HOME/ AINOW編集部 /【切磋琢磨し合ったヤフーとLINEがONE TEAMに】GAFA・BATなど相手に、世界をリードするAIテックカンパニーへ
2019.11.19

【切磋琢磨し合ったヤフーとLINEがONE TEAMに】GAFA・BATなど相手に、世界をリードするAIテックカンパニーへ

最終更新日:

2019年11月18日、ヤフーの親会社であるZホールディングス株式会社と、LINEが東京都内で共同記者会見を開き、両社の経営統合について説明しました。

共同記者会見には、Zホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏とLINEの代表取締役 CEO 出澤剛氏が出席、経営統合について詳しく説明されました。

両社は既存のリソースのシナジーを生み出すことで「AI テックカンパニー」になることを表明しています。この記事では、記者会見の模様とともに、両社が築く「AI テックカンパニー」についても詳しく解説します。

フォトセッションで握手を交わすZホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏とLINEの代表取締役 CEO 出澤剛氏

ヤフーとLINEの経営統合の概要

ZホールディングスとLINEは2019年11月18日に取締役会を開き、両社の経営統合について、「資本提携に関する基本同意書」を締結すると決議。両社は2020年10月までに経営統合することに基本同意しました。

今後は、Zホールディングスの親会社であるソフトバンクと韓国のネイバーが50%ずつ出し合う会社を設立し、その傘下にZホールディングスを置き、ヤフーとLINEを子会社化します。

統合後の両社の形

記者会見では、まず両社長よりプレゼンが行われました。

今までは切磋琢磨する関係だった両社はONE TEAMを目指す

まず冒頭に強調されたのは、両社の結束の強さです。今までライバルとして切磋琢磨してきた両社ですが、今後は「ONE TEAM」として結束していく意思が強く示されました。

川邊氏:統合の考え方は、「対等の経営」です。対等の精神に基づいて、これから両社で相談をして、進めていきたいと考えています。

Zホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏

出澤氏:昨日まで、我々は切磋琢磨する関係にありました。

Yahoo! Japanさんは「ユーザの生活を!(ビックリ)するほど便利に」を掲げており、日本のインターネットを作り、確固たる地位を築いてこられました。一方、我々LINEはコーポレートミッション「WOW」を掲げ、その中でLife on LINEなど申し上げまして、ユーザの生活をLINE上で便利にしていこうとやってまいりました。

共に近しいビジョン、思いを持ちながらこれまではライバルというか切磋琢磨する関係だったということであります。

それが今日、11月18日お互いに手を取り合って、さらなる高みを目指していこうという大きな決断を下しました。

川邊氏:ラグビーのワールドカップが今年、日本で行われまして、日本代表が活躍して大いに盛り上がりました。そこで「ONE TEAM」という流行り言葉も出てきましたけれども、我々はそれに乗っかって、最強の「ONE TEAM」を目指していきたいと考えております。どうぞ出澤さん、よろしくお願いいたします。

握手を交わすZホールディングス 代表取締役社長 CEO 川邊健太郎氏とLINEの代表取締役 CEO 出澤剛氏

川邊氏:ラグビーのワールドカップ、感動しましたよね。試合も終わったあとにラグビーではジャージをお互いに交換していましたが、今日我々はそれぞれコーポレートカラーのネクタイを交換して、ヤフーの赤とLINEの緑をつけさせていただいています。このように統合が果たせたあかつきには、我々は最強の「ONE TEAM」を目指していきたいと思っています。

統合の先にあるのは世界をリードする「AI テックカンパニー」

次に示されたのは、両社の結合の先に目指す姿についてです。両社は「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」を掲げ、日本を取り巻く課題や、成し遂げたい志を語りました。

川邊氏:我々がこの統合を果たしたあかつきに、何を目指すのか、これが一番大事ですけども、今日新たに発表させていただきますのは、我々が2社統合を果たした上で、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」を目指していきたいと思います。

出澤氏:経緯から申し上げますと、ここ数年間、川邊さんと私と、経営陣を含めまして、年に1度くらい情報交換の会をさせていただいておりまして、川邊さんから「何から大きいことを一緒にしましょう」と毎回おっしゃっていただいていたんですけれども、その都度、具体化には至らなかったんですけれども、今回は我々思うところがありまして、ぜひ検討を進めましょうということで両社の親会社も議論しながら、そして2社で深いディスカッションをしながらこの発表に至っているということでございます。

なぜ、ここに至るのかというと、2つの強い危機感と、我々が成し遂げたい共通して持つ大きな志であります。

LINEの代表取締役 CEO 出澤剛氏

グローバルテックジャイアントの存在

危機感の1つ目として紹介されたのはグローバルテックジャイアンとの存在です。

出澤氏:インターネット産業は、人が大事な産業ですけれども、その人が国をまたいで働くことができるので、例えば、優秀な人材やお金やデータのすべてが強いところに集約してしまうという、「winner takes all」というビジネス構造を持っております。残念ながら、そうしますと、強いところはもっと強くなっていって、それ以外のところとの差がどんどん開いていく、そういう構造にある産業でございます。

実際に数字でご説明いたしますと、赤でお示ししているのが、我々が一緒になったあかつきの単純な合算の数字です。それ以外が米中大手の数字です。現状でいうと、2社が一緒になったとしても、時価総額、営業利益、研究開発、従業員数、そのすべてにおいて、桁違いの差がついているのが現状です。日本だけでなくても、例えばヨーロッパや中国以外のアジアの存在感はインターネット産業においては非常に小さなものになり、その差が拡大しているのが、今この瞬間です。

この差が広がっていくのは、個社に対する話だけではなくて、将来的にあらゆる産業のデジタル化が進んでいくので、国力や文化の多様性にまで影響を及ぼす大きな課題だと考えています。

課題先進国 日本

2番目の課題として挙げられたのは「課題先進国 日本」の存在です。

川邊氏:もう1つ大きな我々の危機感は、課題先進国と言われる日本でテクノロジーで解決できる課題がまだまだあり、我々がまだそれを解決し得ていないというところにあります。

これから日本は人口減の時代を迎えていきますけれども、その中で特に最初に訪れるのが労働人口問題ですけれども、これに関してはITができることはたくさんあります。さらに、付随する形で労働人口減少に伴って、日本の生産性が落ち、あるいは社会の効率がどんどん落ちていくと、このあたりはITがもっと活躍できるところがあります。まだ我々がこれを完全にやりきれてるとは思っておりません。

さらに、記憶に新しいところでいいますと、自然災害ですね。今年も大変いろいろなことがありましたけれども、ここでもITはいろいろな形で防災・減災に役立てることができるというような問題意識を我々は持っております。

例えば、Yahoo! Japanが国民的アプリとして提供しておりますYahoo! 防災アプリにLINEアカウントの地方自治体のアカウントが連携するようになれば、もっともっと多くの人を救える、もっともっと多くの災害を防止できるというように考えておりますので、このあたりもっと我々は取り組んでいけるのではないかなと、自分たちの至らなさの危機感を持っております。

大きな志

川邊氏:危機感を共有しながらも、統合を果たしたすえには、大きな志を持って事業を展開していきたいと考えています。その大きな志がなんなのかを、何枚かのスライドを使って説明させていただきます。

それぞれステップがあると思っています。やはり最初は日本に住む人々に最高のユーザ体験を提供していきたいと考えています。日本にフォーカスをしたAIテックカンパニーになりたいと思っております。それによって、先ほど申し上げた日本固有のさまざまな社会課題をどんどん解決していきたいなと考えております。

出澤氏:そして日本からソリューションをタイ、台湾、インドネシア、特にタイと台湾はLINEがナンバーワンのシェアをとっていますので、アジアの国々にも最高のユーザ体験を提供していきたいと言うのが私達の思いです。そして、日本・アジアから全世界に飛躍して世界規模で最高のユーザ体験を提供して社会課題を解決していくような会社になっていきたいと、これが世界をリードするAIテックカンパニーの意味する我々の大きな志になります。

両社が生み出すシナジー

次に紹介されたのは具体的な統合におけるシナジーについてです。

利用者基盤

まず紹介されたのは利用者基盤です、ヤフーは月間利用者数6,743万人、LINEは8,200万人を誇る利用者の他、両社ともに300万を超えるビジネスクライアントを有しています。

この利用者の重複に関して川邊氏は以下のように述べています。

川邊氏:利用者は単純に足し合わせられるものではないと考えています。当然両方とも、日本において愛されているサービスですので重複するユーザがいるという風に考えています。ただし、補完的なユーザ層かなとは思っております。LINEは、アプリにて大成功したサービスですので、若いユーザが多い、一方でヤフーは創業二十数年経っておりましてパソコン時代からのシニアなお客様が使ってくださっています。

また、ユーザの接点においてLINEはスマートフォンのアプリ、ヤフーはスマホに加えてPCや各種ブラウザからもたくさん利用されておりますので、そのような形での利用者基盤の補完関係が両社にはあるのではないかと考えております。

サービス

そして、川邊氏が最大のシナジーとして紹介したのが「サービス」です。

Yahoo! Japanは検索をはじめ、メディアのサービスやファイナンス領域に拡大してきました。最近はEコマースでナンバーワンになるべく、努力を行っております。また、Pay Payはユーザ数が2000万人を超え、フィンテックの事業も拡大しています。

一方でLINEは、メッセンジャーアプリとして成長し、ユーザ同士のつながりを生かして、ニュースやゲーム、音楽やコマースなどのサービスを提供しています。LINEがあれば、すべての生活関連サービスが得られる「Super App」という構想を当初から行ってきました。近年では、フィンテックの事業や、AIの事業にも大きな投資をしています。

このサービスのシナジーにおいても川邊氏は「補完的」であるとアピールしました。

川邊氏:サービスのシナジーも非常に補完的だと思っています。Yahoo! Japanではまったくメッセンジャーのアプリが提供できておりません。それに対してLINEは既に国民的なメッセンジャーのサービスである。一方でLINEは、Eコマースはそれほど力が入っている事業ではないですけれども、ヤフーは近年、Eコマースで頑張っているということで、それぞれの弱い点を補い合えるシナジーがあるのではないかと期待を持っております。

また、記者会見後半の質疑応答のセッションでは、どのサービスが残っていくのかという質問に対して、「競争後に最も利用されているサービスをお互いに補完し合う」と延べ、統合完了を目指す2020年10月までは、引き続き両社それぞれでサービスの拡大にあたっていく旨が示されました。

グループ

次に紹介されたシナジーは株主も含めた「グループ」です。

ヤフーの株主では、ソフトバンクが代表的です。ソフトバンクは今後、5Gの領域に進出していきます。また、Y! MobileやLINE Mobileなどのサービスを提供しています。また、ソフトバンクは「Beyond Carrier」ということで通信以上のサービスも提供しようとしています。特に移動の分野では、DiDiなどMaaS領域で取り組みを進めています。

LINEの株主であるNAVERは韓国でナンバーワンのポータルサイトで日本におけるヤフーの存在に近く、検索を中心にさまざまなサービスを展開しています。カメラアプリ「SNOW」や3Dアバターの「ZEPETO」などの提供も行っています。また、AIにおいてはLINE Clovaの共同開発を行っています。

人材

次に掲げたのは「人材(人財)」です。社員数は両社をあわせると2万人を超え、デザイナーやエンジニア、データサイエンティストだけで数千人規模に達します。デジタル時代に数千人の人財が未来を作るシナジーへの期待も示しました。

年間投資額

また、両社の投資額を合わせると年間1000億円規模になります。今後、これまで以上に大胆な投資を行っていく意思を出澤氏は示し、統合が完了すれば共通化する部分も生まれ、今まで以上に集中して迫力がある投資ができるとしました。

シナジーを活かすのはどの領域!?

出澤氏:メディアやコンテンツの領域では双方のデータを適切に利用することによって、ユーザの許諾をいただきながら適切に利用することによって、今まで以上に一人ひとりのユーザに寄り添ったサービスをお届けできるのではないかと思います。広告領域においては、検索やディスプレイなど相応のソリューションを組み合わせた形で新しい価値を提供できると思います。

コマースにおいても、メッセンジャーとECの連携による新しい価値観、新しいユーザ体験を生み出せると考えています。そして、両社が積極的に推進しているフィンテック分野、特にペイメント事業においては、両社の強みをかけ合わせて、ユーザ、店舗の双方に利便性を飛躍的に向上させることができると思いますので、スピードアップ、スケールアップをしていくと、そしてそれはO2Oの事業や銀行をはじめ、フィンテックの事業というペイメントの先につながっている事業の非常に力強い垂直的な立ち上げにつながっていくものと確信をしています。

出澤氏:そして、これらのサービス群の中心となるのがAIのテクノロジーです。今の時代はインターネットの時代からAIの時代に移行しつつある、その時期だと考えています。携帯回線はこれから5Gにどんどんなっていって、高速化していきます。その中ですべてのデバイスがインターネットにつながるIoTの時代になります。

日常の行動の多くの部分がデータ化されて残っていく時代です。これはユーザ側から見てみるとインターネットと日常生活が、よりシームレスに意識せずにインターネットに触れ合っている、もっと便利になっていく時代になっていきます。その基盤となるのがこのAIのテクノロジーだと考えています。AIのテクノロジーによる新しい課題解決、新しいインターフェース、新しいユーザ体験、我々はこの領域に積極的かつ中長期的に集中投資をしていきたいと考えています。

そしてその挑戦の中からさまざまな新しい価値を創造して、日本・アジア・世界の利用者のみなさんの生活に資するような、そんな存在になりたいと強く願っています。これが日本・アジアから世界をリードするAIカンパニーの意味でございます。

 

経営体制

最後に両社の経営体制について説明がありました。

統合後の経営体制については、Z ホールディングス株式会社が統合会社となり、その下にYahoo! JapnとLINEが100%子会社として位置します。Zホールディングスは東証一部上場企業を継続し、その上には株主がいます。現在の想定では、一般株主が35%、大株主であるジョイントベンチャーが35%の比率になると予想されています。このジョイントベンチャーは、ソフトバンクとNAVERが50:50の比率で所有します。Zホールディングスはソフトバンクに連結する予定です。

また、経営体制に関しては、川邊氏と出澤氏がCo-CEOとなり、共同代表制を採用します。また、代表取締役社長に関しては、川邊氏が引き続き務めます。

統合までのスケジュールに関しては、2019年11月19日に基本合意書に締結、2019年末〜2020年始にかけて最終契約を締結、その後は各種の申請や審査、手続きを行い、2020年10月を目標として経営統合完了する予定です。

関連記事

無料メールマガジン登録

週1回、注目のAIニュースやイベント情報を
編集部がピックアップしてお届けしています。

こちらの規約にご同意のうえチェックしてください。

規約に同意する

あなたにおすすめの記事

生成AIで“ウラから”イノベーションを|学生起業家が描く、AIを活用した未来

特許技術×AIでFAQを次のステージへ|Helpfeel

GPUの革新からAI時代の主役へ|NVIDIA

あなたにおすすめの記事

生成AIで“ウラから”イノベーションを|学生起業家が描く、AIを活用した未来

特許技術×AIでFAQを次のステージへ|Helpfeel

GPUの革新からAI時代の主役へ|NVIDIA