
経営企画は市場調査や資料作成に時間を奪われ、本来注力すべき戦略の構想に手が回らないことが少なくありません。
「生成AIが経営企画にも使えるらしいが、自部門のどの業務にどう適用すればよいかわからない」と感じている方は多いはずです。使いどころとプロンプトを押さえれば、調査や資料づくりの作業時間を圧縮し、戦略立案に時間を回せます。
使い方を知らないままでは、マーケや開発が成果を出すなかで経営企画だけが手作業に留まり、AIを使いこなせない部署と見られてしまうでしょう。
本記事では、経営企画で生成AIを活用できる業務とメリットを軸に、企業事例・そのまま使えるプロンプト例・導入手順・リスク対策まで解説します。
読み終える頃には、自部門のどの業務にどう生成AIを使うかを判断でき、作業を圧縮して付加価値の高い業務へ集中できるようになります。
目次
生成AIは経営企画の業務をどう変えるのか
生成AIは経営企画を、「作業の自動化」と「思考の高度化」の両面から変えます。
経営企画の仕事は、調査や資料作成といった手を動かす作業と、戦略を構想する思考の両方で成り立っています。生成AIは前者の作業時間を圧縮し、空いた時間を後者の思考に振り向けられるからです。
たとえば市場レポートの要約や競合情報の整理は、これまで担当者が数時間かけていた作業です。生成AIに任せれば下書きが数分で揃い、担当者は内容の吟味と解釈に集中できます。
作業と思考の役割分担を意識すれば、生成AIを単なる効率化ツールではなく、戦略の質を底上げするパートナーとして使いこなせるようになります。
経営企画で生成AIを活用できる5つの業務
経営企画で生成AIを活用できる業務は、主に次の5つです。
- 市場調査と競合分析
- 経営戦略とシナリオの立案
- 企画書とプレゼン資料の作成
- 会議運営と議事録の作成
- KPIモニタリングとプロジェクト管理
どの業務から着手するかで効果の出方が変わるため、5つの中身を順に確認しましょう。
市場調査と競合分析
生成AIは、市場調査と競合分析の情報収集と要約を大幅に短縮します。
市場規模の推移や競合の動向は、複数の調査レポートやニュースに散らばっています。生成AIに収集と要点抽出を任せれば、担当者は全体像をつかむまでの時間を短くできるからです。
具体的には、競合のプレスリリースや決算情報を読み込ませ、強み弱みを表形式で整理させる使い方があります。SWOT分析やファイブフォース分析のたたき台づくりにも活用できます。
調査の初動を生成AIに任せれば、担当者は集めた情報の解釈と打ち手の検討という、人にしかできない工程に時間を割けます。
経営戦略とシナリオの立案
生成AIは、戦略立案の壁打ち相手として複数のシナリオを提示します。
戦略を一人で考えると視点が偏りがちですが、生成AIは前提条件を変えながら複数の選択肢を一度に出せます。担当者は提示された案を比較し、抜けていた観点に気づけるからです。
たとえば「楽観・標準・悲観」の3シナリオで売上見通しと打ち手を出させ、それぞれのリスクを洗い出す使い方があります。中期経営計画のたたき台づくりにも向いています。
複数シナリオを起点に議論できれば、一つの案に固執せず、根拠を持って経営層に選択肢を示せるようになります。
企画書とプレゼン資料の作成
生成AIは、企画書やプレゼン資料の構成案と文面づくりを支援します。
資料作成は経営企画の作業時間の多くを占めますが、骨子づくりとたたき台の文章は生成AIが代行できます。ゼロから書く負担が減り、推敲に時間をかけられるからです。
具体的には、提案内容と聞き手を伝えてスライドの構成案を出させ、各ページの要素を箇条書きで整えさせます。役員向けに結論を先に置くストーリー構成も指示できます。
構成と下書きが手早く揃えば、担当者はメッセージの磨き込みと数字の裏取りに集中でき、資料の説得力を高められます。
会議運営と議事録の作成
生成AIは、会議の議事録作成と論点整理を自動化します。
経営企画は役員会や全社会議の運営を担うことが多く、議事録づくりに手間がかかります。音声を文字起こしし、生成AIに要約させれば、決定事項とToDoを短時間で整理できるからです。
たとえば議題と論点を事前に整理させたり、議事録から次回までの宿題を一覧化させたりする使い方があります。会議のアジェンダ案づくりにも活用できます。
会議の準備と記録を効率化すれば、担当者は議論の中身そのものに集中でき、意思決定の質を高められます。
KPIモニタリングとプロジェクト管理
生成AIは、KPIの集計コメントやプロジェクトの進捗整理を効率化します。
経営企画は全社のKPIや施策の進捗を取りまとめますが、数字を集めて報告文に落とす作業は定型的です。データの傾向説明や差異の要因整理は、生成AIに下書きを任せられるからです。
具体的には、月次の実績データを読み込ませて前月比のコメントを生成させたり、複数部署の進捗報告を一覧に整理させたりできます。会議用のサマリー作成にも向いています。
集計と報告の手間が減れば、担当者は数字の背景にある課題の発見と打ち手の検討に時間を使えるようになります。
経営企画が生成AIを活用する4つのメリット
経営企画が生成AIを活用するメリットは、次の4つです。
- 戦略立案の質が高まる
- 調査と資料作成の工数が減る
- 意思決定のスピードが上がる
- 新規事業のアイデアが広がる
それぞれのメリットが自部門にどう効くのかを確認しましょう。
戦略立案の質が高まる
生成AIを使うと、検討の抜け漏れが減り戦略立案の質が高まります。
人の思考は経験や立場に左右されますが、生成AIは多様な観点から論点を出します。自分が見落としていた前提やリスクに気づけるため、検討の幅が広がるからです。
たとえば立案した戦略をAIに批判的にレビューさせ、反対意見と想定される質問を洗い出させる使い方があります。役員会での突っ込みに事前に備えられます。
多角的な検討を経た戦略は、経営層への説明でも筋が通り、承認を得やすい提案に仕上がります。
調査と資料作成の工数が減る
生成AIは、調査と資料作成にかかる工数を大きく減らします。
情報収集や下書き作成は時間がかかる一方、付加価値の差が出にくい作業です。この部分を生成AIに任せれば、少人数の経営企画でも対応できる業務量が増えるからです。
パナソニックグループは、社内向けAIアシスタント「PX-GPT」を国内約9万人に展開し、資料作成や情報検索などの業務に活用しています。導入から3カ月で利用回数は26万回に達しました。参考:PX-GPTをパナソニックグループ全社員へ拡大(パナソニック)
定型作業の時間を圧縮できれば、担当者は分析や構想といった本来の経営企画業務に時間を再配分できます。
意思決定のスピードが上がる
生成AIは、判断材料の準備を早め意思決定のスピードを上げます。
意思決定が遅れる原因の多くは、判断に必要な情報が揃わないことにあります。生成AIが調査や論点整理を短時間で済ませれば、経営層が判断に入るまでの時間を縮められるからです。
たとえば複数案のメリットとデメリットを比較表にまとめさせ、判断のたたき台を即座に用意する使い方があります。論点が明確になり、会議の場で結論を出しやすくなります。
判断のサイクルが速まれば、市場の変化に後れを取らず、機を逃さない経営判断を支えられます。
新規事業のアイデアが広がる
生成AIは、新規事業の発想を広げ検討候補を増やします。
新規事業の検討では、最初に多くの候補を出すことが質の高い選定につながります。生成AIは自社の強みや制約を踏まえた案を一度に複数提示できるため、発想の起点を増やせるからです。
旭化成は、生成AIを材料の新規用途探索に活用し、膨大な文献から6,000以上の用途候補を考案しました。ある材料では候補の選別時間を従来の約40%に短縮しています。参考:生成AIを新規用途探索の自動化などで活用開始(旭化成)
多くの候補を短時間で出せれば、担当者は有望な案の絞り込みと事業性の検証に注力でき、新規事業の検討を前に進められます。
経営企画における生成AIの活用事例
経営企画に近い領域で生成AIを活用している事例として、次の2社を紹介します。
- パナソニックグループ
- 旭化成
自社で導入する際のイメージをつかむため、2社の取り組みを見ていきましょう。
パナソニックグループの全社AIアシスタント
パナソニックグループは、社内特化のAIアシスタント「PX-GPT」を全社規模で展開しています。
機密情報を守りながら全社員が安心して使える環境を整えたことが、定着のポイントです。2023年4月から国内グループ社員約9万人を対象に本格利用を開始しました。
資料作成や情報検索などの汎用業務で使われ、導入から3カ月の利用回数は26万回、1日あたり約5,800回と想定の5倍を超える活用が報告されています。参考:PX-GPTをパナソニックグループ全社員へ拡大(パナソニック)
経営企画にとっては、まず情報検索や資料作成という共通業務から広げ、全社で使う土台をつくる進め方の参考になります。
旭化成の新規用途探索への活用
旭化成は、生成AIを新規用途の探索や技術伝承に活用しています。
同社は当初、書類作成や社内資料検索といった汎用用途で生成AIを使い、その後に特定の業務用途へ展開しました。蓄積したデータやノウハウを生かす狙いがあります。
新規用途探索では膨大な文献から6,000以上の用途候補を考案し、ある材料では候補の選別時間を従来の約40%に短縮しました。参考:生成AIを新規用途探索の自動化などで活用開始(旭化成)
新規事業の種を探す経営企画にとって、候補を幅広く出し選別を効率化する使い方は応用しやすい取り組みです。
経営企画で使える生成AIのプロンプト例
経営企画ですぐ試せるプロンプト例を、次の3つの業務別に紹介します。
- 市場調査を依頼するプロンプト
- 企画アイデアを発散させるプロンプト
- 資料の構成案を作るプロンプト
条件を具体的に指定するほど精度が上がるため、自社の情報に置き換えて使ってみてください。
市場調査を依頼するプロンプト
市場調査では、対象市場と知りたい項目を絞って指示すると精度が上がります。
「市場を調べて」と漠然と頼むと一般論しか返りません。対象と観点を限定すれば、必要な情報だけを整理した出力を得やすくなるからです。
あなたは経営企画の市場調査担当です。 以下の条件で国内市場の概況を整理してください。 # 対象市場:[業界・製品カテゴリ] # 知りたいこと:市場規模の推移、主要プレイヤー、成長要因、リスク要因 # 出力形式:項目ごとに箇条書き 数値は推測せず、確認が必要な箇所は「要一次情報」と注記してください。
出力をそのまま使わず一次情報で裏取りすれば、調査の初動を早めつつ精度も担保できます。
企画アイデアを発散させるプロンプト
アイデア出しでは、自社の強みと制約条件を渡すと実現性の高い案が得られます。
制約のないアイデアは数は出ても自社に合いません。前提を伝えれば、検討に値する案に絞った発散ができるからです。
新規事業のアイデアを10案出してください。 # 自社の強み:[技術・販路・顧客基盤など] # 制約条件:初期投資は[金額]以内、3年以内に黒字化 # 出力形式:案ごとに「概要・想定顧客・収益モデル・主なリスク」を記載 斬新さよりも、自社の強みを活かせる実現性を優先してください。
多くの案を一度に出せれば、有望な方向性を見極める議論の出発点をすぐに用意できます。
資料の構成案を作るプロンプト
資料づくりでは、聞き手と枚数を指定すると使える構成案が返ります。
聞き手によって響く順番や情報量は変わります。前提を伝えれば、相手に合わせたストーリー構成を提案させられるからです。
役員会向けの提案資料の構成案を作成してください。 # テーマ:[提案内容] # 聞き手:経営層(数字と結論を重視) # 枚数:10枚程度 # 出力形式:スライド番号、見出し、各スライドに載せる要素 結論を先に示すストーリー構成にしてください。
骨子が手早く固まれば、担当者は中身の磨き込みと数字の裏取りに時間を集中できます。
経営企画に生成AIを導入する4ステップ
経営企画に生成AIを導入する手順は、次の4ステップです。
- 活用する業務と目的を決める
- 利用環境とセキュリティを整える
- 小規模なPoCで効果を検証する
- 全社へ展開し改善を続ける
失敗を避けるため、各ステップのポイントを順に確認しましょう。
ステップ1:活用する業務と目的を決める
最初に、どの業務をどんな目的で効率化するかを決めます。
対象を絞らずに導入すると効果が見えにくく、社内の理解も得られません。成果を測れる業務から始めれば、投資判断の根拠を示せるからです。
たとえば「議事録作成の時間を半分にする」のように、対象業務と目標を具体的に定めます。作業時間が多く定型的な業務が、最初の対象に向いています。
目的を明確にすれば、後の効果検証や全社展開の判断がぶれず、導入を着実に前へ進められます。
ステップ2:利用環境とセキュリティを整える
次に、機密情報を守れる利用環境とルールを整えます。
経営企画は非公開の経営情報を扱うため、環境整備を後回しにすると情報漏洩のリスクが残ります。入力データの扱いを定めてから使い始めることが前提だからです。
具体的には、入力内容を学習に使わせないオプトアウト設定にしたうえで、入力してよい情報の範囲を社内ルールとして決めます。法人向けプランの利用も有効です。
安全な環境を先に用意すれば、担当者が萎縮せずに使え、活用の幅を安心して広げられます。
ステップ3:小規模なPoCで効果を検証する
続いて、少人数のPoCで効果と課題を見極めます。
いきなり全社展開すると、合わなかったときの手戻りが大きくなります。小さく試して効果を測れば、展開の可否を根拠を持って判断できるからです。
たとえば経営企画の数名で1カ月試し、作業時間の変化や出力の使いやすさを記録します。PoCで取得した実測値は、経営層への報告材料にもなります。
小規模な検証で勝ち筋を確かめれば、無駄な投資を避けつつ、自信を持って次の展開に進めます。
ステップ4:全社へ展開し改善を続ける
最後に、効果が確認できた使い方を全社へ広げ改善を続けます。
導入は一度きりで終わらず、使われ続けて初めて効果が出ます。成功した使い方を共有し、運用を見直し続けることで定着するからです。
具体的には、有効だったプロンプトを社内で共有したり、研修で使い方を広めたりします。利用状況を見ながらルールやツールを更新していきます。
展開と改善を回し続ければ、生成AIが日常業務に根づき、組織全体の生産性向上につながります。
経営企画で生成AIを使う際のリスクと注意点
経営企画で生成AIを使う際に注意すべきリスクは、次の3つです。
- 機密情報が漏洩する
- 誤った情報が生成される
- AIへの依存でスキルが低下する
知らずに使うと事故につながるため、3つの注意点を必ず押さえましょう。
機密情報が漏洩する
入力したデータの扱いを誤ると、機密情報が外部に漏洩するおそれがあります。
経営企画は経営計画やM&Aなど非公開情報を扱います。入力内容が学習に使われる設定のままだと、情報が外部に残るリスクがあるからです。
対策として、学習に使わせないオプトアウト設定や法人向けプランを利用し、入力してよい情報の範囲を社内ルールで定めます。個人名や取引先名は伏せて使うことも有効です。
入力ルールを徹底すれば、漏洩リスクを抑えながら、機密性の高い業務でも安心して活用できます。
誤った情報が生成される
生成AIは、事実と異なる情報をもっともらしく出力することがあります。
誤った情報を出す現象はハルシネーションと呼ばれます。生成AIは確率的に文章を作るため、数値や固有名詞が事実と食い違う場合があるからです。
対策として、出力をそのまま使わず、数値や出典は一次情報で必ず裏取りします。経営判断に使う資料ほど、ファクトチェックを欠かせません。
生成AIを下書き役と位置づけ最終確認を人が担えば、誤情報を防ぎつつ効率化の恩恵を受けられます。
AIへの依存でスキルが低下する
生成AIに頼りすぎると、担当者の思考力や分析力が低下するおそれがあります。
戦略立案は経営企画の中核スキルです。AIの出力を鵜呑みにする習慣がつくと、自分で考え抜く力が育ちにくくなるからです。
対策として、生成AIはたたき台づくりや壁打ちに使い、最終的な判断と意味づけは担当者が担うと役割を分けます。出力を批判的に検証する姿勢も欠かせません。
人とAIの役割を分けて使えば、効率化とスキル維持を両立し、長期的に強い経営企画をつくれます。
経営企画の生成AI活用に関するよくある質問
経営企画の生成AI活用に関する質問は以下の3つです。
- 経営企画ではどの生成AIツールを使えばよいですか
- 無料の生成AIでも経営企画に使えますか
- 生成AIに任せない方がよい業務はありますか
回答を確認して、自部門での導入検討の参考にしてみてください。
経営企画ではどの生成AIツールを使えばよいですか
まずはChatGPTやGeminiなど汎用の生成AIから始めるのが現実的です。文章作成や調査の幅広い業務に対応できるためです。機密情報を扱うなら、入力データを学習に使わない法人向けプランを選びましょう。
無料の生成AIでも経営企画に使えますか
アイデア出しや一般的な調査であれば無料版でも試せます。ただし無料版は入力内容が学習に使われる場合があり、機密情報の入力には向きません。社内データを扱う段階では、有料の法人向けプランへの切り替えをおすすめします。
生成AIに任せない方がよい業務はありますか
最終的な経営判断や、責任を伴う意思決定そのものは人が担うべきです。生成AIは調査や下書き、選択肢の提示までを支援する役割に向いています。出力を鵜呑みにせず、判断と裏取りは担当者が行うことが前提です。
生成AIを経営企画の付加価値業務に活かそう
生成AIは、経営企画の市場調査や資料作成といった作業を効率化し、戦略立案やアイデア創出の質を高めます。活用できる業務とプロンプトを押さえ、リスク対策を整えれば、少人数の部門でも対応できる業務の幅が広がります。
まずは議事録作成や市場調査など、作業時間の多い業務から小さく試してみてください。本記事のプロンプト例を自社の情報に置き換えれば、今日から効果を確かめられます。
一方で、生成AIを使いこなせる人材が部内にいなければ、導入しても活用が広がらず効果は限定的になります。経営企画として成果を出すには、担当者自身がAIを使いこなすスキルを身につけることが次の課題になるでしょう。
















