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2023.08.25

UPSIDERがAIチャット型業務効率化ツールで狙う現場、管理部門、CFOの「三方良し」

法人カード「UPSIDER」やビジネスあと払いサービス「支払い.com」を提供する株式会社UPSIDERは、2023年6月7日AIチャット型の業務効率化ツール「AI Coworker」を2023年8月にリリースすることを発表した。発表から一日で事前登録は100社を超え、現在は1,000社を突破している。

そこで今回、AI Coworkerの概要と開発経緯について、AI Coworkerの発表とあわせて同社でVPoP(Vice President of Product)に就任した、森大祐氏にインタビューを行った。

プロフィール
森 大祐氏
株式会社 UPSIDER
VPoP(Vice President of Product)

新卒で株式会社ワークスアプリケーションズに入社後、会計システムを中心として、大手企業のERP、業務システムの開発をリード。いくつかのキャリアを経て、PKSHAグループにて複数のAI SaaSを立ち上げ、それらのプロダクト企画統括を務める。現在、株式会社UPSIDERのVPoPとして、AIチャット型の業務効率化ツール「AI Coworker」事業開発に取り組む。

AI Coworkerは何ができるのか?

ーー森氏
「AI Coworkerは、現場で手軽に使え、安全に管理できるツールとして設計されています。このコンセプトを実現するために、多くの企業の管理部門にヒアリングを行いました」

森氏はこう語る。同社が法人カード「UPSIDER」でフィールドとしてきた決裁領域を担う管理部門は、当然カード業務以外も多岐にわたる業務を行っている。昨今、企業においてSaaS導入が進む中で、無尽蔵に増えるSaaSを、どのように管理統制していくかが課題となっているという。

同社が発表したAI Coworkerは、SaaSを連携させて、Slack上で購買管理やワークフローの決裁プロセスを行えるというもの。具体的には、契約書管理システムや会計システムなどの外部ツールとSlackを連携し、会話形式で契約書の締結・稟議承認・支払いなどのアクションをSlack上で完結できる。

連携先はfreee会計、クラウドサイン、DocuSign、Google Workspace、Salesforce、kintoneといった、成長企業での使用例が多い業務システムばかりだ。

ーー森氏
「Slackは現場でのUXとして非常に使いやすいため、たとえばスマホでも領収書の提出などが可能です。同時に、管理部門のみなさまが管理しやすさも重視しており、専用の管理画面で連携しているツールを一覧管理できます」

AIアシスタントのパーソナリティの重要性

AI Coworkerの開発でこだわったのが、AIアシスタントの「パーソナリティ」だという。デモ画面で見てもらえばわかると思うが、非常に“人間味”のあるコミュニケーションだ。

ーー森氏
「個人的に、業務システムにも、個性やパーソナリティが必要だと考えています。中でも、コミュニケーションの取りやすさは非常に重要です。業務システムを楽しく運用していくのが何よりも難しいからです」

▲AIアシスタントととのやりとりの例

たとえば、稟議の承認が面倒という問題も、システム側で「承認してくれてありがとう」などのコミュニケーションを取ることで、少しでも承認しようというモチベーションになる。「企業ごとに『元気』『落ち着いている』といったコミュニケーションスタイルがあり、最適なコミュニケーションも違う」と森氏は強調する。

ーー森氏
「AI Coworkerは、アシスタントの発言に絵文字を付けることができるほか、猫風の話し方といった特定のキャラクターにもカスタマイズ可能です。企業ごとに異なるパーソナリティを設定でき、承認プロセスの中で「承認ありがとう」というようなコミュニケーションを取り入れることで、楽しく業務を進めることができます。

だからこそ、人間味を感じてもらう部分をAIに任せたいですし、だからこそサービス名を「同僚」を意味する「AI Coworker」と名付けた経緯があります。当社からアシスタントであるAI Coworkerを企業に送り込み、活躍してもらうイメージですね」

AI Coworkerには大規模言語モデル、いわゆるLLMも活用されている。主にAIアシスタントの発話の生成部分だが、採用しているのにも必然性がある。

ーー森氏
「大前提として、会計や人事といったバックオフィス業務は生成AIに置き換えるのは難しいと考えています。その上で、生成AIは、コンピューターと人のインターフェースを溶かし、なめらかにするものという見方をしています。

生成AIによってコンピューターの恩恵を、これまでの限られた人たちではなく、より多くの人が使えるようになれば、今度は人間がコンピューターに人間らしいコミュニケーションを求めるようになります。だからこそ、人間らしさを出すためにLLMを活用していますが、固執しているわけではありません」

現場、管理部門、CFOの「三方良し」を実現し、資金調達を加速させる

同社がAI Coworkerを発表したプレスリリースで、同社は「カード会社」から「世界で戦える日本企業を生み出し、日本の競争力を再び上げることを支援する総合金融機関」になることを宣言している。

ーー森氏
「日本企業のグローバルでの競争力は非常に低く、スタートアップは資金調達に苦労しているのが現状です。資金調達のボトルネックとなっているのが、ガバナンス体制です。多くのスタートアップ企業は往々にしてガバナンスを整備する余裕がないことが多いですが、一方で資金調達の際は必ず見られる項目でもあります」

AI Coworkerを利用することで、現場では承認が早く通る、手間も少ないなどのメリットがあり、管理部門は書類不備の指摘や格納漏れのチェックといった手間から開放される。加えて、業務情報の詳細を管理画面で一覧でき、システム運用上の権限変更ログなども確認できるため、ずさんなシステム管理もなくなる。上場企業の監査基準に対応可能なレベルのガバナンス体制を構築できるという。

ーー森氏
「ガバナンスがしっかりしていれば、与信枠も増えますし、資金調達もしやすくなります。 つまり、私たちが目指すのは、現場が使いやすいツールを提供することで、管理部門の業務を効率化し、結果として資金調達に繋げるという循環の実現です」

現場、管理部門、CFOの「三方良し」を実現し、企業の成長を加速させる。実現すれば日本のスタートアップはさらに活気づきそうだ。

驚くべきは、Al Coworkerは当面無償提供されるという点だ。現在はティザーサイトで事前登録が可能。気になった方はぜひ登録してみては。

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