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海外のAI系コンテンツに触れたい方におすすめ。
AINOWは翻訳記事だけではなく、海外記事の要約をまとめたコンテンツも配信していきます。
目次
海外記事要約まとめ
Google Duplexはチューリングテストをパスするのか?
著者 Lance Ulanoff
著者のLance Ulanoff氏は、大手テック系メディアMashableで執筆経験のあるテクノロジー系ジャーナリスト。同氏がMediumに投稿した記事では、2018年5月開催のGoogle開発者会議で発表されたAI技術「Google Duplex」について考察している。
同技術は、AIが美容院の予約のような比較的簡単な仕事を電話を使って実行するというもの。この記事では、同技術がいわゆる「チューリングテスト」に合格するかどうか考察している。チューリングテストとは、AIがヒトに匹敵する知性を持っているかどうかを検査するテストであり、ヒトと会話しているAIが対話者にAIと悟られなかったら、そのAIはヒトと同じ知性を持っていると判定する、というもの。Ulanoff氏が同技術で注目しているのは、「ああ」「ううん」といった大して意味がないが口調を整えるのにヒトが多用する間投詞を使っているところだ。
とはいうものも、同技術はひとつの仕事を学習するのに膨大な時間を費やしている。そのため、美容院の予約はできても有料チャンネルの加入手続きはできない、というのが現状なのでチューリングテストには合格しないだろう、と結論づけられる。しかし、同氏によれば同技術が多くの仕事を習得するのは時間の問題であり、いずれ音声AIに恋する男を描いた映画『her/世界でひとつの彼女』の世界が実現するだろう、と述べている。
ケンブリッジ・アナリティカについてメディアがあなたに教えないこと
著者 Trent Lapinski
筆者のTrent Lapinski氏は、テック系ジャーナリストであると同時に複数のテック系スタートアップとパートナー関係を結んでいる企業家である。同氏がMediumに投稿した記事では、トランプ米大統領の誕生に大きな役割を果たしたとされる企業ケンブリッチ・アナリティカが、実際に何を行ったのかについて論じている。
複数の報道から分かる通り、ケンブリッチ・アナリティカはFacebookから大量のユーザ情報を不正に取得して、その情報をトランプ陣営の選挙キャンペーンに悪用したと言われている。同記事では、そのユーザ情報が実際にどのように使われたかについて推理している。その推理によると、同企業はユーザの嗜好に合わせて広告を表示するマイクロターゲティングの手法を使って、アメリカ国民がトランプ氏に投票するように仕向けたのではない。そうではなく投票先を迷っていた浮遊層に対して、トランプ氏の対立候補だったヒラリー氏の悪評を見せて、ヒラリー氏に投票しない、もしくはどちらにも投票しないように仕向けたと考えられる。実際、先のアメリカ大統領選挙ではリベラル層の投票率がオバマ氏の選挙時に比べて低かったことがわかっており、そのことがトランプ陣営に有利に働いた。
以上のような「ヒラリー氏に投票しない」という不作為にヒトビトを誘導できたのも、大量のユーザ情報を機械学習を用いて分析し、「リベラルな浮遊層」を特定できたからだ。そして、Facebookは一連の投票行為の操作に対して責任を免れない、と同氏は糾弾している。
ハッシュタグを用いたディープラーニングによって最先端の画像認識を改善したことについて
著者 Dhruv Mahajan, Ross Girshick, Vignesh Ramanathan, Manohar Paluri, Laurens Van Der Maaten
FacebookのAI研究チームが発表したブログ記事。この記事は、画像認識における学習用画像データを効率的に活用する新手法を解説している。
画像認識の学習には、一般にヒトによってラベル付けされた画像データが活用されている。Facebookは、こうしたラベル付き画像を5,000万枚用意しているが、さらに学習用画像データを増やすことを考えた場合、人手によるラベル付けでは限界があるという問題を抱えていた。この問題を解決するために着目したのが、ラベルの代わりに画像に付けられたハッシュタグを利用することである。
今日Twitter等に投稿される画像にはたいていハッシュタグが付けられており、そのハッシュタグが画像が何であるかを説明している。このハッシュタグを学習用のラベルに活用するために、研究チームは同義のハッシュタグをまとめたり、多用されるハッシュタグとまれにしか付与されないそれが画像データ全体に与える影響を調整したりした。こうしてハッシュタグをラベルの代わりに用いて、10億枚の学習用画像を作ることに成功した。
この学習データを活用してAIに画像認識を学習させたところ、画像認識における一般的なベンチマーツツールであるImageNetで過去最高の85.4%の精度を達成した。以上のようなハッシュタグを活用した学習データの生成は、画像認識だけではなく動画の認識にも応用できると考えられている。
オートデスクのデジタル・アシスタントAvaはいかにして不気味の谷を超えようとしているか
著者 VentureBeat:Khari Johnson
紹介する記事が掲載されたメディアVentureBeatは、アメリカのテック系スタートアップに関する記事に強いビジネス系ニュースメディア。紹介する記事では、モデリングソフト最大手オートデスクが自社のソフトに導入したヒト型AIアシスタント「Ava」について解説している。
Avaを開発するにあたっては、留意したことが2点あると言う。ひとつめは、あまりにリアルにヒトに似せようとはしなかった、ということである。というのも、あまりにリアルにヒトに似せると、かえってユーザに「不気味の谷」(デジタルなモノがリアルに近づき過ぎると、不気味な存在と思われる現象)を感じさせるからだ。反対にAvaに「わたしはバーチャル・アシスタントです」とあえて言わせることによって、ユーザに親しみを感じてもらうことに成功した。もうひとつは、容姿や服装から特定の民族や国籍が連想されないようにAvaをデザインしたことである。こうしたデザイン方針を採用したのは、オートデスクの多文化共生的な企業文化を反映させるためである。
以上のようなAvaには、今後は顔の表情や口調からユーザの感情を読み取る機能が実装される予定である。そして、ユーザの感情を読み取ることによって、Avaがユーザの感情に配慮した表情をすることを目指しているのだ。
Special Thanks (翻訳協力):吉本幸記