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2023.02.06

Web3時代に企業や社会が取るべきAI戦略の形|『ExaWizards Forum 2022』イベントレポート

最終更新日:

AI を活用した社会課題解決に取り組む株式会社エクサウィザーズは、2022年10月19日に『ExaWizards Forum 2022』を開催しました。

フォーラムではWeb3が注目を集める中、企業の経営者やDX担当者に向けて「Web3時代のAI戦略はどうあるべきか」というテーマで、米イェール大学助教授(経済学)の成田悠輔氏や、株式会社ディー・エヌ・エー創業者・代表取締役会長の南場 智子氏といった豪華ゲスト陣が講演を行いました。

本記事では、成田氏の基調講演とエクサウィザーズ取締役 大植氏の講演をレポートします。

※また、本記事では講演内容の一部割愛や表現の変更をしておりますのであらかじめご了承ください。

社会公共領域でのAI活用と今後の展望とは

基調講演には、米イェール大学助教授(経済学)で半熟仮想株式会社代表取締役を務める成田悠輔氏(画像左)がオンラインで登壇しました。(画面右が大植氏)

AIとはなにか

成田氏ーまず前提として、AIの典型的なイメージはそのビジネス活用という側面が挙げられると思います。

ZOZOTOWNやYahoo!ショッピングのようなe-コマースを例に挙げますと、サイト内で誰が、どんな商品を見て、どのアイテムをクリックしたのかといった数千万件規模のデータに基づいた推薦AIを開発するための開発基盤作りに私も携わっています。

このように、現在Webなどの限定的な分野でAI活用が行われているのですが、今後数十年かけてこの活用領域がより広い領域に浸透していくと考えています。

そして、その特に重要な領域というのが公共領域、あるいは政策領域と呼ぶべき領域なのではないかと思います。つまり、教育や医療はもちろんのこと、労働市場や司法裁判、警察・軍事にいたるまでAI活用領域が拡大していくと考えています。

公共領域へのAI活用

成田氏ーAIの公共領域への活用を考えていく際には、いくつかのレイヤーに分けて考える必要があると思います。

まずはじめに、ミクロなレベルでの活用です。典型的な例としては、健康や医療における個人レベルでの活用です。スマートウォッチやスマートイヤホン、スマートグラスを着けることで、機器に内蔵されたセンサから血圧やストレス状態のデータが取れるようになり、将来的にはそういったデータから心臓発作の予防に繋げることが出来るとされています。これはごく一例で、ミクロな領域のAI活用は今後もますます広がると予想されます。

ただ、公共領域・政策領域へのAI活用というものを考えると、よりマクロな例も大事になってくるでしょう。こちらはいまだ実装されていない潜在的な活用例になってきますが、例として挙げるとコロナ政策というような社会政策が該当すると思います。

日本やアメリカではコロナによって病院の経営状態が悪化し、数兆円を超える規模の病床支援金が各地に注ぎ込まれました。病床支援金の目的としては、コロナ患者の受け入れが可能な病床数を増やすことなどがありました。

しかし、アメリカの調査によるとアメリカ国内における病床支援金がコロナ病床数に与えた影響は、ほぼ0であるという事が判明しました。ここで、日本ではどうだったのだろうかということが疑問になります。

そこで、こうした補助金の政策決定において、AI的・機械学習的に解釈して政策を設計するという進め方があるのではないかと考えています。つまり、機械学習は今ある状態を入力変数のXとして与えると正解のYを抽出するという仕組みなのですが、これを補助金政策のような問題にも適用できるのではないかということです。

入力変数として病院の属性規模や営利・非営利、コロナ対応の履歴などといったデータを機械に与えれば、正しい支給額を導き出すことができるのではないでしょうか。こうしたAI・機械学習的な発想を政策ルールのデザインに適用していくことは可能であると思います。しかしながら、こうした試みは未だ行われていないというのが現状です。

公共政策課題へのAI導入が進まない理由

成田氏ーその理由としては、大きく3つが挙げられると思います。

まず1つ目は、実質的なデータの標本数が手に入らないという理由です。例えば、個人レベルのデータであれば数多く集めることができると容易に想像できますが、国や自治体レベルのデータは標本数がわずかで、大量のデータを必要とする典型的なAIにとっては少なすぎるという課題があります。

そして2つ目の理由としては、ABテストのような実験を行えないということが挙げられます。例えば、「どのような補助金政策を行ったらどんな結果が得られるか」というようなテストを行えたら理想的ですが、現実ではそのような形で政策を実行することは難しいです。したがって、これまで行政的なプロセスで決まった政策によって得られた結果だけに基づいて、何が正解であるかというデータを作り出さなければならないので非常に難しい環境での学習が必要になってきます。

そして3つ目は根本的な難しさとして、学習をする際に政策のなにを持って成功・不成功を決めるのかがはっきりとしていないという理由が挙げられます。これには、政策のどのような面を成功や失敗の関数・数値として設定すべきかを、機械ではなく私たち自身が内側から見つける必要性が生まれてきます。
こうした様々な理由が、公共政策領域へのAI活用の大きな壁となっているといえます。

民主主義のためのAI活用の仕方とは

成田氏ーそして、そうした課題はコロナ禍の政策デザインのような個別政策においても問題になりますが、より大きな社会制度・社会インフラのデザインの場合にはより明瞭に浮かび上がります。

例えば、私の興味分野である「民主主義や資本主義といった政治経済の仕組みの最も根本的な部分を、今世紀風のデジタル技術を用いてアップデートできないか」ということを例に挙げていきたいと思います。

まず、民主主義的な社会の意思決定の形として一番わかりやすいのが選挙だと思うのですが、選挙は紙に書いた情報を民意を示すデータとして仮定して、多数決というルールの下にどの政党が政権を握るかを決める仕組みです。つまり人間が手動で作り出したデータ変換と、それに基づく意思決定が選挙であるということです。

しかし、今現在の情報環境と技術環境を考えるとはるかに豊かでリッチな民主主義の形もあり得るのではないかと思います。それはある意味で、”無意識データ民主主義”とでも呼ぶべきような民主主義の形です。

もちろん選挙の投票用紙に書かれた情報も人々の民意を表す一つのデータではあると思いますが、現代の社会では他にも世論を読み取ることが可能な大量のチャンネルというものが存在しています。

例えば、SNSで人が政策に不満を述べるなどが分かりやすい例だと思いますが、それ以外にも街中で街頭演説を聞いた人の反応や、テレビに映った政治家の話を聞いてどのような反応を示したか、というような生体情報が先ほどのスマートウォッチのようなデバイスを通じて、データ化されるということもあるかもしれません。

こうした意識を超えた無意識レベルの生体感知から意識された言動や行動など、様々なチャンネルが一般意思を表すような無数のデータ源になっていると思います。そうした様々なデータ源を組み合わせたり、突き詰めて目的関数や損失関数を持っているかということをデータに基づいて学習することで、現在ウェブビジネスで行われているAI活用の延長線上に位置づけることもできると考えています。

民主主義の入力側も出力側もこれまでとは比較にならないくらい高次元化してチャンネル化する。こうした現代的な民主主義のあり方、あるいは民主主義のAI化というような形も今後あり得るのではないかと思います。

Web3時代における企業のAI活用戦略

「Web3時代のAI戦略、活用事例総まくり」と題された講演には、2022年8月に日経BP社から『Web3時代のAI戦略』を出版したエクサウィザーズ取締役の大植氏が登壇しました。

前提となるWeb3、AIについて

大植氏ーまずWeb3については、ブロックチェーンやスマートコントラクトといった技術的なイノベーションでもありますが、本質的には価値観の変化であるというふうに私は捉えています。

しかし、イノベーションとしてはまだまだ起きはじめたばかりで、全体としては1%くらいではないかと考えています。そして、AIについてはWeb3との関係性という点において、ポテンシャルが大きく、これからどんどん取れるデータの質が高まってくると考えられるので、それに応じてAIの重要性もさらに増していくと思います。

さらに、成田さんの講演の中にもありましたが、民間やビジネスの現場で起こっているAIを活用するDXの推進が公共の領域にも広がりを見せようとしています。

AIぐるぐるモデルを活用する企業の成長カーブ

大植氏ーどのようにAIを活用すればより本質的なAI活用になるのかという点で、日本企業における旧来型の典型例を紹介します。

日本企業におけるAI活用は図の0番の曲線のイメージで、様々なデータを人の手によって形成し分析した後、そこから得られた結果を手動でサービスに反映します。非常に局所的なAI活用の形というのも日本企業における典型的な特徴の一つです。

そして、本の中で紹介しているのが図の2番の曲線のAIぐるぐるモデルを活用した企業の例で、GAFAなどがぐるぐるモデルに乗って、価値を飛躍的に伸ばしているのがポイントです。

このAIぐるぐるモデルというのは、AIがデータに基づいて自動でアルゴリズムを改善し、オペレーション自体も自動で行って賢くなるという仕組みです。旧来型とこのぐるぐるモデルの最も大きく異なる点は、様々なオペレーションの間に人が介在せずAIが自動でプロセスを回していけるかということです。

アナログのオペレーションでは企業の規模が大きくなればなるほど、事業運営の複雑性も増していくので人員確保という側面も難しくなっていきます。したがって、企業の価値も上がりづらくなりますし、一部のオペレーションを改善したとしても価値の伸び幅は限定的です。

それに対して、AIぐるぐるモデルを活用している企業は、企業の規模が拡大すればするほど取って活用できるデータも増えるため、価値が非線形に伸びていくということが特徴です。

さらに、アナログなオペレーションを得意としてきた企業では、両利きの経営で言うところの”知の探索”と”知の深化”における知の深化を強みにしている割合が高いのが特徴として挙げられます。つまり、利益が出る事業を深化していき、経営陣の強いリーダーシップによって絞られたKPIを見ながら経営改善をしてきたということです。

対して、AIぐるぐるモデルを活用する企業は、取ったデータを基にどんどん事業領域を拡げ、その事業領域を再定義していくことを行っているので、企業の価値を大幅に伸ばすことも可能です。

そして、人間が1人1人に対して意思決定を行うことは出来ませんが、AIであればデータを元に1人1人に対して最適なサービスを提供できるため、今後AI駆動型の意思決定が広がることでパーソナライズされた顧客中心的な意思決定が行われるようになるでしょう。

Web3時代は顧客が自らデータを渡す時代

大植氏ーWeb2.0では、先ほどのAIぐるぐるモデルを活用したアマゾンなど一部の巨大企業が自分たちのサービスから大規模なデータを収集し、非線形的な成長を遂げました。

しかし、Web3においてはユーザーが自分たちからデータを企業に提供するようになると考えています。

そこにはWeb3に関する3つの理由が挙げられます。
1点目は、情報セキュリティを守りながら共有できるブロックチェーンの技術が挙げられます。こういった技術であるSBT(ソウルバウンドトークン)などは、書籍の中でも詳しく解説しています。

そして2点目が、報酬であるトークンです。これまでは、情報を提供した際にほぼ見返りがありませんでしたが、Web3時代には見返りとなるトークンが発生するため利用者にもデータを提供するメリットがあります。

最後に3つ目としては、今後どのようになるかというところでもありますが、”世の中のためになるのであればデータを提供していい”という社会貢献的な考え方が上手く働いてくれば、よりデータの提供が身近な存在になると予想できます。
書籍の中では、すでにこうしたWeb3の仕組みを活用した30個のAIビジネスの事例も紹介しているので、ぜひ今後のAI戦略の参考にしてみてください。

おわりに

今回は、エクサウィザーズのイベント『ExaWizards Forum 2022』の一部をレポートしました。

Web3への注目が集まる今こそ、企業や社会全体がAIをより幅広く活用することで国際的な競争力の強化に繋がるということがイベントを通じて強調されました。

またWeb3は、データの管理をユーザー自身が行うことが可能なため、一部の巨大企業に富や情報が集中する状態から脱却する可能性も秘めています。

したがって、今後私たち自身も自らのデータと向き合い、自分と社会にとって何が最善の選択であるかということを考えていくことがますます重要となってくるでしょう。

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