アニメ・キャラクター大国ニッポン。
そのコンテンツはそれぞれIP(知的財産権を有するコンテンツ)の一つであり、IPを所有している企業はIPホルダーと呼ばれます。
IPホルダーはそれぞれのIPを活用してビジネスを展開していますが、以前からIPホルダーとファンとの繋がりが薄いという課題がありました。
その課題の原因としては、コンテンツを提供するプラットフォーマーがファンと繋がるため、IPホルダー側にファンのデータが集まらないことが挙げられます。
また、コンテンツのファンは映像やSNSなどの体験プラットフォームごとにアカウントを作成するため、ファンの活動データが一元的にまとまらないという問題も存在しています。
そしてそのような課題や問題の解決に向け、株式会社Gaudiyはブロックチェーンの技術を用いたIPホルダーとファンを直接結ぶ「Gaudiy Fanlink」というファンプラットフォームの提供を始めました。
今回の取材では、その株式会社GaudiyでBizDevを務める関岡大翼氏にGaudiy Fanlinkの魅力やWeb3×IPの展望について伺いました。
関岡大翼氏:2008年より株式会社バンダイナムコエンターテインメントにてキャラクターIPビジネスに従事。スマートフォンアプリ黎明期より、他社大型版権を題材としたゲームアプリにプロデューサーとして多数携わる。IP・エンタメ業界やファンの課題をWeb3で解決する思想に共感し、2022年よりGaudiyにジョイン。「オモシロの価値最大化」を目指し奮闘中。二児の父。猫好き。 |
目次
Web3時代のファンプラットフォーム Gaudiy Fanlink
Gaudiy Fanlinkとは
Gaudiy Fanlinkとは、IPホルダーがIP独自のファンコミュニティを設立できるサービスのことで、NFT(ノンファンジブルトークン)といったブロックチェーンの技術を用いることによって、ファンの活動データを蓄積し、貢献度に応じたインセンティブの還元を可能としています。
また、昨今のチケット転売問題の解決に繋がる二次流通制御が可能なNFTを活用したチケットの販売の機能や、オンラインイベント配信中にアイドルや俳優といった”推し”が書いたサインをNFTとして受け取れる機能など、ファンにとってもメリットを享受できる機能が備わっていることも特徴です。
すでに、人気漫画である約束のネバーランド公式コミュニティ「みんなのネバーランド」や、世界最大級のアイドル・フェスティバル”TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)”公式コミュニティ「TIFコミュニティ」など、複数のファンコミュニティがGaudiy Fanlinkを活用しています。
さらに、これまでソニーミュージックエンターテインメントや集英社、東宝などの大手エンタメ企業と連携してきた実績もあり、今後国内外に展開していくといえるでしょう。
そして、ここからは関岡さんにそのGaudiy Fanlinkの魅力や、今後のIP×Web3の展望についてお伺いしていきます。
IP×ブロックチェーン
・まず、IPとブロックチェーンを掛け合わせるメリットを教えてください。
関岡氏- 大きく3つほどあります。
まず1つ目は、ファンとIPホルダーを直接繋げることができる点です。
従来のTwitterやInstagramといったプラットフォームでは、プラットフォームごとにファンの情報が分断されており、IPホルダーもファンの活動履歴を把握することが困難でした。
したがって、IPホルダーがファン一人一人の貢献度や熱量を正しく把握し、それに応じて価値還元をすることも難しいという状況にありました。
しかしながら、GaudiyではNFTなどのブロックチェーンの技術を活用した独自のファンプラットフォームを提供しているため、ファンとIPホルダーが直接繋がれるようになり、Gaudiy Fanlink内で、様々なファン体験を完結できるようになります。
さらに、IPホルダーはファンの貢献度や熱量を正しく把握できるようになるため、ファンの活動に応じた還元を行うことが可能となります。
2つ目は価値分配を行える点が挙げられます。
ファンの方はファン活動をしている以上、多少なりともそのIPに貢献していると思います。例えば、公式の投稿に1度「いいね」をするだけでも価値貢献しているといえるでしょう。
しかしながらYoutube活動や二次創作をされている方以外に、収益などの「価値」が還元されるということはほぼ無いと考えられます。
まだ実現はしていませんが、そうした裾野にいる方々へもブロックチェーンの技術を用いれば、IPトークンというような形で価値還元を行える世界が作れると考えています。
3つ目は、ファン自身がその作品やIPとどのように関わってきたかの証明を行えるようになる点です。
従来であれば、ファンはどのような作品に参加し、どのように作品と関わったかをなかなか証明できないと思います。
しかしながら、その作品を昔から知っていたり、応援していたことはファンであれば誰しもが言いたくなるものだと思います。
そこでブロックチェーンの技術を用いて、その作品との関わりを証明できるということが可能になれば、それは大きなメリットになると考えています。
Gaudiy Fanlinkならではの強み
・Gaudiy Fanlinkの強みを教えてください。
関岡氏- 機能的には、ブロックチェーンならではのNFTの配布や、NFTを活用したマーケティングなどが行えるため、ファンの貢献度や熱量に応じた価値還元や体験価値の提供を行えるのが強みです。
さらに、ファンが持つIPへの愛や作品へ参加したいという気持ちを高めることができることも強みです。
作品のファンコミュニティ内において、参加者同士がチャット機能を用いて語り合うことはもちろん、投票やクイズといったファン主導型キャンペーンに参加できる機能などもあるため、グッズの購入やアニメの鑑賞だけでは満たせない体験ができると考えています。
「ファンがIPを盛り上げ、共創していることを実感できるサービス」を目指し、開発を進めています。
共創はWeb2.5的な考え方が理想
・ファンが共創するということですが、IPにおいてファンはどのように作品を創りあげていくべきでしょうか。
関岡氏- Web3的な思想で言うと、DAO (ダオ)のようにファンだけで創りあげるというような方向性も一つ考えられると思います。
しかし、Gaudiyや私自身としては、Web2.0とWeb3の中間のWeb2.5的な考え方に近いです。
例えば人気漫画やIPを1つ思い浮かべて頂いて、「ファンだけの投票でストーリーやキャラクターを決めましょう」となってもその作品自体すごく面白くなるとは言えないと思います。
作者がいて、その天才的なクリエイティビティがあった上で初めてIP世界が創りあげられることは間違いないので、ストーリーの大筋や世界観を作者に創ってもらうことは今までと変わらず必要なことだと思います。
ただ、それ以外の「作品をどう売っていくか」であったり、「どうキャラクターをグッズにしていくか」をファンが決めていくという住み分けが、IP共創のあり方として理想的なのではないでしょうか。
一気にWeb3的な自律分散をするのではなく、IPにおいては従来型のWeb2とWeb3の中間で考えていくのが程よいと思います。
IP×Web3の展望
・2023年以降のファンコミュニティ業界の展望を教えてください。
関岡氏- IP×Web3で考えると、IPホルダー各社もファンの共創体験というところに意識が向いているので、もう一層そういった形にシフトしていくと思います。
さらに、海外に対しても展開が加速していくのではないかと考えています。現時点でも海外で人気の日本のIPがとても多いですし、ファンコミュニティも海外で広めていけると考えています。
ただし、IPの楽しみ方や海外の人に刺さる部分は日本と違うところも多いため、機能や売り出していく部分は慎重に議論を重ねるべきだといえるでしょう。
・日本の物差しで海外へ展開すると異質なものとして捉えられてしまうかもしれないのですね。
関岡氏-はい。日本で行ってきたことをそのまま海外でも行うというのは一案としてありえますが、地域ごとで変えていくべきという議論もあります。
もし変えていくというのであれば、各国のIPの楽しみ方の違いの分析や、言語の壁を乗り越える方法としてAIなども活用していけるのではないかと考えています。
海外事業やメタバース事業の展開
・株式会社Gaudiy自体の展望を教えてください。
関岡氏- 今後、コミュニティ体験をより豊かなものにするため、サービスをさらに強化していく予定です。
例えば、ファンがIP情報をより効率よく収集できる仕組みや、メタバース的なアプローチを活用したファンやIP間の交流、コミュニティ上でグッズ等が購入できるような機能など、様々な機能拡充を予定しています。
また、海外展開も本格化させていくことを考えています。
これまではコロナ禍もあり、なかなか海外に展開しづらい状況でしたが、そうした状況が落ち着きつつあるので本格的に取り組んでいきます。
そして目指す先はファン国家という言葉から、さらに飛躍して”IPの聖地”という言葉に向かっていきたいと考えています。
おわりに
株式会社Gaudiyは、注いだ熱量や価値貢献がファン自身に還元されず、ファンが一方的に疲弊してしまうという従来の構造の変革を目指し、サービスを運営しています。
関岡氏も作品を創りあげる上での“カルト的な価値共創”と裾野のファンに対しても価値を還元する”なめらかな価値分配”を重要なキーワードとして掲げていると述べています。
そして、それはWeb3全体においても共通していることであり、今後Web3や分散型の組織が一般化していく上でも重要な考え方といえるでしょう。
また、株式会社Gaudiyは日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2023年版】」にも選ばれており、今後も目が離せません。
AINOW編集部
難しく説明されがちなAIを読者の目線からわかりやすく伝えます。