2006年に機械学習の手法「ディープラーニング」が登場し、2000年代半ばから2022年現在に至るまで第三次AIブームが起きています。
また、ITおよび通信分野に関する調査を毎年行っているIDC Japanが、2022年3月16日に発表した、「IDC Worldwide Semiannual Artificial Intelligence Tracker」の最新リリースによると、ソフトウェア、ハードウェア、サービスの各カテゴリーを含む全世界のAI市場は、2022年に前年比19.6%の成長をすると見込まれています。
今回は、2022年現在から過去5年間のAI市場の動きについて、HEROZの代表取締役である林氏と高橋氏にお話を伺いました。
代表取締役 Co-CEO 林 隆弘氏
1999年4月 日本電気株式会社(NEC)入社 IT戦略部、経営企画部に在籍 |
代表取締役 Co-CEO 高橋 知裕氏
1999年4月 日本電気株式会社(NEC)入社 海外光伝送事業部、BIGLOBE、経営企画部に在籍 |
金融・エンタメ・建設に強いHEROZ
ーーHEROZの強みについて教えてください。
高橋氏:深層学習や強化学習の領域は、HEROZの強みのひとつです。
HEROZには強化学習に特化したメンバーがたくさんいるので、課題解決のために適切なアルゴリズムを選定することができます。AI市場は年々激戦区になっており、適切なアルゴリズムを扱い継続的にパフォーマンスをあげないと埋もれてしまいます。
そうならないよう常に技術向上を志して事業を続けられるのは、HEROZの強い部分だと思います。
また、当社のAI技術は将棋AIで培ってきたので、AI技術を売りにしている競合他社と比較したときに、HEROZは他分野への応用が可能な機械学習を提供しているため、さまざまな産業の社会課題の解決に応えることができます。
ーーHEROZの領域について教えてください。
高橋氏:HEROZの主要領域は、金融・ゲーム・建設系です。
今までにさまざまな業種のクライアントと仕事をしてきたことで、業種ごとの悩みや情報を蓄積しているので、そこも強みになっているのかなと思います。
ーー2022年上期までの動きについて教えてください。
林氏:2022年の上期はBtoC、BtoBそれぞれにテーマがあって、「将棋人口の最大化」と「AIの社会実装を進める」を掲げて事業を進めてきました。
BtoCでは、将棋ウォーズにて日本中の子供向けに「みんなのオンライン対局」にプラットフォーマーとして協力したり、プロフェッショナル向けの将棋AI解析サービスの棋神アナリティクスを提供したりしました。BtoC事業は、順調な事業拡大をしている最中です。
そしてBtoBは、サービスの提供形態を幅広く行っていて、共同開発や共同研究、受託などをしてきました。具体的には、企業が提供しているアプリケーションに対してAIの実装を行っている状況です。2022年下期からはBtoB事業をより加速させていくつもりです。
ーーHEROZの社内構成や人事方針について教えてください。
高橋氏:エンジニアが多い組織です。HEROZは、テクノロジーファーストを掲げているので、エンジニアの半分以上は1からシステムを構築するスクラッチ開発ができます。
現在社員数が約60人になり、これから組織が大きくなっていく段階に差し掛かっています。そのため、組織自身を変えていこうと思っていて、事業を拡大していくには、ミドルマネジメントが必要だと考えています。
そこで私たちは、人材1人1人の育成や成長にしっかり寄り添えるような組織作りに取り組んでいる最中です。
その中でも、HEROZが一番力をいれている職種はビジネスコンサルタントです。AIをなぜ導入するのかという要件定義がしっかりできて、顧客に対して最適な提案ができる人材が不足しているため、現在ビジネスコンサルタントの教育や採用に注力をしています。
ーーなぜビジネスコンサルタントが重要になってくるのか教えてください。
林氏:私たちが重要だと思っている人材は、産業と統計の知識を正しく持っている人材です。どんなビジネス構造で、どんなふうに利益が上がっているのか、そして現場の人やユーザーはどんなことに困っているのかを理解しているかつ、AIの基礎である統計学の知識をしっかり備えている方でないと、顧客が持っているデータ群をうまく活用できないため、解決案を出せる人材になりません。
そのため、ビジネスコンサルタントを1人でも多く増やしていきたいと思っています。
また、既存のメンバーに関しては、スキルアップ支援制度をしていて、海外の研修コンテンツや専門知識の勉強のための費用を会社で負担し、個々がレベルアップできるような環境づくりをしています。
AI市場が急成長!?|コロナ禍を経て変化したAI市場
ーー2022年現在にかけて、AI市場はどのように変化したと感じましたか。
林氏:大きな流れとして、AI分野のPoC(概念実証)に対しての予算が大きくなったと感じています。
以前は、需要に対して供給が追い付いていなかったため、AI企業はやれば儲かる時代だったと思います。そこから2018年にはAIの普及が進み、競争が激化し、具体的な業務課題や経営課題などが明確化されてきたので、業務課題に特化したAIベンダーが増えてきた流れがあったと思います。
そういった背景からここ5年間でAI企業は、基本のITシステム同様にROI(投資利益率)が求められる時代になってきたと思います。
高橋氏:5年前は、AIのことがわからないからこそ、とりあえず利用している方がたくさんいましたが、ここ1、2年はAIをただ利用することよりも、「生産性を高める」「次のビジネスを作るために使用する」など、目的ありきでのAI利用が増えてきたと思います。
そのような目的を達成するためには、SaaSを活用するという視点が大事になってくると感じていて、常に新しい情報を得ないと時代についていけなくなると思っています。
ーーこれからのAI市場はどうなると思いますか。
高橋氏:これからは、単純に「AIを使う」という局所的な考えではなくて、自分たちのビジネスをどう伸ばすのかを考える時に、「AIをどう使うのかを考えていく」というように、目的を定めて活用されていくのではないかと思っています。
また、AIに関心を持つ企業が今まで以上に増えていくと思っています。しかし、立ち上げようとしている事業にAIを使用するべきなのかの判断は難しく、そこの部分を解きほぐす必要があるので、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)から始めてみたり、データを整理して、何のためにAIを使うのか考えてみたりする必要があると思います。
ーー現在のAI市場の動きを見て、問題点や改善すべき点は何かありますか。
林氏:これまで、AIの受託ビジネスでは、全ての制作物を納品していましたが、AIガイドラインが整備されて学習済みデータは納品するが、ソースコードは企業の所有物なので納品しない形になりました。しかし、依頼する企業側はソースコードがあれば自社でサービスをアップデートできるため、コアの部分も提供して欲しいと考えています。そのギャップが原因で多くのスタートアップ企業が躓いてしまっていると思います。
そのため、AI SaaSのような考え方が普及し始めたのではないかと思います。SaaSの形式であれば、ソースコードを出す必要がなくなるので、企業間のギャップがそもそも生まれなくなるためです。
また、人事業務や経理システムなど自社開発が少ない分野では、一層SaaS化が浸透していく気がします。一方で、「ビジネスで収益をあげたい」「自社の付加価値を高めたい」という目的に対しては、システム開発と同様に独自で開発する必要があると思います。
あとは、日本の事業全体で、2%ぐらいしかIT投資が増えていないのでさらに増加するべきだと思います。今は、コロナ禍の影響などで予算が高まり続けているのでいい変化だなと思っていますが、北米などは、IT投資主体が4%弱ぐらいあって2倍も違うので日本とのAI成長速度が変わってくるのではないかと思います。
DXもAI同様伸び続けている??
ーー2021年は、DXが大きなトレンドだったと思いますがDXの注目について何か感じましたか。
林氏:DXはコロナ禍以降から注目が集まっていると感じています。コロナ禍によって事業の継続が難しくなってしまった会社が多かったため、競争力の強化のためにリモートワークなどの働き方改革や根本的な業務の見直しを始めていったと思います。
また、AIによる業務の効率化や人手不足解消などが課題として挙がっており、パンデミックによってAI×DXのポジショニングが変わってきた印象があります。
今後のAI戦略
ーー今後の展望について教えてください。
高橋氏:HEROZのコア技術である将棋AIのBtoCを成長させつつ、BtoBにも力を入れていきたいと思っています。toBの領域で自社AIを普及させるためにはSaaSプロダクトの展開が必要だと思っています。
2022年8月には株式会社ストラテジット、9月にはバリオセキュア株式会社を子会社化しました。この2社の業務提携は、BtoBビジネスのキーになっていく部分で、ストラテジット社はSaaS API連携開発サービス開発等をしている企業で、バリオセキュア社はマネージドセキュリティサービスの会社です。
HEROZは、戦略的にAI SaaSを掲げていて、上記2社の技術とHEROZが培ってきたAI技術を組み合わせ、新たなビジネスを展開していきたいと考えています。
AI市場的にも、SaaSなどを活用して事業の拡大や、生産性の向上を図っている企業がたくさんいますので、そういったサービスの展開が今後肝になってくると思います。
SaaSは、一つの業種に特化しているものもあれば、汎用的なものもあると思います。そこは、自分たちがどの分野が得意なのかを見極めながら自社ですべてやるものもあれば協業的にやるものもあると思います。
他には、専門性が高い業務に対して、AI化を進めていきたいと思っています。AI化が進むことで有資格者以外の人が、有資格者とある程度同じように業務ができるようになると思います。
そうすると人手不足がある程度改善できて、有資格者はもっと高度な業務ができるようになるため、ある分野に特化したAI開発のマーケットっていうところをちゃんと伸ばして、サービス化していきたいと思っています。
現在のHEROZは、将棋AIのイメージが強いと思いますが、これからは「日本を代表するAIビジネスといったらHEROZ」になれるようにしていきたいです。
最後に
今回は、HEROZにこれまでのAI市場、これからのAI市場についてインタビューしました。AI市場は、過去5年間で急激に成長をし、これからも成長を続けていくと予想されています。
AIに関心を持つ企業はますます増えていき、AI市場はこれまで以上に急成長する可能性があります。
AI化が進む日本でどのようなサービスが展開されるのか、今後のHEROZのAI戦略に注目です!
HEROZは、現在新しい仲間を募集しています。