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2021.11.10

AI搭載のドローンって何?|できること・活用例・今後など詳しく解説!

最終更新日:

ドローンが注目されるようになってから数年が経ち、今では一般的に普及し、搭載されたカメラで空撮を楽しむ人も増えてきました。

一般的には撮影用に用いられることが多いドローンですが、さまざまな分野で応用が進んでいます。それにあわせて、ドローンが自律的に飛行できるようにAI技術を活用するケースも生まれてきました。

読者の中には、AIを搭載したドローンが現在どのように活用されているのか、そして今後どうなるのか知りたい方もいるでしょう。

そこで今回は「AIを搭載したドローン」のできることや活用法、今後の動向、注目の軍事利用に至るまで詳しく解説していきます。

本記事を読んだら、きっと「AIを搭載したドローン」に対する知識がより一層深まるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

▼AIについて詳しく知りたい方はこちら

「AIを搭載したドローン」とは

「AIを搭載したドローン」とは、その名の通り「AI(人工知能)の力を使って自律飛行や画像認識の機能を備えた新しいドローン」です。

AIとドローンは、相性の良い組み合わせです。AIの機械学習能力と無人機の探索能力を組み合わせることで、これまでのドローンにはできなかったことができるようになります。

一般的なドローンと「AIを搭載したドローン」の違い

一般的なドローンは防衛、農業、自然災害救援、セキュリティ、建設など、さまざまな分野で問題解決の鍵となる役割を果たしています。

効率性と安全性を向上させることができるドローンは、消防士から農業従事者まですべての人にとって重要なツールとなっています。実際、AIを搭載した自立型無人航空機、スマートUAVは非常に人気があり、現在では世界中で40万件以上の現場で使用されています。

しかし、これまでのドローンは、カメラで撮影した画像を表示することしかできませんでした。

しかし今では、AIのおかげで周囲の環境を認識できるようになり、エリアのマッピングや対象物の追跡、分析結果のフィードバックなどをリアルタイムに行うことができるようになりました。

「AIを搭載したドローン」にできること

AIを搭載したドローンは、「自律飛行」と「画像解析」が可能です。それぞれ紹介します。

自律飛行

AIを搭載したドローンはカメラからの画像情報をもとに、自律的に飛行することが可能です。自律飛行ができることで、人が目視で確認できない場所、遠距離での飛行が可能となります。

画像解析

ドローンは、高所や災害現場など危険な場所、立ち入り困難な場所での空撮に役立ってきたが、AIを搭載したことにより、カメラやセンサーで手に入れた情報を瞬時に解析することが可能となりました。

▶画像認識とは|機能・事例・仕組み・導入方法など徹底解説>>

日本における「AIを搭載したドローン」の分野別活用

AI搭載のドローンは既に日本においても広く活用されています。

経済産業省が立ち上げた「小型無人機等に係る環境整備に向けた官民協議会」において毎年、無人航空機に関する政府の取組を工程表としてとりまとめた 「空の産業革命に向けたロードマップ」を議論し、公表しています。

2021年6月28日、「小型無人機等に係る環境整備に向けた官民協議会」より「空の産業革命に向けたロードマップ2021」が公開されました。ドローンの運用に関しては、目視内飛行から無人地帯での目視外飛行、さらに有人地帯での目視外飛行まで4つの飛行レベルに分けています。

2022年を目処に実現を目指す有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4)はAIの搭載が不可欠です。

このロードマップでは、ドローンの運用に関して警備業、医療、測量、災害対応、農林水産業の5つに分類されており、その分類に沿って、既に開始されている実証実験例を紹介していきます。

警備業

ALSOKは、2020年7月に、東京スカイツリーの展望台および東京ソラマチにおいて、完全自律飛行ドローンによる巡回警備を行いました。

飛行中のリアルタイム映像配信、飛行中のAIによる人物検知に成功しました。

セコムは2019年8月に花園ラグビー場におけるKDDI、KDDI総合研究所と共同で実施した5Gを活用したスタジアム警備サービスの実証実験に成功しました。上空の4K映像を5G回線で伝送し、画像をAIで解析し異常の早期発見につなげる警備サービスです。

数万人規模のイベントにおける警備と運営のかたちを、「AIを搭載したドローン」が大きく変えることになるかもしれません。警備業界が抱える人手不足解消や更なる警備品質向上による施設の安全確保に繋がることでしょう。

医療

ドローンのAI管制プラットフォームを開発するトラジェクトリーと、ドローンの社会実装を支援することで産業の更なる発展を推進するスカイピークは、静岡県浜松市天竜区春野町で実施する「春野医療MaaSプロジェクト」の実証実験に成功しました。

浜松市のなかでも高齢化が進行している中山間地域の天竜区では、医師不足に加え、高齢者の通院困難の課題に直面しています。そこで、浜松市、地域の医師会、民間企業が連携し、オンライン医療サービスと連携した「ドローンによる医薬品配送サービス」の実証実験を行いました。

この実証実験では、3D地図を生成した上で、AI管制システムによる飛行ルート自動生成技術に基づき自律飛行させることに成功しました。

▶基礎からわかる医療AI ー医療現場の現在から未来までわかりやすく解説>>

測量

株式会社A.L.I. Technologiesは、ドローン測量によって3D都市モデリングデータを民間活用するための実証実験を実施しました。

3D都市モデルの構築対象約50都市のひとつである加賀市と協力し、3D都市モデルを使用した物流ドローンのフライトシミュレーションを行うとともに、効率的アップデートのために、物流ドローンが撮影する配送ルート上の航空写真を活用した3D都市モデルの更新可能性についても検証を行いました。

災害対応

日本をはじめとした多くの国や地域で、気象変動がもたらす洪水や土砂崩れなど、自然災害による人命や財産の被害拡大が社会問題となっています。

災害発生時には、迅速な状況把握や、避難経路の誘導など、被害を減らす対策が求められています。その対策に一役買っているのが、「AIを搭載したドローン」です。ここでは、被災状況の把握と災害対応活動の支援を見ていきます。

被災状況の把握

株式会社日立製作所(以下、日立)は、空撮映像から災害状況を高精度に解析できるAI技術を開発しました。ドローンとの組み合わせにより、災害発生時、人がすぐにはたどり着けない現場の状況を、迅速かつ容易に、詳しく把握することを実現しました。

空撮映像から災害状況を解析する場合、災害によっては学習データ数が少なく認識精度に影響が出るという課題があります。

また、広範囲を撮影した映像では、特定したいものが非常に小さく映っていたり、さまざまなものや災害状況が同時に映っていたりすることがあり、そのような場合には起きている状況を正しく認識することが困難でした。

今回、日立が開発した災害映像解析技術の長所は以下の4点です。

①映像内に複数のものが映っていても同時に精度良く認識できる

②広範囲を撮影した映像の中から、人が見つけにくい小さなものを見つけられる

③学習サンプル数が少なく、通常AIが学習しづらい災害状況でも精度良く認識できる

④見逃し・誤分類などの誤った情報を多く含む学習サンプルに対応したAI学習手法によって、人でも判断が難しい災害状況の誤認識や見逃しを減少できる

画像出典:日立製作所|災害状況をAIで把握する映像解析の基礎技術を開発

災害対応活動の支援

NTTデータは災害時エリアモニタリング自動化ドローンを展開しています。

防災ドローン自動航行システムにより、災害発生時に避難道路や構造物などの被災状況を迅速かつ網羅的に把握することで、行政機関やインフラ事業者などの災害対応業務の高度化を実現しました。

同時に多数のドローンを自律飛行させ短時間で必要十分な映像を収集し、一元的な管理のもとで関係先に配信します。AIによる映像解析、ドローンによる物資搬送も可能です。

農業

石川県農林総合研究センターと株式会社オプティム(以下、オプティム)の共同開発による「ドローン水稲直播栽培」の3カ年計画が、2018年〜2021年にかけて石川県で進められています。

ドローンに種子を搭載し、圃場に対して直接種子を打ち込めるようになりました。作物を植えつけた列、条も形成でき、収穫量アップも期待できます。

またオプティムのAIアルゴリズムを活用して、必要な箇所にだけ雑草や病害虫の防除も行います。農機の予算を抑えることもでき、トラクターやブルドーザーなどと比べて保管も簡単で気軽に持ち運びできるメリットもあります。

▶関連記事|【農業×AI】農家が抱える課題を解決する農業AIまとめ>>

▶関連記事|《AI事例25選》産業別にAIの活用事例をまとめました>>

「AIを搭載したドローン」が戦争・軍事の兵器に?

世の中には、AI搭載のドローンが兵器として用いられているフィクション映画が複数存在します。

そして読者の中には「ドローンの軍事利用は映画の中だけだろう」と思っている方もいるかもしれません。しかし近年では、AI搭載のドローンが実際に軍事兵器として利用された事例があります。

そこで、ここからは戦争で兵器として軍事利用されるAI搭載ドローンについて紹介していきます。

兵器「AIを搭載したドローン」は映画の題材になることもしばしば

「AIを搭載したドローン」が兵器として扱われるのはSF映画の中ではそう少なくありません。とくに、殺人ロボット反対運動で有名なAI監視機関〈Future of Life Institute〉が手がけた『Slaughterbots(スローターボッツ)』は大きな反響を呼びました。

この作品は「自律飛行できる小型のAI搭載ドローンが顔認識技術を使って事前に設定したターゲットを殺害できるようになった」という設定から始まる「近未来SF」です。

そして、この「殺人ドローン」がテロリストの手に渡ったことから起こる恐怖が描かれ、最終的にはアメリカの議会や大学で大量虐殺を繰り広げるというストーリーです。

「AIを搭載したドローン」が実際に戦場で使われた例

Future of Life Institute は、『Slaughterbots』が描く最悪の未来を避けるべく、自律型兵器の早期禁止を呼びかけており、運動に賛同する署名者は、2万人を超えました。

スティーヴン・ホーキング博士やイーロン・マスクなど、一流の科学者や大企業の代表も同団体に賛意を示しており、殺人ロボットの禁止を求める国連宛ての書簡に署名しました。

映画が公開された2017年時点では、劇中に登場するような高性能ドローンは開発されていませんでした。しかし、現在、既に「AIを搭載したドローン」は戦場で使用されています。

リビア|カルグ2

2020年3月の北アフリカ・リビアの内戦で「AIを搭載したドローン」『カルグ2』が、人間から制御されない状態で攻撃をした可能性があることが、国連の安全保障理事会の専門家パネルによる報告書で指摘されました。

仮に、AIを用いて、人の命令なしに、自動的に相手を攻撃する兵器が戦場で用いられたとしたら、世界初のケースになります。『カルグ2』は、AIにより光学、赤外線センサーなどでターゲットを特定・攻撃できる上、最大20機ほどの編隊を組んで波状攻撃を行なうこともできます。

ナゴルノカラバフ紛争|ハーピー

2021年7月、30年来にわたる係争地として知られるナゴルノ・カラバフ州を巡る紛争の勝利に導いたのは「AIを搭載したドローン」『ハーピー』でした。「AIを搭載したドローン」は、敵国、アルメニア側の兵士や戦車の存在を見つけ出し攻撃しました。

これまで洞穴の中などに隠れている兵士は上空から判別できませんでした。しかし、「AIを搭載したドローン」は兵士の持っている電子機器などの存在から兵士の存在を発見し、攻撃することができます。

人の命令なしに「AIを搭載したドローン」が攻撃を仕掛けたのは、上記リビアの可能性を除けば初です。

果たして、人工知能が人間を滅ぼす日はやってくるのでしょうか?

▶関連記事|人工知能は人類を滅ぼすか?AIの持つ危険性と対策について解説>>

米軍も軍事用「AIを搭載したドローン」を研究・開発中

軍事用「AIを搭載したドローン」は中東、アフリカ地域に限った話ではありません。

事実、アメリカ政府は自律型殺傷兵器の開発と使用には反対していません。むしろ軍事用「AIを搭載したドローン」の研究、開発を進めています。

2021年4月、アメリカ空軍はAI搭載した自律型ドローン「スカイボーグ」の飛行試験をフロリダのアメリカ空軍基地で実施しました。

2時間10分の自動飛行に成功したことを発表しました。現段階では殺傷能力を持っていませんが、技術的には、既に実装可能でしょう。

▶軍事で活用されるAIについてはこちらの記事でも詳しく解説しています>>

「AIを搭載したドローン」のこれから

今回の記事内では、警備業、医療、測量、災害対応、農業における「AIを搭載したドローン」の活用をみてきました。

現状では実証実験段階のものが多いですが、技術的には既にクリアしているものが多いです。2023年以降の現場での実用化に期待がかかります。

また、軍事においても、「AIを搭載したドローン」の使用は注目を浴びています。

この記事で紹介したアメリカだけでなく、ロシア、イスラエル、中国、インドなどでもAI技術の軍事用ドローンへの活用は積極的に進められています。

▶関連記事|AIは今後どういった進化を遂げるのか。そして私たちへの影響は?>>

まとめ

今回は、「AIを搭載したドローン」について詳しく紹介してきました。いかがだったでしょうか。

さまざまな分野の活用事例を通して、AI搭載ドローンに対する知識が深まったかと思います。とくに戦場で既に殺傷能力のある「AIを搭載したドローン」が使用されていることに驚いた方もいらっしゃるかと思います。

今後、「AIを搭載したドローン」を活用した事業がさらに増えていくことで、私たちの生活とAIがより密接になっていくでしょう。

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