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2017.12.09

AIと就活生(東洋大学 横地陸氏)

最終更新日:

この記事は2017年 アドベントカレンダー企画「AIの未来予測」の記事です。寄稿してくださったのは東洋大学の横地陸さんです。

この記事では、自分も含めた就活生とAIについての関係について書いていく。

就活生はどのようにAIと向き合い、どのような認識をしているのか。同じ就活生としての立場として見てきたこと、感じたことをお伝えしようと思う。

先に断っておくが、私は特にずば抜けてAIのリテラシーがあるわけでもなく、パイソンという言語を最近まで蛇の方しか知らなかったレベルである。そんなしがない就活生の目線で書いているものだという認識で読み進めていただければと思う。

この記事は大きく分けて二つの章で、私が現在就活生に思うことの ①悲観的に見すぎている、②無理して使っているという2点に分けて論じて行く。

①悲観的に見すぎている

 まず自分も含めた就活生に思うことは、「AIを悲観的に見すぎている」ということである。ではなぜ、悲観的な就活生が多いのであろうか。原因の一つは、会社説明会やインターンの内容にあると思う。

 私は2017年に入ってから、「就活」ということを意識し始め、大学3年生でも参加可能な企業説明会やインターンなどに参加をしてきた。そこで思ったことは、まず就活生に入ってくるAIに関する情報は、「シンギュラリティ」や、「職が奪われる」などといったネガティブなものが多く、マインドはマークザッカーバーグやスティーブ・ジョブスに寄せておかなければこれからの時代生きていくことはできないというニュアンスの内容の会社説明が多いということだ。私はこれが、AIを悲観的に見すぎている就活生を生み出す原因の一つでないかと思う。

もちろん説明の内容は素晴らしいものであるし、悲観説から就活を始めるのが一概に悪いとは言えない。しかし就活とは本来、「これから明るい未来を送るためへの準備」であるべきではないであろうか。それがAIなどの情報を得て、「AIに負けないためへの生存戦略」となってしまっているのは少しもったいない気もしてしまう。そしてさらに勝手にAIが普及する未来を想像し、恐怖心を払拭するようにOBOG訪問や、インターンを行なっている就活生が多い印象も受ける。

 しかし私が長期インターンの経験を通して思ったのは、AIを使っているのはあくまでも仕事効率化の手段であり、まだまだアナログなところは多いということ。

「当たり前じゃん」と思う社会人の方もいるかもしれないが、まだ社会人になっていない準備期間である就活生は外部からの情報だけを頼りにAIへの考えを巡らすしかないのが事実だ。

 もちろんAIを悲観説から入る就活生が悪いという訳ではなく、AIのことすら知らずに遊び呆けている大学生とは雲泥の差がある。しかし注目して欲しいのは、悲観説の比重が楽観説と比べて著しく大きいということである。

おそらく、私を含めた多くの就活生は、AIあまり知らないというのが本音ではないであろうか。それなら知らないなりに、いい意味であまり考えずに、ある程度は思い込みでいいので未来を豊かにしてくれるものだと楽観的に捉えた方が、精神的に余裕を持って就活に臨めるのではないかと思ってしまう。

そうでないと、勝手な未来への恐怖で極端な考えになり、就活のパフォーマンスに影響が出るような気がしてならない。事実として、事業創出のインターンなどで不思議な事業案を出す人を自分も含めて今まで何人も見てきた。その内容を次で書きたいと思う。

②無理して使っている

先日参加した新規事業創出のインターンで、「地方創生」を軸にアイディアを出している学生がいた。最後のプレゼンで発表した内容は、「地方にある名物にスマホを当ててARで何かを出して」というものであった。その話を聞いて社会人の方は、「本当に地方創生のソリューションにAR使うのが最適?」と聞いたところその学生は、「あった方がいいかなと思うのですが、よく考えたら必要ないです。」なんていうやりとりをしていた。

そして私も同じようなことをしたことがある。「日本で売れるワイン」というテーマの時にグループ内に、「ワインのラベルをVRで見て、そのワインをクラウドファンディングでマーケティング」という提案をしたところ、グループのメンバーはキョトン顔で、社会人の方に「本当に途中でVRとクラウドファンディングを入れないといけない?」と言われた時に、自分の未熟さを痛感し、とりあえず AI関連の「何か」を事業に組み込ませないといけないという勝手なルールを追加していたことにも気がついた。

ではなぜ、私はこのように新規事業に強引にAIを組み込ませなければと思っていたのだろうか?答えとして考えられるのは、やはり第1章で述べたような、AIに淘汰されるというネガティブな未来に負けないようにという気持ちがあったというのと、AIをビジネスモデルに組み込ませておけば、なんとなく社会人の頭に近づいた気になり、多くの課題を解決してくれるというマジカルワードのように捉えていたからであろう。

社会人にもなっていないのに偉そうな表現になるが、私はビジネスをかなり簡単に言うと、誰かの課題を解決し、利益を上げるものだと思っている。そして私だけではなく、ここまでは理解している就活生がほとんどである。しかしその課題解決の手段として本当にAIを組み込ませないといけないかどうかということまで考えている就活生は少なく、その結果無理やりAIに関わった何かを組み込ませたアイディアになってしまっているのだ。

もちろん、これから第4次産業革命と言われる時代に置いていかれないように、AIの活用を試みることは悪いことではない。しかし、私も含めたAIの知識が表面上である学生が、解決手段を全てAIに委ねるような発想を持ち、本来の課題解決やビジネスをなおざりにしてしまうのは少し残念な気もする。

おわりに

繰り返すが、私自身もAIの知識は少なく、今回書かせていただいた内容は他人事ではなく、まぎれもない自分の失敗談でもある。

そして多くの就活生は同じような経験をしているのではないか。一種の思い込みのようになるかもしれないが、もう少しAIを楽観的に捉えることも大切であるような気がする。というより、ある程度楽観的に捉えておかないと、浅はかな知識で勝手にネガティブになり、第2章で論じたような謎のアイディアを出して、周りの人間を辟易させるような結果になってしまうようなことになりかねない。

そうならない為にも、もっといい意味で楽観的に、AIが確実に人間の生活を豊かにしてくれていると思うことと、正しくAIを理解し、マジカルワードのような解釈をせずに済むような環境作りを、就活の過程で行なっていくことが大切だと思う。

この記事を見て、もう少しAIを、職を奪う悪魔のような存在ではなく、自分たちの生活を確実に素晴らしいものにしているものであると思う人が増えてくれることと、マジカルワードと捉え、ビジネスモデルで意味もなくAIを組み込むような、気持ちだけイノベーターに寄せるようなイタい就活生になってしまう人が減って欲しいと思う。

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