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2018年6月21日にDEEP LEARNING LAB(ディープラーニング・ラボ)が主催する『DLLAB DAY 2018』が開催されました。
今回はセッション「AI人材育成の落とし穴と実務的なアドバイス」についてレポートをお届けします。
▼DEEP LEARNING LABのキックオフのレポートはこちら
スピーカー
- 【モデレーター】吉崎 亮介 氏(株式会社キカガク)
- 井﨑 武士 氏 (NVIDIA / 日本ディープラーニング協会)
- 田尻 泰彦 氏 (トヨタ紡織株式会社)
- 林 昌弘 氏 (ノバシステム株式会社)
AI人材育成の落とし穴と実務的なアドバイス
吉崎さん
井﨑さん
インターネットは大量の学習データが容易に手に入る環境です。
FacebookはDeepfaceという顔認識のアルゴリズムを導入しています。ドコモの「しゃべってコンシェル」もディープラーニングを活用していて、楽天のサービス「ラクマ」もディープラーニングで画像を特定し、不正出品の検知に活用しています。
最近では、監視カメラのソリューションも使われています。特に中国ですよね。迷子や不審者の検出で使われています。
他に最近ディープラーニングの広がりを見せているのは医療の分野です。病巣の位置を特定する技術が進んでいます。2年前にはディープラーニングを活用してみたくらいのレベルでしたが、最近はどこもディープラーニングに取り組んでいて様変わりしていました。
創薬への応用やゲノム解析にも広がっています。
日本国内では製造業の取り組みも進んでいます。特にファナックの取り組み。製造業ではビジュアルインスペクション、予兆保全、制御などで活用が進んでいます。
実務的なアドバイスとしては、これからは企業内での課題をどのようにブレークダウンして解いていくかが大事です。ディープラーニングはデータの整備などそれなりの投資が必要です。
そのため、ディープラーニングを使う必要のない分野では従来の手法を活用することも大事です。
またディープラーニングでは計算基盤への投資も必要になってきます。固定費としてコストがかかってしまいます。それを理解せずにやると後悔します。
インターネット上に大量のログデータがあって、何か知見が得られないかな!?と期待してしまいますが、データがしっかりと構造化されていないと大量のデータでもゴミだったりするので注意が必要です。
吉崎さん
手作業でラベル付けができる価値があるかを見極めてコストをかけていくことが大事です。本質的ではないデータを入れても本質的ではない結果が出てしまいます。アクションや活用を決めてから逆算してディープラーニングを活用することが大事です。
吉崎さん
田尻さん
実際やってみると正答率が半分くらいまでしか出ませんでした。
次にどうしようと考えたときに、データが悪いのかアルゴリズムが悪いのかデータ量が悪いのかがわからず、はまってしまいました…
吉崎さん
この部分は、解決策としてうまくいっていない部分のデータを見てデータが悪いのかアルゴリズムが悪いのかあたりを付ける場合や、人間が見てそもそも判断可能なのかを調べたりします。
吉崎さん
林さん
そのため自社でディープラーニングのモデル構築ができず、スキルを付けにくいんです。
どこからデータを入れればいいのか悩んでいて、無料で手に入るデータは実際の案件と違ってケースの想定がない状態なのでうまく利用できないことが多いんです。
Web上からスクレイピングしても、問題定義はどうするのかや学習に取り組むスタートラインに到達しないことに困っています。
吉崎さん
林さん
SIGNATEの担当の方とお話させていただいたんですが、「レベルに関係なくトレーニングのためでもOKですよ」といっていたのでチャレンジしてみようと思います。
ディープラーニングにおける必要な人材
吉崎さん
日本ディープラーニング協会は資格試験をやっていますが、どのような人材を育成しようとしているのでしょうか?
井﨑さん
G検定で育成するのはディープラーニングがどのようなものかを理解して応用できる人材です。
現場の知識を持ち合わせている人が、ディープラーニングのどのような手法を使うのかを選択できることを目指しています。
E資格は世の中のディープラーニングのアルゴリズムを使うだけでなく、数学的な知識を持ち合わせている人材で、日本ディープラーニング協会でシラバスを細かく定めています。
▼日本ディープラーニング協会について詳しくはこちらから
吉崎さん
田尻さん
また、今までのウォーターフォールではなく、ディープラーニング独自の進め方や独自のリスクを理解してプロジェクトを成功させられる人材が社内のIT部門に必要になってくると思います。今はエンジニアではなくて橋渡し人材が必要です。
それが成功して規模が大きくなったらエンジニアの育成などについても進めて内製化していけるかと思います。まず始めるには橋渡し人材、AIの活用の見込みを見極められる人材が必要だと感じています。
吉崎さん
予算のためには成果が必要です。橋渡し人材が企画をまとめ、ベンダーに発注して、規模を広げて内製化していくことが上手な回し方だと思います、
人材育成についても聞いてみたいと思います。採用してもすぐに使える人材だとは限りません。そのため育成にフォーカスがあたってきます。林さんの会社はどのように育成されているんですか?
林さん
しかし、途中でいろいろあり、1人でやっていました。最近は、やっと新人が3人入ってきて、現場にAI技術を広めていくべく、頑張っています。
新人3人はAIについて何も知らず、社内セミナー、Udemyというオンラインサービスを利用したりしています。
その際には学習の目標を設定するようにしています。AI関連の資格で、統計検定とPythonプログラム基礎認定、G検定の3つを定めています。成果はこれからといったところです。
吉崎さん
部署を立ち上げるときは誰かを説得して始めたんですか?
林さん
吉崎さん
わかりやすい目標設定で説得することが大事ですね。
最後に業務に直結するAIの導入ステップを教えてください。
AI導入のステップ
井﨑さん
投資も必要なので経営層を説得して、ある程度ビジネスプランを決めて、投資をしていくことが大事です。
田尻さん
また、プロジェクトの進め方を理解することが大事です。数ヶ月でいいのでやってみることが大事で、それを積み重ねて社内の経験値を増やして社内のメンバーがAIを使えるようにしていきたいですね。
林さん
機械学習、ディープラーニングはツール、道具だと思っています。従来の手法に慣れ親しんだエンジニアの知識では扱いきれない技術です。
新しい常識を知らないと使い方を間違えてしまうので、まずはG検定を受けて、あとは最低限の統計を学ぶといいと思います。私たちは統計検定では2級は取ると決めていて、最低限3級までは取得するようにしています。
また、データ分析やUI・UXの基礎的な部分も学ばないといけないなと感じています。
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さいごに
リアルな課題が見えてきました。AIを社内で進めるならスモールスタートで予算と企画を取っていくスタンスが重要です。そのために、資格などの明確な目標を設け、AI系の部署を設置するのもアリかもしれません。
以下の記事は以前に取材した吉崎さんと井﨑さんを取材させていただいたものです。空いている時間にぜひご覧ください。教育や企業の体質の課題について詳しく話してくださいました!
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