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海外のAI系コンテンツに触れたい方におすすめ。
AINOWは翻訳記事だけではなく、海外記事の要約をまとめたコンテンツも配信していきます。
目次
海外記事要約まとめ
ヒトと同じくらい賢い人工知能はいつ実現するのか。この問題について専門家が考えていること
著者 Dan Robitzski
著者のDan Robitzski氏はテック系とサイエンス系の記事を得意とするニューヨーク在住のフリーライター。同氏がテック系メディア『Futurism』に投稿した記事では、汎用的AIの実現可能性に関する専門家の考えを紹介している。
現在のAIは特定の仕事しかできないので、「狭いAI」と言われる。対してヒトのように様々な仕事ができるAIは、「広いAI」あるいは「汎用的AI」と言われる。同氏は8月にチェコのプラハで開催されたAIの専門家が集った会議「The Joint Multi-Conference on Human-Level Artificial Intelligence」に取材に行き、専門家にヒトと同じレベルの知性があるAI( human-level AI :略してHLAI)の実現可能性に関してコメントを得た。37%の専門家が10年以内にHLAIが実現すると考え、28%が20年で実現すると考えている。逆に決して実現しないと考える専門家は2%だった。また、ヒトレベルのAIを実現する技術は、現在の技術の延長線上にあるという意見と、現在の技術とは決定的に異なるものが必要という意見に分かれている。
なお、上記AI会議には株式会社アラヤのCEOを務める金井良太氏が出席しており、同氏はHLAIの実現時期について2030年とコメントした。
ディープラーニングを使ってアニメの少女を描く
著者 Daniel Shapiro
Daniel Shapiro氏は、AIを活用してビジネスの課題を解決するサービスを提供するLemay.aiの共同設立者。同氏がMediumに投稿した記事では、ディープラーニングを活用してAIにアニメの少女を描かせる事例が報告されている。
ディープラーニングのひとつとして知られる敵対的生成ネットワーク(GAN)を活用すれば、学習データの画像の特徴を継承した新規の画像を生成することができる(GANを活用した画像合成に関してはAINOW翻訳記事「ディープラーニング(CycleGAN)を使ってフォートナイトをPUBGに変える」でも採りあげている)。こうしたGANを活用して、日本のアニメで登場する二次元の少女の画像を学習データとして、新たなアニメ調の少女の画像を生成することに成功した。また、一部の空間情報が欠落することがあるディープラーニングの欠点を改善したカプセルネットワークを活用してみたが、画質の向上は確認できなかった、と報告している。さらに、物体検知を向上させる機能のひとつであるHistogram of Oriented Gradients(略してHOG)も追加実装して画像合成を実行した。以上に解説した一連の画像合成の過程はTwitterアカウント「Project w.A.I.f.u.」にまとめられおり、同アカウントを閲覧すると実際に生成された日本のアニメ調の美少女の画像が確認できる。
破壊的インタフェースとデフォルトになることをめぐる戦いの勃興
著者 Scott Belsky
著者のScott Belsky氏は、Adobe社の最高製品責任者(CPO)。同氏がMediumに投稿した記事では、AIがインタフェース設計に与える影響が論じらている。
インターネット普及以降のデジタルビジネスは、進化し続けるインタフェース上でユーザの注意をひくような優位な位置を占めることをめぐっての競争してきた。この競争を具体的に説明すると、かつてはPCのディスプレイで買い物をしていたが今やモバイルが主流となり、今後は音声や拡張現実がデジタルビジネスの主戦場となると予想されている。各時代のインタフェースにおいて、企業は広告を出したり検索順位を上げることを通して、優位な位置を占める努力をしてきた。しかし、AIの普及はこうしたインタフェースにおける競争を終わらせるポテンシャルがある。というのも、AIはユーザに最適なひとつの選択肢を提示できるので、インタフェース上の「場所取り」が無駄となるからだ。
以上のような「デフォルトが最適」となるAIインタフェースの時代においては、製品設計における新たな倫理的規範が求められる。そうした規範にはAIとのコミュニケーションに関するガイダンスの提示と、AIがすすめる選択肢のソースの提示(なぜその選択肢を提示するのか、あるいはなぜ他の選択肢は見せないのか)が含まれるだろう、と同氏は論じている。
グローバルな意味論的コンテクストはニューラルな言語モデルを改善できるのか
著者 Apple自然言語処理フレームワークチーム
著者はAppleの自然言語処理に関して研究開発を行っているチーム。同チームが同社が進める機械学習に関する研究成果を公開するブログ『Apple Machine Learning Journal』に投稿した記事では、入力単語予測に使われる新しいAI技術について解説されている。
iPhoneには文字入力時に入力単語候補を表示するQuickType機能が実装されているのだが、候補となる単語の絞り込みには自然言語処理技術が応用されている。自然言語処理の基本となる単語の意味を数値化する技術には、単語の前後数単語を考慮するローカルな手法と、段落や文書全体を考慮するグローバルな手法がある。理論上はグローバルな手法の方が単語の意味を正しく数値化できると考えらているが、現状のグローバルな手法の性能はローカルな手法に劣っている。そこでAppleの研究チームは、グローバルな手法の改良を試みた。
自然言語処理において単語をAIが演算しやすいような埋め込み情報に変換する技術としてword2vecがよく知られている。同チームは、こうしたword2vecの代わりにbi-LSTM(Long short-term memory)をグローバルな手法に適用してみた。その結果、word2vecと同等のパフォーマンスを実現しながら学習データを7分の1に減らすことができたのだ。この成果をうけて、将来的にはローカルな手法とグローバルな手法の両方の長所を生かした自然言語処理システムを提供できるだろう、と同チームは考えている。
苦痛に対処するAI:季節性アレルギーの予測モデルを探すアプリの研究
著者 Isha Salian
著者のIsha Salian氏はアメリカ・スタンフォード大学でジャーナリズムに関する修士号を取得するかたわら、2015年夏よりNVIDIA社のインターンとして働き、今日では同社広報チームでディープラーニングに関する記事などを執筆している。同氏がUS版NVIDIA公式ブログに投稿した記事では、アレルギーの発症をAIで予測するビジネスが紹介されている。
アメリカのAIスタートアップDoc.aiは、アレルギーの発症に関する予測モデルを作成するために、メディカルデータを提供してくれる2,000人のモニターを集めた。モニターは、スマートウォッチを使って継続的にメディカルデータを送信し、花粉症等のアレルギーを発症した時は報告する取り決めに合意している。同社は、こうして集められたアレルギー発症に関するメディカルデータを学習データとして、アレルギー発症を予測するAIの開発を目指している。AIの学習にはNVIDIAのGPU「NVIDIA Tesla V100 GPU」を活用している。
スマートウォッチから取集するメディカルデータのほかに、ユーザはセルフィ―画像と現住所の郵便番号を報告している。セルフィ―画像は顔画像からBMIを算出するAIモデル「Selfie to BMI」に活用され、郵便番号はアメリカの大気に関するオープンソースのデータと照合して、ユーザの居住地区の大気状況を把握するのに使われる。こうしたユーザデータは、ブロックチェーン技術を活用したデータベースに保存することでセキュリティを保護している。
以上のようなアレルギーを予測するAI開発のノウハウは、将来的にはてんかんなどの他の疾患にも応用することが計画されている。
Special Thanks (翻訳協力):吉本幸記