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目次
重要性が高まるデータ分析組織
なぜデータ分析組織が求められているのか
今までの組織では、さまざまな課題が内在しながらも、仕方ないと見逃されていたり、人間の勘や経験によって対処されていました。
例えば、小売店の仕入れを考えてみましょう。従来では、翌日の売上の予測と在庫の発注は店長の勘や経験によって決められ、仮にそれが外れた場合でも仕方ないと見逃されていました。
しかし、これではせっかくの売上の機会を損失してしまいます。これは小売店に限ったことではなく、さまざまな分野の企業で人的な分析や予測が行わています。
マーケティングなどの分野では、従来から「データドリブン」な手法が提唱され、データをもとにしたバナー広告の出稿などがされていましたが、未だに多くの分野の業務は人間が不確実まま予測をし、対処しているといえるでしょう。
この不確実性を解消し、機会損失を防ぐだけでなく、事業の拡大を担うのがデータ分析組織の使命ともいえます。
特にデジタル形式でデータを蓄積しているWebサービスやITシステム関連の企業では、データ分析組織を設置するケースが増加しています。高度にITインフラが発達し、社内のあらゆる業務がPCやスマートフォンを通して行われ、膨大なユーザを保有する企業が増えた今、膨大なデータを活用することで、機会損失を防ぎ、事業を拡大させるためにデータ分析が行われています。
データ分析組織の企業内での役割
データ活用となると、すでに自社で蓄積された膨大なデータを活用することで、すぐに成果に結びつくと思われがちです。しかし、単なるデータ分析だけではビジネスを変えることはできません。
従来の分析者は与えられた問題やデータに基づき、分析結果を導くことが主な役割でした。つまり、問題を『解く力』が重視されます。
しかし現在、この『解く力』に加えて、ビジネスでの活用までを見据えて問題を設定する『見つける力』や現場の人に分析結果を『使わせる力』が求められています。
しかし、『見つける力』や『使わせる力』の習得は簡単ではありません。『解く力』は学びの体系がたてられており、書籍やセミナーなどで学ぶことができます。しかし、『見つける力』『使わせる力』は教科書で学ぶことができません。具体的にどんな能力が必要かが曖昧で、実践的な経験も必要です。
データ分析組織にとって、分析はスタートラインであるという理解が必要です。「分析で終わり」ではなく、その先にあるビジネスの意思決定プロセスへの貢献が求められているということでしょう。
データ分析組織の課題
データの活用に注目が集まると同時にデータ分析組織にも注目が集まりますが、一方で課題も山積されます。
ここではデータ分析組織の課題を4つご紹介します。
①目的が不明確である
②人材がいない
③データへのアクセス権限が無い、社内調整ができない
④組織拡大のためのPRや、他部門への業務拡大を行っていない
目的が不明確
データ分析組織にとって最も大切な要素とも言えるのが「目的」です。どんな目的のために分析しているのかがはっきりしないままデータ分析を行うと、その結果は結局活用されないまま終わってしまいます。
特にデータ分析組織においては、精度などの技術的な目標だけでなく、売上や削減コストなどビジネス的な指標に基づいて目標を設定し、その課題に基づいて仮説を設定し、データ分析を通して実証していくことが必要です。
人材がいない
データ分析に注目が集まると同時にデータ分析を担う人材の需要が高まっています。しかし、急激にデータ分析の需要が高まる中、データ分析を担う人材の供給が追いついていないのが現状です。
特に、社内にデータ分析を担う人材が一人もいない場合、外部の会社に委託しつつ小さく効果をあげ、社内で内製化を進めるなど、小さく成果をあげ、雪だるま式に徐々に大きくしていくことが重要でしょう。
データへのアクセス権限が無い、社内調整ができない
データ分析組織にとって、必要なデータが簡単に揃う環境を構築することが重要です。
しかし、多くの企業において、部署ごとにデータがバラバラに管理されており、データを使うためには、部署を通じて許可を得なくてはいけないケースも散見されます。データがあるのにすぐに使えないというこの状況は、データ分析を担う人材にとって、社内調整に大きく時間が割かれ、データ分析の効率を悪化させるといっても過言ではありません。
データ活用を進める会社では、社内のデータベースを統一した上で、誰がどのデータにアクセスできるのかのガバナンスなどを整え、手軽にデータを活用できる状態を作る必要があります。
▼データのアクセス権限など、データマネジメントについて詳しくはこちら
組織拡大のためのPRや、他部門への共有を行っていない
データ分析組織にとって、社内でのPRも重要です。データ分析というと既存社員にとってはどんなものなのか、どんな成果が上がるのか、その重要性が理解されづらい現状があります。
そんな中、どんな結果を出したのかを数字を用いて社内で明示していくことで、データ分析組織の信頼性を向上させることができます。
また、データ分析組織のPRを行いながらも、他部門とのコミュニケーションを密にとり、現場の課題をヒアリングしてデータ分析の参考にすることにも繋がります。
データ分析組織こそ、社内で幅広いコミュニケーションを築いていく必要があります。
▼データ分析組織と他部門のコミュニケーション手法については株式会社ZOZOの分析本部の事例が参考になります。合わせてご覧ください。
データ分析チームが、組織の中で認められる3つのポイント
1.まずは周囲が動きやすい課題を発見して結果を出す
分析結果はアクションにつながってから、初めて意味を持つため、関連する部署の信頼を獲得する必要があります。自部署以外とデータのやり取りをしたり、調整が必要な場合納得して、行動してもらわなければなりません。
できたばかりの分析チームを他部門に理解・信頼してもらうには、まずは周囲が動きやすい課題を発見し、小さくても良いので結果を出すことが重要です。
大きな結果を狙った分析でアウトプットを出さない状態を続けるよりも、小さくても有益な結果が出ることを示すことで、データ分析の必要性を理解してもらうことができるためです。
そこでおすすめなのが「過去の値と比較する分析」です。なぜならば、過去の事象から明確に悪化理由を説明でき、修正しやすいからです。
「これをすれば応募フォームの回答率が今の1.3倍になるかもしれない」と突然言われても、担当者はは半信半疑ですが、「これが理由で、過去70%だった応募フォーム回答率が2か月前から60%に下がっている」と言われると、「改善しなければ」と課題意識を共有することができます。
課題感を共有することで、改善した際のビジネス上のインパクトも明確で、ゴールを共有することができ、アクションに繋がりやすいことが特徴です。
dipの分析チームでも、初期のころはそういった「過去の値と比較する分析」を中心に行うことで、周囲の組織との信頼関係を築きました。
2.使ってもらえる分析のためには組織の状況・課題感を理解する
他部門の理解・信頼を得るためにもう1つ重要なことは、その人たちが何を考え、どのような課題を抱えているかを理解することです。
データ分析では、分析に入る前の課題設定が重要ですが、既に他部門で検討し、アクションを起こしている課題であれば、データ分析の意味は薄れてしまうかもしれません。
当たり前の話ですが、私たちのチームでも何度か起きてしまったことがあります。
また、組織全体の目標を確認し、そこからブレイクダウンした課題設計が重要です。解決しようと思った課題が、組織の目標と噛み合っていなければ、その分析結果が組織の向上につながったと言えません。例えば、組織としてユーザの流入増をKPIとしていたときに、内部の細かいCVR改善の提案をしても、なかなか受け入れてはもらえません。
私たちの分析チームでは、相手を理解するために他組織のMTGに顔を出すだけでなくヒアリングをしたり、Slackで継続的にコミュニケーションをとるなど、良い関係性を築くことを意識しました。
これにより、無駄な被り作業は無くなり、コミュニケーションの中で「課題に感じているこの部分を調査分析して欲しい」と依頼もらうなど、”今必要な分析” を行うことができるように変わっていきました。
3.自組織・他組織の目標設定の不協和を無くす
上述の2つのポイントは業務と心がけの話ですが、”仕組み”も重要です。そして仕組みの中でも目標設定が最も重要です。
ディップでは組織毎・個人毎に目標を持っていますが、意識したのは分析チームと他組織が共に目標を最大限に達成しようとしたときに、目標同士がぶつからないようにすることです。
実際にあったことでは、他組織が「自ら提案した施策でコンバージョンの数を●件改善する」という目標を持っており、分析チームからの提案を実行したとしても、その目標にはカウントされず、逆に目標の妨げになってしまうというものでした。
そこで、次の期では分析チームの提案でもカウントされるようにしてもらい、分析チームの提案が本当に良いものであれば、それを実行することが他部署の目標にも貢献できる状態にしました。
単純なことですが、既存組織の中に新たに分析組織をつくる場合に、目標設定の不協和は起こりえるので、他組織の目標と合わせて考えることが大事です。
ディップが取り組むデータ分析
ディップでは、バイトルやはたらこねっとなどの求人情報サービスを運営しています。膨大な掲載件数の中で、いかにユーザにマッチした求人情報を届けることができるのか、そのためにデータ分析の部署を拡大中です。
大企業ながらの壁に直面しながらも、膨大なデータをもとにデータを分析し、結果につなげていくやりがいはとても大きく、さらに大きなビジネスインパクトを生み出せるデータ分析のあり方を追求しています。
私たちのチームでは、バイトル・はたらこねっとのサイト・アプリの改善を担当しており、主に以下の3つをデータ分析として行っています。
①サービスの日々の健康状態の把握と、大きな変化の早期発見・原因特定 ②他部署のプロジェクトに対するデータ周りのサポート(データの集計・設計、ABテストの効果測定、KGI、KPI設定など) ③サービスの課題に対しての自部署から分析提案 |
また、それらの土台となることとして、データガバナンスを定めて運用することや、他組織含めてデータ利活用がしやすい環境を考えていくこと(ダッシュボード化や基盤)にも挑戦中です。