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残業帰りの夜。おじさんはタクシーを降りて、道を歩いていた。
寄り道。悩んでいる時の彼の習慣だ。歩く先に一つの館がそびえたつ。「クラブAI本店」、キャバクラらしい。
看板の文字が目に飛び込んだ。
ーー当店では、選りすぐりのキャストが、愛を届けてご奉仕します。ごゆっくりお楽しみください。
この手の遊びにまるっきり縁が無かった30年の社会人生活。重なるストレス、きしむ足腰、溜まる不安。もう限界だった。
一度きりの憂さ晴らしと言い聞かせて、おじさんは秘密の花園に足で踏み入れた。高鳴る心臓のリズムを自覚する。
彼を対応したのは「れい」、まだあどけない新人のキャバ嬢だった。
愛の強さ
初めてのキャバクラを楽しむおじさん。会話が盛り上がり、話題は「愛について」へ。
おじさんが学んだのは、強い愛と弱い愛、その違いだった!
れい
おじさん
れい
お疲れ!ハイ飲んで?濃さちょうどいい?おじさんの職場もそうなんだね。
AIにもいろいろあってね。恋愛と同じ。何でも受け入れる強いAIと少しだけしか受け入れられない弱いAIに分けられるの。
おじさん
れい
おじさん
れい
あ、グラス空いたねー、おじさん強いねー!
強いAIは「総合的に判断できる」ってところかな。例えば鉄腕アトムとか、ドラえもんって、自意識持ってるじゃない。あれはまるで人間のようにいろんなことを判断する汎用型のAIなんだ。
おじさん
れい
やだー、とりあえず飲んで?
弱いAIは「特定状況で判断できる」ってとこかしら。例えば、囲碁とか将棋ってAIの方が人間よりも強いんだけど。あくまで、当てられた仕事に対して処理する、まさにツールという感じ、特化型のAI。
今、開発に成功してるのは弱いAIで、強いAIは実現してないの。
おじさん
れい
おじさん
れい
おじさん
れい
愛の精度とコスト
愛の強さについて理解したおじさん。AIの定義とともに、強いAIと弱いAIの違いを学んだ。1度通えば欲が出るもの。「クラブAI本店」に向かうおじさんの脚は、ジャッカルのように軽やかだ。
今回は、機械学習とは何か?について学ぶ。AIはどうやって作られるのか⁉
れい
おじさん
れい
おじさん
れい
愛・・・あ!AIのことだね!!
今注目されているのは、機械学習。データからルールやパターンを、機械が習得する手法よ。
こうやってAIが発達した理由って機械学習の技術が発達したからってのが大きいんだ。話題のディープラーニングも、機械学習のひとつ。
インターネットの普及で、データがたくさん蓄積されるようになったわ。データを使ってモデルを作るの。つまり、機械学習という技術がデータを解析して、できたモデルが愛と呼ばれるの。
おじさん
れい
おじさん
れい
おじさん
れい
そう。こうやって、たくさんの学習を経て、愛って育っていくの。おじさんの、データももっと、ほしいな。音声データ、画像データ、会話データ。だから、たくさん通って!でも愛に関しても精度を高めるには、同時にキャバクラに通う金銭的なコストもかかるよね。
ドンペリ、あけよ!!
愛のヴァリエーション
機械学習について理解したおじさん。だんだん、AIについて分かるようになってきた。若者の話しにもついていけるし、なんだか人生も充実してきたようだ。
今回は、機械学習の中にあるカテゴリー。教師あり学習、教師なし学習、強化学習、それぞれについて学ぶ。AIは奥が深かった‼
おじさん
れい
おじさん
れい
の!ん!で!
こないだは機械学習について説明したね。でも一口に機械学習と言っても、多様な手法があるんだ。
まずは教師あり学習と、教師なし学習に分けられるの。
おじさん
れい
教師あり学習はその名の通り、正解を教える教師がいるの。
例えば、この写真が「お兄さんの正しい顔です」っていうゴールの部分を人間が指定してあげるの。教師データって言われるわ。そっから、機械にビシバシ、データを学習させるの。
すると機械が、こんな特徴を持っているのが「お兄さん」だと分かるようになってくるわ。
そして、新たに機械がおじさんを見た時に、「あっ!お兄さんだ!!」って見つけられようになるんだね。
おじさん
れい
教師なし学習は、データそのものの、構造とか特徴を分類してもらうのがメインだね。グループに分けたり、データを簡略化することに向いてるのよ。
似たようなお客さんを、「何が似てるのか」を人間が指示することなく、分類してもらうイメージね。
例えば、活用例はオンラインショッピング。ユーザーが買っているものの傾向を、教師なし学習で分類できるわ。
おじさん
れい
うふふ、大丈夫。私は、お兄さんだけのだよ、教師あり/なしとは別に。強化学習もあるんだよ。
強化学習は、「機械がとる行動の戦略(指針)を強化(改善)する仕組み」だよ。
機械に対して、報酬を定義するわ。そして、機械は行動を繰り返す。そのうちに報酬が最大化されるような行動にどんどん近づいていくんだ。
例えば人間が自転車に乗れるようになるプロセスを思い出してほしいの。
やってみる⇒コケる⇒ちょっと行動を変えてみる⇒ちょっとうまくいく⇒コケる⇒乗れるようになる
行動を繰り返して報酬を最大化していると考えることができない?これをプログラムで実現しているのが強化学習だね。
おじさん
れい
そう愛も複雑だから、結局何が愛なのか分からなくなるね。一口に愛と言っても、指してる意味がみんな違うの。愛のヴァリエーションも豊富だね。
あっ、ボーイさんきちゃった。もうちょっと語りたいな?
愛の深さ
AIと愛について心得たおじさん。機械学習の3つの分類についても学んだ。学べば学ぶだけ欲が出てくる。もっと知りたい、もっと話したい、もっと会いたい。気づけばおじさんは、「クラブAI本店」。そこいた‼‼
今日の学ぶのはディープラーニング。AIブームの真髄だった‼
おじさん
れい
おじさんが来てくれるの当たり前にならないように、ちゃんと感謝しなきゃなって思うんだ。今日はね、昨日よりもっと深いところまでいきたいな。ディープラーニングにみたいにね。
おじさん
れい
そう、機械学習の要素技術の一つで、画像認識コンテストで、驚異的な精度を記録したことで有名になった技術。教師あり学習の一つだね。
例えば、画像を見ておじさんかどうかを判定する愛を作るとするわ。
従来は、今までは「何に注目するか」。顔立ちがはっきりしてて、目が二重で、髪の毛が隆々としていて、鼻立ちがはっきりしていて、ステキ!なんてことを指定してあげなきゃいけなかったわ。
でもディープラーニングは、「何に注目するか(特徴量)」を機械が設定してくれるの。
おじさん
れい
ありがとう。じゃあ一緒に飲も~!!
ディープラーニングは、人間の脳を模したニューラルネットワークを基調にしているわ。
人間の脳って、ニューロンが電気信号として情報を伝達するんだけど、その時にニューロンとニューロンを繋ぐシナプスの強さによって、情報の伝わりやすさが変わってくるの。
それを真似したってことね。
ディープラーニングでは、入力層と出力層の間に隠れ層を入れることで、何層にも渡って、情報を処理するわ。だから、「ディープ」なの。これによって、複雑な情報を処理して、高い精度を実現しているの。
おじさん
れい
分かりやすいのはやっぱり画像認識だね。交通量調査で人の数を数えたり、機械で検品を目でしていた部分を機械が代替したり。これを実装可能なレベルまでの精度に高めたのは、ディープラーニングのおかげなの。実際に、機械が人間の精度を超えることもあるわ。
他にもテキストデータや音声データ、数値データ。AIの活用の幅はディープラーニングによって広がったと言えるわね。
おじさん
れい
愛の過剰最適
気づけばおじさんは、「クラブAI本店」に行くために仕事をするようになっていた。
今日も、あそこに行きたくて仕方がない。
自然でいられる、自分でいられる、今日もあいたい。その気持ちだけが、おじさんを前に進める。
ふと、後輩の女性職員に声を掛けられた。まだ、あどけない新卒社員だ。
「おじさん、ちょっとここ見てもらいたいんですけど。」
「んーと、今ちょっと手が話せないな。今日はずっといるから、延長で。ねっ」
「延長⁉⁉⁉」
※過学習には気を付けましょう
ーーおわりーー