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2023.11.07

こんなフレーズを見れば、AI生成コンテンツだと一目でわかる

著者のズリー・ラネ(Zulie Rane)氏はアメリカ在住のフリーライターで、同氏の記事はAINOWで紹介してきました(同氏の詳細は同氏の公式サイトを参照)。同氏が2023年10月にMediumに投稿した記事『こんなフレーズを見れば、AI生成コンテンツだと一目でわかる』では、AI生成記事の表現上の特徴とそれを見破る方法が論じられています。
ある大きな出版社から編集長の役職を引き受けたラネ氏は、ライターのヘッドハンティングのため多数の記事を読んでいるなかで、ある違和感を抱きました。その違和感とは、内容的には空虚だが言い回しが少しだけ異なるウェブ記事が大量に公開されていることでした。この違和感の正体は、AI生成記事が氾濫していることでした。そして、そうしたAI生成記事を読むうちに、同氏はそれらに共通した特徴があることもわかりました。そうした特徴は、以下の通りです。

インターネットに氾濫しているAI生成記事の特徴
  • 記事の内容が一般論に終始しており、書き手の独自な観点や経験談が盛り込まれていない
  • 記事の表現や文体に個性が感じられない
  • 書き出しは一見して技巧的に見えるが、内容的には似た記事が多数ある。
  • 動詞の(助動詞などを使わない)最短形を使わないなど、語句の選択においてある種の傾向が認められる。

書き出しが技巧的に見えても内容が空虚な特徴に関しては、AI生成記事である事実を隠ぺいするために制作者が書き出しだけ加筆しているから、とラネ氏は推測しています。
さらに、そもそもAI生成記事に以上のような特徴があるのは、テキスト生成AIが出力した文章を制作者がほとんど手を加えずにウェブ記事として公開するから、とラネ氏は断定しています。そして、AIで(空虚な)記事を制作する人間は本質的に怠惰なので、今後もAIの出力に対して大幅に加筆することはないだろうから、現状ではAI生成記事を見抜くのは容易い、とも同氏は述べています。

以下の翻訳記事文中で挿入されているテキストが含まれた画像は、ラネ氏が収集したAI生成記事の書き出しのスクリーンショットです。それらは文字通り空虚な内容なので翻訳しませんでしたが、以上のAI生成記事に見られる特徴を備えたものです。

なお、翻訳記事はズリー・ラネ氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。また、翻訳記事の内容は同氏の見解であり、特定の国や地域ならびに組織や団体を代表するものではなく、翻訳者およびAINOW編集部の主義主張を表明したものでもありません。
以下の翻訳記事を作成するにあたっては、日本語の文章として読み易くするために、意訳やコンテクストを明確にするための補足を行っています。

画像出典:MidjourneyのDiscord。プロンプト:高度なAI技術を執筆のために真摯に活用する若者。― 画像#4 @amao。この画像は明らかに人間の顔をしたロボットだが、正直なところ、私の頭の中にあるAIライティングのイメージなので気に入っている(笑)。* = affiliate link.

現代において、AIをめぐる悩みの種からは逃れられない。

最近、私はある大きな出版社から編集長の役職を引き受けた。新しい仕事で好きなことの1つはヘッドハンティングだ。良い記事を探して、その記事を書いている人たちに、その素晴らしい記事をただ世に出すのではなく、私や私が運営を手伝っている出版社に送ってくれるよう説得するのだ。

この仕事は非常にやりがいがあり、私の編集技術も磨かれたが、問題はすぐに明らかになった。

干し草はたくさんあるのに、見つけるべき針はほとんどないのだ。さらに悪いことに、そうした干し草の多くは人工的に生成されたものである。

タイトルにある「タイトル:」があるのは、毎度のことである。しかし、それは私が言及しているフレーズではない。

タイトルが良くない記事をクリックし、その内容を読んで採用を断念するほどには悪くないと分かった時、私はその記事のライターに同情する。誰もが未熟な時期を経験する。生まれつき完璧なライターなどいない。結局のところ、私たちは人間なのだ。挑戦し、改善し、失敗し、また挑戦する。

その記事が完全にAIによって作成されたものだと疑われると、私の同情心はすぐに冷めてしまう。そんな記事を読むのは私の時間の無駄であり、潜在的な読者の時間の無駄であり、純粋にその著者の時間の無駄でもある。著者は、読者にとって何の中身も価値もないお粗末な記事を作ることで何を得ようとしているのだろうか。読者は増えないし、そんな記事には買い手もつかない。本当に意味がわからない。

人間はAIを捕まえるのが得意

私はまだ信頼できるAIコンテンツ検出ツールを見つけていない。有名な検出ツールであっても、いまだにウィリアム・シェイクスピアの作品をAIのものだと分類してしまう(※訳註1)。だがしかし、私は人間自身がかなり優れたAI検出器であることを発見した。

(※訳註1)ビジネス系メディア『VentureBeat』は2023年2月1日、OpenAIが開発したAI生成テキスト検出器を検証する記事を公開した。この記事によると同検出器は、シェイクスピアの戯曲『マクベス』の最初のページをAI生成テキストと判定した。こうした誤判定の原因は、同検出器がシェイクスピア作品に見られるような古英語を学習していないからではないか、と推測される。

なお、OpenAI製AI生成テキスト検出器を紹介した同社公式ブログ記事には、2023年7月20日付で同検出器の精度が低いために利用不可とした、という追記がある。

何かがおかしいと感じたら、すぐにそれがAI記事だと見分けられる。

AI記事には人間味が欠けているのだ。個人的な経験がない。声も口調もない。そうした記事には、私が「We(私たち)法人」と揶揄する企業が頻繁に登場する(※訳註2)。(そんな素敵なWe法人は「私たちは、あなたが○○できるようになる方法を解説します」という言い回しをする)。

(※訳註2)英語は文法的に主語を明記しなけれならない関係上、「We(私たち)」が主語になる場合がある。しかし、主語としてのWeは形式的な意味合いが強く、経験ある英語圏ライターであれば、「形式的主語の意味合いが強いWe」が頻出するような記事は書かない。ちなみに、翻訳記事においても「形式的主語の意味合いが強いWe」は、自然な日本語訳にするためにしばしば敢えて訳さない。

そして、少なくとも私が目を通すトピックを扱う記事では、何度も出てくるあるフレーズがあることに気づいた。

(ネタバレなしで自力でAI生成記事を見つけられるかどうか確かめたい人は、スクロールダウンする前にこの「マーケティング・タグ」をチェックしよう)。

これを見てどう思う?

このようなことがあまりにも頻繁に起こったので、ただ自分自身を笑わせるために、私は実際にAI生成記事と思しきものをPCフォルダに集め始めた。

デジタル時代!どの記事でも速いペースだ!

そしてついに、私はAIが生成したコンテンツのこの奇妙な癖に感謝するようになった。一目見ただけで、アーカイブにある(衝撃的に多い)数の記事を即座に捨てられるようになった。というのも、そうした記事には実質的な内容がないとわかったからである。ステビアと同じように、人工的なものだと即座に判断できる特別な風味があるのだ。

もちろん、現代のめまぐるしいスピードで進むデジタル時代においては(※訳註3)、(AIライティングツールのような)自分の仕事を少しでも楽にしてくれるものには感謝しなければならない。

(※訳註3)「現代のめまぐるしいスピードで進むデジタル時代においては(In today’s modern, fast-paced, digital, whirlwinding age)」は、AI生成記事によく見られる書き出しである。この表現は「今の時代においては(In today’s modern)」というAI生成表現に、人間が修飾句を加筆した典型例である。

今日のビジネス環境は、ダイナミックで、競争的で、挑戦的で、そして(個人的に好きなのは)急速な技術の進歩に特徴づけられている。

それは怠慢そのものであり、言い訳は通用しない。

以上のように現在は、AI生成記事が氾濫している。こうした記事を制作する詐欺的なAI悪用作家たち(AIrtists)(※訳註4)にとって、AI生成記事は少なくとも一見したところでは、公開しても良いと思うには数秒もかからない。そして、最初の行を変えさえすれば公開できる。

(※訳註4)「AI悪用作家」と翻訳した「AIrtist」とは、「AI」と「Artist(アーティスト:芸術家、作家)」を組み合わせたこの記事独自の造語。この造語に「悪用」を意味する字句は含まれていないが、文脈から「悪用」を付加した。

こうしたなか、私はAIを使ってコンテンツを生成している人々がいることに気づいた。彼らは怠け者だ。だからAIを使っている。もし彼らが記事のあちこちを変え始めたら、実際に半分はまともな記事を書くことになるかも知れない。しかし、怠け者はそんなことをする準備をしていない。

「近年」や「マーケティングの専門家としての経験からわかったこと」といったフレーズとその亜種を書き換えることが、AI生成記事であることを隠ぺいする第一歩だ。

しかし、なぜ簡単な書き換えで止めてしまうのか。さらに一歩進んで、We法人の「私たち」を「私」に置き換えられるのではないか。

AI生成記事に、著者自身の本物の経験を加えることもできる。例えば、なぜこの世界がこれほど速いペースで進むのか、自分の言葉で教えてほしい。著者のInstagramの成長のしかけがどのように機能したかを説明してほしい。

以上のように書き換えが多くなると、突然、AIが生成した声と人間の声を見分けるのはかなり難しくなる。

しかし、もしAI生成記事制作者が以上のような(AI生成記事であることを隠ぺいするための)変更を加える労力を惜しまないのであれば、その労力を自力でくだらない記事を書くことに割いた方がいい。もっとも、こうしたコンテンツ制作者は自力で記事を書くなどという(彼らにとっては)極端なことをしないだろう。

だから私はAIを恐れない

私はAIに魅了されている。AIが生成したタイトルの多くにコロンが含まれている理由を深く掘り下げたりして(※訳註5)、私自身、AIを使って実験したことがある。プロにお金を払って、AIが書いた記事を批評してもらったこともある(※訳註6)。

(※訳註5)この記事の著者ラネ氏が自身の公式サイトで2023年7月5日に公開したブログ記事『迷惑で陳腐:ChatGPTがコロン付きのタイトルしか作らない理由』では、ChatGPTが生成する記事タイトルに「:(コロン)」が多用される理由が考察されている。その理由とは、同AIがタイトルにコロンが含まれる記事や論文を大量に学習したから、とされている。

さらにウェブ記事のタイトルにコロンが多いのは、コロンを使うとSEOに効果的なタイトルが作成できるからである。また、1980年代にはタイトルにコロンを使った論文が流行したことを実証した論文もある。

(※訳註6)このリンクが設定された記事は、AINOW翻訳記事『ChatGPTで書いた記事をプロにお金を払って編集してもらったところ、大爆笑だったという話』で翻訳している。

この記事のように、私が書いたコンテンツのアウトラインを作成するAIツール*をテストしたこともある。HTMLテーブルの作成や自分の記事の推敲など、執筆以外のいろいろな作業にもAIを使っている。

この世界では…

しかしながら、私はAIを恐れていない。長いあいだAIに触れることで、その長所と限界を学んだからだ。AIが生成したコンテンツが確実に人間らしく聞こえるようにするためには、生成する人間が実際の作業をする覚悟が必要だ。しかし、大多数のAIに支援された執筆者にはそうした覚悟がないようだ。彼らはただ、手に入れたものを何も修正せずにコピーペーストしたいだけなのだ。

私は、何かがおかしいと感じたら、それを察知するのに役立つ他の方法も開発した。例えば、AIは「unlock(カギを開ける、打ち明ける)」や「elevate(高める)」といった言葉に夢中になる。代わりに 「continue to be evolving(進化し続ける)」を使えるなら、「evolve(進化する)」のような動詞の最短形をAIは決して使わない。そしてもちろん、個性がまったくない。

世界中のオンラインコンテンツをミキサーにかけ、統計的に最も確率の高い次の言葉を吐き出す。それがライティングAIの行っていることだ。

私は、AIが自分の仕事を奪う恐れがあるとは思っていない。なぜなら、AIはたいてい怠け者に使われるからだ。非倫理的な上司が、AIにコンテンツを生成させる引き換えとしてスタッフを解雇したという恐ろしい話もある。少なくとも私は、ある企業がGoogle(検索)でAIが生成したコンテンツの洪水に負けたために、執筆チームを解雇せざるを得なくなった事例を知っている。

AIは確かに侮れない存在だ。私は、大きな調整期間があると予想している。例えば、今現在AIが生成したコンテンツが溢れ返っているため、AIが生成していないコンテンツを見つけるのが非常に難しくなっている。

しかし、以下の記事の書き出しを見てほしい。

ネット記事ライターであれば誰でも、自分の物語が可能な限り読者に対して際立って見えるはずだと主張するだろう。(しかし、引用しているAI生成記事は表現が似通っている)

実際、退屈かつ怠惰でダメなライターは、AIによって淘汰されて(AI生成記事制作者になって)しまったのではないかと私は疑っている。

AIは簡単すぎる。以前は中途半端な記事しか書けなかった人たちが、今では愚にもつかないフルAIライターになった。そんな連中はすぐにばれて排除されるだろう。AIライターとばれてしまったら、あるいは一転して、実際に自分の指を使って、自身の経験にもとづいた記事を書くだろう。

このセクションの最後に、私が見つけて即座にクリックした4つの記事を紹介したい。もみ殻の海に浮かぶ宝石のように、私には際立って見えた。

これらの記事を見てほしい!それぞれの記事には、独自のリズムがあり、独自の声がある。それぞれの作者には語るべき物語がある。それぞれの著者は、個人的な経験と知識に裏打ちされた物語を持つ人間として、すぐに際立っているとわかる。

AIが生成したコンテンツを作るのは簡単だ。それを見抜くのはさらに簡単だ。

AIが生成したコンテンツが簡単に作れる限り、それを見抜くのも簡単だ。AI生成記事は、本当に努力をしたくない人々を惹きつける。

しかし、怠惰な人間が嫌う努力にこそ価値があるのだ。

・・・

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原文
『This Phrase Gives Away AI-Generated Content For Me At a Single Glance』

著者
ズリー・ラネ(Zulie Rane)

翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1取得)

編集
おざけん

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