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2019.08.08

エッジAIが実装された世界はどうなる?自動運転や第四次産業革命の未来とは

最終更新日:

AIの活用が進むにつれて、さらなる小型化が求められています。あらゆるところでAIの活用が進めるには、低コストで早い処理が可能な技術開発を行わなければなりません。2019年、AI業界において大きな広がりが見込まれています。

グローバルな通信事業者の意思決定者の27%が、2019年にエッジコンピューティングの実装あるいは拡大を計画していると答えています。※

注目されるエッジAIについて、エッジAIの研究開発を行う「AISing」を取材し、シリーズを通してエッジAIの可能性についてお伝えしていきます。

▼前回の記事はこちら

取材に応じてくれたのは株式会社エイシング 代表取締役CEOの出澤純一さんです。

自動運転やファクトリーオートメーションなど世界が注目している領域で、今後不可欠なエッジAI。エッジAIが進化すると具体的にどのようにこれらの領域に影響を与え、世界が変わっていくのか。現状の課題も含めて解説していきます。

※出典:「Forrester Analytics Global Business Technographics Mobility Survey,2018」

株式会社エイシング 代表取締役CEOの出澤純一氏

エッジAIはどのように世界を変えていくとおもいますか?

エッジAIの活用が進むことで、どのように社会を変革していくのでしょうか。今までのようなクラウド型の中央集権的な計算に比べ、たくさんのデバイス上の知能が組み合わさることで「集合知」を生み出すことができると出澤氏は強調します。

出澤氏:エッジAIによってデバイス自身が賢くなり、デバイスの知能化がより進んでいくと思います。

それによってデバイスで鍛えられた知見が、連携や統合などをすることで社会集合知を生み出し、効率的な社会を実現できると考えています。

おそらく5G、IoT関連とも密接に絡みながら、エッジAIはファクトリーオートメーション領域やモビリティ・自動運転領域、もう少し先の10年後には核融合制御などの複雑な応用用途にも活用が広がっていくと思います。

これらの技術による変革により業態変換が起こるのではと考えています。たとえばデータ所有権をもつビルオーナ会社がそのデータを活用しビル空調コントローラを開発し、空調メーカにシステムを販売するなどの大きなビジネス構造の変化が起きるのではと思います。

エッジAiの浸透は、すなわちAIの活用が社会の隅々まで進むことを意味します。AIの活用が進む上で、企業が持つデータの価値が向上し、新たなビジネスのチャンスが生まれると考えられます。

今後は、エッジAIの勢いも相まって、データの売買も盛んになるかもしれません。

具体的には製造業や自動運転において、どんな影響を与えるのでしょうか?

具体的には、製造業や自動運転の領域において、エッジAIはどんな影響を与えるのでしょうか。

出澤氏:オムロンさんとのファクトリーオートメーション領域の事例では、巻取り線機の振動抑制制御において、数百マイクロ秒のオーダーで学習と予測を行うことで、従来の制御技術では10秒かかっていたものを、機器特性が動的に変化しても瞬時に3秒で補正することに成功しています。

巻き線機におけるエッジAI活用の事例。従来であれば、20mほどの不良品が発生していたが、制御周期 (125 μ秒) 毎に、数十ミリ秒先の影響を予測する 制御+超現場型AI技術により不良品廃棄が1/3以下に。

出澤氏:シミュレータ上での実験にはなりますが、車がアイスバーンのような状態の路面環境でスリップをしてしまう状況において、スリップを想定した予測制御を実現しています。ロボットアームにおいては、手先位置が個体差でズレが生じる場合に、その場でロボットアームの個体差に合わせて学習し、ズレの自動補正を実現しています。

自動車の一例では、運転手の属性(年齢、性別など)に合わせて最適なアクセルサポートを行う事例や、バッテリーの個体差を補正し最適な充放電制御の実現や、自動運転車における予測制御による乗り心地の改善などが考えられます。

個人的には、ハイドロプレーニング現象のような制御不能状態においてもその場で学習し予測補正を行うことで事故を被害を最小限に留められるようなこともできるのではと思っています。

核融合制御においては、従来の物理、量子力学と現状のコンピュータ性能では核融合反応を維持するための制御システムの実現が困難です。そこでエッジAIで実測データから高精度なシミュレータを構築し、環境のゆらぎを即座に制御に反映することで安定した核融合反応を実現できるのではないかと考えています。

エッジAIの導入での技術的課題はなんですか?

さまざまな部分でAIの活用が進むことで、より効率的な社会が実現できるエッジAI。しかし、エッジAIは完璧ではなく、もちろん課題もあります。

エッジAI導入の課題や社会的な障壁について伺いました。

出澤氏:エッジということはデバイスに実装するわけですが、実際のデバイスはハードウェアのメモリやCPUなどの制約があるため、その要件を満たさないとそもそもAIを実装できません。

したがって省メモリ化、省電力化が必要になってきます。

単に省メモリ化と言っても非常に技術的には高度な作業を要します。Pythonで記述したものを実装しようとしてもメモリや処理速度の問題から、中身のアルゴリズムを理解してさらにハードウェア制約を考慮しながらC++、C言語で書き直す必要になる場合もあります。

つまりAI(ML)知見、プログラミングスキル、組込技術の三拍子が揃わないと最適なものができません。

エッジAIは、スリムに動くように処理速度の問題を解決する必要があるとのことでした。ソフトウェアだけでなくハードウェアの知識が必要です。

出澤氏:社会的な障壁では、エッジAIはデバイス機器に実装されることがほとんどです。実装される機器の品質安全性の担保が必要になってきます。デバイス機器メーカも安全性が担保できないと販売した際の瑕疵責任リスクが生じるため消極的になる面もあると思います。しかし、いわゆるISOなどの規格を適用できれば、ある程度は解消できるとは思っています。

国としての法整備、仕組みづくりも積極的に行っていく必要があると思います。

エッジAIの導入のポイントはどのように見極めればいいですか?どんな会社が導入に向いているのでしょうか?

エッジAIはどんな企業が導入に向いているのでしょうか!?出澤氏は大きく2つの点で、エッジAIに向いている企業について教えてくださいました。

出澤氏導入に向いている会社は以下の2種類あるかと思います。

1つ目は既存の製品やサービスなどのソリューションにEdgeAIを実装することで機能付加価値がつけられる会社です。

2つ目は既存製品または開発予定の製品などで業態変換を見据えて投資を行える会社です。

実際に導入するにあたっては、実装するデバイスのハードウェア制約、つまりAI、機械学習を実装できる余力があるかということが一番大事だと思います。クラウドでハードウェア制約がそこまでない場合とは大きく異なりハードウェアが関わるとその点が相当にシビアです。

さいごに

エッジAIが実現すれば、あらゆるところでAIの恩恵を受けることができます。一方で技術的な課題も多く、これからさらなる研究・開発が必要です。

もし、エッジAIに向いていると思う企業があれば、ぜひエッジAIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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