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株式会社EYLZA(以下:ELYZA)は、「未踏の領域で、あたりまえを創る」という理念のもと、日本語の大規模言語モデルに焦点を当て、企業との共同研究やクラウドサービスの開発を行なっている企業です。
ELYZAは、AI研究の第一人者である東京大学・松尾豊教授の研究室のメンバーが立ち上げたAI企業で、国内においてLLMの研究開発および社会実装を牽引する存在として知られています。事業としては研究開発のみならず、企業のLLM活用や独自LLM開発の支援、AI SaaSの開発・提供を通じて、金融・人材などのさまざまな業界領域において、LLMの社会実装を推進しています。
本記事では、株式会社EYLZAの概要や事業内容を紹介しつつ、同社の特徴や最新の動向について解説していきます。
目次
株式会社ELYZAとは
企業概要
社名 | 株式会社ELYZA |
設立 | 2018年9月 |
所在地 | 東京都文京区本郷3-15-9 SWTビル 5・6F |
代表 | 代表取締役 曽根岡侑也 |
資本金 | 25,375,000円 |
ビジョン
“未踏の領域で、あたりまえを創る”
ELYZAの使命は、まだ社会実装されていない未踏の領域に挑戦し、その結果生まれた新しい働き方やサービスが、多くの方の日常にあたりまえに浸透している状態をつくることです。
ELYZAはこの想いのもと、言語を扱うAIは社会実装が難しいとされていた中、未踏技術と考えられていた大規模言語モデルの開発・導入に取り組んできました。
近年の技術革新により、大規模言語モデルへの期待は大きく膨らんできているものの、技術・社会実装の両面において、多くの未解決問題が残っています。
ELYZAは、大規模言語モデルの真の実用化に向き合い、未踏の問題の解決を目指します。そして、大規模言語モデルに限らず、他の未踏の領域を探索し、最先端の技術力と社会実装力をもって社会を変革し続けます。
沿革
2018年9月 | 東京大学松尾研究室のメンバーによって設立 |
2020年9月 | 独自の大規模言語モデル(LLM)の開発に成功 |
2021年8月 | どんな文章でも3行にできる要約AI ”ELYZA DIGEST”を一般公開 |
2022年3月 | 文章執筆AI “ELYZA Pencil”(イライザ ペンシル)を一般公開 |
2022年10月 | 総額4800万円の資金調達を実施 (推定調達後評価額約10億3900万円) |
2024年3月 | KDDIグループと資本業務提携を締結 |
2024年4月 | KDDIの連結子会社となる(KDDIが43.4%、KDDI Digital Divergenceが10.0%の株式を保有) |
2024年6月 | 国産LLM「ELYZA LLM for JP」シリーズ最新モデルを発表 |
ELYZAの事業内容
AIリサーチ&ソリューション事業
- 生成AIの実用化支援:GPTなどの大規模言語モデルをベースに、生成AIを活用すべき業務シーンの探索から、出力の質を高める処理フロー構築やAPI開発まで、一貫して支援しています。
- 生成AIの特化学習支援:独自モデル/公開モデルへのファインチューニング(特化学習)による生成AIの開発を推進しています。
- 企業/業界特化の大規模言語モデル開発:企業/業界に特化した大規模言語モデルの開発を推進しており、モデルそのものの開発から行うことで、企業や業界特有の業務や用語に柔軟に対応可能な点が特徴です。
AI SaaS事業
これまでにない業務のあり方や働き方を社会に提供する手段として、生成AIを基軸としたSaaSプロダクトの提供に力を入れています。
なお、AI SaaS事業については、2024年9月現在の時点で正式サービスがリリースされていないため、どのようなサービスがリリースされるか期待が高まっています。
ELYZAの特徴
日本語LLMの先駆者
EYLZAは大規模言語モデル(LLM)の研究開発を行っており、2020年に独自の大規模言語モデルの開発に成功し、日本語LLMの分野をリードしています。
過去には、ニュース記事・レポート・書類などの文章の文章要約の業務を大幅削減できる文章要約AIデモ「ELYZA DIGEST」や、ニュース記事・メール・職務経歴書などの文章作成業務をキーワード入力だけで自動化できる文章執筆AIデモ「ELYZA Penci」を公開していました。
現在は、700億パラメータの日本語大規模言語モデル群「ELYZA LLM for JP」シリーズを提供しています。「ELYZA LLM for JP」シリーズは、英語の言語能力に優れた Meta 社の「Llama 2」シリーズに日本語能力を拡張するプロジェクトの一環で得られた成果物です。グローバルモデル以外の新たな選択肢として、主にセキュリティやカスタマイズ性を重視する企業、自社サービスや事業にLLMを組み込みたい企業に向けて、安全なAPIサービスや共同開発プロジェクトなど様々な形態で順次提供していくとしています。また、こちらは誰でも仕様ができるデモとして公開されています。
KDDIグループとの連携
EYLZAは、KDDI株式会社、KDDI Digital Divergence Holdings株式会社と2024年3月18日、資本業務提携を締結しました。2024年4月1日にKDDIは43.4%、KDDI Digital Divergenceは10.0%のELYZAの株式を保有し、KDDIの連結子会社となりました。
少子高齢化による人手不足や事業環境の変化に対し、生成AI活用による業務効率化や生産性向上の実現が期待されています。その中でグローバルモデルではなく、日本語に最適化された汎用LLMや、業界や領域さらには個社に特化・カスタマイズしたLLMによる、課題の解決が求められてきています。また、LLMを実証実験(PoC)フェーズで終わらせないために、生成AIを現場に導入し運用するための支援やツールのニーズも高まっていることが、本提携の背景にあります。
この提携により3社は、ELYZAの持つ国内トップクラスのLLMの研究開発力とKDDIグループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成AIの社会実装を加速させていくとしています。具体的なサービスは以下となっています。
- オープンモデル活用型の日本語汎用LLM開発:KDDIグループの計算基盤とELYZAが培ってきたLLM研究開発力を集結させることで、日本語特化のLLMシリーズ「ELYZA LLM for JP」の研究開発をさらに加速させていく。
- 領域特化型のLLM開発:各企業/業界/業務に特化した領域特化型LLMを開発・提供し、グローバルの汎用LLMを利用するだけでは解けない課題を解決する。
- 生成AIを活用したDX支援・AI SaaS提供:KDDIの法人のお客さま基盤・KDDI Digital Divergence Groupのクラウド・アジャイル開発・データ活用などのデジタル技術に加え、ELYZAが持つ汎用ならびに領域特化型のLLM開発力や、PoCにとどまらない生成AIの現場実装力なども活かし、生成AIを活用したDX支援サービスを強化。
ELYZAはKDDIグループの支援を受けながら、将来的なスイングバイIPOを目指すとしています。
EYLZAの最新の動向
「GPT-4」を上回る性能の日本語LLMを開発
2024年6月26日、ELYZAが提供する大規模言語モデル「ELYZA LLM for JP」シリーズの最新モデルとして、Meta社の「Llama 3」をベースとした700億パラメータの「Llama-3-ELYZA-JP-70B」と80億パラメータの「Llama-3-ELYZA-JP-8B」を開発し、性能を公開しました。
「Llama-3-ELYZA-JP-70B」は、Meta社の「Llama-3-70B」をベースに追加の学習を実施して開発したモデルです。本モデルは日本語の性能を測定するための2つのベンチマークを用いた自動評価において、国内モデルの中では最高性能の水準を実現し、「GPT-4」や「Claude 3 Sonnet」、「Gemini 1.5 Flash」と同等、あるいは上回る性能を達成しています。
「Llama-3-ELYZA-JP-8B」は、Meta社の「Llama-3-8B」をベースに事後学習を実施して開発したモデルで、80億パラメータの軽量なモデルでありながら、日本語の性能を測定するための2つのベンチマークを用いた自動評価において、「GPT-3.5 Turbo」や「Claude 3 Haiku」、「Gemini 1.0 Pro」に匹敵する性能を達成しています。
「Llama-3-ELYZA-JP-70B」は、チャット形式のデモサイトを用意しており、「Llama-3-ELYZA-JP-8B」は、モデル自体を一般公開いたします。LLAMA 3 COMMUNITY LICENSEに準拠しており、Acceptable Use Policyに従う限りにおいては、研究および商業目的での利用が可能です。
KDDI、アルティウスリンクとともに、コンタクトセンター特化型LLMアプリを開発
KDDI、アルティウスリンク、ELYZAは業務の効率化やデータ分析を高度化する「コンタクトセンター業務特化型LLMアプリケーション」を開発しました。3社は、2024年9月3日からアルティウスリンク提供のコンタクトセンター向けサービス「Altius ONE for Support」の標準機能としてLLMアプリを提供開始しました。
このLLMアプリの特徴は、「業務に特化した実用性の高いLLMアプリ」だということです。実務を十分に理解する業務従事者とLLMアプリの開発や実証実験を行ったことで、オペレーションの業務負荷軽減に寄与するLLMアプリをラインアップしています。さらに、LLMアプリで応対履歴データを構造化し、データ分析の効率化・高度化に活用することで、サービス品質向上も期待できます。
また、「スピーディーかつ柔軟に導入可能」な点も魅力となっています。LLMアプリは「標準アプリの提供」「お客さまの業務要件に合わせたカスタマイズ後提供」の2パターンで提供しています。標準アプリ提供の場合は、リードタイムなく提供が可能で、カスタマイズを行う場合も、数か月程度の構築期間から導入が可能。プラットフォーム型のため、コンタクトセンターに必要なLLMアプリをお客さま企業の課題に応じて組み合わせて提供したり、外部システムとの連携を可能にするなど、柔軟な活用も可能です。
さいごに
ELYZAは日本語LLMの開発に特化した企業で、KDDIグループとの提携により更なる成長が期待されています。700億パラメータの「Llama-3-ELYZA-JP-70B」は、GPT-4を上回る性能を達成し、日本語AIの進化を示しています。
また、コンタクトセンター向けLLMアプリの開発など、実用的なAI活用にも力を入れており、日本のAI技術の発展と社会実装を牽引する重要な存在となっています。
The Playersシリーズでは、AI関連の企業にフォーカスした記事を書いています。さまざまなAI企業を比較することで、成功するAI関連企業の法則が見えてくるかもしれません。引き続き、注目の企業を紹介していきますので、ご期待ください。
大学では広告や広報について学んでいます。
サッカーは見るのもやるのも好きです。
AIの知識を深め、わかりやすい記事をお届けしていきたいと思います!