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2018年5月20日~24日の5日間にかけて、朝日新聞DIALOGが主催するAIイベント「AI FORUM 2018」が開催されました。
人工知能を中心としたテクノロジーがいかにして社会の課題を解決していくのかをテーマに、最新事例を交えてさまざまなセッションが行われました。
DAY1は富士通総研 経済研究所 上級研究員の趙 瑋琳さんにより、「AI大国を目指す中国の動向と課題」というテーマで講演が行われました。
世界的に発展が続くAI技術ですが、特に注目すべきは中国の存在です。
中国は、近年急激な成長を遂げています。今まで整備しきれていなかった社会インフラを「スマホ」で大きく改善させ、さまざまな面で成長を遂げています。アメリカとの対立関係も目立ち、今後の中国動向は大きなキーです。
目次
中国にイノベーションによる発展が必要になったワケ
中国の高度経済成長は習近平政権に変わる以前は平均10%前後の成長でした。
しかし、2012年に習近平政権になり、6%前後の成長率に落ち着いています。
これは中国経済が直面している安い労働力で輸出向けのモデルの限界が訪れたことが大きく起因しています。
また、たくさんのインフラ建設をして投資するモデルも限界を迎え、イノベーションによる国力増強が重要になってきました。
中国の政策(AI以外も含めたICT領域の政策)
中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)
2025年5月に中国政府が発表した製造業発展の10年間のロードマップです。中国版インダストリー4.0とも言うべき政策です。
今までアメリカが設計して中国で安い労働力で組み立てるというモデルがあり、「世界の工場」と呼ばれて、世界最大の製造規模を誇っていました。
中国は一人っ子政策による少子高齢化で、生産年齢の人口が減っているので、製造業が今までのモデルで成り立ちません。

中国は製造業の競争力を上げるべく、工場のデジタル化やスマート化に取り組んでいます。
中国は、今でもたくさんのロボットを使った政策をしています。この政策のとおりに順調に計画が進めば、中国はアメリカの脅威になります。
互聯網+(インターネットプラス)
2025年3月、中国の李首相が「互聯網+(インターネットプラス)」を提出しました。
これはオフラインのものをすべてオンラインにする政策です。
中国は、インターネットをあらゆる産業と融合させて従来の産業やビジネスに新たな価値を生み出そうとしています。
この取組でイノベーションの一環になる新たなビジネスの創出につなげようとしている。また、中国ではスマホを使った宅配サービスなど新しいサービスを創ることで、雇用も創出しようとしています。
第13次五カ年計画(十三五)
中国では、ソビエト連邦に倣って五カ年計画が導入されています。1番最初は1953年に始まり、今は第13次五カ年計画期です。
全人代(日本でいう国会)で、2015年3月に採択されました。第12次に比べて成長目標を低く設定する一方で、箇条生産能力いの削減など、大幅な構造改革をする方針が定められました。
その中で大きな5つの発展方針が示されています。
5つの発展方針
- イノベーション
- 協調的(地域間のアンバランスな状況を意識)
- グリーン(環境問題を意識)
- 開放的(改革開放をこのままオープンな方向でやっていくという示し)
- 分かち合い(シェアリングエコノミーを意識、)
2018年3月の全人代は「イノベーション」の表現が55回も
2018年3月の全人代は2期目の習近平政権発足後、初の開催となりました。
新時代の幕開けを迎えてから初のこの全人代では、「イノベーション国家」を強調し、イノベーションの表現が55回も加えられたことが印象的です。
具体的には、財政支出について最適化を図りながらイノベーションに配分していく方針や、インターネットやビッグデータ、人工知能などの応用と実体経済の融合を図って、デジタル経済の発展を加速させる方針が示されました。
ICTに関連する産業がデジタル経済とするならば、中国のGDPに占めるデジタル経済規模は、27兆2千億元で、GDPの32.9%を占めています。
イノベーション国家を掲げる中国の2020年までの数値目標の実現は難しくない状況にあります。また、R&D費用の内訳では、企業の支出増加が顕著です。しかし、ノーベル賞級の発明は少ない。数だけでなく、量から質への飛躍も課題となってきそうです。
ここまで述べてきたのは、AIより幅広いICT・デジタル分野での中国の動向です。ではAIの文脈では中国はどのような戦略をとろうとしているのでしょうか。
中国はAIに力を入れている背景
中国が実現しようとするイノベーション国家はデジタル経済推進のひとつの取り組みと位置づけられています。
日本ではAIが人間の仕事を奪うネガティブな意見が多いですが、中国ではAIに対するポジティブな意見が圧倒的だといいます、
中国は、独自の経済圏を有しているため、アメリカのビジネスモデルを真似して中国で市場権を得れば成功できました。しかし、今後は最先端のテクノロジーを追い求めないといけない、追いかけから追い越しを狙っています。これが米中摩擦の種になっている可能性もあります。
国務院(日本でいう内閣府)が「次世代AI発展計画」を発表
2017年7月に発表された「次世代AI発展計画」において、中国政府は2030年までに中国のAI技術を世界最先端のレベルにする戦略を発表しました。
これに対して、トランプ政権は中国をライバルとみなして対抗心をあらわにしています。AIは米中の新たな争点となろうとしています。
「次世代AI発展計画」では「AI」を国際競争の争点になる技術として、将来をリードする戦略技術と位置づけてAI産業発展の3段階戦略も掲げています。
第一段階として、2020年までにAI・人工知能の全体的な技術と応用を世界先進水準に引きあげるとしており、関連産業を含めて1兆元(約17兆円)の規模にすると見込んでいます。
第二段階として、2025年までにAIにかかる基礎を発展させて、一部の技術と応用で「世界トップ水準になる」ことを目標としています。AIを産業や経済の構造転換の起爆剤にしいと考えており、関連事産業を含めて5兆元(約85兆円)にすると見込んでいます。
第三段階は、より規模が大きくなっています。2030年までにAIにかかる全ての分野で世界のトップに立ち、中国を世界の主要なAIイノベーションセンターにすることを目標としています、関連産業を含めた見込み規模は10兆元(約170兆円)にのぼります。
これは、約10年間で産業規模を10倍にするという相当な計画です。
地方政府の政策推進
- 北京「AI都市を目指す」→AI分野でのリードを目指す
- 上海「次世代AI発展を促進する実施意見」→出遅れているが、AIで挽回しようという思惑
- 深セン「AI産業連盟の設立」→民間の活動になるべく自由な環境を提供するという姿勢、深センは民間の企業を中心に連盟を設立
地方の事例
中国(杭州)人工知能小鎮
東莞松山湖ロボット産業基地
中国の主なICT企業の取り組みとベンチャー活動
中国科学技術部が次世代4大人工知能プラットホーム発展計画を策定
- バイドゥ→自動運転AIオープンイノベーションプラットフォーム
- アリババ→都市ブレーン、スマートシティ、アリクラウドが中心、アリババ達磨院、3年間で1000億元の基礎研究費用
- テンセント→医療イメージング 医療応用対話型ロボとAI Labを設立、米国シアトルにも研究所
- アイフライテック→スマート音声
AI投資ラッシュ
画像認識分野の新四天王
- 南湯テクノロジー →センスタイムで有名、アメリカからの帰国者が設立
- 眩視テクノロジー →Face++などで、Facebookなども圧倒した会社。アリペイが顔認証を使った支払いに使用している、アメリカからの帰国者が設立
- 雲従テクノロジー →アメリカからの帰国者が設立。
- 依図テクノロジー →アメリカからの帰国者が設立。
顔認証大国の中国
ベンチャー企業寒武紀のチャレンジ
まとめ 「中国の可能性と課題」

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