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近年あらゆる業界・産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進され、連日ニュースでは「DX」について取り上げた記事が多く見受けられます。
新型コロナウイルスにより、リモートワークが推進されたことや官公庁がハンコの電子化したというニュースの影響もあり、「DX」が余分な資源を削減し、より効率的な業務を実現する変革であるという認識が浸透してきたように感じます。
しかし2019年に実施された「第1回 デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」によると、デジタル化が進捗している企業はわずか9.0%で、一年後の2020年に実施された第2回の調査では2019年を下回る8.7%でした。
現状日本では、言葉として「DX」を耳にしたことがある人が多くなっているものの、お世辞にも「DXが進んでいる」とは言えません。
今まで大きな変化なく機能していた会社の業務の進め方・システムを急に「デジタル化しなさい」「個々の企業でシフトしてください」と言われても困難なのは確かです。
ところが実はDXは経済産業省が公表している『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)』に準拠した形で推進されています。
このガイドラインを理解することは、DXに対する理解を深めることにも繋がり、より効率的・効果的にDXを進めることに繋がります。
そこで、この記事では「DXとは何か」「『DX推進ガイドライン』は、どのような内容なのか」について詳しく説明します。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?
まずDX(デジタルトランスフォーメーション)について簡単に説明します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)という概念を提唱したエリック・ストルターマン教授(スウェーデン・ウメオ大学)によると、DXは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義しています。
しかし、これはあくまでもDXの広義的な意味です。
今回この記事で取り上げる『DX推進ガイドライン』におけるDXは特にビジネスの中で用いられるDXを指し、やや狭義的な意味合いです。
『DX推進ガイドライン』内で、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されています。
▼DXについて詳しくはこちら
『DX推進ガイドライン』とは?
『DX推進ガイドライン』とは、経済産業省が2018年に提言した「DXレポート」に基いて日本におけるDXの実現やITシステムの構築を進めるうえで、経営者が抑えるべきポイントを書き記した文書を指します。
以下では、ガイドラインを作成するに至った背景・ガイドラインの概要・今後の展望について解説します。
作成した背景
経済産業省は2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、DXを実現する上で解決すべき現状の課題とその対応策についての検討を行いました。
その比較・検討した結果をまとめた報告書が『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』です。
報告書内でレポートを作成した経緯は、国としてDXを実現していく上でアプローチや必要なアクションについての認識の共有が図られるようガイドラインを取りまとめることが必要であると提言されたことにより、経済産業省が策定を検討してきたと記されています。
報告書の副題にもある「2025年の壁」とは、大半の日本企業がレガシーシステムと呼ばれる古くから使われてきたシステムやビジネスモデルを採用するが故に国際的なIT市場から取り残されてしまうという社会的な課題です。
この課題を解決するためにも、国としてDXを推進することは大きな意義があるとされています。
▼2025年の崖について詳しくはこちら
『DX推進ガイドライン』の構成・内容
『DX推進ガイドライン』は大きく分けて「(1)DX 推進のための経営のあり方、仕組み」と「(2)DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築」の2つの項目で構成されています。
以下で各項目について詳しく解説します。
① DX 推進のための経営のあり方、仕組み
・経営戦略・ビジョンの提示
具体的な経営戦略・ビジョンを策定し、より鮮明なビジネスモデルを構築できているのかは、DXを進めるうえで大きなポイントとなります。
経営者が、会社としてのDXを軸にした経営方針が定めていない状態で「とにかくAIを使ってDXを進めよう」としたところで、実際にどのような場面でAIが活かせるかが明確ではないため、効率的かつ効果的なDXは実現できません。
どの事業分野で・どのような手段で・どのような新たな価値を生み出すことを目指すのか、会社としての具体的な経営戦略・ビジョンを提示しましょう。
・経営トップのコミットメント
上記の経営戦略・ビジョンの提示の項目でも記したように、経営者が漠然と「DXを進めよう」と言っただけではDXは実現できません。
DX を推進するに当たって、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・ 風土そのものの変革が必要となるため、経営層が自らこれらの変革に強い当事者意識を持って取り組んでいるかが重要なポイントとなります。
・DX推進のための体制整備
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経営層が各事業部門に対して、データやデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを構築するうえで、社員の新しい挑戦を促し、挑戦を継続できる環境を整えることが重要です。
・投資家の意思決定のあり方
投資家の意思決定の指標も重要なポイントです。
コスト(金銭)面や企業からのリターンの部分のみで判断されていないか、投資家の意思決定の指標が何に向いているのかも考慮しましょう。
・DX により実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力
DXの目的は、IT技術を活用しビジネス環境の激しい変化に対応することで生産性や市場内での競争優位性を高めることです。
DXによるビジネスモデルの変革が、経営方針転換やグローバル展開等へのスピーディーな対応を可能とするものであるかは、DXの目的を考慮したうえでも非常に重要なポイントとなります。
② DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築
▼体制・仕組み
・全社的なIT システムの構築のための体制
新しいITシステムを構築するためには、組織内での体制を整える必要があります。
組織内での役割を分担し、部署ごとの相互連携がうまくできるような組織の構築を目指しましょう。
また組織の構築だけではなく、経営戦略を実現するために必要なデータの収集・活用が効率的に進められる全体設計を描ける体制づくり・人材の確保を進めましょう。
ガイドラインには、先行事例として「経営トップと事業部門、情報システム部門からなる少人数のチームを組織して、トップダウンでDXに取り組む。」という事例が取り上げられています。
・全社的な IT システムの構築に向けたガバナンス
部門ごと・事業部ごとに個別最適となるようなITシステムの導入や変革ではDXの主たる目標は達成できていません。
個別で最適な環境を構築してしまうとシステムの連携が複雑化し、会社としてのシステムの全体像があやふやになってしまいます。
このようなシステムのブラックボックス化を避けるためにも、ベンダー企業に丸投げすることは控えましょう。組織の中でも全社で最適な環境を目指すガバナンスの必要性があります。
・事業部門のオーナーシップと要件定義能力
前述のように全社としてDXに関する共通認識を持つことは重要ですが、もちろん事業部ごとのオーナーシップも重要です。
各事業部においても、ベンダーに丸投げすることは避け事業計画に基いたDXを進めましょう。
▼実行プロセス
・IT資産の分析・評価
新しいシステムを導入する前に、まずは利用中のシステムの現状を把握する必要があります。組織内のPC・サーバー・ソフトウェアなどのIT資産の現状を分析・評価しましょう。
・IT 資産の仕分けとプランニング
現状の分析・評価の完了後は、ビジネス環境の激しい変化に対応できるシステム環境のプランニングをしましょう。
組織にとって最適なビジネスモデルを実現するためにも、不要となったシステムやIT資産は廃棄し、余分なコストを書けないようにしましょう。
・刷新後の IT システム:変化への追従力
新システムへ刷新しただけでは、DXは完了しません。
ITシステムの刷新後も組織の仕組みやビジネスモデルの変革による新しい領域のITシステムの導入や利用しているシステムのアップデートが大いに予想されます。
このような変化に柔軟かつ迅速に対応できるようなシステム環境作りを心がけましょう。
▼DXの経営戦略に関する記事はこちら
DXの推進の際に抑えるべき3つのポイント
責任者の意識改革
DXの推進には現場社員の協力だけでは無く、経営者や現場責任者の協力も必要不可欠です。
DX担当の社員に推進を丸投げするのではなく、まずは経営者・責任者が「DXをすることでどのような価値を生み出し、どのような変革・効果が見込めるか」を理解したうえで社内全体を巻き込んでDXを進めましょう。
レガシーシステムの把握と一貫したシステム構築
一貫したシステムの構築も非常に重要なポイントです。
多くの日本企業のレガシーシステム(現行のシステム)は老朽化やブラックボックス化が顕著に見られます。
このままではDXを進めようとしたところで、よりシステムが複雑化しシステム同士の連携が困難になってしまいます。
そういった事態を未然に防ぐためにも、レガシーシステムの状態・課題を把握したうえで、課題解決が可能か、またレガシーシステムと同時に利用する際はシステム連携が取れるのか確認しましょう。
スムーズな情報共有
システムの連携面だけでなく、人的な連携も取れる環境を構築しましょう。システムを実際に利用する現場と経営陣の情報連携は非常に重要なポイントです。
既存のシステムの利用中には浮かんでこなかった課題や疑問点が浮かび上がる可能性があります。そういったトラブルが起きても素早く対応できるよう社内全体の情報共有の仕組みを整えましょう。
まとめ
今回は『DX推進ガイドライン』について解説してきました。
今回の記事を参考にしながら、改めて『DX推進ガイドライン』を読み、DXに関する理解・考えを深めていききましょう。
AINOWでは、この記事のほかにも多くの「DX」に関する記事があります。是非、たくさんの記事を読み、DXに関する知見を拡大に繋げましょう。
▼DXとは?DXの基礎から知りたい方はこちら
▼DXの市場規模に関する記事はこちら
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。