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同氏によると、新型コロナウイルスの流行が2月末頃から北米でも深刻化した結果、3月のデータサイエンス求人市場において以前には見られなかった変化が生じました。そうした変化の要点をまとめると、以下にようになります。
- データサイエンス職の求人数は全体的に減少している。しかし、求人を出す企業の業種によって減少幅が異なる。リアル店舗を展開している企業の求人は大幅に落ち込み、反対にSlackやZoomのようなリモートワーク関連企業は大幅に求人を増やしている。
- 既存のデータサイエンティストを対象としたレイオフや一時帰休、あるいは給与削減の事例はまだ多くない。
- 採用が内定後、取り消されるという事例が数例報告された。こうした事例は、以前にはなかった。
- リモートワークが常態化した。
以上の変化をふまえて、データサイエンス職志望者と既存のデータサイエンティストに対して、以下のようにアドバイスしています。
- 既存のデータサイエンティストは、レイオフの対象とならないように、自分が会社にとって必要不可欠な人材であることをアピールする。
- データサイエンス職志望者は、コールドメールやLinkedin等を使ってオンラインでコネを作る。
- ビデオ面接時に通信環境が不安定な場合、素直にその旨を面接官に伝えるべき。
- コロナ禍の影響の少ない企業の求人に応募するようにする。
さらに同氏は、リモートワークが世界的に常態化した現状は、地方在住者にとってチャンスであることを強調しています。というのも、リモートワークの普及によって地理的な参入障壁が撤廃されたからです。
本記事の内容は北米のデータサイエンス求人市場の傾向と対策をまとめていますが、日本の求人市場の現状と似ているところもあるのではないでしょうか。とくに、リモートワークの普及とその効果に関しては、全世界的に共通しています。それゆえ、今こそ日本の地方在住者が都市部に偏りがちだったデータサイエンス職を目指すべきなのかも知れません。
なお、以下の記事本文はEdouard Harris氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。
私はデータサイエンティストが採用されるまで無料で指導する会社で働いている。データサイエンティストが採用された時にしかお金を稼げないので、アメリカのデータサイエンス求人市場の詳細な情報や、リアルタイムでどのように変化しているかを知っている。誰がどこで採用されているのか、どれくらいのオファーを受けているのか、オファーの交渉プロセスの詳細、その他多くのデータを知っているのだ。
この記事では、この1ヶ月間(※訳註1)にデータサイエンスの求人市場で見られたことを嚙み砕いていこうと思う。この情報の一部は先週のTwitterのスレッドで発表したが、この記事ではより詳細な情報を伝えていこうと思う。
以下の統計はすべて、当社のメンターシッププログラムの内部データに基づいている。私たちは、どのメンティーがいつ、どこで、誰に雇われているかを綿密に追跡している。広範なデータサイエンス求人市場の推定として完璧ではないものも、当社の規模と地理的到達範囲に基づけば、ほぼ近いと見て間違いない。
雇用の減速 📉
3月の雇用は全体的に減速しており、データサイエンティスト市場にいたっては約6~7割の割合で減少している。実際、一時的に雇用がゼロになると予想していたが、少なくともそうはならなかった。
この減速の影響は非常にばらつきがある。(ファッションブランドの小売店など)顧客の物理的移動に依存している企業は大きな打撃を受け、採用を凍結し、レイオフや一時帰休(※訳註2)を行っている。TwilioやAirtableのようなBtoBソフトウェア企業は、ほぼ通常の採用を行っている。SlackやZoomのようなリモートワークを実現する企業は採用を加速させている。
これまでのところ、3月の同時期に比べて4月に採用されたメンティーの数は増えている。しかし、まだ月初であり、状況は急速に変化している。
一時帰休とは、社員の雇用を維持したまま、社員を一時的に休業させること。休業中でも賃金が支払われるが、満額ではない。
ちなみに、日本で言うところのリストラは、本来は「再構築」を意味する’ restructuring ’( リストラクチャリング)を意味しており、解雇を指す言葉ではない。しかし、再構築の手段として社員の解雇が慣わしとなってしまったので、いつしか「リストラ」が解雇を意味するようになった。
求人取り消し 📃
3月には、最終的に決まった求人が予告なしに取り下げられたことが何度かあった。実際に署名された契約書があったうえでの取り消しだ。例えば「給与は数千ドルで月曜日からのスタートです。歓迎します!」のような企業からの通知があったにもかかわらずだ 。だが、そんな求人が取り消された。こんなことは前代未聞だ。3月以前の18ヶ月間はゼロ回だった。
オファーを取り下げた企業の中にはスタートアップもあれば、聞いたことのあるような大企業もあった。誰が内定を取り下げるのか、あるいは取り下げないのかを予測することはできなかった。この点は注意すべきだ。
4月に入ってからは、今のところオファーの撤回は見られない。ほとんどの企業が採用計画を調整していると思われるので、こうしたことは少なくなるだろう。
レイオフ 😬
レイオフについては、まだ多くのデータサイエンティストが見舞われていない。これまでのところ、影響を受けているのは我が社のサービスの卒業生の3%だけだ。この数値には、一時帰休とレイオフに相当しない減給の両方が含まれている。
レイオフを行う場合、ほとんどの企業は早期に1回限り、しかも深く切り込むものだ(※訳註3)。こうしたレイオフの手法は、残った従業員の不確実性とリスクを軽減するのに資する。もし会社がこの戦略を採用していて、あなたが最初のレイオフを生き残れば、あなたの仕事は中期的には安定する可能性が高くなるだろう。
解雇されることを心配しているのであれば、最初の防衛線は必要不可欠な存在になることだ。会社のお金を節約したり、会社に付加価値をもたらしたりする方法を探そう。その方法が、あなたの業務範囲外であってもだ。しかも、頼まれてなくてもそうしよう。ほとんどの企業はレイオフをしたくない。あなたがもたらす価値が高ければ高いほど、あなたは会社に残る可能性が高くなる。
(企業経営者向けのアドバイス:あなたの企業が給与削減する必要がある場合は、大多数の社員を対象としたレイオフの代わりに一時帰休を検討してください。一時帰休はあなたの従業員にまだ仕事を持っているという見通しに加えて、新しい仕事を探すことができるという柔軟性を与えるでしょう。こうするのが正しいのです。)
求人の応募について 📨
現在目にする求人票のいくつかは不発弾のようなものだ。多くの企業が新型コロナウイルスのせいで社内での職種募集をキャンセルしているが、まだ求人情報は削除されていない。求人サイトを使って応募するのは決して良い戦略ではないのだが(※訳註4)、不発の求人情報があるため、今ではさらに難しくなっている。
対面でのネットワーキングも、(コロナ禍の最中という)明らかな理由からお勧めできない。
より効果的なのは、コールドメール(※訳註5)やLinkedInの探索だ。これらを上手に行うには多くのディテールを詰めないとならないが、簡単に説明すると次のようになる:1)企業についてのリサーチを行う、2)思慮深く、よく練られたメッセージを送信する、3)自分が築いたものや達成したものを具体的に伝える。
興味深いことに、相手があなたのコールドメールやLinkedInのメッセージに返事をするかどうかの大きな要因は、その相手に子供がいるかどうかだ。子供のいない人は家で退屈していることが多く、返事をしてくれる可能性が高くなる。反対に子供のいる人は子供の世話で忙しいので、返事をくれないかも知れない。最近は保育園が休園しているのでなおさらだ。
オンライン交流会もネットワーキングにはいい手段かも知れない。この手段の効果については、まだはっきりとしたことは言えない。しかし、私たちのメンティーの中には、積極的に試している人もいる。
以上をふまえて、データサイエンス職を得るために有効な手段として、交流会などに参加してエンジニアとのコネを作ることが推奨されている。
ちなみに、AINOW翻訳記事作成に際する翻訳許諾交渉は、すべてコールドメールを始まりとしている。
ビデオ面接 👨💻
もし面接を受けることになったら、十中八九Zoomを使って面接を受けることになるだろう。Zoomは非常に安定した動画プラットフォームだが、それでもインターネット接続がしっかりしていることを確認するようにしよう。あなたが素晴らしい接続を持っていない場合は、インタビューの開始時にそのことに言及しても大丈夫だ。ほとんどの面接官は理解し、多少の通信遅延は許してくれるだろう。
(Zoomにはあなたが画面を見続けていることをミーティング主催者に知らせる設定が以前あり、この設定が就職面接における決定要因として簡単に採用されてしまった。幸いなことに、この設定は最近削除された)。(※訳註6)
どこでもリモート 🌎
コロナ禍の渦中でもよいニュースがある。ほとんどすべての仕事が突然リモート化されたのだ。地理的な障壁は一夜にして消滅した。以前よりもはるかに広い範囲の企業に応募できるようになったのだ。このことは特に地方在住者にとっては素晴らしいことであり、多くの点で競争の場が平準化されたのだ。
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以上に述べたような状況が続いているが、私たちはまだこのパンデミックの初期段階にいる。今後数ヶ月で何が起こるか予測するのは難しい。しかし、今のところデータサイエンスの仕事に就くのは困難ではあるが不可能ではない。この職種で職を得るコツは、ロックダウンの影響をあまり受けていない企業を見つけることにある。
データサイエンスの求人市場(特に北米)を渡っていく方法についてアドバイスが必要な場合は、私のTwitterをフォローして頂ければ、お役に立てるように努力します。
皆さん、頑張ってください。❤️
原文
『What’s happened to the data science job market in the past month』
著者
Edouard Harris
翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1取得)
編集
おざけん