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AIなどのデジタル技術を活かしたアート作品を制作し、創造性の発展に取り組む株式会社Qosmo代表の徳井直生氏は、人間とAIの共演による音楽創作の可能性を探求するAI DJ Projectの進化形である『AI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythm』を発表し、イベントの様子を収録した映像を公開しました。
即興で楽曲を生成するAIモデルと人間がDJに挑戦
AI DJ Projectとは、AIと人間が交互に曲をかける「バック・トゥ・バック」のスタイルでDJを行うプロジェクトで、ディープラーニングを活用した選曲アルゴリズムが曲を選択します。
2016年ごろに現役DJの徳井氏によって開発されたAI DJ Projectは、アメリカで開催されたGoogle I/Oやフランス、スロベニアなど世界各地でパフォーマンスを行っています。
今回発表された『AI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythm』では、事前に曲を用意するのではなく、AIが即興で生成した楽曲を用いてDJを行うパフォーマンスにチャレンジしました。
楽曲を生成する時は、リズムパターン、ベースライン、上モノ(リズムとベー ス以外のパート)のループを選択する3つのAIモデルをアナログシンセサイザーという音声合成機器に接続します。そして、ターンテーブルやミキサーを通じてAIと人間が相互に反応しながらリアルタイムに楽曲を生成するシステムです。
楽曲を生成する3つのAIモデルは、音楽制作シーンなどで利用可能な Ableton Liveのプラグインとしても一般公開されています。
パフォーマンス映像と解説動画を公開
今回の発表に先駆けて、10月27日、28日にルーマニアで開催されたIAA主催のイベントCreativity4BetterでAR技術を駆使したオンラインパフォーマンスを世界初公開しました。
同社は、その様子を収録したビデオと、AIによるDJシステムの制作者・演者である徳井氏本人が解説したメイキングビデオを公開しています。
『AI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythm』のパフォーマンスは、Dentsu Craft Tokyoのテクニカルチームと協働して行いました。AR(拡張現実) 技術を用いて、DJの目の前の空間に仮想的に表示されるインタフェースに、AIモデルが生成するシーケンスや選択されたループがリアルタイムに可視化されていきます。
製作者・演者である徳井氏は、次のようなコメントをしています。
AIとの対話から生まれる新しい創造性を見出すために続けて来た本プロジェクトですが、今回のアップデートにおいてはどんな人間のDJだけでは到底実現できないこと、すなわち『パフォーマンス中にリアルタイムに作曲し、その場で演奏すること』を、AIの力を借りて実現することに取り組みました。
すでにある曲をかけるというDJ行為そのものを再定義しようとする試みとも言えます。今回のパフォーマンスにおいてはこのシステムを開発した私さえも沢山の驚きを感じる場面があり、『未知の生物』と一緒にプレイしている感覚に襲われました。
このようにAIを使うことで、今まではあり得なかったような新しい表現の手法を開発することは、弊社コズモのミッションそのものを体現していると考えています。
今後もDJに限らず広く音楽やアート、そしてあらゆる種類のクリエイティビティーにおいてこのような進歩をもたらしたいと考えています。
▼AIが作曲するツールについて知りたい方はこちら
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。