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今日のデータ流通量はおびただしいものがあります。それは、政策や医療、広告などさまざまな分野で応用されており今の社会には不可欠なものになっています。一方で、その膨大なデータを扱う上で様々な問題も生じています。
ユーザーの観点からは
- データがどこで、どのように使われているか分からない不安
- データの流出、悪用等の具体的な被害
事業所の観点からは
- 情報を取り扱いを誤る危険性によるデータ利用の躊躇
- 事業所や業界の垣根を超えたデータの利用
などが課題となっています。
そこで、データを扱う産業を健全に発展させていくために「情報銀行」が注目されています。今回は、その「情報銀行」について紹介します。
1.情報銀行とは
情報銀行は、
個人のデータ活用に関する契約等に基づき、PDSなどのシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業
参考:内閣官房IT総合戦略室によるIT総合戦略本部 データ流通環境整備検討会「AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ 中間とりまとめ」(2017)
とされています。ここでのポイントは、個人が自分の情報の使われ方について自分で判断することができる点です。
情報銀行のモデルは以下のようなものが想定されています。
<情報銀行の仕組み>
- 事業所が個人に関するデータを個人に提供する。
- 個人が情報を情報銀行に契約書に基づいて預ける。
- 情報銀行が、個人のデータを集約・管理する。
- 情報銀行が事業所の利用方法を個人に提供の可否を確認または、情報銀行が個人との契約に基づいて提供の可否を判断して、適切な事業所へ情報を与える。
- 個人は、事業所からパーソナライズされたサービスなどのメリット受け取る。
※本人に直接的なメリットが与えられない場合もある。
2.情報銀行の利点と問題点
情報銀行は、メリットは2つです。
- 個人の権限で情報をコントロールできるという点
- 情報を集約することでデータの管理を一元化し、バラバラでアクセスできなかった情報に事業所が効率よくアプローチできる点
一方で問題点もあります。
情報の管理が中央集権的であるということは変わりありません。情報銀行が情報を流出させたり、悪用させることは懸念点です。情報銀行の担い手が、政府なのか民間なのか。もしくは、政府の認定制度で行うのかのかも議論のポイントです。現段階では、一般社団法人日本IT企業連盟が情報銀行の認定の受付を開始しています。
3.情報銀行の具体例
情報銀行や、情報を流通させるプラットフォームサービスはさまざまな企業で開発が進んでいます。
①.三菱UFJ銀行の情報銀行
三菱UFJ信託銀行も、情報銀行へ手を挙げています。すでに具体的な実証実験が開始しています。
目指す世界観・目的を下記です。
・日本政府が提唱する「Society5.0」においては、データ・デジタルアセットの本来所有者自らが当該財産を利活用し、1人1人の ニーズに合った価値の保存・移転がなされる世界観が想定されている
・三菱UFJ信託銀行は、信託機能によってこの「価値の保存・移転」を支え、社会的付加価値を創出していく
参照:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/detakatuyo_wg/dai2/siryou1-1.pdf
②.ブロックチェーンを用いた情報プラットホーム
株式会社インサイト、ソフトバンク・テクノロジー株式会社、シビラ株式会社の3社は共同でブロックチェーンを用いた信用情報プラットフォームの開発に乗り出しています。
このサービスも、現在の情報の管理における問題点を指摘したうえで、下記のように目的を示してます。
ブロックチェーン技術の特徴である、対改ざん性、ゼロダウンタイム、暗号技術に基づいた認証、電子署名によるデータ証明、データトレーサビリティなどを活かし、またクラウドの冗長性を活かした、安心安全で可用性の高い信用情報管理が実現されます。
参照:https://www.softbanktech.co.jp/news/release/press/2018/001/
まとめ
あふれるデータの適切な取り扱いとデータ市場の発展の両立は、ますます課題となっています。求められているのは、健全なデータプラットフォームの設立と私たち一人ひとりの情報に対する責任意識なのではないでしょうか。