で処理!ディップの「FAST RPAコボット」は、業務自動化の豊富なテンプレートを事前に用意。
さまざまな業界の業務自動化を実現します。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。