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2021.09.03

《完全版》DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントも合わせて紹介

最終更新日:

DX進め方アイキャッチ

労働力不足が懸念される日本では、あらゆる産業分野でデジタルによる変革が重要視されています。

そこで注目を集めているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。変化する社会での競争を生き抜くため、多くの企業がDXの推進に取り組んでいます。

しかし、DXへの理解不足などの課題があることも事実です。

今回は、DX推進のメリットや適切なステップ、具体的な事例を紹介していきます。

DX推進が求められる理由とは?

 経済産業省によるDXの定義

日本経済産業省は2018年に、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発行し、ビジネスシーンにおけるDXを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用︰デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)

企業が競争社会で生き抜くためには、社会の変化に対応して、デジタルの力を使い、新たな価値を創造する必要があります。

▼DXについて詳しくはこちら

2025年の壁

2018年9月7日に経済産業省が発表した「DXレポート」で、2025年の崖」という言葉を用いて、日本企業のITシステム基盤に対する警鐘が鳴らされたことをきっかけに、DXは注目を集めるようになりました。

「2025年の崖」とは、日本はDXが進まないことが原因で、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が生じるとことを表した言葉です。会社の基盤となっていた、既存システムの中身が複雑化・老朽化・ブラックボックス化していくことで、国際競争への遅れや日本経済の停滞などが起きてしまいます。

一方、DXが実現すれば、2025~2030年に実質GDP130兆円超の押し上げが可能と言われています。

DX推進がもたらすもの

企業がDX推進を通じて目指すものは以下の2つです。企業はこれらの変革により、競争において優位性を確立します。

デジタル技術を活用して、製品・サービス・ビジネスモデルを変革する。
デジタル技術を活用して、業務や組織そのものを変革する。

参照︰DX推進をわかりやすく解説!成功事例・失敗事例・進め方までわかる(DropboxBusiness)

DXの推進は、競合企業に対する競争力を高めることに繋がるため、企業が実施すべき取り組みです。

DXを推進するメリット

業務の効率化/生産性の向上

DXの導入により、システム維持費用や労力の無駄が省かれ、コスト削減・効率化が図られます。また、業務の効率化・自動化による企業の生産性向上が期待できます。

新たな価値創出による収益の増加

DXの過程による組織変革を行い、新たなビジネス・サービスが創出されれば、企業は新たな収益基盤を構築できるかもしれません。

また、データを活用した精度の高い分析は顧客のニーズや利便性を拡充し、サービスの「使いやすさ」を追求することで、事業やサービスが本来の姿と異なる特性を持ち合わせ、新しい価値創出に繋がります。

こちらの記事では、「DXを導入するメリット」について詳しく紹介しているので、興味ある方はぜひご覧ください。

日本企業におけるDXの現状

2019年にIPAが行った「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、社内でDXという用語を使っている企業は3分の1程度でした。

DXの効果については、最も取り組みやすい「業務の効率化による生産性の向上」においても、ある程度効果が出ていると答えた企業は最大3割となっています。

参照︰デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(情報処理推進機構)

DXという言葉が注目を集める一方で、DXの推進に取り組めていない企業も多くあります。また、取り組みの効果が得られずに悩んでいる企業も多いという現状が伺えます。

「日本におけるDXの課題を知りたい方」は、こちらの記事も合わせてご覧ください。

DX推進への課題

DXに対する経営者の理解不足

企業がDXを推進するためには、経営者の同意が必要となります。しかし、DXに対する知識やDXの必要性に対する理解が足りないことから、企業をDXにより刷新することの同意を得られにくいケースもあります。

DXの推進に直接携わる人だけでなく、企業全体としてDXの必要性を理解しましょう。

DX人材の不足

DX人材とは、データの重要性を理解し、適切にデジタル技術と組み合わせ、企業を変革していく取り組みができるような人材を表し、企業がDXを推進する上で必要な存在です。

しかし、「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」(2019年5月17日)を実施した独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によると、

全体として、いずれの人材についても、「大いに不足」という回答が最も多くなっており、DXの推進を担う人材に対する不足感が非常に強いことがうかがえる。

引用︰デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(情報処理推進機構)

この結果から、DX人材の確保・育成が今後の課題となっていることが分かります。

複雑化したレガシーシステム

レガシーシステムは、日本企業の多くが利用している旧式の基幹業務システムを指します。旧式システムは誇大化・複雑化により、ブラックボックス化(内部構造が理解できない状態になること)しています。

そのため、柔軟性や機動性が欠けており、最新技術を運用しにくいという課題があります。

また、既存システムとの連携が上手くいかず、DXの導入が進まない・さらに複雑化してしまうといったケースも見られます。

▼DX課題について詳しくはこちら

DXの進め方|ビジョンの掲示から評価までの7ステップ

①経営戦略・ビジョンの掲示

DXの推進には、「何のためにDXに取り組むのか」といった経営戦略・ビジョンが必要です。DXを目的とするのではなく、DXは目的達成のための手段だと考えましょう。

変化する社会で、競争力を高める新たな価値を生み出すために「DXによって何を目指すのか」など、具体的な目的の作成・共有が大切です。

②経営トップの同意をえる

DXにより、企業そのものが大きく変革することもあります。根本的な改革を進めるためには経営者の理解・同意が必要になります。DXの実現により、新たな事業を展開する際も、経営者の同意が必要となるため、経営陣にもDXの必要性に対する理解が求められるでしょう。

③DX推進のための体制作り

DXの推進に継続して取り組める組織の体制を構築しましょう。以下のようなサイクルをスムーズに実施できるような体制が必要です。

①仮説を立てる→②施策を実施→③データを使って検証

また、DXを担う人材の確保や育成、連携の取れた組織運用体制の構築も重要です。

④現状の可視化・分析

既存の複雑化したシステムなど、自社システムの現状を可視化・分析し、改善しましょう。「システムの連携が取れているか?」といった現状を把握することで、現状のシステムに見直しが必要かどうか明らかになります。横断的にデータが活用できるように連携の取れたシステムが理想です。

⑤業務のデジタル化

アナログで実施している業務をデジタル化しましょう。Web上のアプリ・クラウドサービスを積極的に導入するなど、デジタル技術の活用は、業務の効率化やコストの削減に繋がります。

業務のデジタル化が進んだら、組織全体の業務フロー(業務のプロセスを分かりやすく示した流れ)をデジタル化し、既存ビジネスの高度化に取り組みましょう。

⑥ビジネスモデルのデジタル化

既存のビジネスにデジタルを取り入れることで、新たな利益や価値の創出が期待できます。新たなビジネスモデルが実現すれば、新事業へ転換の可能性も出てくるでしょう。

⑦プロセスの評価・見直し

DXを推進には、定期的なプロセスの評価と見直しが大切です。DXの推進状況やその効果を評価し、より効率的にDXを実現するために、プロセスの見直しと改善を繰り返しましょう。

DX推進の4つのポイント

DX人材の育成

DXの推進には、多くのエンジニアもマネジメント人材が必要とされ、DXを担う人材が欠かせません。しかし、DX人材は不足しており、DX人材の十分な確保は困難です。

そのため、自治体では職員のDXに関する知識を深めるといった、DX人材の育成が必要となるでしょう。

▼DX人材について詳しくはこちら!

部門間の連携・全社への拡大

DXの導入が一部の部門だけに止まってしまい、会社全体としてDXが実現できていないケースが散見されます。DXの導入による企業の変革には、多くの時間と労力がかかります。

まずは、自社の状況を把握し、小規模な施策から取り組みましょう。徐々に対象範囲を広げていくことが確実な進め方です。部門間での連携など横断的な体制を構築し、全社でDXの実現を目指しましょう。

ユーザ(消費者)視点でバリューチェーンを考える

競合優位性を確立するために重要なのは、ユーザ(消費者)視点を忘れないということです。

DXの推進により業務が効率化されても、それがエンドユーザ(商品、サービスを最終的に使用する人)視点で価値が感じられるものでなければ、自社がエンドユーザに選んでもらい続けることはできません。

そこで活用できるフレームワークがバリューチェーンです。

バリューチェーンとは、原材料や部品の調達活動、商品製造や商品加工、出荷配送、マーケティング、顧客への販売、アフターサービスといった一連の事業活動を、個々の工程の集合体ではなく、価値(Value)の連鎖(Chain)として捉える考え方です。

引用︰バリュー・チェーン(Bizhint)

自社内のそれぞれの事業(機能)がどのようにエンドユーザへの価値を創出しているのかを考えることで、ユーザに選ばれ続ける企業体に変化可能です。

パートナーシップを取り入れる

DXを推進する上でユーザ視点と同様に重要なのはオープンネスです。自社のリソースだけでなく、外部パートナーと組むことで、お互いのリソースをかけ合わせ、さらなる競争優位性の確立のきっかけになります。

自社の強みを理解した上で、柔軟に社外との取り組みを活発化させていくことで、さらにスケーラブルにDX戦略を実行できます。

こちらの記事では、DXの推進に必要なことやDX推進の課題について詳しく解説しているので、興味ある方はぜひご覧ください。

DXの推進事例

トヨタ自動車|営業システムのデジタル化

トヨタ自動車は、オンプレ基幹システムとクラウド型CRM(顧客管理システム)を「Salesforce」を連携させ、顧客情報を横断的に活用できるようにしました。

これにより、販売会社の営業活動効率化が期待できます。
参照︰デジタルトランスフォーメーションの実践(ZDNetJapan)

富士通|郵便コストの削減

富士通はA*Quantum社と共同で、日本郵便様の埼玉県新岩槻郵便局における運送便の最適化に取り組みました。

量子コンピューティングに着想を得た組合せ最適化問題を高速に解く新技術を使い、輸送コストを最小化するルートをデータを用いて算出したそうです。

これにより、従来の手法と比べて便数を52から48に削減することが可能となりました。
参照︰先行事例から見る「Data×AI」【後編】データを活用したビジネス成果の出し方(FUJITSUJOURNAL)

スターバックス|モバイルアプリの導入

スターバックスは、強化学習の技術を使ったモバイルアプリを導入しています。最寄りの店舗の在庫、任期商品、ユーザーの注文履歴などを反して、オススメの商品を推奨します。

これにより、ユーザーに最適化された商品の提供が実現します。
参照︰Starbucks turns to technology to brew up a more personal connection with its customers(Microsoft)

【初心者必見】DX関連のおすすめ書籍

いちばんやさしいDXの教本

「DXとは何か?」といった基礎からDXに必要な知識やアクションを解説してくれます。図を用いた分かりやすさが特徴です。

イラスト&図解でわかるDX~デジタル技術で爆発的に成長する産業、破壊される産業~

DXの基礎やデジタル時代におけるビジネスモデルについて学習でき、日本イノベーション融合学会が推薦する書籍の1つとしても紹介されています。

まとめ

DXの導入は、業務の効率化による生産性の向上・新たな価値の創出など、企業に利益をもたらします。変化する社会で競争力を高めるためにも、企業にとってDXの推進は必要です。

しかし、DXが注目を集めている一方、DXで成功を収めている企業は少ないという現状があります。企業はDXの推進を、適切な手順に沿って着実に進める必要があります。

既存のシステムや課題を理解し、今回紹介した7つのステップや事例を参考に、DXの実現を目指しましょう。

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