あなたの街と地球の海を守るため、AIと共にごみ問題を解決する

先月、タイの浜辺で保護されていたジュゴンの赤ちゃんが、プラスチック片を飲み込んで死んでしまうというショッキングな出来事がありました。G20サミットの主要テーマの1つとしても扱われた海洋プラスチック問題は、全世界で解決するべき大きな課題となっています。

マイクロプラスチックなど海に漂うごみの多くは、市民生活によるものです。街に放置されたポイ捨てごみはやがて海へ流れつき生態系を破壊していきます。そこで今回は街から海の環境を変えていくため、ポイ捨てごみ問題をAIで解決していく試みを紹介します。

ポイ捨てごみは、やがて海に流れ着く

たばこのポイ捨てが海の破壊につながる

海洋プラスチック問題の原因となっているごみについて、ペットボトルやストロー、ビニル袋などをイメージする方は多いかもしれません。しかし、たばこのポイ捨てが海洋プラスチック問題と密接に関係していることはご存知でしょうか。

世界中のビーチでクリーンアップキャンペーンを行っている環境保護団体Ocean Conservancyによると、2017年の1年間で彼らが回収したたばこのポイ捨てごみは約240万本にのぼり、その数はペットボトルやビニル袋などその他のプラスチックごみを上回りました。

たばこのフィルターは、セルロースアセテートという一種のプラスチックでできています。半合成ポリマーであるセルロースアセテートは、微生物などによって分解することができない非生分解性でありながら、光で分解される性質をもちます。そのため、日光で細分化されたフィルターが海中を漂い、長い間残り続けます。(Novotny et al. 2009

出展:PhotoGrafixによるpixabayからの画像

海のごみの8割は、街から来ている

海岸に溜まったごみが海に流れるのを防ぐため、環境保護団体などによって日々海岸の清掃活動が行われています。しかし、ボランティアの方々だけの力では、海洋ごみ問題を解決することはできません。多くの人々が生活する街で出されたポイ捨てごみは、やがて海に流れ着くからです。

国連の海洋汚染専門家会議(GESAMP)の推算によると、海洋ごみの8割は陸地から流れ着いたものだそうです。その要因の1つとして、街でポイ捨てされたごみが雨天時に下水道を流れ、川や海へ放出されていることが挙げられます。(Allsopp,et al.,2006)

海洋ごみの削減に向けた取り組みを推進している日本財団「海と日本プロジェクト」では、より多くの人に海と街の繋がりを再認識してもらうための活動が行われています。都市に生活する人々にとって海洋ごみ問題は無縁のように感じてしまうかもしれませんが、街の汚れは海の汚れに繋がるという意識を持つことが問題解決に向けた第一歩となりそうです。

ポイ捨てのない街をAIで

海洋ごみ問題を解決するには街でポイ捨てされるごみを減らすことが重要だと指摘してきました。街のポイ捨てごみを減らすための具体的な対策を打ち出すには、ごみがポイ捨てされる要因や場所を特定する必要があります。そこで、AIを用いたポイ捨てごみの調査、分析を行い、自治体における施策に活用する動きが見られます。

株式会社ピリカが提供するポイ捨て調査、分析システム「タカノメ」は、人工知能を用いた画像認識技術でポイ捨てごみの分布や深刻さを計測できます。

これまで行われてきた美化施策について、この会社は次のような課題を指摘しています。

これまで日本の各地では様々な美化施策(条例の制定、美化清掃活動、意識啓発のキャンペーンや掲示)が行われ、多くの予算や人員が割かれてきました。しかし、ポイ捨ての深刻さを測る方法や基準が存在しないため、活動の効果測定や、現状把握ができずにいます。効果が測られなければ取り組みは自己満足に終わってしまいかねません。(「株式会社ピリカ」ホームページから引用)

そこで株式会社ピリカは、ポイ捨て調査システム「タカノメ」を開発し、これまで不可能だった広範囲・同一精度・低価格のポイ捨て調査・分析・研究を可能にしました。専用のスマホアプリで路上を動画撮影し、独自開発された画像認識システムを用いて、撮影した動画中に写ったごみの種類や数を解析します。目視で品質チェックを行った後に、ヒートマップや報告書が作成されます。

既に多くの自治体がタカノメを導入し、ポイ捨て状況の把握や施策の効果測定を始めています。調査で得られたポイ捨てごみの種類、数量、分布などのデータを活用し、様々な分析・研究・提案が行われています。大学や企業の研究機関との共同研究も実施されているようです。

出典:株式会社ピリカ|ポイ捨て調査・分析 「タカノメ」

SDGsから捉える街と海のごみ問題

このように街や海のごみ問題は、SDGsの17個の目標のうち複数の項目にまたがる大きな課題であることが分かります。それぞれのターゲットを同時に達成すためには、ごみの投棄や廃棄物の処理における街と海の関わりを理解することが必要です。

海洋汚染を防止する(ターゲット14.1)ためには、海への排水の質を改善する(ターゲット6.3)必要があり、そのために都市の廃棄物を適切に処理しなければならない(ターゲット11.6)というつながりが見えてきます。

さいごに

今回の記事では、街で出されるポイ捨てごみが海の汚染に大きく関わっている問題を取り上げ、ポイ捨てごみをAIを利用して減らしていく株式会社ピリカの取り組みを紹介しました。

SDGsの視点で捉えると、持続可能な街と海の未来を守るためには、街のごみ問題を解決しなければならないということがより明確になりました。

未来技術推進協会では、今後もAIを活用した社会課題解決の事例を紹介していきます。SDGsへの理解を深めながら、AIで社会課題を解決するためのヒントにして頂けると幸いです。

ライター:神山雄樹
未来技術推進協会ではSDGsワークショップのスタッフとしてSDGsの理解と啓蒙に取り組んでいる。大学4年の現在、航空機の空気力学特性の研究に努めている。
2019年10月21日 2019年10月21日更新

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