HOME/ AINOW編集部 /2025年の崖とは?概要から企業単位の改善策まで徹底解説!
2021.08.25

2025年の崖とは?概要から企業単位の改善策まで徹底解説!

最終更新日:

「2025年の崖って何?」
「問題の本質は?」
「どう現状を改革していけばいいの?」

このように、最近よく耳にする2025年の崖問題について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

しかし、経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進・現状のレガシーシステム(長年にわたり使用されてきた古いシステム)の改革の必要性が示され大きな話題となっています。

2025年の崖について理解すれば、DXの必要性をより深く感じられ、適切にDX化に備えられます。

この記事では、2025年の崖問題の概要から今後参考にすべき国内・国外のDX成功例まで分かりやすく解説します!

2025年の崖とは?

2025年の崖は経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の言葉を引用したものです。レポートの概要は以下の通りです。

  • 多くの経営者が将来の成長・競争力強化のために、DX(最新のデジタル技術を駆使し人々の生活を豊かにするという概念)の必要性について理解している
  • しかし、既存システムが事業部門ごとに構築・過剰なカスタマイズがされているため全社横断的なデータ活用ができない
  • →既存システムの問題を解決・業務自体の見直しが先行するためDX推進が難しい

現在21年以上使われている基幹系システムが全体の2割であるのに対し、2025年では6割に上り、システムの維持管理費が高額化・IT予算の9割以上を占めると予測されています。

また、これらの課題を克服できない場合、2025年以降最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があります。

このため、2025年までの既存システムの抜本的改革・運用改善が必要不可欠です。

以下はDXレポートを分かりやすく解説した図です。

現在直面する企業課題は?

DXを推進する上で企業が直面する最大の課題は既存システムのブラックボックス化です。

ブラックボックス化の理由は以下の3つです。

① ベンダー企業にシステム構築・運用を任せきっている

日本ではユーザー起業よりもベンダー企業に多くエンジニアが所属しています。

そのため、諸外国のようにユーザー企業内にノウハウが構築されていくのではなく、ユーザー企業側にノウハウが残りづらく、現場で作業する下請け企業に蓄積されてしまいます。

② 有識者の退職

国内では、2007年ごろに大規模なシステム開発人材の定年退職が起こりました。そのためノウハウが失われ、システムのブラックボックス化が進展している企業が多数存在します。

③ 業務に合わせたスクラッチ開発(すでに存在する何かを土台とせずゼロから作り上げる開発)

それぞれの業務に対応しやすいようにカスタマイズされたシステムには独自のノウハウが存在します。そのため、ノウハウが伝播されないまま有識者が退職してしまうなどの場合、ブラックボックス化を招いてしまいます。

2025年の崖問題の本質

2025年の崖問題を解決しなければ、以上で述べた問題を解決できないままだと日本はデジタル化に乗り遅れ、年間で最大12億円の経済損失・世界的な競争に負けてしまう可能性があります。

この分岐点が2025年に到来すると予測されています。

また、現在日本ではIT関連費用の80%が現行ビジネス・既存システムの維持に使われ、戦略的なIT投資が後回しになり、今後さらなる既存システム運用費の高騰(技術的負債の増大)も危惧されています。

そのため、ブラックボックス化・複雑化などの問題を解決し、経営戦略上の足かせ・高コスト構造の原因となっているレガシーシステムを取り除かなければ本質的なDX推進は不可能といえます。

国の提示するガイドラインは?

経済産業省はDXレポートで以下の改善策を提示しています。

① DX推進システムガイドラインの策定

DX推進システムガイドラインではDXを実現する上で基盤システムを構築していくためのアプローチ・必要なアクション・失敗の典型パターンが示されています。

経営戦略におけるDXの位置づけからDX実現に向けた新たなデジタル技術の活用・レガシーシステム刷新のための実行プロセスを具体的に提示し、システムを構築していく上で押さえるべきポイント・構築ステップについての認識の共有を目的としています。

② 見える化指標と診断スキームの構築

見える化指標・診断スキーム構築はユーザー企業経営者のIT投資の評価を可能にします。

これらに自社の状態を当てはめていけば、経営上の課題として既存システムの問題点がどこにあるのか把握・既存システムの刷新にアクションを起こす手順を正しく理解出来ます。

③ DXに対応できる人材育成・投資

システムエンジニアの不足が深刻となっている現在、人材育成・投資の必要性を国・企業ともに正しく理解しなければなりません。

政府の試算によると2030年には約79万人もの人材が不足するといわれています。近年のIT業界の急成長・IT技術の急速な変化に伴い、ITエンジニア不足の早急な解決が求められています。

企業として2025年の壁を乗り越えるには?

企業として2025年の壁を乗り越えていくための具体策は以下の通りです。

① システム刷新集中期間(DXファースト期間)に沿ったレガシーシステム変革

DXレポートでは2021年から5年間をシステム刷新集中期間(DXファースト期間)とし、システム刷新を経営の最優先課題とするよう提示しています。

システム刷新には長期的な年数・数百億円単位のコストがかかります。(例:保険業→約25年経過した基幹系システムを4~5年で約700億円をかけてシステム刷新)

そのため経営転換が難しいのが現状ですが、技術的負債の解消・ランニングコストを削減、新たなデジタル技術活用へのシフトの有効性を認識し、「攻めのIT投資」に切り替える必要があります。

引用:ITシステム公式ホームページ『「2025年の崖」とは何か?レポートを要約すると? 経産省の推奨施策まとめ』

②非競争領域の業務・システムの共通化

競争力に寄与しない非競争領域では、業界内外を含めてシステムの共通化・共同構築がコストや失敗リスクの低下に繋がります。

協調領域の見極めから共通プラットフォームの構築・利用に当たってのポイントを押さえ、共通プラットフォームの構築・運用が重要です。

③ユーザ企業・ベンダー企業間の関係見直し

ベンダー企業にシステム運用・開発の多くを頼っている現状を見直し、新たな関係を構築していく必要があります。

例えば、ベンダー企業はユーザー企業と協働したプロダクト開発・ノウハウの蓄積が求められます。

効率的なDX推進のためには受託業務からの脱却・クラウドベースのアプリケーション提供型のビジネスモデルへの転換が必要不可欠です。

2025年の崖を乗り越えるためにはDX推進が重要!国内・国外の成功例

2025年の崖を乗り越えるためのDX成功には以下の例のように、現在抱える問題点をデジタル化によって解決する必要性があります。

【国内】ソフトバンク:データ入力の自動化で月200時間削減

  • 携帯を落とした時に届く「落とし物通知依頼書」のDX化に成功
  • 以前は依頼書の内容を専用のシステムに手入力・毎月6000件近くの件数を10人で対応
  • 入力ミス・処理スピードの差などの課題
  • →書類のデータ化サービス導入で担当者を1人に削減

【国内】ファミリーマート:ファミペイ・セルフレジ導入で利便性アップ

  • ファミペイ支払いで発行されるクーポン・ポイント機能で顧客満足度向上に成功
  • セルフレジの導入でレジの待ち時間を短縮
  • →DXを通して利用者の利便性アップに成功

引用:キャッシュレス×DXマガジン公式ホームページ「デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功事例15選と成功のポイント」

【国外】Uber:配車サービスでタクシー業を変革

  • 料金が不明瞭・クレジットカード決済が使えない
  • タクシーサービスが普及していないエリアでタクシーに乗るのが困難などの問題
  • →配車サービス「Uber(ウーバー)」のオンライン決済・マッチングサービスによって解決

【国外】24 Hour Fitness :アプリでのパーソナルメニュー提供でロイヤリティ向上

  • 約8割の会員とパーソナルなコミュニケーションの機会を持てていなかった
  • →アプリを通して、会員一人ひとりにパーソナライズしたトレーニングのガイダンスを提供
  • アプリの利用者とロイヤリティの高さに相関関係がみられた

引用:エムタメ!公式ホームページ「デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例 ~日本と海外の事例をそれぞれまとめました!~」

まとめ

今回は経済産業省の発表したDXレポートの内容を概観すると同時に、企業単位でどうシステム刷新・DX推進に取り組んでいくべきか解説しました。

レガシーシステム変革の重要性をしっかりと理解し、「攻めのIT投資」に転換する時期がもうそこまで迫ってきています。

自社の既存システムを見直し、改革を進めていきましょう!

無料メールマガジン登録

週1回、注目のAIニュースやイベント情報を
編集部がピックアップしてお届けしています。

こちらの規約にご同意のうえチェックしてください。

規約に同意する

あなたにおすすめの記事

動画生成AI『Sora』とは|映像業界にとどまらないインパクトを解説

基調講演だけではない。OpenAI、Microsoft、Metaもビジョンを語ったGTC2024セッションまとめ

ChatGPTもGeminiも忘れて、これらの(信じられない)次世代AIツールをチェックしてみよう!

あなたにおすすめの記事

動画生成AI『Sora』とは|映像業界にとどまらないインパクトを解説

基調講演だけではない。OpenAI、Microsoft、Metaもビジョンを語ったGTC2024セッションまとめ

ChatGPTもGeminiも忘れて、これらの(信じられない)次世代AIツールをチェックしてみよう!