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昨今、政府が「働き方改革」を推進するなかで、生産性と顧客満足度向上を実現するCRMシステムが注目されています。
導入事例を学び、CRMのメリットや運用体制の作り方を理解することで、CRMの導入を成功できます。はじめにCRMについて説明します。
目次
CRMとは
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係管理と訳されます。
CRMシステムは、顧客の基本情報をはじめ、顧客の購買履歴や自社販促に対する反応、サポートまでさまざまな情報を記録します。CRMは顧客満足度の向上や、顧客との長期的な関係性を維持するために必要な機能を搭載しているマーケティングツールです。
CRMを活用することで、膨大な顧客情報を管理しつつ、顧客一人ひとりに合わせた対応が可能です。
CRM導入により、顧客満足度の向上だけでなく、業務の効率化を実現し、今まで事務作業に奪われていた時間を、マーケティング戦略を考える時間に充て、より付加価値の高い業務に時間を割けます。
CRM導入事例
顧客情報の一元管理で売上192%を達成した導入事例
GMOメイクショップ株式会社はGMOインターネットグループとして、オンラインショップ構築ASP事業、ECソリューション事業、WEB制作事業を展開する会社で、「eセールスマネージャー」を導入しました。
導入理由
- CRM導入前まで、案件管理や集計、上司への報告資料などを別々のExcelで管理していて、内容のつじつまがあわず資料の修正が頻繁に必要だったため
- 売上の規模の拡大、取引先の増加に伴いExcelでの営業活動管理に限界を感じたため
導入効果
- システム導入後、顧客情報・案件情報をリアルタイムで共有することで各案件や問い合わせにスムーズに対応することが可能になった
- 「To do管理機能」で案件の対応漏れが0になった
- 情報共有のため費やしていたミーティング時間を削減
- マーケティング戦略を考える時間に有効活用できた
中小企業の導入事例
デジタルデータソリューション株式会社はデータリカバリー、フォレッシング(不正アクセスの解析)、セキュリティ事業を展開する、従業員130名ほどの中小企業で、「Salesforce」を導入しました。
そんな同社には、毎月2000~3000件の復旧依頼が届き、その過程で蓄積される膨大な顧客情報や案件情報は、複数のソフトやツールを使って管理していました。そこで、業務の効率化とクレーム低減のために、CRM導入を検討し始めました。
多くの人が、「CRMは事業規模、従業員数が多い企業が導入するシステムだ」と勘違いしています。しかし、このように、中小企業でも、CRMを導入することで、人的リソースによる問題を解決しながら、新規事業開拓や事業拡大を成功させるケースがあります。
導入理由
- 情報管理ツールを統一化し、業務の効率化と円滑化するため
- リアルタイムでKPI(重要業績評価指標)を確認するため
- 問い合わせ対応を効率化するため
導入効果
- 月100件程度あった顧客・案件情報の抜け漏れを一気に解消
- マイページ開設でFAQのお問い合わせ件数が1500件から500件に減り、顧客満足度の向上を達成し、問い合わせ対応にかかる
- 時間を削減し、コア業務に専念できるようになった
自社独自のCRMを開発した導入事例
ディップ株式会社は人材・IT系の企業で、「レコリン」という営業活動を効率化するアプリを独自に開発しました。
AIやRPAを活用した社内業務効率化を推進している同社でしたが、過去には、CRMツールを導入するも現場で定着せず、導入に失敗した経験をもっています。
そこでエンジニアが立ち上がり、同社の営業スタイルに合わせた、スマホ対応のCRMを開発しました。
このように自社にエンジニア部門がある場合は、既存のCRMツールだけでなく、自社開発を検討することによりCRM導入が成功するケースもあります。
導入理由
- 同社の営業スタイルに合わせたCRMを開発し、現場の業務を効率化するため
- 人材会社として、AI・RPAを活用し、一人当たりの生産性向上および人手不足の解消を図り、日本の労働市場における諸課題の解決に貢献するため
導入効果
- 顧客探索と商談入力業務にかかる時間を、全社で年間約60,000時間以上の削減に成功
- 自社の営業スタイルに合わせたCRMの開発により、今までシステムが定着しなかった現場にも定着
名刺管理CRMを導入し情報管理を効率化した導入事例
JTBコミュニケーションデザイン株式会社は、ビジネスイベントやプロモーションなど幅広く事業を展開する企業で、名刺情報を管理し戦略的な営業活動につなげるために「Sansan」を導入しました。
導入理由
- 属人的に管理されている名刺情報を統一管理し共有するため
- 名刺情報や社員の人脈を営業活動に活用するため
- オンライン商談時にスムーズなコミュニケーションを取るため
導入効果
- 営業活動が効率化できた
- ターゲットが明確になり、より戦略的な営業が可能になった
- オンライン商談時に全参加者の人物情報を取得が可能になった
マーケティングツールを統一するCRMを導入した導入事例
アンカー・ジャパン株式会社は、デジタル関連精品を開発・製造・販売する企業です。
製品数が多い上、新製品も短いサイクルで販売するため、日常的に行うマーケティング業務が多く、複数のツールを使用していました。
販売数が順調に伸びる一方で、業務効率化が課題となり、各部門が抱える問題点の解決やマーケティングツールの統一のために「HubSpot」を導入しました。
導入目的
- マーケティングツールの統一(CRMを軸としてマーケティングオートメーション機能やSFA、カスタマーサポート機能が充実したシステムを導入)
- 業務の効率化
- 対応漏れを0にする
導入効果
- マーケティング部門では工数削減に成功
- セールス部門では法人からの発注問い合わせの抜け漏れ0を達成
- カスタマーサポート部門では、顧客の要望を効率的に把握する機能を導入することにより、やりとりする時間の削減と顧客満足度の向上に成功
CRM導入メリット
CRMのメリットの中に以下のようなものがあります。事例からも学べるように、CRMの導入で顧客情報の一元管理や部門間の連携が可能になり、顧客満足度の向上を実現します。
- 顧客情報の一元管理
- 顧客情報の管理業務を効率化
- 部門間の連携が円滑になる
- 顧客情報分析による戦略の立案
- セキュリティ機能(顧客情報の流出を防ぐ)
- 問い合わせの自動生成機能(顧客の疑問解決に効果的)
- CTI機能との連携
オンライン化により、顧客と対面でコミュニケーションを取る機会が以前より減ったため、顧客情報を管理し、ダイレクトメールやインサイドセールスを活用したマーケティング戦略が重要になります。
CRMを導入する際の注意点
導入目的を明確化する
導入目的が明確でなく、システムを有効活用できないと、現場では「入力作業が多くなった」というマイナスな意見が予想されます。
この状態では、業務の効率化や満足度の向上は達成できません。
自社の課題とその原因を把握し、自社にあったツールを選定することが重要です。
またマーケティング部門、営業部門、システム管理部門など、システム導入に関わるすべての部門のことを考え、ある部門の業務を効率化する代わりに、他部門の負担が増えないよう注意すべきです。
社内で導入許可を得るためにすべきこと
社内での新規システムの導入は個人が自由に主導できるものではなく、必ず経営陣などの責任者が決定します。
そのため、導入までに時間がかかることや、許可が得られないことがあります。
逆に、経営陣が導入を決断しても、現場に浸透せず、システムの運用が定着しないことがあります。
顧客情報の共有のために、最終的には、顧客関係を管理する部署全体がCRMを導入する必要がありますが、導入を検討する段階では、小さい規模で導入をテストしてみて、徐々に規模を広げていき、最終的に社内会議で承認されることを目指しましょう。
システム導入を進める立場にいる場合は、まずは無料トライアルを利用して、自分で使用感を試し、自社の環境とCRMの相性を確認した後、他の人に利用してもらい、ITリテラシーに関わらず利用できるかなど、社内での利用の可能性を確認する必要があります。
導入を想定したアクションを通して、自社が解決すべき課題や、システム導入後の運用体制をどうするべきかが可視化されます。
また他の従業員にも利用してもらい、社内で評判になることで、経営陣が導入を許可する可能性が高まります。
カスタマーサポートを活用する
システムを運用していく上で、カスタマーサポートが充実していることも重要です。システムを提供している企業も、顧客満足度向上のため、多くの事例を集め、社内では解決できない疑問の解決策を用意しています。
運用のためのコンサルティングなどを依頼し、安定した運用を実現しましょう。
まとめ
この記事ではCRMの導入事例について解説しました。
CRMを導入する際に重要なことは、常に顧客目線に立つことです。CRM導入により、社内業務の効率化を達成したものの、顧客満足度が下がってしまっては、生産性向上を達成できたとは言えません。
満足度向上、業務の効率化の両方を達成するために、導入事例を学び、自社内でのテストを通して成功に結びつけましょう。