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2019年9月29日、NHKスペシャル「AIでよみがえる美空ひばり」にてAI技術で美空ひばりが再現されました。Twitterなどでも「涙腺崩壊」「涙が止まらない」といった感動の声が多く集まっています。
かつて圧倒的なオーラを放っていた美空ひばりを、どのようにしてもう一度復活させることが出来たのでしょうか。その仕組みと技術について紹介していきます。
【この記事でわかること】 ※クリックすると見出しにジャンプします |
目次
AI美空ひばりとは
美空ひばりは昭和を代表する歌謡界のトップスターです。
今回行われたAI美空ひばりのプロジェクト内容とその新曲を以下でご紹介します。
NHKプロジェクト
没後30年を迎え、美空ひばりをAI技術で現代によみがえらせるプロジェクトがNHKスペシャルの企画で開始されました。その技術には音声を合成させる「VOCALOID:AI」や「ホログラム」が使用されています。VOCALOID:AIは楽器販売で有名なヤマハによって開発されました。
会場であるNHKホールには天童よしみや秋元康などの著名人、美空ひばりにもう一度会いたいという人々が大勢集まり、その歌声に感動しました。
YouTubeで実際に歌っている様子を見ることが出来るので、ぜひその歌声を聞いてみてください。
▶[NHKスペシャル] AIでよみがえる美空ひばり | 新曲 あれから | NHK
新曲「あれから」
「あれから」は美空ひばりが現代に生きる私たちに優しく語りかけてくれているような歌です。聞いた方の中には「またあの歌声を聞きたい。」と感じた方もいらっしゃるかと思います。
そんな方に朗報です。なんと、日本コロムビアが美空ひばりさんの歌声を再現した新曲「あれから」をCD化し、販売・配信しています。
作詞は生前最後のシングル「川の流れのように」を担当した秋元康です。
公式サイトにて購入できるので、チェックしてみてください。
AI美空ひばりの歌声をつくるボーカロイドAIとは
AI美空ひばりの歌声は「VOCALOID:AI」によって作られました。しかし、完成するまでには多くの困難と課題がありました。
そこで、どのようにしてAIが開発されたのか解説していきます。
ボーカロイドAIとボーカロイドの違い
ボーカロイドとは音声合成技術という歌声を作り出す技術のことです。有名な初音ミクはボーカロイドです。歌詞と音符を入力することで声をつなぎ合わせて曲を作ります。また調子を変えてみたりテンポを整えることでクリエイターはその曲の個性を生み出すのです。
ボーカロイドAIとの違いは、AIが真似したい歌手の歌声・話し方を学習することで、まるで本人のようになるという点です。今回のプロジェクトでは生前に収録された楽曲や音声が学習データに使用されました。
感情が込められた曲をつくるには
ボーカロイドAIは楽譜の文脈を踏まえて歌うことが出来ます。しかし、いくら音声データを学習しても、曲に込められた感情や意思まで表現するのは非常に困難です。そこで開発チームはAIに歌い方のリクエストを出すことで感情を表現しました。
例えば人間側が歌詞の意味を解釈しAIに歌い方を指示します。「この曲のこの歌い方のように」という形式です。そして返ってきた歌をまた人間が解釈しリクエストを出します。この繰り返しを開発者が望む歌い方になるまで行うことによって人を感動させられる曲に仕上げられます。
放送された感想は?
実際に放送された反応にはどのようなものがあったのでしょうか。
それぞれ紹介します。
感動の意見
AIの美空ひばりは感動した
本当に美しい歌というのはあるんだな。感情が揺さぶられるくらい感動する。
感動の意見には「もう一度美空ひばりに会えて嬉しい」「感動した」との声が多く挙げられていました。また完成度の高さに驚いた方も多くいました。
否定的な意見
故人をAIと称して当人のように動かすの、穢土転生より卑劣な術だと思うな(AI美空ひばりの話をしている
引用;@himurozanさん
前にNHKでやってたAI美空ひばり あれは違和感が拭えなく気持ち悪すぎて無理だったが、AI荒井由実をソロで聞いたらどうだったんだろう?
否定的な意見には「故人をよみがえらせるのはよくない」「倫理的に複雑だ」との声が多く挙げられていました。やはり賛否両論の意見があるようです。
また「顔が怖い」などのCGによる不気味の谷現象を感じた方もいらっしゃいました。
故人をAIにする注意点
近年、故人を模したAIを開発し遺族の悲しみを癒すビジネスが注目されています。
しかし、AI美空ひばりに賛否の意見があったように、故人をAIに利用するのは倫理などのリスクが伴います。そこで、故人をAIにする際の注意点を紹介します。
福井健策の論文「よみがえる故人たち―偉人アンドロイド・作家AIと肖像権、著作権、尊厳―」によると、故人をAIにするにはルールを決めなければならないといいます。例えば「本人・遺族によるAI化の拒否権」です。もし死後に人格的権利が認められない場合、同意なくAIに利用されてしまうでしょう。
また、「アンドロイド自身やその生成物、AIの生成物には権利が生まれるか」という問題も発生します。これを明確に定められなければ権利争いに発展します。さらに故人AIの責任を誰が取るのかという問題も重要です。
このように、倫理的問題や法的問題が整備されていないため、故人のAI化は慎重に扱わなければならないといえます。
(参考:よみがえる故人たち―偉人アンドロイド・作家AIと肖像権、著作権、尊厳―)
まとめ
AI美空ひばりは多くの人に感動と衝撃を届けました。その裏には最新の技術と開発チームの努力が隠されています。
また放送後には様々な声があがり、今回のプロジェクトに関心が寄せられました。美空ひばりのファンからは手厳しい意見も出たように、AIで美空ひばりを再現するにも改良の余地は多くあります。
今後も故人をAIにする取り組みが注目を浴びていくでしょう。ますます目が離せませんね!