モンティ・パイソンの名を冠した趣味のプロジェクトとしてスタートしたPythonは、現在世界で最も人気があり、広く使われているプログラミング言語の一つです。Webやソフトウェア開発以外にも、Pythonはデータ解析や機械学習、さらにはデザインにも利用されています。
今回は、Pythonの用途とPythonがこれほど人気で汎用性の高いプログラミング言語である理由について詳しく解説していきます。また、機械学習のモデルを構築するステップや、Pythonライブラリ、Pythonを学ぶのに最適な勉強方法もいくつかピックアップしています。
目次
そもそも機械学習とは
機械学習とは、「機械に大量のデータからパターンやルールを発見させ、それをさまざまな物事に利用することで判別や予測をする技術」のことを言います。機械学習は教師あり学習、教師なし学習、強化学習と大きく3つに分けられます。
次の記事では機械学習をまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
教師あり学習
教師あり学習は、教師あり機械学習とも呼ばれ、機械学習およびAI(人工知能)の下位分類です。ラベル付けされたデータセットを用いてアルゴリズムを学習し、データの分類や結果の予測を正確に行うことで定義されます。
教師あり学習は、スパムメールを受信トレイとは別のフォルダに分類するなど、実世界のさまざまな問題を解決するのに役立っています。
教師なし学習
教師なし学習は、教師なし機械学習とも呼ばれ、機械学習アルゴリズムを使用して、ラベルのないデータセットを分析し、クラスタリングします。これらのアルゴリズムは、人間の介入を必要とせずに、隠れたパターンやデータのグループ化を発見します。
情報の類似性や相違性を発見できるため、探索的なデータ分析、クロスセリング戦略、顧客セグメンテーション、画像認識などに最適なソリューションです。
強化学習
強化学習は、機械学習の一分野です。特定の状況下で取るべき最適な行動や経路を見つけるために、さまざまなソフトウェアや機械で採用されています。
教師あり学習では、学習データに答えがあるため正しい答えでモデルが学習される一方、強化学習では、答えはないですが機械が与えられたタスクを実行するために何をすべきかを決定する、といった違いがあります。
▼強化学習について詳しく知りたい方はこちら
Pythonでできる8のこと
Pythonは、データを中心としたオブジェクト指向であり、理解しやすいプログラミング言語です1992年に発表され、比較的直感的に記述・理解できるように作られているため、迅速な開発を望む人に最適なコーディング言語です。
ここでは、Pythonにできることを詳しく知るために8つの活用事例を紹介します。今回紹介する活用事例は以下の通りです。
それぞれ解説していきます。
1. AI・機械学習
Pythonは安定性と柔軟性に優れたシンプルなプログラミング言語なので、さまざまな機械学習や人工知能のプロジェクトに最適です。
実際、Pythonはデータサイエンティストの間で人気のある言語の一つで、Pythonの機械学習やAIのライブラリやパッケージが数多く提供されています。
2. データ分析
AIや機械学習と同様に、データ分析もPythonプログラミングを活用した急速に発展している分野の一つです。かつてないほど多くのデータが生み出されている現在、情報を収集・操作・整理できる人材が必要とされています。
Pythonは習得が容易で、柔軟性があり、サポートが充実しているため、データの分析に比較的早く、簡単に使用することが可能です。そのため、大量の情報を扱ったり、データの操作や反復作業を行ったりするデータサイエンスや分析にPythonを使うのは理にかなっています。
3. データの可視化
データの可視化もまた、人気が高く発展途上の分野です。ここでも、Pythonの強みが活かされています。Pythonの柔軟性やオープンソースであることに加え、Pythonはあらゆる種類の機能を持つさまざまなグラフ作成ライブラリを提供しています。
単純なグラフを作成したい場合や、対話式のプロット図を作成したい場合でも、ニーズにマッチしたライブラリが見つかるでしょう。
4. ウェブ開発
PythonはWeb開発に最適な選択肢です。その理由は、Django、Pyramid、Flaskなど、PythonのWeb開発フレームワークが豊富にあるからです。これらのフレームワークは、SpotifyやYouTubeといったサイトやサービスの作成に使用されています。
Pythonフレームワークに付属する豊富なライブラリとモジュールのおかげで、データベースアクセス、コンテンツ管理、データ認証などの機能がすべて可能であり、簡単にアクセスできます。Pythonの汎用性を考えると、PythonがWeb開発で広く使われていることは驚くことではありません。
5. ゲーム開発
業界標準とは言い難いですが、Pythonはゲーム業界においても利用されています。しかし、Pythonでコンピュータゲームを自作することは、Pythonを学ぶのに最適な方法です。
ゲームを作るには、多くのプログラミングの核となるスキルを使う必要があります。すなわち、ゲーム開発では、変数、ループ、条件文、関数、オブジェクト指向プログラミング、その他多くのプログラミング技術やアルゴリズムを使用します。
そうすることで、さまざまなスキルを鍛え、さまざまな分野の知識を向上させることができます。
6. 金融
Pythonは金融の世界でますます活用されるようになっており、資産価格の動向や予測を判断したり、異なるデータソースにまたがるワークフローを自動化したりする際に、貴重なツールとなり得ます。
先述の通り、Pythonはビッグデータセットを扱うのに理想的なツールであるため、金融業界で好まれる言語の1つとなっています。
7. SEO対策
Pythonの用途で少し意外なのは、検索エンジン最適化(SEO)の分野です。SEOとはユーザーが検索した際に自社サイトを上位にあげる手法のことです。
HTMLやCSSなどのマークアップ言語やJavaScriptなどのプログラミング言語は、いずれもWebサイトを構築してエンドユーザーに表示する際に影響を与えますが、Pythonは技術的なSEO対策に直接使用することができます。例えば、複数ページに渡る変更の実装やキーワードの分類など、Pythonが活用されます。
8. デザイン
Pythonはグラフィックデザインのアプリケーションを開発するために使用することができます。あまり広く知られていませんが、Pythonは「Paint Shop Pro」や「Gimp」など、さまざまな2D画像処理ソフトウェアで使用されています。
他にも、Lightwave、Blender、Cinema 4Dなどの3DアニメーションソフトウェアでもPythonが使用されていることからも、この言語がいかに万能であるかがわかります。
Pythonがおすすめの理由
ここでは、Pythonがおすすめのプログラミング言語である理由を3つ紹介します。
それぞれ解説していきます。
初心者でも学びやすいから
Python言語は、構文が単純化されており、自然言語に重きを置いているため、初心者にとって使いやすく学びやすい言語です。
そのため、pythonのコードは比較的簡単に書くことができ、他のプログラミング言語に比べて速く実行できます。
信頼性が高いから
Pythonは約30年前に作られた言語であるため、言語学習のためのドキュメント、ガイド、ビデオチュートリアルといった教材が豊富にあります。それらの教材は、学習者や開発者のスキルレベルや年齢に関係なく使用でき、Pythonプログラミング言語の知識を高めるために役立ちます。
どのプログラミング言語であっても、開発者のサポートや指導が不足している場合、スムーズにスキルを成長させるのは困難です。
しかし、Pythonは非常に長い間、多くの人に使われているため、そのような問題がありません。
豊富なライブラリとフレームワークがあるから
Pythonの企業スポンサーと大きなサポートコミュニティにより、pythonには優れたライブラリがあり、そのライブラリを使うことで開発の初期サイクルの時間と労力を節約できます。
また、ライブラリのようなツールでクロスプラットフォームに対応するクラウドメディアサービスもたくさんあり、非常に有益です。
Pythonのデメリット
実行速度が遅い
Pythonは一行ずつコードを実行するため、実行速度が遅くなることがよくあります。そのため、Pythonは速度が重要視されるような用途には使用されません。
モバイルコンピューティングに弱い
Pythonは一般的にサーバーサイドのプログラミングで使用されます。メモリ効率が悪く、他の言語と比較して処理能力が遅いからです。そのため、クライアントサイドやモバイルアプリケーションでPythonを目にする機会は多くありません。
ランタイムエラーにつながる可能性が高い
Pythonは動的型付け言語であるため、変数のデータ型をいつでも変更できます。整数値を格納する変数は、将来文字列を格納する可能性があり、ランタイムエラーにつながる可能性があります。
したがって、Pythonを使う際には、アプリケーションの徹底的なテストを行わなければなりません。
機械学習モデルを構築する5ステップ
ここでは、Pythonで機械学習モデルを構築するステップを5段階に分けて紹介します。
それぞれ解説していきます。
ステップ1. 問題を理解し、成功を定義する
機械学習プロジェクトの最初のステップは、問題を理解することです。解決しようとする前に、どのような問題を解決しようとしているのかを知る必要があります。
例えば、以下のような問いを投げかけることで、問題を理解し、成功を定義することにつながります。
- 機械学習プロジェクトの「成功」基準は何であるか?
- モデルへの期待される入力と期待される出力は何か?
- 問題を解決するための手っ取り早い方法とは?
- モデルの利点はどのように測定されるのか?
ステップ2. データの把握と特定
問題を理解し、成功を定義しても、機械学習モデル作成に必要なデータが揃うわけではありません。データがないとモデルを構築することができませんし、データにアクセスできるだけでは十分ではありません。
モデルを構築するには、データの識別、初期収集、質の識別に焦点を当てる必要があります。
例えば、以下のような問いを投げかけることで、データの把握と特定につながります。
- モデルのトレーニングに必要なデータのソースはどこか?
- 機械学習プロジェクトに必要なデータの量はどれくらいか?
- 教師あり学習の場合、そのデータにラベルを付ける方法はあるか?
- 事前に学習させたモデルを使用することは可能か?
ステップ3. データの収集と準備
データを適切に特定したら、そのデータをモデルの学習に使用できるように整形する必要があります。
このステップでは、モデリング作業に使用するデータセットを構築するために必要なデータの収集やデータのラベリングに関する作業をします。
ステップ4. モデルの特徴を決定し、学習させる
データが使える状態になり、解決しようとする問題がわかったら、いよいよモデル特徴の決定・学習のステップに移ります。
モデルを学習させる際は、さまざまな技術やアルゴリズムを適用して、用意した良質なデータから学習できるようにモデルを訓練しましょう。
ステップ5. モデルを繰り返し、調整する
モデルが運用され、そのパフォーマンスを継続的にモニターしていても、まだ終わりではありません。
次に行うことは、常にプロセスを繰り返し、次の反復に間に合うように改善する必要があります。
現実のデータは予期せぬ形で変化するからです。データの変化がモデルを別のエンドポイントや新しいシステムに展開するための新しい要件を生み出すかもしれません。
Pythonライブラリの紹介
Pythonライブラリは、ゼロからコードを書く必要をなくす便利な機能の集合体です。Pythonライブラリは、機械学習、データサイエンス、データ可視化、画像およびデータ操作アプリケーションなどの開発において重要な役割を担っています。
1からコードを書くよりも、ライブラリを使い開発をした方が、効率よく開発を進められます。
以下の記事ではPythonライブラリをまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
▶Pythonライブラリについて詳しくはこちら>>
データの特徴別ライブラリの紹介
ここからは
のデータ特徴別にライブラリを紹介していきます。
自然言語処理
これまで、数学・機械学習・言語学などの優れた知識を必要とする自然言語処理プロジェクトに参加できるのは専門家だけでした。現在では、開発者が機械学習モデルの構築に専念できるよう、テキストの前処理を簡素化する既製のツールを使用できます。
次のように、NLPの問題を解決するために作られたツールやライブラリはたくさんあります。
- Natural Language Toolkit (NLTK)
- TextBlob
- CoreNLP
- Gensim
- spaCy
- polyglot
- scikit–learn
- Pattern
画像認識
機械学習モデルに入力する際は、事前に画像を処理しなければなりません。その際、結果を損なうことなく効率的かつ迅速に画像を処理するには、ツールやライブラリが必要です。
画像認識の問題を解決するために作られたツールやライブラリはたくさんあります。
- OpenCV
- Scikit-Image
- SciPy
- Pillow/PIL
- NumPy
- Mahotas
- SimpleITK
- Pgmagick
音声認識
音声認識によって、高齢者や身体・視覚障害者が最先端の製品やサービスとすばやく自然に対応することができます。
音声認識の問題を解決するために作られたツールやライブラリは主に以下のようなものが挙げられます。
- speech recognition
- pyaudio
- Julius
Pythonを学ぶには?
そもそもプログラミングは必要?
プログラミングが必要でない場合もあります。
例えば、作りたいモデルにコーディングが必要ない場合です。
とはいえ、先に述べた通りPythonはできることが多く、プログラミングを掛け合わせることで、さまざまなプロダクト・サービス開発ができるようになります。
プログラミングスキルの習得は簡単ではありませんが、きちんと学習すれば、ほとんどの人が習得できるスキルです。
このように、プログラミングは学習するメリットがあるほか、スキル会得も可能であるため、Pythonを学びたい場合は、なるべくプログラミングも合わせて学習すると良いでしょう。
プログラミングなしで機械学習を利用できるサービスの紹介
機械学習やAI技術は、ここ数十年でその機能と用途を爆発的に拡大しました。しかし、つい最近まで、ティーチングマシンを本当に使いこなすには、データサイエンティストやコンピュータエンジニアでなければなりませんでした。
市場には、コーディングスキルを必要としない機械学習ツールやプラットフォームがあふれ始めています。これらのプラットフォームは、機械学習を誰でも利用できるようにするもので、特定のニーズに合わせて高度なモデルを訓練できるものもあります。
例えば、Google AutoMLは、人工ニューラルネットワークの力を利用して、通常のテキストや画像データから効果的な予測モデルを構築することができ、Google SheetsやGoogle Slidesなどと統合されているため、簡単に使用できます。
書籍で学ぶ
Pythonを初めて使う人は、次の2つのどちらかの状況にあると思われます。
- プログラミングが初めてで、Pythonの学習から始めたい方
- 他の言語でそれなりにプログラミングの経験があり、これからPythonを学びたい方
以下の記事ではこれら2つのシナリオのうち最初のシナリオに焦点を当て、プログラミングとPythonの両方が初めての読者に最適な書籍をまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
▶Pythonプログラミングを学習したい人にオススメの本について詳しくはこちら>>
スクールで学ぶ
新しいキャリアを目指す場合、コーディングを学べば、在宅勤務を含む新しいデジタル職のためのスキルを身につけることができます。
ゼロからPythonプログラマーを目指すなら、まずはPythonの基本的な概念を学ぶコースから始めたいところです。コーディングのスキルが身についたら、より専門的で高度な内容を学ぶコースに進みましょう。
以下の記事ではPython学習におすすめのスクールをまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
▶オンライン講座について詳しくはこちら>>
▶AIを学べるおすすめのスクールについて詳しくはこちら>>
サイトで学ぶ
Pythonを無料で学ぶのに活用できるサイトはあります。なかでも、Googleは初心者向けの優れたPythonチュートリアルのセットを提供しています。
このコースには、文章によるチュートリアル、講義ビデオ、そしてPythonのコーディングを練習するためのたくさんのコード演習が含まれています。最初の演習では、文字列やリストなどのPythonの基本概念を学び、次の演習では、テキストファイル、プロセス、HTTP接続を扱う完全なプログラムを作成します。
前に述べたように、Google自身も、多くのプロジェクトでPythonを使用しています。そして、これらの教材は、一般的に、コーディングを始めたばかりの人やプログラミングの経験が少ない人にPythonを教えるために、Google社内で使用されています。
この教材の一番の特徴は、講義の動画がYoutubeで公開されていることです。したがって、他のアカウントは必要ありません。
以下が公式サイトです。ぜひPython学習に興味を持ったら、早速始めてみましょう。
まとめ
今回は『Pythonで機械学習モデルを構築する』というテーマで、「機械学習とは何か」から「Pythonの学習方法」まで具体的に解説してきました。
現在、Pythonプログラマーや開発者の需要は上昇しています。Pythonは、ゲームからWebアプリケーションまで、さまざまなプログラミングの場面で使用されています。Pythonの未来は、2022年、そしてこれから何年にもわたって非常に明るいと言えるでしょう。
興味を持った方は、ぜひ今回の記事を参考にして、学習を初めてはいかがでしょうか。