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2017.05.09

ディープラーニング専用チップを開発するスタートアップが目指す世界とは?

最終更新日:

こんにちは、AINOW編集長の亀田です。
本日は、日本では唯一ディープラーニングの省電力化で注目を浴びているLeapMind社へ遊びに行ってきました。
LeapMindはGPUを含む高い処理能力や大容量メモリーを前提としたこれまでの深層学習と違い、小さなチップ内で精度を落とさずに必要となる計算リソースを減らすことに取り組むスタートアップです。

この技術は本当に注目ですよ!
最近は下記のようなイベント等でも登壇実績多数、大変注目されておりますね。

経済誌『Forbes Japan』 2017年1月号の「世界が注目!期待のスタートアップ日本の50社」
http://forbesjapan.com/magazines/detail/59

The Deep Learning Market Map: 60+ Startups Working Across E-Commerce, Cybersecurity, Sales, And More
https://www.cbinsights.com/blog/deep-learning-ai-startups-market-map-company-list/

AIでビジネスのカンブリア大爆発を起こすLeapMindの野望
http://www.newsweekjapan.jp/yukawa/2016/11/aileapmind_1.php

低消費電力の深層学習で新分野開拓、日本のLeapMindがシリーズAで3.4億円の資金調達
http://jp.techcrunch.com/2016/08/24/leapmind-raises-340m-yen/

LeapMind、ディープラーニングチップ向け開発環境「Blackstar SDK」を8月から提供開始

プレスリリースはコチラ

そして、先週4月20日には、エッジコンピューティング向けディープラーニング開発環境「Blackstar(ブラックスター)SDK」の提供開始日が告知されました。今回は「Blackstar(ブラックスター)SDK」の開発背景と今後の展開をインタビューしておりますので、お楽しみください!

ディープラーニングを身近で使えるレベルに落とし込む為のチップ開発

亀田

数年前までは、家電やドローン、監視カメラといったハードにディープラーニングを実装する事業をされているイメージでしたが、省電力化にシフトした背景・きっかけはあるのですか?

松田さん

確かに、2年位前までは、受託とアルゴリズム研究をメインにしていました。お話をいただく中でアプリケーションとインターフェースとなるハードの仕様が異なり、取得できるデータがバラバラであることに気付きました。そこで、研究開発したアルゴリズムを活用するには、ハードに組み込むチップを自ら開発して、この中でディープラーニングを実装できたらと思いました。このチップをバラ撒くことが出来れば、活用範囲も広がり、ディープラーニング活用のプラットフォームが構築できると思い、省電力化に取り組んでいます。

ディープラーニングの省電力化とは、どんな工夫をしているのか?

亀田

ディープラーニングは、大量のコンピューティングリソースが必須だと思いますが、本当に省電力化出来るのですか?

松田さん

海外の論文にヒントがあるのですが、独自で研究して実装を試みていますよ。その為に、海外出身の優秀なリサーチャーを採用しています。

松田さん

解決すべき問題としてはハードとソフトの2種類があります。
現状のGPUなどはパワフルではあるが、消費電力やコストが高く、身近で使えるというレベルに落とし込むことは難しい。そこで弊社ではFPGAに目をつけました。固定小数点演算が扱えて、GPUやCPUに比べて消費電力を抑えられることがその理由です。これによって、GPUより省電力で高速な処理が可能になると考えています。現在はFPGAをアクセラレータとし、CPUと連携させることで、複雑なディープラーニングの行列計算を効率よく計算させることに成功しています。

松田さん

またFPGA上に合成するために、ソフトウェアの部分ではモデル自体の精度向上と同時に、計算量を圧縮し小さな計算環境でもディープラーニングの威力を最大限発揮させる独自アルゴリズムの研究を行っています。
具体的な手法を1つ挙げると、float 32bitで表現されるものを、二値化し0と1だけで表現できるようにしたり、ということを行っています。XNOR-Netとか有名です。

図:Blackstar(チップ)環境

亀田

ちなみに学習もチップ側で行っているのですか?

松田さん

いえ、今はチップでは演算処理、クラウド側で学習する仕組みをです。将来的にはチップ側で学習もできるようにしていきたいと考えています。

専用のチップで実現する未来の生活はどうなる?

亀田

ディープラーニングが身近な家電やIotデバイスで可能になるということは、今まで実現不可能だった事も可能になり、大イノベーションが起きますよね?

松田さん

その通りですね。僕らが開発している「Blackstarは、当時PCが普及した際のIntelのポジションになると思っています。どういう事かというと、IBMのPCハードとMicrosoftのWindowsがあっただけではダメで、Intelのチップがあったからこそ、演算処理性能が向上して現在まで普及したのだと考えています。

「Blackstar」が生活に溶け込んでくると、今までは不可能だったこんなことも可能になりそう。
例えば、冷蔵庫に「Blackstar」搭載した場合、冷蔵庫の中身を画像認識することで、残りの食材で作れる料理のレシピを提案してくれたり、常備しておきたい食材や調味料がなくなった時にAIが購入してくれるといったことも可能になりそうですね。
生活シーンの中でも重要な、テレビに搭載されると顔認識や感情認識、家族構成も把握できるようになり、番組の提案だけでなく、様々なマーケティングにデータが活用になりそう。

誰もがディープラーニングを使えるプラットフォームの登場

亀田

ディープラーニング技術のオーダーメイドで開発、さらにチップというパッケージを展開してきていますが、この先の目指す姿はどのような事業モデルになるのでしょうか?

松田さん

この先のロードマップに考えているのは、誰もが簡単にディープラーニング技術を使うことができるプラットフォーム構想です。現在は「JUIZ APP STORE」というサービスで世界中の企業や個人が開発したディープラーニングアプリケーションを販売できる仕組みを考えています。

「JUIZ APP STORE」とは?

身の回りのあらゆるデバイスを一元管理するためのプラットフォーム。 IoT時代に突入し、あふれるアプリケーション、複雑につながりあうデバイスの数々を、一つのプラットフォーム上で管理することができる。ディープラーニング専用チップの「Blackstar」を用いることでJUIZに登録されたデバイスにディープラーニングを行わせることができる。

自社でオーダーメイド開発を進める一方、JUIZプラットフォームの企業利用による2つでマネタイズを展開していくとのこと。専門領域で活躍する企業を巻き込み、ディープラーニングの実生活利用の促進を図っていきたいそう。

LeapMindは異文化交流が盛んなこんなオフィス

最後にオフィス見学をさせていただきましたよ。
社内には外国人リサーチャーの方が多く働いており、技術力の高さを実感しました。
そして、足元には組み立て中のディープラーニング専用のGPUサーバーも。

最新技術に関する勉強会も実施されていました。
こんなに魅力的なLeapMindでは、各職種で人材募集中とのこと。

気になる職種があったら、こちらからお問い合わせください。

まとめ

「Blackstar(ブラックスター)SDK」のリリースが待ち遠しいLeapMind社ですが、お話を伺っていると、益々ディープラーニングが身近になる実感が湧いてきました。まだ、特定の分野でしか活用されていないディープラーニングですが、チップのリリースに伴い、身近な家電でもディープラーニングが利用できると世界が変わる期待でワクワクしてきます。引き続き、新しい情報がリリースされたら記事にしていきますので、今後の動向に注目ください!

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