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2018.09.21

ロボットがビル管理で活躍!三菱地所が目指す未来のビル管理 -横浜ランドマークタワーでの実証実験を見に行ってきた-

最終更新日:

三菱地所は日本全国の街の発展に貢献してきたデベロッパーです。例えば、丸の内ビルや横浜ランドマークタワー からサンシャインシティに至るまで三菱地所は幅広い施設を手掛けてきました。最近では、東京駅日本橋口での「東京駅前常盤橋プロジェクト」が発表され、さらなる都市開発を進めるそうです。

人口が減少の一途をたどる今、それに伴って必要になるのは掃除や警備といったビルを管理するための労働力不足がより問題になってきそうです。従来、ビル管理業務の大部分は人の手によって行われていました。しかし、三菱地所は掃除や警備といったビル管理に特化したロボットを活用していくそうです。そこでキーとなる技術が「AI・人工知能」です。

先日、三菱地所は次世代のビル管理体制の実現に向けて、横浜ランドマークタワーの管理におけるロボットの活用の実証実験を開始すると発表しました。

今回は、ビル管理にロボットを活用しようとする三菱地所の取り組みからビル管理の未来を考えてみようと思います。

ビル管理の現状

2002年には東京23区で約200棟ほどであった超高層ビルは2010年には400棟を超えました。都市部での高層ビルがどんどん増加しています。東京駅周辺では三菱地所による「東京駅前常盤橋プロジェクト」によって新たな高層ビルの建築が予定されています。

それに伴ってビル管理市場の規模も拡大しています。矢野経済研究所の発表によれば、2017年度においてビル管理市場は前年比103.7%の3兆8,804億円と推測しています。

しかし、ビル管理市場での人手不足の問題も顕在化しています。公益財団法人東京ビルメンテナンス協会によれば、2017年度における東京都内のビル管理市場の有効求人倍率は2.12倍で20ヶ月連続の2倍越えという厳しい状態が続いています。

そこで期待されるのがロボットの活躍です。今まで大部分を人手に頼っていたビル内の清掃や警備、運搬といった業務をロボットに任せることにより大幅な省人化が期待されています。そしてロボットが人を避けるなど、より賢く動くためには「AI・人工知能」技術が欠かせません。

三菱地所による実証実験に使われるロボットを紹介

三菱地所は横浜ランドマークタワーにおいて、4つのロボットの実証実験を行っています。主に運搬や清掃、警備を担う、4つのロボットをそれぞれご紹介します。

運搬ロボット「PostBOT」(Deutsche Post AG 社)

センサーによって人を検知して動き、人が直接押す必要のない運搬ロボットです。みなとみらいのランドマークタワーでは働く社員に弁当を届ける仕事で活躍しています。

内部に設置されたLiDARというセンサーによって操作する人を検知しており、移動方法は前の人に追従する方法か後ろの人から遠ざかる方法で、用途に応じて自由に切り替えられます。

障害物なども検知し、何かにぶつかる心配もありません。ただし、操作する人とPostBOTの間に人が入るとその方向へ行ってしまうことがあるのが課題です。

また、現在は機体に館内の地図を把握するマッピング機能はありませんが、マッピング機能を搭載した機体を他の機体に追従させていく隊列走行を行うことも考えているといいます。

将来的にはビル内でや丸の内などの都市部での運送での活用を目指しています。

運搬ロボット「EffiBOT」(Effidence 社)

PostBOTの台車型です。EffiBOTも数台で隊列走行をすることが可能です。

荷台には設計上300kgまで積載できますが、150kgまでが最適な積載量です。

EffiBOTは重い荷物を運ぶのに適しており、フランスの工事現場などではすでに使われています。

また、クーラーボックスやカメラなど荷台に載せるものによって、幅広い用途での活用が可能です。3.5時間のフル充電をすれは8時間稼働させることができ、活用の幅は広そうです。

警備ロボット「SQ-2」(SEQSENSE 社)

警備員に変わって、広い空間の中を警備するために開発された自律移動型警備ロボットです。

今回紹介するロボットの中では「SQ-2」が唯一人工知能と呼べる技術を備えています。例えば自律的にビルの中を移動し、不審物や不審者を認識したり、消火器など所定の物が正しい位置にあるかなどを確認してくれたりします。

先端で回っているLiDARセンサーによって収集する多数の2Dデータから3Dデータを作り、周りの環境を認識していることも特徴です。他にもサーモセンサーや赤外線センサー、超音波センサーを備えており、さまざまな視点から周囲を認識することができます。

そのように周りの環境を認識することによって、SQ-2はあらかじめ決められたルートを移動するのではなく、自らが最適なルートを選択して自律的に走行します。

さらに将来的には、VIPが来社した際に通知を行ったり、ブラックリスト上の人物に対して反応する防犯システムの構築も進めたいとしています。また、警察との連携も視野に入れており、将来的には指名手配犯の検知にも活用できるかもしれません。

掃除ロボット「Neo」(AVIDBOTS 社)

広いビル内を自動で掃除してくれる掃除ロボットです。
13インチのブラシが2本付いており、水を出しながら床を掃除します。

機体の前と後ろにセンサーが付いていますので、障害物を避けることができます。それ以外にも危険回避のために、急に飛び出してきた物にすぐに反応するセンサーや背の低い障害物を検知して緊急停止するための2枚の羽も装着しています。

また、Neoは事前に作成したマップを元に、走行距離などから現在の位置を推定することができます。同時に地図にはなかった物体も認識することで、不審物なども特定できるそうです。

Wi-FiやLTEの通信で撮影した映像を常にチェックすることができ、清掃だけでなく防犯などの用途でも活用の可能性がありそうです。

課題として、点字ブロックなどの凹凸がある場所は、そのまま通過するとその部分に水が溜まってしまうため、現在では地図上で掃除しないように設定しているそうです。そういった課題も解決し、将来的には点字ブロックではブラシを上げて走行できるようにすることを考えているといいます。ビル管理へのAI搭載ロボットの活用に向けての課題

 ビル管理へのAI搭載ロボットの活用に向けての課題

高層ビルの建設が進み、警備、清掃、運送など、人間が管理しなければならない面積は増加しています。人手不足が進む今、ロボットの導入は非常に重要なものになってきます。

しかし、ビルにおけるロボットの活用を進めるにあたって課題はあるのでしょうか?

三菱地所でビル管理へのロボット導入の実証実験を筆頭で進めている渋谷さんにお話をお伺いしました。

安全性

渋谷さん「人間と共存するロボットにとって、安全性は最も重要な問題です。もし、ロボットが急に暴走したりして人間に危害を加えるようなことがあっては非常に危険だからです。
そのため、三菱地所では特に安全面の確認に力を入れ、考えられるシチュエーションに応じて、それらの危険を回避するために細かく制御ができるかを確認しています。」

安全性を担保するにあたっては人工知能技術よりも前にLiDARなどのセンサーが活用されています。しかし、より広域にロボットが状況を把握して動くためには、ディープラーニングの活用なども進んでいくと考えられます。

意思決定

三菱地所が活用を検討するロボットは多数の人が集まる場所での運用を想定されています。渋谷さん「人が集まる環境では、周りを人に囲まれたりするなど複雑な状況になることが多いため、そのような場合でも適切に状況を判断して自律的に行動できるかが課題です。

例えば、周りの人がいなくなったら動く、ルートを自律的に変更するといった行動ができるようにロボットが自ら判断できることが必要です。」

コスト

ロボットを幅広く普及させるためには、いかにコストを下げるかも大きな課題です。ロボットの導入には初期コストがかかるため、どのようにコストの問題を解決するかも課題です。

そのため、人間と比べてどれくらいの性能があり、どれくらいの人件費が削減できるのかや、どの程度人間のカバーが必要なのかを明らかにして導入の検討を進めることが大事です。

ビル内の移動

ビル管理に携わるロボットは自由にビル内を動き回る必要があります。しかし、現在では必ずしもロボットが自由に動き回ることができる環境が揃っているわけではありません。

渋谷さん「例えば、多くのビルでは自動ドアが導入されていますが、バックヤードでは手動ドアが多いのが現状です。ロボットの場合、自分でドアを開けることが難しいためロボットの動きやすさを考慮して自動ドアを増やす必要も出てきそうです。手動ドアに比べて自動ドアのほうがコストが掛かりますので、そのコスト分以上にロボットが働いてくれるかが課題になってきます。」

また、ビルは縦に長い構造のため、縦の移動も重要な課題です。そのためには、ロボットが自分でエレベーターに乗ることができなければなりません。そこで今後はロボットとエレベーターが通信する独自の規格も必要になるかもしれません。

まとめ

三菱地所が実証実験を進めるロボットは今まで人手に頼っていたビル管理業務の大部分を自動化できるため、人手不足問題の解決が期待されています。AIや人工知能の活用によって物体の認識(=ゴミの検知や警備)や自律走行などの性能も上がっていくでしょう。監視カメラなど従来のシステムとの連携も模索されています。

三菱地所が本格的にロボットの実証実験を行うのはこれが初だそうです。当日もAINOW編集部以外にも多くの方が視察に訪れており、ビル管理の効率化の注目度は高いことが伺えました。

さまざまなビルをロボットが管理し、省人化や低コスト化が実現される日は遠くないかもしれません。

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