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2024.03.13

「Yahoo!知恵袋」でも活用、LINEヤフーの生成AI活用戦略

最終更新日:

2月28日、LINEヤフーは個人向けサービスを中心に、約10ヶ月で16件の生成AI機能を導入したと発表した。同日開催されたメディア向け発表会では、上級執行役員 生成AI統括本部長の宮澤弦氏から、同社の生成AI活用の現状と展望が説明された。

社内向けの活用基盤「LY ChatAI」を整備し、独自の生成AI研修も実施

LINEの国内月間アクティブユーザー数は9,600万人、ヤフーの月間ログインID数は5,598万人を誇る。同社のAI活用は、「ユーザーに気づかせないほど自然に」という姿勢で一貫している。

「AIを使おうとして使うユーザーはいません。AIを使っていることすら意識しないようなユーザー体験を目指しています」(宮澤氏)

同社では現在、個人向け、法人向け、社内向けを合わせ16のサービスで生成AI活用をスタートしている。活用にあたっては「生成AI活用推進サイクル」と銘打ち、利用環境の整備、エンジニアなどが活用するための開発環境の整備、業務活用、サービス活用を並行して進めているという。

社内向けの活用基盤としては、OpenAIのAPIを利用した独自ツールの「LY Chat AI」を用意。そのほか、GoogleやMicrosoft Azure、AWSといったベンダーとも契約を進め、「複数のAIを選択できる環境を整備している」(宮澤氏)という。また、全エンジニアがGithub Copilotを利用できる環境を整備し、社内のエンジニア向けのアンケートによれば生産性が10%〜30%向上しているという。

そのほか、社内での実利用にあたっては、「まずは教育から入った」(宮澤氏)。主要なリスクやプロンプトの工夫に関する利用研修を全従業員に対して実施。受講後、テストにクリアすることでAIアシスタントの利用を認める。また、独自のRAG(Retrieval Augumented Generation)ツールの開発にも着手しており、社内データとの連携による効率化も進めている。

同社はガバナンスの効いたAI活用のために、2022年の時点から「AI倫理基本方針」を策定。2023年6月には生成AI社内推進組織「生成AI活用推進室」(現在は「LINEヤフー株式会社 生成AI統括本部」)を発足し、国内外の動向を踏まえて活用を進めている。

生成AIの領域は「動きが非常に早い」(宮澤氏)。生成AI統括本部を中心にソフトバンク本体との連携、ノウハウ人材共有を進め、キャッチアップしていく必要性を感じているという。

知恵袋をはじめ、数々の生成A活用を推進

個人向けサービス内での生成AI活用も活発なようだ。発表会では活用事例がいくつか紹介された。

たとえば、活用事例として紹介された同社のQ&Aサービスである「Yahoo!知恵袋」では、投稿された質問に対して生成AIによる回答を提示し、ベストアンサー率が60%を超えたという。これは「人間のトップ回答者と同水準に達する」(宮澤氏)。

同サービスでは「歴史」と「相談」カテゴリーの11カテゴリーから試験導入を開始し、2024年2月時点では対象カテゴリーを全体の2/3となる457カテゴリーまでに拡大しているという。また、AIによる回答に適さない質問の98.9%を除外しており、たとえば平等性に関する倫理的な質問や、金融といった専門知識を要する質問がそれにあたる。

生成AIを日本でもっとも活用し、収益1,100億円増を目指す

2024年1月には、生成AIを含む人材育成プログラムを法人向けに開始した。宮澤氏は、「生成AIを日本でもっとも活用している会社にしたい」と意気込み、生成AI活用による中長期的な見込みとして、売上収益年間1,100億円増、生産性改善額100億円を目指すとした。

一方で、LLMの開発という観点では、そもそもLINEや母体のソフトバンクでも開発が進んでいた。従来LINEが開発していたHyperCLOVAや、昨年には36億パラメータの日本語言語モデルを公開している。

OpenAIやGoogleのLLMではなく、自社開発のLLMを活用していく方針はないのか?という問に対しては、「LLMは世界中で同時多発的に開発が進んでおり、過剰な自前主義は危険。世界での進捗を見ながら現実的な選択をしていく」(宮澤氏)と回答し、自社開発のLLMも選択肢に含めつつ、あくまでユーザーに“選択権”がある状態を作っていきたいと強調した。

(文:高島圭介)

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