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2024.09.09

急成長するAI検索エンジンスタートアップ企業|Perplexity

最終更新日:

Perplexity(パープレキシティ)社は、AI技術を活用した新世代の検索エンジンを開発する新興企業として、急速に注目を集めています。

CEOのアラビンド・スリニバス氏は、従来の「サーチエンジン(検索エンジン)」に対し、同社のサービスは「アンサーエンジン」であるとしています。従来の検索エンジンとは異なり、自然言語での質問に対して、より直接的で具体的な回答を提供することを目指しています。

本記事では、Perplexity社の概要や事業内容を紹介しつつ、同社の特徴や最新の動向について解説していきます。

Perplexity社とは

企業概要

社名 Perplexity
設立 2022年
所在地 サンフランシスコ、カリフォルニア州(本社)
代表 アラビンド・スリニバス(CEO)
従業員数 約80人(2024年6月時点)
評価額 30億ドル(2024年6月時点)

沿革

2022年8月 元Google AI研究者らによってPerplexity AI設立
2022年12月 世界初の対話型AI検索エンジン「Perplexity AI」を
リリース
2023年3月 シリーズAラウンドで2,560万ドルを調達
2024年1月 シリーズBラウンドで7,360万ドルを調達
2024年4月 ・追加で6,270万ドルを調達し、ユニコーンに
・新機能「Perplexity Pages」を実装
2024年6月 ・ソフトバンクとの戦略的提携を発表
・計2億5000万ドルを集める資金調達ラウンドの一環として、
 ソフトバンクから1,000〜2,000万ドルの資金を調達

Perplexity社の事業内容

Perplexity AI

Perplexity AIは、同社が開発した主力製品である対話型AI検索エンジンです。ユーザーは自然言語で質問を入力し、AIがインターネット上の情報を分析して、直接的かつ具体的な回答を生成します。

従来、GoogleやBingなど検索エンジンは、検索した内容に関するサイトを表示するだけで、そこから情報をピックアップする作業は人が行ってきました。しかし、このPerplexity AIは、検索したい内容や質問を入力するだけで、AIが最新の情報からユーザーが求める回答を直接生成してくれるため、従来の検索エンジンよりもはるかに利便性が高いと言えます。日本語での利用もでき、無料版でも十分に活用できる点も魅力です。

Perplexity AIの特徴

Perplexity AIの主な特徴は以下の通りです。

  1. 最新の情報をソース付きで提示
  2. 有料版サービス「Perplexity Pro」
  3. 見やすく使いやすいUI
  4. ログインが不要・スマホアプリでも使用可

最新の情報をソース付きで提示

Perplexity AIの大きな特徴は、インターネットから情報を収集するブラウジング機能を用いることによって、インターネット上の最新情報から回答を生成させることが可能だということです。他の生成AIが1年以上前の情報までしか扱えないような中で、ニュースや論文などの常に変化する情報をリアルタイムでキャッチアップできるのはPerplexity AIの魅力だと言えます。

また、回答を生成する際に、どの情報を参考にしたかを提示してくれる機能もあります。事実とは異なる誤った情報を生成してしまうハルシネーションが生成AIを使用する際の問題のひとつとなっている中、本当に正しい情報かどうかファクトチェックがしやすいのもPerplexity AIの利点となっています。

有料版サービス「Perplexity Pro」

有料版サービスの「Perplexity Pro」は月額20ドルで利用することができます。無料版との主な違いはこちらです。

機能 無料版 有料版
言語モデルの選択 ×
画像生成 ×
Pages機能 ×
使用回数制限 4時間につき5回 1日に600回
ファイルアップロード 制限あり 無制限

 

・言語モデルの選択

GPT-4o、Claude 3.5 Sonnet、Sonar Large 32K (Llama3)などの言語モデルを使用可能です。

・画像生成

Playground v2.5、DALL-E 3、Stable Diffusion XLなどの画像生成AIを使用した画像生成機能を使用できます。

・Pages機能

Perplexity Pagesとは、2024年5月に新たに発表された新機能で、ユーザーが検索した内容をもとに、AIが複数のソースから情報を収集し、記事形式で生成してくれる機能です。

記事の構成の編集や画像や動画の挿入といったカスタマイズもでき、生成された記事はリンクによって誰にでも共有することができます。

・使用回数制限

Perplexity AIには、「Quick search(基本検索)」と「Pro search(高度な検索)」があります。Quick searchは無料版でも無制限で使用できますが、Pro searchは無料版では4時間に5回、有料版では1日600回使用できます。Pro searchは、Quick Searchよりも広範囲のデータを参照し、精度の高い回答を生成や、複雑な質問を要素分解し、段階的に回答することで最適な結果を出力することができ、検索の質が上がります。

・ファイルアップロード

無料版では1日に3回までしかファイルをアップロードできませんが、有料版ではファイルのアップロードは無制限となっており、PDF、画像に加えて、テキストファイル、スプレッドシート(CSV、Excel)なども対応しています。

使いやすいUI

Perplexity AIには、「フォーカス機能」があり、インターネット全体での検索以外にも以下のように特化した検索が可能です。

  • Academic(学術論文モード):専門的な知識も、学術論文から的確に抽出できます。
  • Writing(文章生成モード):チャット形式で質問すれば、AIが最適な回答を生成してくれます。
  • Wolfram Alpha(計算モード):数値やデータに基づいた質問に、計算・返答してくれます。
  • YouTube(動画モード):映像で理解したい場合は、動画検索が便利です。
  • Reddit(コミュニティモード):多様な意見や考察を、アメリカの人気掲示板サイトRedditから収集できます。

また、こちらが検索した内容に関連する内容の質問をAIが生成してくれるため、詳細な情報まで深掘りしてキャッチアップすることができます。

左側のメニューバーには「Discover(発見)」と「Library(ライブラリ)」があります。Discoverには、現在話題となっている最新のニュースやトピックが表示され、クリックするとそのトピックの要約やソースが表示されます。

Libraryでは、過去の検索や会話をまとめて閲覧でき、過去の会話を検索する機能もあるので、過去調べた内容の遡りも簡単にできます。

スマホアプリでも利用可能

Perplexity AIは、ブラウザだけでなく、iOSAndroid向けのモバイルアプリを提供しています。これにより、ユーザーはスマートフォンやタブレットから、移動中や外出先でも高度な検索機能を利用できます。

Perplexity社の注目ポイント

CEOアラビンド・スリニバス氏の経歴と明確なビジョン

アラビンド・スリニバス氏は、インド工科大学マドラス校で電気工学を専攻した後、カリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスの博士号を取得しました。

職歴においては、DeepMindやOpenAIでリサーチのインターンも経験し、2021年9月から約1年間はOpenAIでリサーチサイエンティストを務めるなど、業界の最前線で研鑽を積んでいます。

そのようなバックグラウンドを持つスリ二バス氏が検索という領域で起業したのは、Googleの創業ストーリーに強く影響を受け、「インターネット上の情報を整理し、人々がアクセス可能な状態にするという時代を超えた使命に深く共感したから」と述べています。同氏は検索ツールを「キング・オブ・ソフトウェア」と呼び、その市場の可能性は無限大だと考えています。

同時に、Googleに代表される既存の検索エンジンが抱える課題にも着目しました。情報過多による雑然さや過剰な広告表示などの問題を解決する新しいアプローチが必要だと考えたのです。

大規模言語モデルや生成AIなどの技術の進歩が、ソフトウェアに革命をもたらす可能性を秘めていると考え、このタイミングでの企業が検索技術を再考する絶好の機会だと判断したのです。

Perplexity社は、「知識へのアクセスを民主化する」という明確なビジョンを掲げています。このビジョンを実現するため、同社は独自の方針で事業を展開しています。

その中心にあるのが、ミニマリズムの追求です。不要な要素を極力減らし、ユーザーが必要な情報だけを効率的に得られるインターフェースを目指しています。「少ないことは豊かなこと」(Less is more)という哲学に基づいた設計を心がけているのです。

ユーザー中心の体験を提供することも重視しています。多くのリンクをクリックする必要がなく、答えを直接得られる体験を提供します。くわえて、ユーザーが学び、さらに多く質問することを促進する仕組みを構築しています。

このように確かな経歴とビジョンに裏付けされた行動が、今のPerplexity AI社の急速な成長と技術革新の原動力となっています。

急速な成長スピード

2024年に入ってからの成長スピードが注目されているPerplexity社。SEOプラットフォームのBrightEdgeによると、3月末時点のPerplexityは、40%を超える驚異的な月間成長率を記録し、月間アクティブユーザー数は1000万人を超えました。

また、最高ビジネス責任者Dmitry Shevelenko氏がFinancial Timesに明かしたところによると、同社の検索エンジンは2023年全体で約5億件の検索クエリを処理したのに対し、2024年7月単月で約2億5000万件の検索クエリに回答したといいます。

収益面でも、2024年初めには年間収益が500万ドルだったが、最近の数ヶ月間の数字に基づくと、現在では3500万ドル以上に達しているといい、目覚ましい成長を遂げていることがわかります。

Perplexity社の最新の動向

ソフトバンクとの戦略的提携を発表

6月17日、Perplexityはソフトバンクとの戦略的提携が発表されました。今回の提携により、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOのユーザー向けに、「Perplexity Pro」の1年間無料トライアルの申し込み受け付けを、2024年6月19日に開始するとしました。

ソフトバンクとの戦略的提携について、Perplexity社CEOアラビンド・スリニバス氏は「そもそも、我々にとって日本はアメリカの次にサービスを拡大したい国でした。当社のデータベースから、世界の中で2番目に高い収益率が見込まれることがわかっていたからです。また、課金ユーザーも非常に多く、新しい技術の導入実績が高かったことも理由の一つです。」と述べています。

また、「皆さん、最初はパープレキシティが複雑だと思われるかもしれません。しかし、生活に馴染んできた便利なものは最初複雑だったという歴史があります。日本でスーパーマーケットが『スーパー』となり、コンビニエンスストアが『コンビニ』と呼ばれて皆さんの生活に馴染んだように、パープレキシティも『パープレ』と呼ばれ、愛される存在になっていきたいです。」と語りました。

広告導入を計画

Perplexity AI社が、AI支援型の検索アプリに広告を導入する計画を明らかにしました。CNBCの2024年8月22日の報道によると、この新たな広告モデルは2024年第4四半期(10〜12月)から開始される予定です。この動きは、同社の事業成長戦略の一環であり、また、コンテンツ盗用の批判に対応する取り組みの一つでもあります。

広告導入の詳細については、インプレッション単価(CPM)を基本としたモデルが採用される予定です。CPMレートは1000回表示あたり50ドル(約7300円)以上と設定されており、これは一般的なテキスト広告やモバイルビデオ広告の相場と比べて非常に高額です。

この高額な設定は、Perplexityのユーザー層が高学歴かつ高所得者であることが理由とされています。特に技術、医療、金融などのカテゴリが主なターゲットとなっており、広告主にとって価値の高いユーザーへのアプローチが可能になると期待されています。

また、Perplexity AIは広告収入の一部を、AIによる回答で引用した記事の作成者に分配する「広告収益分配プログラム」を立ち上げました。このプログラムには、Fortune、TIME、Entrepreneur、Der Spiegel、WordPressなどの有名メディアが参加しており、コンテンツ制作者への還元を図っています。

一方で、Perplexity AIは「クローラーがウェブサイトから情報を取得する際に、robots.txtを無視している」との批判も受けています。この問題に対応するため、同社は情報源を引用する方法を改善し、生成されたコンテンツの引用元を直接表示するように変更しました。これにより、情報取得の透明性を高め、信頼性の向上を目指しています。

Perplexity AIは、この広告導入により収益の多様化を図ると同時に、AI検索エンジンの普及と成長をさらに加速させることを目指しています。広告収益を通じてユーザーエクスペリエンスを向上させつつ、AI技術を駆使した検索エンジンとして他社との差別化を図る戦略が、今後の注目ポイントとなりそうです。

さいごに

Perplexity社は、AI技術を活用した次世代の検索エンジンの開発という挑戦的な分野で、急速な成長を遂げています。従来の検索エンジンの枠を超えた、より直感的で効率的な情報アクセスの方法を提案することで、検索エンジン市場に新たな風を吹き込んでいます。

今後、AI技術がさらに進化し、情報アクセスの方法が大きく変わっていく中で、Perplexity社の動向は、検索エンジン市場だけでなく、AI業界全体の未来を占う上で重要な指標となるでしょう。

The Playersシリーズでは、AI関連の企業にフォーカスした記事を書いています。さまざまなAI企業を比較することで、成功するAI関連企業の法則が見えてくるかもしれません。引き続き、注目の企業を紹介していきますので、ご期待ください。

 

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