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2021.04.17

評価額は6億円|1位は福井高専のエッジAIによる老朽化診断ツール|DCON2021速報

最終更新日:

 2021年4月17日(土)、高専生がディープラーニング技術を活用して事業を創出し、投資家をはじめとした審査員による評価額を競うコンテスト「DCON2021」の本選が開催されました。

優勝したのは老朽化診断ツール「D-ON」を発表した福井工業高等専門学校/プログラミング研究会チームです。

この記事では、速報としてDCON2021の様子と結果をお伝えします。

DCON2021 概要

「DCON2021」では、一次審査を通過したチームがプロトタイプを制作し、経験豊富な起業家などのメンターによる二次選考が行われ、最終的に10チームが選ばれました。10チームはそれぞれ、メンターと共に最終審査に向けてプレゼン資料の作成や準備に励んできました。

本選では、技術審査に加えてプレゼンテーションの審査が行われ、5人の審査員と2人の技術審査員が選考を行いました。

審査員

河合 将文氏:DBJキャピタル株式会社 投資部長

川上 登福氏:株式会社経営共創基盤  共同経営者(パートナー)マネージングディレクター

郷治 友孝氏:東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)代表取締役社長

仁木 勝雅氏:株式会社ディープコア 代表取締役社長

松本 真尚氏:WiL, LLC  共同創業者/ジェネラル・パートナー

技術審査委員

尾形 哲也氏:早稲田大学教授で、産業技術総合研究所 人工知能研究センター 特定フェロー

松尾 豊氏:日本ディープラーニング協会の理事長 東京大学大学院 教授

会場の様子

司会席

司会を務めたヒャダインさん

司会を務めた小島瑠璃子さん

DCON実行委員長の松尾豊氏

審査員席

全国から集った10の高専生チーム

DCON2021では累計43チームの応募があり、その内5チームは海外からのエントリーでした。

その中から選抜され、本選に進出した10チームからプレゼンテーションが行われました。

DCON2021 本選でのプレゼンテーションの様子

香川高等専門学校/TMT-2020 ディープラーニングを用いてさくらんぼの選果作業をサポートするAI選果機「スマートマト」を提案。さくらんぼのサイズを自動で判別し、1時間で2人で8000個のさくらんぼが選別可能。画像認識でさくらんぼの大きさを4段階、傷の有無を2段階で分類。

ビジネスプランでは、月1万円で農家にレンタルしていくモデルを導入。機材の原価は7万円。違う果物にも応用可能。ベルトコンベア(ハードも含めて)含めて1万円。

バイトの選果作業1100円程度×5時間×人数(8人)の削減できると想定。

沼津工業高等専門学校/お花の気持ち IoTを活用したto C事業「エレクトリカル花壇」を発表。

ベテランでも花を枯らしてしまうことを課題とし、曖昧な情報、感覚的な情報が多いガーデニング領域で、定量的なソリューションを提案。

花の生育状況のログを撮ることで、花の状態を翻訳し、ガーデニングに生かすことができます。花の1日の様子を画像や環境データのログとしてアプリで見ることができ、また、同じ悩みを持った人や専門家とコミュニティで交流も可能。花がしおれる時間の予測にLSTMを活用している。

デバイス本体価格は4980円。プラットフォームの利用価格は無料プランor 300円/月を予定。

福井工業高等専門学校/プログラミング研究会 打音検査をディープラーニングで行う「D-ON」を提案。

「全ての老朽化から人の命を守る」をビションに、老朽化した施設の検査の効率化を目指したソリューション。ユーザごとに異なる環境でマイコン型の機材で打音データを計測。パソコン(Webアプリ)で簡単に学習を行い、すぐに現場での検査に活用可能になる。

トンネルや橋のみが対象の既存サービスに対してDーONはあらゆる領域の老朽化検査に対応可能。

旭川工業高等専門学校/旭川トマト研究会 ディープラーニングとMRを活用し、トマトの状態推定ができるシステム。

ミニトマトの収穫時にはペットボトルの口の大きさで、サイズを判定するなど農業でDXが進まない現状を課題視。糖度、酸度、サイズを含めた2000個のミニトマトのデータを学習することで、画像認識で糖度と酸度のバランスまで予測できるように。

また、単価の予想で出荷額の高い時に出荷できるような機能や、MRグラスを通して、農業の現場でも活用できるように改良。

鳥羽商船高等専門学校/ezaki-lab 海洋観測機から得られるデータを活用し、ディープラーニングによる海苔養殖支援システム「NoRIoT」を提案。安定した海苔の収穫を保障し最適な養殖方法を提案する。

観測機で撮影する画像データからカモなどによる海苔の食害を検出し、海象データと気象庁の気象予測データで潮位予測をする。

サブスクリプションでの提供を予定。

長岡工業高等専門学校/和久井養鯉場 見た目の美しさで価格がきまる鯉。ときには億単位でも取引され、クールジャパン商品にもなっている。

1500万匹から500匹に選定する際の大量の鯉の選別は、経験の浅いアルバイトが担っている。そこで、錦鯉の稚魚を流路に流し、ディープラーニングで学習させたモデルの出力に応じて自動選別される装置を開発。画像データは職人が選別したものを用いている。

D2Cを取り入れ、ECサイトで愛好家に販売。得られた利益は、ノウハウを提供してくれた職人にも還元し、錦鯉産業の発展を目指す。

沖縄工業高等専門学校/なんくるないさ〜 少子高齢化の影響で介護者の減少が課題になっている。高齢者が快適に過ごせる生活を実現させることを目指し、ディープラーニングを搭載する車椅子「なんくるないカー」を開発。

車椅子に搭載されている機能は4つ。

  • AIセーフティナビゲート機能:障害物を検出して避けた動き
  • アダプティブフォーメーション機能:他者の後を適正の距離を保ってついていく
  • 乗り心地快適機能:利用者の不快感を和らげる
  • ダンシング機能;沖縄の伝統舞踊を踊る

まだ開発段階だが言葉を認識するシステムも開発も進めている。
直近は企業/自治体向けと個人向けの国内販売を予定しており、将来は、利用者の骨格や文化に合わせた海外展開も考えている。

人に密着したエンタメ要素のある革新的な車椅子を狙っている。

石川工業高等専門学校/あいけん スマートスピーカーの出荷台数は世界的に普及していくことが予測されているおり、現在も多くの製品がでている。

あいけんの開発した会話ロボット「おしゃべる」は声のカスタマイズ性が高いことがポイント。高齢の方が子供や孫の声を音声合成させて(25時間の学習時間が必要)自分が好きな声を「おしゃべる」に話してもらうことが可能。

現在はトライアル体験の準備を行なっている。将来的には対応APIの増加や海外への進出、新機能の開発を考えている。

北九州工業高等専門学校/Nitkit Shigeru_Lab 視覚障害者は世界で2億8500万人おり、不自由な生活を送っている。それに対して盲導犬やヘルパーの利用者は伸びていないことから、歩行をサポートする白杖「盲導Cane」を開発。

点字ブロックの縦と横、警告ブロックを認識し、離れたらバイブで知らせる杖となっており販売は3年後を予定。

それまでの準備期間には、補装具費支給制度の活用や機能面や安全面の不安を解消する体験イベントを開催する。

額12,000円のサブスクリプションで提供を検討している。(製造費は50,000円/台)

一関工業高等専門学校/D’s>Zzz… 交通事故死亡者の要因の内、漫然運転の割合は15%。居眠り運転を防ぐことを目的として、足の裏に振動を与えることで居眠り運転を防止するデバイスを考案。

心拍センサーから眠気を検出し足元に刺激を与える仕組みになっている。

運送会社をメインターゲットとし、買い切りの場合は10〜20万円、サブスクリプションの場合は年2万円を予定。

結果発表

審査では、ベンチャー企業の評価と同じ用に、チームが企業だと想定した場合の価値:バリエーションを、事業の意義や市場の大きさや経営者の思い、売上や利益などが複合的に勘案されます。

企業評価額ランキング

3位:北九州工業高等専門学校/Nitkit Shigeru_Lab「盲導Cane」

企業評価額:4億円

投資額:5000万円

2位:鳥羽商船高等専門学校/ezaki-lab「NoRIoT」

企業評価額:5億円

投資額:1億円

1位(優勝):福井工業高等専門学校/プログラミング研究会「D-ON」

企業評価額:6億円

投資額:1億円

福井工業高等専門学校 プログラミング研究会のメンターを務めたさくらインターネット 代表取締役の田中邦裕氏

企業賞

アイング賞:福井工業高等専門学校/プログラミング研究会「D-ON」

ウエスタンデジタル賞:鳥羽商船高等専門学校/ezaki-lab 「NoRIoT」

AGC賞:鳥羽商船高等専門学校/ezaki-lab 「NoRIoT」

KDDI賞:福井工業高等専門学校/プログラミング研究会「D-ON」

TDK賞:沖縄工業高等専門学校/なんくるないさ〜「なんくるないカー」

YAZAKI賞:沼津工業高等専門学校/お花の気持ち「エレクトリカル花壇」

技術審査員賞

福井工業高等専門学校/プログラミング研究会「D-ON」

技術審査員の尾形氏

追記

DCON 2022の開催が決定しました。

高専生の支援に向け、JDLAが基金を設立すると発表しました。

▼詳しくはこちら

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