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2018.11.19

WEEKLY人工無脳(2018.11.12~11.18)

最終更新日:

① PFNとキカガクが医療分析向けの学習教材を公開(予定)

今週1番個人的に激アツだった話。

初めて知ったのですが、「日本メディカルAI学会」なるものがあるそうです。入会には「日本メディカルAI学会メンバー1名による推薦が必要」というハードルがありますが。(ちなみに正会員は年会費5000円だそうです)

それはいいのですが、興味があるのはこの学会が公開した「日本メディカルAI学会公認資格(メディカルAI専門コース)」です。一連のコースと試験を受けて合格すると公認の修了証を発行してもらえるそうです。

第一回目の開講となる今回は、コースの受講料5000円(約300人限定)とかなりリーズナブルなのですが、こちらも学会員しか受けられないものらしいです。

しかし、コースで使用する学習教材は会員などに(たぶん?)関係なくネットに無料で公開されるようです。この教材がすごく面白そう。

教材はPFNと株式会社キカガクで作成され、大学生・大学院生・医療従事者に向けた、医療で人工知能技術を使う際に最低限必要な知識や実践方法を学ぶことができる内容になっているそうです。

一度公開されたものの、正確性を期すために再度非公開化され2018年12月頃に改めて公開予定だそうです。楽しみすぎる。目次だけは上記リンクから見ることができます。

  1. 機械学習に必要な数学の基礎
  2. 機械学習ライブラリの基礎
  3. ニューラルネットワーク
  4. Deep Learningフレームワークの基礎
  5. 実践編: CT/MRI画像のセグメンテーション
  6. 実践編: 血液の顕微鏡画像からの細胞検出
  7. 実践編: ディープラーニングを使ったモニタリングデータの時系列解析
  8. 実践編: ディープラーニングを使った配列解析

一時公開されている間にチラッと内容を見ましたが、機械学習に必要な数学の基礎的なところから始まり、Chainerの使い方基礎、そして実践的な医療画像や時系列データの分析についてアルゴリズム解説の図と実行コード付きで結構なボリュームがありました。年末休みの良い宿題になりそうです!

それにしても、PFNはDeNA以外にも三井物産ともバイオ・ヘルスケア系の合弁会社作ってアメリカで事業化する予定もあるらしく、ヘルスケア領域でも存在感をゴリゴリ強めていってますね。生物学と情報学を扱う「バイオインフォマティシャン」という人材がアカデミックにいますが、PFNがブラックホールとして吸い込んでいく日も近いのか…?

② 「複雑なものほどツヨイ」な風潮が強まるAIブームな昨今に “Simple is better than Accurate.” のススメ

データ分析をsimpleに行うことの重要性と価値についてのお話。AIや機械学習の話は(ほぼ)無し。

メルカリ分析チームリーダー樫田さんの安定の神スライド。本当に素晴らしい資料なので分析に係る人は読むといろいろ考えさせられます。特に最近「機械学習」「AI」という単語を多用しがちなデータサイエンティストが「データ分析とは?」に立ち返るための良いスライド。何よりも、「分析ってやっぱりおもしろいな」と思わせてくれるスライド。

「分析を複雑にしないなんて誰でもわかってるし!」と呼んでる途中に一度は思いますが、ここまで丁寧でわかりやすく「なぜsimpleが重要なのか」「simpleにするとどんな良いことがあるか(もしくはその逆だと何が起こるか)」を何度も強調して解いてくれてます。

具体的なデータを出さなくても、「分析の考え方」だけでここまで興味をひくスライドを作れるのがまずすごい。スライドだけでここまで興味深いのだからトークの場はもっと面白かったのでしょう

データ分析を始めたばかりの人は軸が複雑に混ざりあったよくわからないセグメントを作りがちです(いや、何年か仕事してる人でも難しかったりするのですが…)。ウンウン唸って一週間くらい自力で考えさせた後に、このスライドのURLをスッと送るのが骨身に染みて良いかもしれない。

樫田さんのドキュメントは総じて面白いので、他にもあるなら読んでみたいなーという方はこちら

③ 自治体の保育所入所選考AIにも「選考根拠」が求められる

これまで自治体が膨大な時間をかけて人力で行っていた保育所の入所選考作業をAIに行わせる動きについて。富士通のシステムで30以上の自治体で実証実験を行い、2018年中に滋賀県大津市が導入する予定らしいです。

どうやって動いているかというと、

児童の割り当てには「ゲーム理論」を応用したアルゴリズムを活用。申請者の希望条件を基に、入所先に応じて利得(好ましさ)を点数化し、なるべく多くの人が高得点になるような割り当てを実現するという。

おそらく最適化問題を解いていると思われ、それを「AI」を呼ぶかどうかはもはやどうでもいい話ですが、個人的に面白いなーと思ったのは、

公平性を保つため、保育所の空き状況や希望順位などに基づいて選考結果を説明する機能も搭載。申請者にどこまで説明するかは各保育所に委ねられる。

医療現場のAIと同じく、「賢いAIが決めたことだから」でユーザーは納得しません。判断根拠を示すことの重要性は命の現場だけではなく、公平性を求められる公共サービスでも同じらしいです。AIも大変だな〜

④ 「今日はなんだか肌の調子が良い」を定量化する価値

カネボウがスマホに接続して肌の水分量を測定できる「肌水分センサー」を10万個無料配布し、肌の調子を定量可視化することでスキンケアに関心が高まり来店リピート率が上がったという話。

カネボウや資生堂のような美容系の企業がIoT的な製品を出すことは最近ではもう珍しくないですが、日々のデータを蓄積することはやっぱりビジネスチャンスになるようです。

センサーデバイスは『肌の調子が良くないときに使う体温計みたいな存在になっている』ということらしく、なるほど。ZOZOSUITのように一度計測するとおしまい、というものじゃないところが良さそう。また、多くの利用者はセンサーを入手してしばらく使っていると「自分の肌に詳しくなり、(計測しなくても)数値はこの程度と予測ができるようになる」というのも面白いし納得です。よく言われる、人間の方が先に学習しちゃう現象ですね。

今のところ、日々の睡眠時間や肌状態を定量的に記録し続けても、自分自身が気づかなった体の個性を知ったり圧倒的にQOLが上がったりするような驚きの裏技は無いものの、レコーディングダイエットのように体の状態を定量評価する習慣を持っている人と持っていない人は結構いろんな場面で行動や意識に差がでると思っています。やったことない人はモノは試しにfitbitやapple watchで自分の睡眠時間を測定するところから始めて見るのがおすすめです。

⑤ 可視化ロマン

リンク先のGitHubには他にもいろいろデモ動画があってかっこいい。

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