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2018.02.07

AIで警備がどう変わるか -次世代警備システムへのALSOKの挑戦-

最終更新日:

2018.01.31 取材・編集:おざけん@ozaken_AI

「未来ではなく、今のAIを話そう。」

そんなテーマのイベント「THE AI 2018」が東京都・六本木にて行われました。

最近、「シンギュラリティ」や「仕事が奪われる」といった未来に関する話題を見かけることが増えてきましたよね。

AIの発展によって、どのように未来が変容するのか気になる人も多いでしょう。

しかし、未来ではなくイマ使われているAIが一般的にはあまり理解されていないといった声も聞こえます。

AIに何ができるのか。AIをどのように活用できるのか。

そんな今のAIに焦点を当てたイベントがこの「THE AI 2018」です。

今回は綜合警備保障(以下ALSOK)によるセッション「ALSOKのAIへの取り組み」をもとに、次世代の警備はどうなるのかをお伝えしようと思います。
登壇者はALSOK 商品サービス企画部の干場久仁雄さんです。

今後さらに求められる警備の仕事

国内の警備会社はどれくらいの数があるか想像がつきますか?

なんと約9400社も存在するそうです。

警備は「財産」「生命」「身体」を守る大切な仕事。昨今のテロの脅威や犯罪の多様化によって警備の需要は伸びています。

しかし、今まで「」に頼ることしかできなかったのが警備業。国内には約54万人の警備員が街を守っていますが、人的リソースに頼らざるを得ない状況がありました。

さらには、進展する少子高齢化に伴う人材の減少や、2020年の東京オリンピックを前にニーズが拡大するなど、警備業にはICTを利用した人に頼らない効率化が求められています。

具体的に足りていない業務は3種類

警備の業務には1号から4号まで4種類に区別されています。

そして、その中でもICTの活用が進んでいる業務とまだ限定的にしか進んでいない業務があるそうです。

ICTの活用が進んでいない分野は、「常駐警備」「交通誘導」「雑踏警備(イベント警備)」です。

常駐警備はオフィスビルや娯楽施設などに常駐して警備を行う業務です。交通誘導は工事現場などで車や歩行者の誘導を行う業務。雑踏警備は人が多く集まるイベントなどにおける警備で警察官も動員されることがあります。

それぞれ、需要は伸びつつも人材が足りない状況下にあり、ICTの活用が求められている業務です。

AIは具体的にどのように警備に活用されるか

では、具体的にAI技術はどのように警備を変革しているのでしょうか。

やはりキーワードは「画像認識」です。AIによる「警備員の目」を備えたカメラによって監視のカバー率を拡大し、犯罪の未然防止や被害の最小化に活かすといいます。

今、街には多くの監視カメラが設置されています。しかし、それを警備員の目視に頼って監視していました。しかし、監視カメラの設置数は増加しており、どうしても人に頼ってはいられない状況になっています。

そこで、機械学習を用いた画像認識技術を利用した監視が導入されているのです。これにより、大幅に警備員のコストが削減が見込まれます。

機械学習を使用する際には、警備員が監視するときの特徴をうまく機械学習させることが大切です。警備員の判断のもとになるような事象は多種多様です。警備先の状況やニーズに合わせて優先度が異なってくるため、警備先を熟知した警備員のように、顧客のニーズにきめ細かく応えることができるAIの開発が不可欠です。

干場さんは「警備員が持っているノウハウをどのようにして形式化するかが肝です。また、警備員はその警備場所にだんだんと馴染んできて、その場にあった判断ができるようになってきます。そういった柔軟な判断ができるように学習させることが大切です。」とおっしゃっていました。

 

監視する場所は家からオフィスまで多種多様。その上で、さまざまなモノやヒトも対象で、AIの検知対象の幅はとても広い。

干場さんは、AIをさらに活用した新たな監視体制についてもお話しされていました。

監視カメラの映像を認識するだけでなく、もはや監視センターが行う高度な判断と指揮命令を支援する業務までAIで実現したいそうです。そして、空間全体を認識して予測することも目指すといいます。

地図などの静的な情報、天気などの動的な情報などをもとに分析や予測、計画などをAIができるようになれば、それをもとに警備員や警備ロボットの派遣ができるようになるかもしれません。

東京オリンピックまで約2年(2018年2月時点)。どのように警備が進化していくのか。より安全な街になるのが楽しみです。

バックグラウンドにある5G技術・4K技術

AIの発展には、その周辺技術の発展が不可欠です。

高解像度の4K映像がさらに監視の幅を広くする

4K映像とは従来のテレビなどのフルハイジビジョン・HD画質の映像の4倍の解像度を持つものです。

4倍の解像度を持つことで、より細かい部分まで認識することが可能になります。

実際にALSOKの本社ビルから検証した上記スライドにある実験結果では、4Kカメラを使うことで、遠くに写っている人の数までくっきりと現れているのがわかります。

大容量データを同時接続可能な「5G技術」

IoTセンサーがさまざまなところに設置され、ドローンなど移動カメラの需要も伸びているため、従来よりも強固な通信環境が必要になります。その点で重要視されているのが5G技術です。多数の同時接続を可能にし、さらに超高速通信が可能になるといいます。
4Kの映像は解像度が高い分、通信量も莫大になります。通信機器が増えながら、1つの機器あたりの通信量も増えるという状態に耐えうる環境整備をしないといけません。

また、セキュリティでは通信の遅延は許されせん。

現行(2018年2月)の4G通信でも遅延時間を数十m秒程度に短くすることはできます。しかし、自動運転や遠隔手術、セキュリティなどの場合は数m秒程度に遅延時間を短くする必要があるといわれています。それを実現するために、5G通信ではまず無線区間の遅延時間を4Gの10分の1、1ms以下に短縮することを目標とされています。

5G通信に酔って超高速低×遅延多数×多数同時接続が実現すれば、よりセキュリティは強固なものになるでしょう。

最後に

オリンピックに向けて「AIと警備」という文脈で語られることは多いのですが、当事者であるALSOKさんから直接話を伺えたのは貴重でした。

警備のICT化が進んでいなかったのは画像の認識や不審者の定義などルールベースで形式化することが従来の技術では難しかったからでしょう。しかし、昨今進化するディープラーニングなどの機械学習技術を応用することで、従来実現し得なかった意思判断能力をAIに持たせることができるようになりました。

昨今は、世界のさまざまな都市でテロが起きています。日本は幸いにも大きなテロは直近では起きていません。しかし、国際社会の中でより高度な監視体制が必要とされていることは確かでしょう。

2020年、もしかしたら街中をロボットが監視しているかもしれませんよ。

2018.01.31 取材・編集:おざけん@ozaken_AI

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