近年、マーケティング分野での業務効率化に役立つMA(マーケティングオートメーション)が注目を集めています。BtoB企業では、どのようにMAツールを活用できるでしょうか。
今回は、BtoBとBtoCの違い、BtoB企業でのMAツール活用法や、ツールの比較ポイントを紹介します。また、BtoB企業におけるマーケティングオートメーション導入事例を紹介します。
目次
BtoB・BtoCの違い3つ
BtoBとは、Business to Businessの略で、企業が法人や他の企業に対して行うビジネスのことを指します。一方で、BtoCとはBusiness to Consumerの略で、企業が一般の消費者に対して行うビジネスを指します。
双方のビジネスモデルの違いを見ていきましょう。以下の3つの視点からBtoBとBtoCを比較します。
①リード数が違う
BtoBとBtoCでは、取り扱うリード(見込み顧客)の数が大幅に異なります。BtoBでは、相手が法人や企業であるために、リード数は比較的少なめです。
しかし、BtoCでは一般消費者を対象とするため、リード数はかなり多くなります。MAツールを導入する際は、それぞれのツールの対応リード数を確認し、自社のリード数に合わせたツールを選びましょう。
②意思決定にかかる時間が違う
BtoBでは、法人や企業が顧客です。法人や企業は、一般的に一つの製品やサービスの受注を決定するまでにかなり時間をかけます。
なぜなら、本当にその製品やサービスが企業にとってメリットをもたらすのか、じっくり考える必要があるからです。私たち一般消費者が買い物をする時とは、一つの買い物にかける時間が大幅に異なります。
この点を踏まえBtoBマーケティングでは、長い目で見てリードを分析しアプローチしていかなければなりません。
③購買に関わる人数が違う
法人や企業においては、購買までに関わる人数がかなり多いという特徴があります。
一般消費者が買い物をする場合、基本的には一人ひとりの意思で製品を買うか、買わないかを判断します。しかし、法人や企業の場合は、多数の従業員が購買に関わります。
企業内の様々な部門で話し合われ、沢山の人の意見をもとに意思決定がされます。企業全体のニーズや意見を聞き取り、分析するのは非常に難しいことだと言えるでしょう。
▶︎BtoC企業におけるMAについてこちらの記事で紹介しています>>
BtoB企業におけるマーケティングの流れ
BtoBマーケティングの流れを5つのステップに分けて解説します。
ステップ1 顧客ニーズ・市場を調査
まずは顧客のニーズと市場を調査します。今社会ではどのような製品が求められているのか、同業他社はどのような製品を打ち出しているのかを調査します。
より具体的なニーズを分析するためには、直接インタビューをしたり、ウェブ上でアンケートを実施したりすると良いでしょう。これらを行うことで、企業が抱えている課題や、既製品に対する意見を収集できるはずです。
参考:BtoBにおいて顧客ニーズを把握する必要性と調査の方法
ステップ2 ニーズに合ったサービス・商品の考案
ある程度ニーズが調査できたら、それらを満たせるようなサービス・製品を考えましょう。どれだけ良いマーケティング戦略を練っても、顧客にとって魅力的な製品でなければ売上は伸ばせません。
また、他の企業が打ち出していないような製品、分野に力を入れると注目を集めやすくなります。そのため、市場調査の結果もしっかりと反映させることが必要だと言えます。
ステップ3 ウェブサイト等からリード獲得
製品・サービスの情報を自社のウェブサイトに掲載し、関連したセミナー情報等を同時に表示しましょう。関連したセミナー情報を掲載すれば、「まずはセミナーで話を聞いてみたい」といった顧客の情報を獲得できるかもしれません。
また、大きな展示会にブースを出展することによってリードを獲得できます。様々な企業関係者が集まる機会なので、積極的に活用しましょう。
ステップ4 リードの分類・育成
獲得したリードはしっかりと管理しましょう。手動でデータを管理・分析するのは難しいため、MAツールの導入をお勧めします。
MAツールを利用すれば、より購入意欲がある顧客を抽出できるため営業活動がスムーズになります。MAツールについては以下で説明します。
ステップ5 情報をもとに営業活動開始
購買意欲の高い顧客を優先に営業活動を始めましょう。実際に顧客と会話すると、企業のニーズや製品の購買目的が明確になります。
それぞれの企業に最適な製品情報を提供しましょう。営業活動終了後は、情報の共有も欠かさずに行うことが重要です。
MAツールとは
マーケティングにおいて非常に役立つ、「MAツール」について紹介します。MAツールを導入すれば、業務効率が格段に向上するでしょう。
特徴
MAツールとは、「マーケティングオートメーションツール」のことで、マーケティングの一部行程を自動化できるのです。人の手では管理しきれないデータの管理、メール配信やポップアップ表示など、リードへのアプローチが可能です。
しかし、すべての行程を自動化できるわけではないため、注意が必要です。
▶︎MAツールのメリットについてこちらの記事で解説しています>>
主な機能
MAツールの主な機能を紹介します。
- リード管理機能
MAツールを利用すれば、膨大な量のデータもまとめて管理できます。ウェブサイト上の問合せフォームや、セミナー・展示会で得た情報は必ず入力しましょう。
MAツールを利用して情報を管理すれば、他部署との情報共有も簡単になります。
- リード分析機能
収集した顧客データを属性ごとに分類したり、顧客のウェブサイト上での行動履歴を分析したりできます。属性とは、顧客の業種・職種・役職・年齢などのことを指します。
行動履歴を分析し、購買意欲の高い順に分類するスコアリング機能を活用すれば、効率の良い営業活動を実現できます。顧客の興味・関心度合いに合わせたコンテンツの提供も可能になります。
- メール配信・ポップアップ表示機能
MAツールを活用すれば、顧客一人ひとりの関心に合わせたメール配信・ポップアップ表示も可能です。
例えば、顧客が自社サイト上で閲覧していた情報に関連した内容のメールを配信したり、セミナー情報をポップアップで表示したりできます。顧客が必要としている情報が分かりやすくなるため、より最適なアプローチが可能になるでしょう。
BtoB企業でのMA活用5ステップ
BtoB企業でMAを活用するための5ステップを紹介します。
ステップ1 リードのデータ管理
まずは獲得したリードをツールに入力し、管理しましょう。データ入力を怠ってしまうとデータ収集ができなくなるため、注意が必要です。
ツールの導入目的や利用方法を周知し、データ管理を徹底しましょう。
ステップ2リードの興味・関心を分析
自社サイト上での閲覧履歴・行動履歴から、リードの興味・関心を分析します。サイト上でどの分野を閲覧したのか見ることで、リードがどんなことに興味を持っているか分析できます。
なぜ自社製品に興味があるのか、製品の導入目的は一体何かといった点まで推測できると良いでしょう。
ステップ3 興味・関心に合わせたアプローチ
リードの興味・関心を分析したら、それらに合わせたアプローチをします。リードが興味を示した分野の資料を請求するためのフォームや、セミナー実施のお知らせを配信することで、更なる情報獲得につながります。
ウェブサイト上で表示する内容や、広告の内容を顧客ごとにカスタマイズできるのがMAツールの最大の特徴であると言えるでしょう。
ステップ4 リードをスコアリング
ウェブサイト上での行動履歴やメールの開封率から、顧客の購買意欲を分析できます。自社により興味を示している顧客は、ウェブサイトをより時間をかけて閲覧し、メールも一つひとつ確認するでしょう。
これらの行動履歴をもとに、リードの購買意欲をスコアリングできます。購買意欲の高い顧客のほうがアポイント獲得・商談成功の可能性が高くなるため、リードのスコアリングは非常に重要です。
ステップ5 営業部門と情報共有
ただ単にリードを分析するのではなく、分析した情報を活用することが重要です。ツールで分析したデータを営業部門と共有しましょう。
特に、スコアリングしたデータがあれば営業活動を効率化できます。マーケティング部門と営業部門の情報共有は必要不可欠です。連携体制を整備したうえでツールを導入しましょう。
▶︎マーケティングDXについてこちらの記事で解説しています>>
BtoB企業向け MAツールの比較ポイント3つ
BtoB企業向けのMAツール比較ポイントを3つ紹介します。これらのポイントを参考に、ツールを比較してみてください。
①顧客の属性に合わせたマーケティング施策ができるか
まず重視したいのが、顧客の属性に合わせたマーケティング施策ができるか、という点です。
BtoBでは、取り扱う製品の単価が比較的高価で、顧客の意思決定に時間がかかるという特徴があります。高価な製品を購入するからこそ、企業はより時間をかけて、多くの人員で話し合いをしたうえで購入するかどうか決定します。
顧客の意思決定を促すためには、それぞれの顧客に適した情報提供が効果的です。よって、顧客の興味・関心を詳細に分析でき、それらに合わせた情報を配信できるツールを選択すると良いでしょう。
②名刺管理ツールとの連携が可能か
人の手で名刺を管理するのは難しいため、名刺管理ツールを導入している企業も多いと思います。すでに利用している名刺管理ツールと連携できれば、顧客情報を入力する手間が省けます。
例えば、国産MAツールのSATORIは、名刺管理ツール「SanSan」と連携できます。手間なく正確にデータを連携できるのは、非常に便利です。
参考:Sansanと国産MAツール「SATORI」が機能連携を発表
③サポート体制は整っているか
MAツールを利用していて、分からないことや困ったことがあるときにすぐに解決できると安心です。多くのMAツールはサポート窓口を設けており、すぐに相談できます。
電話のみならず、チャットやメールでも相談できるとより使いやすいでしょう。中には、MAツールの運用計画を一緒に立ててくれるサービスもあります。
特に、セールステックを初めて導入する場合はサポート体制が充実しているツールがおすすめです。
BtoB企業におすすめなMAツール5選
BtoB企業におすすめなMAツールを5つ紹介します。
- SATORI|1,000社以上が導入
- Pardot|BtoBマーケティングに特化
- Marketo|全世界で5,000社以上が導入
- ListFinder|初心者でも使いやすい
- Marketing Hub|マーケティングの効果がわかる
①SATORI|1,000社以上が導入
SATORIは1,000社以上で導入されている国産ツールです。
- 特徴
SATORIの最大の特徴は、匿名リードにもアプローチ可能な点です。通常のMAツールであれば、企業名や個人名、メールアドレス等が不明なリードは管理できません。
しかし、SATORIでは個人情報が不明でも、アクセスしたページなどから関心度合いを分析し、セグメントに分類できます。そして、セグメントごとに適したポップアップ表示やプッシュ通知でアプローチできます。
これらのアプローチが問い合わせや資料請求につながれば、匿名リードの情報を獲得できるのです。
参考:SATORI公式サイト
- 料金
料金は以下の通りです。
初期費用:300,000円
月額費用:148,000円
画面デモ、料金見積もりを希望する場合はお問い合わせが必要です。
- 導入事例
SATORIの導入事例を紹介します。
Webマーケティングのスキルやノウハウを落とし込んだSEOプラットフォーム、「MIERUCA」を提供している株式会社Faber Companyは、SATORIを活用しています。
株式会社Faber Companyは、セミナー申し込みの管理面で特にSATORIを活用しています。SATORIのwebhook機能でSlackと連携させ、セミナー申し込み情報がSlackに贈られてくるようにしています。
Slackと連携できたことで、セミナー申し込み情報を見逃しづらくなり、参加リマインドもしやすくなったそうです。自社サイトとSlackを連携できるのは非常に便利な機能だと言えます。
参考:導入から6年を振り返って。「MIERUCA」販売プロセスの根底に「SATORI」あり
②Pardot|BtoBマーケティングに特化
PardotはSalesforce社が運用しているMAツールです。BtoBマーケティングに特化しています。
- 特徴
Pardotは、問い合わせフォームや専用ページの作成をサポートできます。簡単にフォームを作成できるため、手間が省けます。
また、eメール作成にも特化しており、読んでもらえるeメールを作成しやすくなります。eメールのテンプレートやエディタを利用でき、メールの開封率向上につながります。
また、レポート機能によりマーケティング施策の成果を画面上で簡単に確認できます。効果のあった施策を把握できれば、今後どんな施策を行うべきか判断しやすくなるでしょう。
参考:Pardot製品サイト
- 料金
料金は以下の通りです。
Growthプラン:月額150,000円
Plusプラン:月額300,000円
Advancedプラン:月額480,000円
Premiumプラン:月額1,800,000円
- 導入事例
情報通信機器や医療機器を販売しているコーセル株式会社は、Pardotを活用しています。ウェブサイト上のコンテンツを充実させて問い合わせフォームへ誘導したり、積極的にメールマガジンを配信したりしたことで、獲得リード数が10倍にまで増加したそうです。
これらのリードを商談に活用するため、SalesCloudも導入開始しました。Pardotと連携できるため、リード管理と分析がスムーズにできるのです。Pardotを利用する際は、Salesforce社の他サービスも同時に検討すると良いでしょう。
参考:Pardot導入事例
③Marketo|全世界で5,000社以上が導入
Marketoは、Adobeが運用しているMAツールです。全世界で5,000社以上が導入しています。
- 特徴
Marketoは、顧客のあらゆる行動履歴を収集でき、そのデータをもとに顧客の興味を引き付けやすいメールを作成できます。メールマーケティングにより、新規顧客を獲得できます。
顧客一人ひとりに合わせた内容のメールは非常に効果的です。テンプレートを使用し、このようなメールを簡単に作成できるのはとても大きなメリットです。
さらに、シンプルなダッシュボードで使いやすく、詳細なレポート機能で施策の成果を確認できます。
参考:Marketo製品サイト
- 料金
料金はデータベースサイズにより異なるため、お問い合わせが必要です。
- 導入事例
コクヨ株式会社は、BtoBのファニチャー関連事業においてMarketoを活用しています。Marketoを活用してメールを配信したことで、セミナー参加人数が約3倍まで増加したそうです。
また、セミナー実施前後のフォローを自動化したことで、集客が非常に楽になったとのことです。新規顧客が増加し、作業効率も向上できるのは非常に大きなメリットではないでしょうか。
参考:コクヨ株式会社 After2020を生き抜くために営業の効率化を図りたい
④ListFinder|初心者でも使いやすい
ListFinderは、BtoB企業向けの国産ツールです。
- 特徴
大きな特徴は、見込み客の情報を整理でき、購買意欲が高い顧客を選別できることです。シンプルで使いやすいため、初めてツールを導入する場合も安心です。
また、SanSanで管理している名刺情報や、Salesforceで蓄積した顧客データを連携できます。これらのツールを導入している企業に特におすすめです。
また、導入初期は無料でコンサルタントがサポートしてくれるため、セールステックの導入が初めてでも安心です。
- 料金
料金は以下の通りです。
初期費用:100,000円
ライトプラン:月額39,800円
スタンダード:月額59,800円
プレミアム:月額79,800円
- 導入事例
システム開発・アプリ開発・Adobe製品の代理店などの事業を展開するイースト株式会社は、ListFinderを導入しています。イースト株式会社は、使いやすく料金体系が明朗なMAツールを探していました。
そのような中でListFinderを利用したところ、ListFinderの担当者の方に運用体制をサポートしてもらえたそうです。当時イースト株式会社にはマーケティングに詳しい担当者がいませんでしたが、うまくツールを活用できたとのことです。
ListFinderは、イースト株式会社と同様にマーケティング担当者が在籍していない企業にもおすすめのツールです。
⑤Marketing Hub|マーケティングの効果がわかる
Marketing Hubは、Hubspot社が提供しているツールです。
- 特徴
Marketing Hubは製品に関心を示している見込み顧客に対して、ウェブサイト上でやり取りをするチャットボット機能や、eメール配信機能を搭載しています。また、マーケティングの効果がわかるレポートを一目で確認できます。
Hubspot社の他製品やSalesforceと連携させることで、より大きな効果が期待できます。さらに、日本語でのカスタマーサポートも受けられます。
- 料金
料金は以下の通りです。
Starter:月額5,400円
Professional:月額96,000円
Enterprise:月額384,000円
- 導入事例
株式会社コムニコは、2008年に創業したSNSマーケティングのサポートを行う企業で、Marketing Hubを活用しています。Marketing Hubを利用してから新規リードを月に100件以上獲得できるようになり、顧客情報の共有がスムーズになりました。
また、メール開封率も30~40%まで増加しました。ウェブサイトから新規リードを獲得できるようになり、営業活動の幅が広がったそうです。
▶︎無料で使えるMAツールについてこちらの記事で解説しています>>
BtoB企業向けツール比較(表)
BtoB向けMAツールを表で比較してみましょう。
SATORI | Pardot | Marketo | ListFinder | Marketing Hub | |
導入事例 | 〇
1,000社以上 |
◎
国内シェア率No.1 |
◎
5,000社以上 |
〇
1,600アカウント以上 |
◎
他サービスと合わせて128,000社以上 |
価格帯 | △
比較的高価 |
△
比較的高価 |
ー
不明のため |
◎
比較的低価格 |
〇
低価格で利用開始可能 |
サポート体制 | ◎
無料セミナー有 |
〇 | ◎
コンサル、セミナー有 |
◎
無料コンサル |
〇 |
まとめ
今回は、BtoBマーケティングの特徴と、BtoBにおけるMAについて解説しました。BtoBマーケティングの流れと、MAツールの活用方法は把握できましたか?
この記事を参考に、MAツールを比較し導入してみてください。自動化できる部分は積極的に自動化し、更なる業務効率化を目指しましょう。