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LINEは、2019年6月27日に開催された「LINE CONFERENCE 2019」で、LINEが開発・保有するAI技術を外部企業等へ展開していく「LINE BRAIN」を発表しました。
2019年7月より、AIチャットボット技術「LINE BRAIN CHATBOT」、文字認識技術「LINE BRAIN OCR」、音声認識技術「LINE BRAIN SPEECH TO TEXT」の販売を順次開始していく予定です。
今回は、2019年7月23日に東京都内で開催された「LINE BRAIN」事業に関する戦略説明会の模様をお伝えします。
LINE 株式会社 取締役 CSMO 舛田氏やLINE BRAIN室の室長 砂金氏などが登壇し、新たなパートナーの発表や、各販売メニューに関する説明が行われました。
目次
LINE BRAINとは
LINE BRAINとは企業がチャットボット、音声認識、音声合成、OCR、画像認識などのAI技術をより簡単に利用できる各種サービスの総称です。2019年6月27日に舞浜アンフィシアターで開催された「LINE CONFERENCE 2019」にて発表され、大きく話題になりました。
以下の分野にてプロダクトを展開してきます。
特に音声合成は注目を集めました。音声通話に対応した「人の発話を文字に変換する技術」を活用し、コンタクトセンターにおけるリアルタイムでの音声自動応答や、バッチ処理での長文書き起こしにも対応します。製品名など固有な発話の認識精度改善ニーズにも応じます。例えば、コンタクトセンターにおけるオペレーターの支援、動画メディアの字幕起こし、議事録の書き起こしなどに活用が期待できます。
LINEは、AIアシスタント「Clova」など、より良いユーザー体験を実現するために、さまざまなAI技術を独自に研究開発してきました。
LINEが保有するビッグデータと深層学習を組み合わせることで、多くのAI技術を生み出しているといいます。LINE BRAINは、LINEが多くの実績をもつBtoCサービスで培ってきたAI技術とノウハウを、BtoBサービスとして企業に提供し、企業とAIの距離を近づけるとしています。
LINEがAIソリューションビジネスをはじめる理由
まず最初に登壇したのは、LINE株式会社 取締役 CSMOの舛田 淳氏です。舛田氏からは、LINEがAIソリューションビジネスをはじめる理由に関して、説明されました。
社会すべてがAIの対象に
舛田氏は冒頭、AIの重要性を以下のように強調しました。
これからの時代、企業の成長を決めるのは「AIと向き合っているか、向き合っていないか」です。
インターネットによって、たくさんの市場が生まれました、この先、それ以上のインパクトをもたらすのがこのAIです。インターネットの比ではないと思っていますしスマートフォンの比ではないと思っています、社会すべてがAIの対象となります。
AIの重要性を強調し、事業戦略を発表するLINEはこれまでにも1000名規模のAIエンジニアを抱え、舛田氏はアジアでも世界でもトップレベルであると自負していると強調しました。
LINEのAIといえば、「Clova WAVE」を皮切りにスマートスピーカーの分野で展開してきました。ClovaはAIアシスタントとしてさまざまなデバイスの中に組み込まれ、最近ではディスプレイつきのものにもClovaが入っています。
舛田氏は、AIアシスタントの開発からデバイスの設計開発、販売まで一連を一気通貫しているのはLINEだとし、その技術への自信を見せました。
また、LINEはClovaにとどまらず、すでにさまざまなプロダクトにAI技術を活用しています。
例えば、LINEかんたんヘルプはAIをベースとしたチャットボットサービスです。LINEショッピングレンズは、カメラで撮影した画像から対象の商品を探し出すために画像認識の技術を活用しています。
LINE CONOMIではレシートをカメラで撮るだけで認識する技術を採用しています。
今回、発表したLINE BRAINは、今までLINEが内部で築きあげてきたAI技術を外部に提供していく意味があります。
LINE BRAINのプロダクトとDUET
では、LINE BRAINでは、どのようなプロダクトを推進していくのでしょうか。
まずは、チャットボット、OCR、音声認識(Speech to Text)です。
そして、まだ実用化には至っていませんが、LINE BRAINの少し先の技術として、DUETという音声認識技術をLINE CONFERENCEで発表し、大きく反響がありました。DUETは一言で表すとレストランや飲食店などにおける電話対応の自動化技術です。
DUETはLINE BRAINが持つ3つの技術の組み合わせでできあがっています。
近い将来、まるで未来のようなAIとユーザとの会話が実現することができるようになるでしょう。
DUETの実証実験をエビソルとBespoと開始
さらに舛田氏はAI技術を利用した音声自動応答サービスに関し、エビソルとビスポと実証実験の協議を開始していくことを明かしました。
エビソルは、レストラン・飲食店向け予約システム「ebica 予約台帳」など店舗の予約管理やお客様管理、集客支援サービスを提供しています。また、Bespoは飲食店向けに集客の支援を行うサービス「ビスポ」を提供しています。
今後、この2社と協力し、音声自動応答サービスなどの実証実験に関して、協議を開始していくとしています。
最後に舛田氏は飲食店へのAI導入の必要性について以下のように述べました。
飲食店の課題を、お話させていただいておりました。どういった課題に対してどのようなAI技術を当てるべきか議論させていただきました。AI技術をいうのは、AIが発展すると人々の働き先がなくなってしまうとかAIに世の中が支配されてしまうというイメージを持たれる方は少なくありません。
LINE BRAINがやりたいことは優しいAIです。
飲食店の店員がやるべきことに集中し、それ以外は自動化する。パートナーとしての役割を実現するために3社で協力していきたいと思っています。
LNE BRAINの詳しい事業戦略「BtoBtoC」 砂子氏
LINE BRAIN室でLINEのAI戦略を前線で推し進める砂子氏が登壇しました。
砂子氏によるとAI市場に参入するのは、シェアの奪い合いよりも、AIマーケットを今以上に発展させ、より多くの価値を提供していくことを重視しているといいます。
戦略のキーワードは「BtoBtoC」です。工場における異常検知など、AIの代表的なBtoBモデルではなく、企業や地方自治体の先にいるエンドユーザに価値を届けるBtoBtoCのモデルで価値を提供していきます。
具体的には以下の3点「ユーザ目線」「NO.1の技術」「相互補完」の3つを掲げています。BtoBへの参入を、よりスムーズにするために、パートナーとの相互補完することで、さまざまなプロダクトの展開を行っていきます。
砂金氏によるとWOWというキーワードはLINEにとって重要な考え方だといいます。WOWはLINEのコアバリューで、「ユーザーを感動させる初めての体験」であり、「思わず友達に教えたくなるような驚き」としています。
また、WOWの文字をな斜めに見るとNO1という文字が隠れていることから、セグメントを整理していくとナンバーワンの技術という意味も込められています。
また、大きなマーケットリードするGAFAに対し、LINE BRAINは日本語などのアジア言語にフォーカスし、リードをとり、欧米の企業に比べて優位性がある状況を作りたいとしています。
ニーズのに合わせたチューニングに関しては、オペレーターが自分でAIのモデルをチューニングできる「Builder」という機能を提供していき、AIエンジンと相互に連携できるようにしていくとしています。
またLINEがリーチできるユーザの数は多く、データを取得できるポイントも多岐に渡ります。このリーチを生かし、パートナー企業のデータも保管することで、さらなる強みを発揮できます。
データの欠如が理由に、AIの研究者の研究が進まないという課題を解決できるのではと自信をのぞかせました。
DUETのデモを公開!
砂金氏は、LINECONFERENCEでも行われたDUETのデモを再度実演しました、
プロダクトロードマップ
LINE BRAIN室 プロダクト企画チーム マネージャー 佐々木 励氏より、LINE BRAINのプロダクトロードマップについて紹介されました。
LINE BRAIN全体としては、大きく4つのステップが考えられています。今回、PoC(実証実験)を2019年7月23日から提供開始していきます。
その後、クローズな形でSaaS展開を行い、2020年には一般開放する予定です。
プロダクト別の詳細では、チャットボットが2019年7月23日から始められ、OCRは開発中で3Q中に実証実験を開始します。
音声認識(SPEECH TO TEXT)や、音声合成(TEXT TO SPEECH)、テキスト分析(TEXT ANALYTICS)に関しては、年末ぎりぎりになるかどうかのスケジュール感で開発が進んでいます。
DUETに関しては2020年にはPoCとして提供できるように考えているとしています。
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