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2019年2月13日に開催された「THE AI 3rd」で行われた綜合警備保障株式会社(ALSOK)の営業統括部次長 兼 HOME ALSOK事業部担当次長 干場久仁雄氏の講演内容をレポートします。
本当に警備員はAIで代替できる職業か?
野村総合研究所等が発表した「人工知能(AI)やロボット等による代替可能性が高い100種」の一つにALSOKの事業である「警備員」も選ばれています。しかし警備員の有効求人倍率は8.65倍(厚生労働省、2019年2月1日発表)で全職業の中で2位になるほど人材不足問題が起こっています。ALSOKでは、AIに仕事を代替される「脅威」よりAIを早く導入して人材不足問題を解決したい状態となっています。
また、弱者を狙う身体犯や無差別殺人が目立つ現代では、即応力のある常駐警備の需要が拡大しています。命を脅かす犯罪を抑制するために、24時間リアルタイムで監視の目が求められています。
AI警備の実現には?
警備する対象の場所によって監視ニーズ(侵入盗難、強盗、通り魔、暴走車両など…)は多種多様です。場所や警備してほしい顧客ニーズを細分化して、それに応えられるAIを提供する体制が今のALSOKに求められています。多様なニーズに応えたALSOKが提供しているAIを紹介します。
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- 機械警備+AI
侵入者の検知に、AIを活用して誤報を抑制し、画像監視や現場急行に必要な警備員を低減しています。人や動体を検知し、怪しい動きをしている侵入者を検知しています。
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- 常駐警備+AI
常駐警備員の代替として、高精度でリアルタイムに異常を検出できるカメラ+AIが施設を監視しています。警備員が現場対処に専念することで、警備員を削減することができます。
その一例として、防犯カメラ画像からAIが困っている人を検出して、常駐警備員が迅速におもてなしサービスを実現する「おもてなしAI」を実証実験しました。
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- 防犯カメラ+AI
既存の防犯カメラ画像をAIが監視して、万引きなどを検知します。万引きの検挙数は大幅に減少することがないため、防犯カメラのニーズは高くなっています。オークションやフリマアプリの普及に伴い、アクセサリーやCD・DVDのように換金性の高いものが万引き被害が多くなっています。また、万引きの検知ができず棚卸しの際に初めて気づく場合もあります。
AIを活用するための4Kと5Gの進化
4KとHDは肉眼での違いがあまりないですが、AIにとっては大きな違いをもたらします。4Kの高画質化により「遠く」、「細かな状況」まで分析が可能になります。
肉眼と4Kカメラによる監視の違い
また、5Gは光ファイバ並みの通信速度・容量、品質、セキュリティを実現し、警備における通信利用の課題も一挙に解決する可能性があります。監視カメラや警備員向けのスマートフォンでの高精細画像の伝送や、イベントや災害時のときの通信の確保に役立ちます。
このような4K・5Gの活用により、カメラによる資格情報の高精細化と、複数のAIを連携・統合する大容量・低遅延な5Gの活用が必要不可欠となっています。
AI導入成功の勘所とは
AIを導入するターゲットの選定には次のことが鍵になります。
まず、理解しやすい簡単な問題から着手することです。「侵入者」や「万引き」のように特定の動作の方が理解しやすく簡単に解決することができます。また社内利用や現行システムの改良などリスクの少ないところから取り組むことも大事です。
そして、業務にどのように落とし込めるかを掘り下げていきます。ALSOKでは問題となる行動を検出してから、どのような解決策をとるかが重要となっています。最終的には、経営課題の解決になっているかを確認します。ALSOKでは、警備員の人材不足解消のためにAIを導入していることが課題の解決となっています。
ALSOKにおいてAIサービスを商品化するためには、優秀なAI開発パートナーやデバイス、システム化のパートナーの確保が必要となります。また、知財に関する正しい理解を学ぶことや、ALSOKの営業マンがサービスを売り込めるようにAIについて説明できるトレーニングをすることも不可欠となっています。
まとめ
ALSOKでは、警備人材の不足をAIを利活用することによって解決していることが分かりました。人間ができなかった検知や誤報を抑制し無駄なコストを抑えることまで、AIで課題解決することができています。
2020年に開催される東京オリンピックのように、警備のニーズはさらに高まってきます。来年、万全な警備を実現するためにもALSOKのようなセキュリティ会社が積極的にAIを導入していることが、今回の講演で明らかになりました。