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AIの発達によって画像認識技術が飛躍的に進化しました。医療では、MRIやレントゲン、内視鏡など画像を用いた診断にAIが活用されるケースが多くなってきています。
社会保障費の増加が続き、日本政府が掲げるAI戦略においても、3本の柱の一つとして「医療」が位置づけられ、AIなどを活用した医療が現在進行形で進歩しています。
2018年には日本メディカルAI学会が設立され、日本における医療へのAI活用が本格化してきました。AINOWでは、日本メディカルAI学会への取材を行ったり、日本での医療へのAIの活用事例をまとめています。(記事最後にリンクを掲載)
今回は、そんなメディカルAIの一つの技術としてaiwell株式会社が取り組む「AIプロテミオス技術」を紹介します。人間の健康状態が見える化されるというAIプロテミオス技術とはいったいなんなのでしょうか。
目次
現在の医療制度の課題ー病院は不健康になったら行くところー
2015年度に医療機関に支払われた金額は合わせて42兆3644億円にのぼり、1人あたり33万3300円もの金額が医療機関に支払われています。
また国民医療費の推移をグラフにすると、国民医療費の総額、対国民所得比率、対GDP比率のそれぞれの指標が上昇傾向にあり、日本にとって医療問題は喫緊の課題です。
aiwellは健康を見える化し、人々がすっと健康で居続ける世界をつくる
少子高齢化の中で、aiwellは医療が抱える課題を解決するべく取り組んでいます。
活用しているのは「AIプロテミオス」と呼ばれる技術。未病状態を見える化する診断支援するサービスの開発のために開発を続けています。
AIプロテミオス技術とは
aiwellが提供しようとしているAIプロテミオス技術とは何でしょうか?
aiwellが作成した以下の動画が参考になります。
AIプロテオミクスとは、タンパク質の変化からあらゆる生物の予兆や変化を発見する技術です。人間や動物などタンパク質を持つあらゆる生命体が、AIプロテオミクスによって未病のための効果的な処置・予防を可能にします。
タンパク質は人の体の変化を真っ先に表す物質。タンパク質の構造を可視化して、比較することができれば、人間の健康状態を的確に把握することができます。
タンパク質の構造を知るためには、今までは巨大な機械を使わなければならず、気軽に試すことができませんでした。しかし、東京工業大学の林宣宏准教授によってタンパク質をより簡単に可視化することができるようになり、より簡単にタンパク質の構造を把握できるようになっています。これは、「二次元電気泳動」と呼ばれる技術を活用しています。
この技術に着目したaiwellは林准教授と共同研究を開始し、タンパク質の画像をAIの画像認識を活用することで、体調の小さな変化も可視化しようと取り組んでいます。
以下が実際に二次元電気泳動の技術でタンパク質の構造を可視化している様子です。
このAIプロテミオスでは、例えば敗血症では98.2%の精度で診断を行うことができているといいます。
aiwellはこのAIプロテミオスを活用して、「未病のない世界」を目指し、そのために健康の見える化に取り組んでいます。
aiwellが実現したい社会
ではこのAIプロテミオス技術を活用してaiwellはどのような世界を作るのでしょうか?
簡単に言うと、タンパク質の構造から診断した体の状態と、購買履歴などのライフログをかけ合わせ、さまざまな観点で人の健康を見える化していくことで、医療課題の解決に取り組んでいきます。
さらにはAIプロテオミクス技術を使って健康であることを証明すれば、保険料の割引や、介護費用の免除などさまざまなメリットが生まれる仕組みを構築しようとしています。
教師データを集めるために
AIプロテオミクスの技術ではAIの学習が進めば、あらゆる健康状態が把握できるようになります。
しかし、そのためには、さまざまな症例におけるタンパク質の構造をデータとして保存し、学習に活用しなくてはいけません。
そこでaiwellでは、アスリートをはじめとして、クリニックや検診機関、海外バイオバンクと連携しタンパク質の検体を提供しもらうよう進めています。
また、それだけでなく、微量採血検査キットを販売することで一般の方々のタンパク質データを手に入れられるようにしています。
従来の血液検査の約150分の1による検査を可能にしたこの検査では、身体への負担も軽減し、さらに自宅でも簡単に検査できます。
少ない採血量にもかかわらず、30の項目の検査が可能で、aiwellが得た健康データを保管&外部業者に共有し、さらに診断の精度を上げるために活用します。
得たデータは健康データ銀行として預けられ、ジムや病院、保険会社や物販、外食などのさまざまな事業者と共有し、利用者がメリットを享受できるシステムを構築しようとしています。
また、これらのデータは、個人の許諾に基づいて提供されるため、ユーザが提供したいデータを提供し、それにもとづいてパーソナライズされたサービスの提供を受けることができます。
果たして病気にならない時代は訪れるのか。今後も医療×AIには注目です。
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