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世界的にESGやSDGsが注目され、持続的な社会を構築するための世界的なムーブメントが起きています。その中で、AIの活用はビジネス視点だけにとどまらなくなっています。
かつてない技術的インパクトをもたらしたディープラーニングなどの機械学習技術は、これからの社会のあり方に密接に関わる技術といえるでしょう。機械学習技術をうまく活用し、社会の中で正しく活用を進めていくことで、多くの社会課題を解決することも可能です。
SDGsの達成のためにAIを活用しようと立ち上がった人物がいます。ティアゴ・ラマル氏です。
人間最強の棋士を倒した囲碁AI「AlphaGo」を生み出したことでも有名なGoogle DeepMind(英)にてリサーチエンジニアとして強化学習や予測モデル、自己管理型学習など最先端のプロジェクトで活躍した人物です。DeepMindを退職後は、OCRや自然言語処理技術を活用したプロジェクトを運営する日本のAIベンチャーに入社。
そして、最先端テクノロジーとビジネスアイデアでSDGs達成を目指し、2020年8月に株式会社Recursiveを創業しました。
この記事では、SDGsの達成を目指して設立されたRecursiveについて詳しくお伝えしていきます。
SDGsを達成するための会社組織「株式会社Recursive」
近年SDGsへの注目が急速に高まっています。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年の国連サミットで採択され、国連に加盟する193ヵ国が2030年までに達成する17の大目標と169の具体的なターゲットが掲げられました。
現在の社会では大小さまざまな課題が潜んでいます。Recursiveは、AIの技術とビジネスアイデアを通してこのSDGsの達成を目指すために設立されました。
具体的には
1. 貧困をなくそう 3. すべての人に健康と福祉を 4. 質の高い教育をみんなに 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに 13. 気候変動に具体的な対策を 17. パートナーシップで目標を達成しよう |
の6つの目標に対して、AIとビジネスアイデアでアプローチしていくといいます。
ーー現在のAIやこれからのAIはどんな社会課題をどのように解決できると思いますか?
現在のAIシステムは、産業や農業のプロセスをより効率的にすることができます。その結果、コストを削減できれば、より多くの人々を貧困から救い出すことも可能です。
他にも、エネルギーの生産と配送を最適化すれば、地球温暖化の原因になっているCO2の量を削減することができます。
また、日本のような高齢化社会で負担の大きい医療制度を支援するために、AIがヘルスケアの分野で活用されることが見えてきました。
このようにAIで直接的に社会課題にアプローチすることもできますし、他の側面でも有用だと思っています。
例えば、AIは多くの定型的な仕事の必要性を減らし、より創造的な仕事に我々は時間を使えるようになるでしょう。そうして生まれた時間を使って、より困難な社会問題を解決することも可能なはずです。
ーーなぜ日本の市場で起業することを決意したのでしょうか。
2つの理由があります。
1つはAIの情報格差の問題です。日本には深い専門知識を持った大企業が多く存在しますが、AIのノウハウが不足しています。私たちはこれらの企業と協力して、その企業のビジネスをより持続可能なものにするための支援をしたいと考えています。
もう1つは、SDGsの観点です。正直、日本は環境問題に対して意識が高いとは言えない状況だと捉えています。
SDGsの開発は日本社会にとっても大きなメリットがあります。具体的には、医療教育、環境問題、エネルギー政策など、日本社会のあらゆる分野でSDGsの開発を促進したいという思いから、日本での起業を決めました。
ーー現在のAI自体が社会課題になっている面もあると思います。お考えを伺えますか?
AIは技術です。技術は中立です。しかし、モデルをつくる際のデータに差別が含まれるケースがあります。社会のデータをAIに学習させた結果なので、そもそもは人間に起因しています。今後は一人ひとりの差別の考え方を統合していかないと誰かが考える「差別」がAIに反映されてしまいます。
つまり、データをAIモデル自体ではなくデータに問題があります。この問題を解決するのは簡単ではありません。
差別を含まない完璧なデータセットを作成するのはとても難しい現状があります。まずデータが差別的にならないようにコントロールすることや、データを直接的に学習しないこと、また研究開発グループの多様性が重要になります。国籍や性別などあらゆる立場の人が関わっていくべきだと考えています。Recursiveとしても今後は開発チームの多様性を重視していきたいと考えています。
SDGs達成のために共同研究やカスタムAI開発を行う
先述の6つの目標を達成するために同社は、「共同研究開発」「カスタムAI」を軸にAI技術を洗練させ、SDGsの達成を目指します。
共同研究開発
Recursiveでは、ティアゴ氏のこれまでのリサーチャーとしての経験などを元に、特に共同研究開発に力が注がれます。AIの活用を想定するのは、再生可能エネルギーの最適化やエコ素材の発見、パーソナル創薬、室内農業、代替肉や微生物を活用した食べ物の開発などです。
再生可能エネルギーの最適化では、例えば電力使用量を予測することで、無駄な電力の供給を減らし、効率的にエネルギーの消費ができるようになります。エコ素材の発見では、無数にある素材の組み合わせにより、環境に優しい新しい組み合わせを発見することで、大きなビジネスになると予想されます。
パーソナル創薬では、個人に合わせた創薬を可能にすることで、副作用が少ない薬を処方できるようになるかもしれません。室内農業では、野菜の成長に適した水分量や気温、湿度をAIを活用して推定することで、効率的な栽培が可能になります。
代替肉などの食べ物の開発では、何千もの食品材料合成のシミュレーション、食品・成分データの集約・分析をAIが担うことで、今までよりも早く安価に食材の開発が可能になります。
ーー今後はどのようにAIが発展していくと思いますか?
研究分野では、入力データ自体から教師データを作り出すSelf-Supervised Learning(自己学習)が今後数年で発展すると思います。大きなデータセットがなくても学習可能で、人間がデータにラベル付けする時間が大幅に削減されます。人間は少量のデータから学習することができます。例えば、1つの車を見たあとに、世界のすべての車を見なくても、他の車を車として認識できます。ここ2年間で大きく発展していますが、これからも発展が続くと思います。
もう1つ注目しているのがCommon-Sense AIです。人間のように一般化ができるAIです。現在のAIは学習したデータの形式以外に対応できません。
一方、人間は見たものを抽象的に捉え、一般化して類推ができます。異なるものの間に関係を作ることができるんです。 これからの5年は、AIを活用して取り組むことができる問題が増え、AIを使ってより多くのことができるようになります。
私たちはそれをビジネス側から押し上げていきたいと考えています。
カスタムAI
新たな技術を生み出す共同研究開発に加えて重要になるのが、活用できる形でAIを構築することです。
Recursiveでは、事業開発メンバーとAI開発メンバーが0から新しいAI商品を開発します。特に同社の強みとなっているのは、プロジェクトを上流から下流までワンストップに手がける点です。
目的の明確化から要件定義、さらには導入までを一貫して手がけ、ソリューションを展開していきます。
Recursiveが目指すのは「完全自動化」です。特に日本社会では人手不足の問題が顕著になっています。人手を使ったマニュアル生産から抜け出せず、非効率の負のスパイラルに陥ってしまえば、経営状態が悪化します。
同社は、AIに固執することなく、まずは経験則を定義した上で、ルールベースのシステムを構築し業務の一部自動化を目指します。その上で、機械学習技術をはじめデータを活用していくことで、完全自動化を視野に入れ、柔軟に技術活用を進めていきます。
Recursiveは研究機関の設立も視野
Recursiveは、上記の技術の研究や開発だけでなく、これからの時代に合った教育カリキュラムなどのサービスを提供していく予定です。オンライン教育を通して、ディープラーニングなどのAI技術を中心とした教育を行うだけでなく、倫理的な思考など新たな時代に求められるスキルの構築をサポートしていく予定です。
また、同社は将来的には研究機関を設立することも視野に入れ、組織開発にあたっています。
ーー今後の展望を教えてください。
特定の技術にフォーカスするよりは、問題解決に技術を当てていくことに注力していきます。また、GAFAをはじめとした研究者たちとつながっているので、協力関係も築いていきたいと考えています。
また、研究機関をRecursiveに作りたいと考えています。自分たちで作り上げたAIを問題解決に落としていくことが大切だと思っており、これからの組織づくりで強化していくポイントです。
■AI専門メディア AINOW編集長 ■カメラマン ■Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ■AINOWのTwitterもぜひ! @ainow_AI ┃
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