最終更新日:
株式会社日本データサイエンス研究所(JDSC)、佐川急便株式会社、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室は、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に関して、共同研究を進めています。
上記の3団体に加え、新たに横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ 有限責任事業組合(GDBL)が参画し、5者共同でこの問題に取り組むことに合意しました。
再配達に費やす時間は年間 約1.8億時間
近年、多様化するライフスタイルや、電子商取引(EC)の急速な拡大により、宅配便の取り扱い個数が増加しています。
みなさんも、一度は再配達を依頼したことがあると思います。現在、その宅配便の再配送はCO2排出量の増加やドライバー不足を深刻化させるなど、重大な社会問題の一つとなっています。
国土交通省の調べによると、個人向け配送における「不在配送件数」は全宅配件数のおよそ2割で、走行距離の25%は再配送のために費やされています。
これは年間9万人の労働力に相当し、年間 約1.8億時間が不在配送に費やされています。
3者共同でAIが配送システムを開発
JDSCはAIを用いた電力データ解析・活用技術を保有していて特許も取得しています。そのJDSCは東大越塚研究室、田中研究室との連携のもと、スマートメーターから得られる電力データを元に、AIが配送ルートを示すシステムを開発しました。
2018年9-10月に東京大学内で行われた配送試験では、不在配送を9割も減少させました。
また、2019年9月には、このシステムを活用し、佐川急便の持つ配送実績データでシミュレーションを行いました。その結果、不在配送の削減および総配送時間の短縮など一定の効果が得られました。
それにより2019年10月に3者共同研究開発することになったのです。
この不在配送が、実証実験のとおり不在率を減少させられた場合は、大きな効果が期待できると考えられます。
国土交通省が2019年1月 に「総合物流施策推進プログラム」において設定した宅配便の再配達率の削減目標(不在配送率「-13%程度」)の達成はもちろんのこと、その目標値を大きく上回る結果になることが期待できます。
東京大学での実証では再配達が9割減
東京大学本郷キャンパス内で行われた実験では、あらかじめキャンパス内の各建物に、別途収集した住宅の電力使用データと在不在情報を模擬的に割り振り、電力データのみから最適ルートを提示するシステムの性能評価を行ないました。
このシステムを用いる場合と用いない場合(人が最短経路を判断し配送)で2輪車による配送を繰り返した結果、以下のような結果が得られました。
システムを用いた場合▼
- 配送成功率 98%
- 不在配送 91%減少
- 総移動距離 5%減少
一方でこの実験の課題として、次の2点が挙げられ、実地環境での検証が課題となっています。
- 集荷・時間指定・宅配ボックスなどの実際の配送条件がない理想環境に基づくものであったこと。
- 配送者は、配送未経験の実験参加者によるものであること。
今後は、横須賀市とGDBLが参画した5者は共同で、2020年秋頃に横須賀市でフィールド実証実験を行うため、世界初の取り組みとして、具体的な準備を推進する予定です。
▼参考記事「2000億円の損失をもたらす不在配送をAIでゼロへ」
▼YouTubeでも解説!
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。