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2020.11.06

平井デジタル担当大臣 ”全てが中途半端だったデジタル化、これからは日本流のデジタル社会を目指す”【AI/SUM2020 レポート】

最終更新日:

 

2020年10月19日〜22日にかけて東京・日本橋とオンラインのハイブリッドで開催された「AI/SUM 2020」において、デジタル改革・IT担当大臣の平井卓也氏が10月21日に登壇し、デジタル庁のミッション、AIの利活用とこれからについて語りました。

平井大臣は、第4次安倍内閣の時代から情報通信技術(IT)政策を担当し、2020年9月に発足した菅政権ではデジタル改革担当大臣を務め、今日まで日本のIT政策に尽力、貢献してきた人物です。

また、菅政権では行政のデジタル化を促進するためにデジタル庁を新設することを打ち出しており、平井大臣はその新設に向けた法案準備室の室長も務めています。

日本のIT発展を牽引するリーダーである平井大臣が今年のAI/SUMで何を語ったのか。その内容をレポートします。(※講演内容は一部割愛しています。)

AI/SUM2020での菅総理の挨拶はこちら▼

平井大臣 冒頭あいさつ

みなさん、こんにちは。ただいまご紹介いただきましたデジタル改革担当大臣の平井です。昨年の大臣の時にもAI/SUM2019にお招きをいただき、AI戦略に関してお話したかと思います。

昨年大臣を退任するときに、思わず私自身の言葉としてお話したのは、「当時私が担当していたIT担当大臣の所長と権限ではデジタル化はおそらくうまくいかないだろう、デジタルを進めていくには省庁横断で一気に進めなくてはいけない」ということです。

それから1年間、党で色々な政策をつくってきました。その中でも今回のデジタル庁の創設のプランもあったわけですが、その役目がまさか自分に回ってくるとは思ってませんでした。しかし今、やりがいのあるポストにつくことができまして、「走りながら考え、いろんなことを決断しながら、立ち止まらずに一気にいこう」というような状況です。

そういう状況で今回AI/SUMにお招きしていただきましたので、デジタル庁がどういう経緯で、今どういう状況で、何をするのかを簡単にお話させていただければと思います。

コロナで浮き彫りになった日本のデジタル化の「中途半端さ」

2019年、私はIT担当大臣としてデジタル手続法を成立させました。しかし、世の中法律ができてもなかなかその方向に一気に動かないというもどかしさがあったという風に思います。

そういうものを今までの(ゆっくりとした)スピードでやれなくなった、マインドセットを変えるきっかけになったのが、今回のCOVID-19だったと思います。私は2020年をあとで振り返っても歴史の転換点となるだろうと思っています。今回のことを私は「デジタル敗戦」だと申し上げています。これまでの投資してきたIT政策が、(新型コロナ感染拡大で経済が落ち込んでいる時に)国民の期待に答えることができなかったという反省から、私が自民党デジタル社会推進委員長だったときに作られたのが『デジタル・ニッポン2020』です。今やろうとしていることの多くがここに書かれています。

デジタル敗戦という意味で、アメリカやヨーロッパなどと比較してみると、光ファイバーや通信カバーエリアなどのインフラは決して負けていません。これは2001年に施行されたIT基本法の目標でもありました。その目的は達成しているにも関わらず、これだけパフォーマンスが悪かったというのは、全てが中途半端になっていたからではないかと考えています。一部ではデジタルで使えるものがあるが一方では使えないとか、最後までデジタルで完結してないとか、本来ならもっとやり方を見直してからやるべきとか。

それが今回のコロナで大きく見直され、デジタルへの注目が高まっています。今回の総理のデジタル庁を創設せよという私への指示は非常に時期を捉えたものだろうと思います。

『デジタル・ニッポン2020』10ページ引用

今回、日本の今までの状況を考えた時に、デジタル化は今までのやり方を根本的に変えるということをしなくてはいけません

特にDXが大事だと思っていて、河野大臣と一緒にやっているのは規制改革の部分です。たとえば公務員制度の問題など根本を見直してから進められるものも多いです。ハンコ廃止もそうです。「ハンコって意味ないんじゃないの」という疑問から始まるわけです。

それ以外にも、教育、医療、防災など、すぐ変えられるものはデジタル庁がスタートする前にも進めていきます。このように今すぐ変えられるものに関しては、デジタル庁が始まる前に全部決めて、いつまでにやるというのをはっきりさせようとして今進めています。

▼DXについて詳しくはこちら

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デジタル化のプロセスを透明化 -重要なのは国民からの理解

デジタル化を進めるにあたって、我々が一番忘れてはならないのは、デジタル化というのは手段であって目的ではないということです。それはあくまでも人間中心で、利用者が納得しなくてはやる意味がないと思っていて、そのために目指すべきデジタル社会というのはどういう世界なのかというのを一般の方々に理解してもらうことが重要だと思います。

なので、デジタル化が進むプロセスを透明化すると同時に、「なぜやらなくてはいけないのか」というのを、IT基本法を抜根的に改革をするということでお示ししたいと思います。

IT基本法を制定の時(2001年)に中心的な活躍をしていただいた慶應義塾大学の村井純先生に座長を引き受けていただき、これまでの20年というのを振り返って、どのように国民と共有しなくてはいけないかを活発に議論をしています。

“デジタルを意識しない”、日本流のデジタル社会へ

最終的に極論すれば、『デジタルというのを意識しないデジタル社会』いうのが最終目標だと思っています。QOLが高い、人間に優しい社会がどういうものなのかということを考えていくうえで、日本流のデジタル社会というのはNo one left behind、「格差を作らない、だれも取り残さない」ということが非常に重要であるということを考えています。

中国流のデジタル化、アメリカのGAFA主体のデジタル化、このどちらも日本には馴染まないと思っていますし、おそらく目指す社会像が少し違うと思っています。

我々はプライバシーに最大限配慮しながら、人間を大切にするデジタル社会に挑戦するべきだと思ってますし、これから高齢化が進む他国にとってのモデルになりうると考えています。

高齢者、障害者にとってのUI/UXを考えた時に、これまでユーザー側の使い勝手の良さは最後の最後に考えられてきました。間違いなくシステム運用ができることや、情報を提供する側にとって安定性のあるシステムを目指していました。

しかし、そこの発想を根本的に変えなくてはいけない。これからは省庁の管轄云々は関係ない。これからのシステムの作り方は国民との接点から作っていくことをしていきたいと思っています。

デジタル庁、これまでの常識にとらわれない組織に

スピード感を重視 「Government as a Startup」

今回、規制改革の象徴であり、なおかつ成長戦略の柱との指示のもと、デジタル庁を創設します。

このAI/SUMの講演に来る前まで定例会を行なっていましたが、今回は「Government as a Startup」というのを私は掲げさせていただきました。最終的な目標は「Government as a Service」、国民を幸せにするサービスです。

ヒトモノカネ何もない状態から新しい省庁を1年で作るというのは、スタートアップで言えば、立ち上げから1年で上場するようなものです。これまでの役所の常識にとらわれていては時間も守れないし、組織は作れないです。

マインドセットを変えるところからスタートして1ヶ月が経ちました。これから年末に基本方針を決めるのですが、11月の半ば過ぎには予算も決めていくということで自ずと(デジタル庁の)サイズも決まってくると思います。

そして来年(2021年)の通常国会では、「なぜデジタル庁を作らなくてはいけないのか」などを国民にしっかり説明できるようなIT基本法の抜根的改革案を一気に出させていただこうと思います。

法案が通った時点でいまの法案準備室がデジタル庁準備室に変わり、来年中に新組織を発足させるということになります。今までの霞が関とは違うものにしてほしい、と会議でも言われています。リモートワークの推奨やフレックスタイムなどを取り入れ、今までの霞が関の常識とは違うものにしていきたいと思っています。

みんなでつくるデジタル庁

UI/UXのところには日本の若い人たちの力もどんどん活用していきたいです。一緒にやるみなさん、一般の方々の意見も聞かなくてはいけないと思っています。

アイデアボックスというものを作らせてもらってて、中学生から高齢者まで幅広い層からポジティブな意見をいただいてます。なにか自分にとってプラスになるような変革が起こるのではないかという人が多いというのを忘れてはならない。だからこそ、仕事の仕方など最終的な姿を今までとは違うものにしなくてはならないと思っています。

大きな権限で横断的に変革を

縦割り行政を変えるのも、一つのサービス形態として国民に提供するには、デジタル庁にとてつもない権限を持たせないとできません。総合調整という役割では無理です。スタートアップとして立ち上がるデジタル庁ですが、予算に対する権限とシステムを設計してつくる権限は全部、他の省庁からいただかなくてはいけないと思っています。これは大変なことですが、今しかできないことです。

今回相当なスピード感で進んでいますが、システムのアーキテクチャを根本的に変えるという今まで怖気付いてできなかったことにデジタル庁は挑戦したいと思っています。そのようなことができる人材も揃ってます。そしてデータガバナンスのオーソリティの機能もデジタル庁につけたいです。

柔軟性のある組織をオープンにつくっていく

今色々と方針を決めていて、絶対に変えてはいけない根本原則はいくつかありますが、それ以外は常に変更自由にしようと思っています。常にいろんな方々の意見を聞きながら、足元を確認しながら方針変更することは躊躇せず、という考え方でやろうと思っています。

正解が最初からわかっているわけではありません。これからみなさんと一緒になって正しい方向を見つけ、実行に移していくということになります。私のYouTube等でも会議の内容や、一般の方との対話集会もオープンに公開しています。みなさんとともに作り上げていくというのが一つの時代のシンボルであるデジタル庁だと思っています。

今後もみなさんの意見をお寄せいただければありがたいと思います。

年末に向けて我々も全力で頑張りますので今後とも応援のほどお願いを申し上げまして、私の講演とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

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